軋むベッドから嬌声が洩れる
そこにいるのは長い黒髪の少女と短い茶髪を無造作に下ろした少女の二人


これで何度目の絶頂を迎えただろうか
そんなことを頭の片隅で考えつつ私は茶髪の少女、律に向き合う


律がとろけそうな眼で「欲しい?」と視線をぶつけてきた
それに「うん」と答える私


それの繰り返し


行為を終え恍惚の余韻に浸っていると
机の側の窓ガラスが風でガタガタ鳴るのが聞こえてきた


外はきっと肌寒いだろう、カーディガンを出そうか
そんな今はどうでもいいことを考えてみる


「澪」


声を掛けられ後ろを振り向くと
いつの間にか服を羽織っている律がそこにいた


「私、帰るな」


やることやったらすぐこれだ
律は余韻を楽しむという趣は持ち合わせてないんだろうか


それとも私は体のいい欲望を発散できる機械とでもしか思われてないのか


嫌な考えが頭をもたげる


そんなことはない
私達は愛し合っているんだ


「もう帰るの?」

「ああ、今日は私が晩御飯を作る日なんだ」


少しだけホッとする
別に私が愛されてない訳じゃないって分かったから


女と女


この壁は思ったよりも大きい
それこそ、いつ絶望してもおかしくないほどに


今は幸せだからそんなこと……なんて思うけど


「ねぇ」


部屋を出ようとする律に私は問いかける


「私達って変なのかな」


これは確認だ
私達が本当に愛し合っているかどうかの


我ながらなんて意地悪な質問だろうと軽い自己嫌悪に陥る
でも聞きたいんだ


貴女の答えを


「誰かになんか言われたの?」

「そういう訳じゃないけど」

「ふーん」


私をいぶかしむように見つめる律
お願い答えて


「……」

「まぁ」

「変なんだろうな。世間的にはさ」


少し間を空けてはぁ、と肩を落とす


そんなんどーだっていいよとは言ってくれないんだね


「じゃあ行くな」


俯く私の耳にドアの開閉音が響く


消し忘れたテレビから「ははは」と笑い声がしたような気がした


「変、か」


私しかいない部屋でぼそっと呟いてみる


本音は四の五の追求するもんじゃない


どこかで聞いた言葉が頭をよぎる


別にさっきの言葉の全てが律の本音ではないだろう
律にだってどこか思うところはある筈だ


それでも私はほんの少しだけ悲しかった


律に


私に


また俯き目線を下に落とすと裸のままの自分に気付き急に気恥ずかしくなる
確かベッドの下に服を脱ぎ散らかしたままだっけ


相変わらず外は風が強い
窓ガラスがガタガタうるさい


クローゼットからカーディガンを取り出そう
これからまだまだ冷えそうだから


寒いから


「気晴らしに散歩にでも行こうかな」


火照った体を少し冷まそう
そして哀を叫ぼう


今は愛をどーこーなんて言える気分じゃない


それでまた体が芯から冷えたら


どうしようもなく凍えそうになったら


また貴女の下で暖めさせて欲しいと思うのはワガママだろうか


おわり



最終更新:2012年10月07日 20:53