律『ああ、愛しの秋山先輩、こんなお手紙で気持ちをお伝えするのも気が引けますが、それでもっ』


澪「(いやいやいや、違うだろ、梓の場合はそういうのじゃなくて……むっ)」

梓「……」

澪「(……えーっと、ハイスタがはじめてのチュウをカバーしてたっけ、いいよなあれじゃなくてあれあれあれ?)」

梓「……っは」

澪「……えっ……う……あと……その」

梓「澪先輩って、やわらかいんですね」

澪「いやっ! ちちちが、うう……あ、ああ、あずちゃん、いい、今のは」

梓「Kiss」

澪「発音いい! にゃにゃにゃんでしたんでしょうか?」

梓「好きな相手にするんじゃないんでしょうか。デヴィッド・ボウイもキスしてたし」

澪「す、好きって」

澪「好きっていうのはもっとアレでアレでアレ何言ってんだわたし?」

梓「そろそろ、戻ります」

澪「お、おい、待ってくれよう……あのう、好きなの?」

梓「はい、みんな、好きですよ」

澪「(……笑ってる……初めて……)」

澪「(でも、なんて、底意地悪そうなんだろう……)」



初詣

唯「ご縁がありますように」

律「10円出すので寿命が10年延びますように」

紬「家内安全」

梓「むにゃむにゃ」

澪「今日がうまくいきますように、というかさっきのことは神様どうしたらいいんでしょうか」

律「よーし、初日の出だー!」

唯「らいじんぐさん!」

澪「帰ったら少し休んで、それからライブハウス行こう」

唯「甘酒まだ飲んでないや。買お買お」

紬「私も~」

律「そういや、さわちゃん会えないな」



初日の出

唯「きたれー! 太陽ー!」

律「ウェルカム!」

澪「ホントに元気だなぁ、お前ら」

紬「案外、夜のことで緊張してるのかもよ」

澪「かもな」

唯「俺にもー! その部屋の窓にもー!」

律「ぅああさがあぁくううるううぅぅ!」



平沢家

唯「5時間しか寝れないのか~」

律「ああ、このままダラダラした~い」

澪「さっさと寝ろーお前ら」

唯「修学旅行の先生みたい」

紬「友達の家で寝るなんて初めて」

律「よーっし! 枕投げしようぜ!」

唯「うおーう!」

澪「お前らー静かにしろー」

梓「おやすみマルクマス……おやすみロックンロール」

唯「ムギちゃん、そのたくあん、お茶漬けにさせて」

紬「これ、唯。師になんたる口をきくか」

唯「へう? す、すいやせん」

紬「もう、お前も独り立ちする時だというのに。いつまでも仁井徒、仁井徒などと。 師は恥ずかしいぞ」

唯「はう……」

紬「ほれ、これを持ち、全国を行脚し、新しい御仏の道を人々に諭してくるのじゃ」

唯「む、無理でごぜえます、和尚さん。私にはとてもそのような大業……」

紬「無理というても、これはお前がなすべきこと。さあ、手にとりなさい」

唯「カスタネット……」

紬「人が業にとらわれ生きているように、お前も生まれ持った業を捨てることはできぬ」

唯「ムギ……沢庵和尚~」

紬「さあ、門を開けるぞ」


 カンッ♪ カンッ♪

唯「生まれてこのかた~ぜんぶ~妹まかせ~うん!」カンッ♪

唯「あ~い~す~あ~い~す~うん!」カンッ♪

唯「他力本願~極楽往き~うん!」カンッ♪

唯「いもうとよ~いもうとよ~うん!」カンッ♪





                -───-
              /: : : : : : : : : : :ヽ: : :\
.            /: /: : :/: : : : :ヽ: : : : ',: : :.ヽ
           /: : /: : :/{: : : : : : |: : : :.:|:.:.:.:.:.:..
            /: : /:\/∧: : : : : :|:. :. : :|:.:ハ.:.:.:',
.           /: : : |\/___ノ : : : : :トx___ l.:.|:.:|.:.:.:.|
          ': : !: :|: :{   ∨\__| ヽ: :l:.:|:.:|.:.:.:.|
         i: : :|:八: |   __     __ V: /: :|.:.:.:.|
         |: : :l : :ヽ| ィ'⌒`   '⌒ヽV: : :.|:.:.:.:|
         |: : :| : : ハxxx      xxx|: l :|.:.:.|
         |∧:|: : : :八   ~~   ノ: l :.ノ.:.:.:.|
         l ハ: : : :l:.:> 、   .. イ.:|: l /.:.:∧{
            \: |ヽ_ノl     ト、j: l/.:.:/
.               ,ノ!ヽ        //ヽ
           /  i\\      //  \
           /l   l\\`    / !    \
.        /l  l    l  \\  / / ¦    l\
.        '   l  l   l    \ヽ/ / ハ      l  ヽ
.            l  l   i    { / / }
【うんたん和尚】
現在、宗教としては日本最多の信者数を誇る「うんたん教」の開祖である。
一切の面倒事や苦労を自分でせずに、全て他の人に任せていれば
自分は救われるのだという「他力本願」を説き、カスタネットを叩きながら
「うんたん」とひたすら唱えていれば死後、人は仏になり極楽浄土に
行くことができるとの教えを広め、民衆に強く支持された。




紬「唯ちゃん、時間よ」

唯「え……和尚さま」

紬「おしょー?」

唯「私は解脱の境地に達したでしょうか」

紬「え、えー」

澪「おーい、早く行くぞー」



某ライブハウス

さわ子「来たわね!」

律「おお、さわちゃん」

さわ子「出来たわよーみんなのステージ衣装! じゃーん」

紬「まあ」

澪「予想通りだな……」

さわ子「メイドふっく~♪ 今回はオールドスクール路線で純粋なメイド服にしました。
    エマとアンダー・ザ・ローズ読みながら」

唯「かわいいよ、これ!」

梓「ふむ」



リハーサル

澪「うん……」

律「ふう……」

紬「なんか、落ち着かないね」

唯「あずにゃん、さっきのもう一回教えて」

梓「こう……ジャコジャコって」

律「ふはぁー、休憩ー」

澪「で、でも、なんか気が休まらない……」

律「震えてるぞ、澪……何読んでんの?」

澪「じょ、ジョン・ライドンはステージにた、立つ前、緊張をほぐすために伝記本をよ、読んでたって」

律「松本裁判。松ちゃんかよ!」

唯「ほ~ここのテレビ、映画やってる」

律「ああ、ホントだ」

紬「バンドが写ってるけど、ドキュメンタリー?」

梓「イアン・カーティスですね。似てるけど、偽者」

澪「おお、ルイ・ルイ歌ってる」


Louie Louie (24 Hour Party People)
(http://www.youtube.com/watch?v=r48DCMYXXtU)



律「無茶苦茶でわからんけど、何て歌ってんの?」

澪「彼女に会いに行かなくちゃ、それだけ」

紬「お客さんも皆ピョンピョン跳ねてる」

唯「演奏ほとんどわかんないね」

梓「でも楽しそうです」

澪「そうだなー」

澪「そうだな、せっかくだ。緊張するだけじゃなくて、楽しもう」

紬「そうね」

律「私は最初っから楽しいけど。昨日の夜は梓と何やってたのかな~?」

澪「へっ」

紬「ちょっと、りっちゃん、それどういうこと」

律「うーん、たまたまさー本当にたまたまーフラッと外出たらさー澪とー梓がー」

澪「ねねね、捏造すんなっ!」

律「えーなにをー?」


唯「あずにゃん、澪ちゃんと何かあったの?」

梓「む……」



律「今、梓、唯にちゅーしたよな……ムギ?」

紬「……は、鼻血がとまら」フラッ

律「ちょ、ムギ! ムギィィィ!」

澪「本番前にもう一回練習しとくか」

唯「え? もうリハーサル終わっちゃったよ?」

律「アンプ繋がなくても、できるだろ、うちらは」

紬「てみょーにね!」

律「鼻、大丈夫か? ティッシュ変える?」

梓「くらっぷはんず」

澪「せーの」


律「1、2、1、2、3、4!」

澪「君を見てるといつもハートドキドキ」

皆「ふわふわふわふわドキドキ!」

澪「揺れる想いはマシュマロみたいにふーわふわ」

皆「う~みーお!」

澪「いーつもがんっばーる!」

皆「いっつもがんばっるっ!」

澪「きーみのよこっがーお!」

皆「みーおのよこっがーお!」

澪「ずうっと見てーてもー気づかないよね」

皆「う~萌え萌えキュンキュン♪」



それから……

紬「いよいよ、次だわ」

梓「ふむ……ジャムのコピーバンドだ」

律「今やってる奴らうまいなー」

唯「ねえ、ペットボトルとか飛んでこないかな」

澪「ダ、ダイジョウブダヨ、ユイ」

律「はいはい、リラアアアアックスしてね~」


唯「でも、なんか、さっきみたいに皆で歌うのとか楽しいよね」

紬「そういう感じで、演奏すればいいんじゃないかしら」

律「そうそう、せっかく投げ枕もしないで来たんだからね」

澪「どんだけ、こだわるるんだ、そこに」

唯「あずにゃん」

梓「はい」

唯「あずにゃんは初めて人前で演奏した時、楽しかった?」

梓「……」


梓「楽しかった……あれは楽しかったんだと思います」

澪「退屈がしのげるもんな」

梓「はい」

唯「では、打倒たいくつ! いってみよー!」

皆「やってみよー!!」


―おお、女の子だ

―メイドさんのロックンロール?

―みんなかわいいー

―お姉ちゃーん、がんばってー

―唯ーがんばってねー

―梓ちゃん、かわいいー」

―やっぱりあたしGJ!


澪「え、えーと、じょうも(噛んだー!)」

澪「えーと……あ、あけましておめでとうございます」

―おめでとー

―おめでとーござーす

澪「わぁ……えっと、私達、放課後ティータイムっていいます」

澪「ええと、退屈をぶっとばせ! ベイベー!」

―……

―……

―ベイベー!!

―悲しみをぶっとばせー!

澪「そ、それじゃあ、いくぞ! 『ふわふわ時間』!!」


……

年明け
始業式


憂「まーた寝てるー」

梓「む……寝てないよ」

憂「嘘。今私の声で起きたんでしょー」

梓「寝てないよ。起きてたよ」


―ねえー中野さーん、軽音部楽しいー?

梓「うん、楽しいよ」


             お わ り♪



最終更新:2010年02月20日 00:18