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15分後
紬「オーストラリアンフォーメーション?」
梓「はい。ムギ先輩にはこれから左手だけを使って試合してもらいます。でも左手でバックハンドなんて絶対無理ですよね」
紬「……うん」
梓「だから陣形を変えるんです」
紬「どんな陣形なのかな?」
梓「ちょっと地面に書いて見せます。普通はこんな感じです」
紬◯
◯梓
====←ネット
澪◯
◯律
紬「うん」
梓「オーストラリアンフォーメーションだとこうなります」
紬◯
梓◯
====←ネット
澪◯
◯律
紬「……どういう意味があるの?」
梓「ムギ先輩の右手側を狙いにくくなります」
紬「…なるほど」
梓「あと、並行陣も使います」
紬「並行陣?」
梓「はい。こんな感じです」
梓紬
◯◯
====←ネット
澪◯
◯律
紬「横に並ぶんだ」
梓「はい。これならムギ先輩の右手側を私がカバーできます」
梓「どちらも欠点はありますが、勝てるとしたらこの方法しかないと思います」
紬「うん。精一杯頑張る!」
梓「この手が使えるのはムギ先輩がサーブの時だけです。だから……」
紬「……うん」
梓「次のゲームを落としたら潔く降参しましょう」
紬「わかった」
梓「それじゃあ行きましょう」
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紬「ごめんね。りっちゃん、澪ちゃん」
澪「ムギが謝ることないよ」
紬「次のゲーム落としたら私達降参するから」
律「へっ」
紬「勝ち目がなくなっちゃうから」
律「……そうなのか」
澪「……」
梓「逆に言えば、次のゲームは十分勝ち目があるってことです。そして次のゲームを取れば私達の勝ちです」
澪「梓?」
梓「そろそろラストゲームを始めましょう。勝っても負けても恨みっこなしです」
律「あぁ」
律「澪にゃん! 勝つぞ!!」
澪「おお!」
梓「ムギにゃん! 行きますよ!!」
紬「おーーーー!!」
紬「げーむかうんとごーさん」
紬「……」
紬(せっかっく梓ちゃんが繋いでくれたチャンス。無駄にするわけにはいかない)
紬「えいっ!」パン
律(あっ、これは……)
律「フォルト」
梓「どんまいです、ムギにゃん」
紬「う……うん」
紬(思ったより難しい)
紬(なんとか入れないと)
紬「えいっ!」パン
律(緩いボール。これなら)タタタタ
律「それっ!!」パキュン
タン……タン…タン
紬「そんな……」
紬「らぶふぃふてぃーん」
紬「……」
紬(緩く打ったらリターンエース取られちゃう)
紬(でも、強く打ったら入らない……)
紬(どうすれば……)
梓「ムギにゃん?」
紬「えっ…あっ……そっか。並行陣だから梓ちゃんが横にいるんだ」
梓「緊張してますねムギにゃん」
紬「……うん」
梓「強く打ってください。勝てるとしたら、それしかありません」
紬「……そうだね」
紬「……えいっ」バシュ
澪(これは……入る)
澪「それ」パン
梓「このっ!!」バン
律「取れる!」バキュン
紬「えいっ!」バン
梓(ムギ先輩……なんとか打ち返した。今のうちに)タタタタタタタ
澪「それっ」バン
澪「えっ、なんで梓がネット前に」
梓「走ってきたんです。今デス!!」バン
タン・・・タンタン
梓「やりました!」パン
紬「梓ちゃん……最高!!」パン
律「くそっ」
澪「次取り返せばいいさ」
紬「ふぃふてぃーんおーる」
紬「……」
紬(梓ちゃんが頑張ってくれてる。私も頑張らなきゃ)
紬「えいっ!!」バン
律「それっ」バシュ
梓「届きます!!」バン
律(よし、左が空いた……これで)
律「決まれ!!」バシュ
紬(バックハンドにきた……でも、あてるだけなら!!)
紬「入って!」タン
梓(高く上がった……でも、飛距離が……。お願い、ネットまで届いて。)
タン………タンタン
律「ネットイン…だと…」
梓「やりました!!」パン
紬「うん!」パン
紬「さーてぃふぃふてぃーん」
紬(後2ポイント連続でとれば、私達の勝ち)
紬(うん。こうなったら……やってやるです!)
紬「えいっ!!」バシュ
シュ…タン…タン
梓「どんまいです、ムギにゃん!」
紬「……」
紬(落ち着いて……)
紬(ふぅ……)
紬「えいっ」バシュ
澪「フォルト」
紬「そ、そんな……」
紬「さーてぃーおーる」
紬「……」
紬(次こそは絶対に入れる)
紬(……入って!)
紬「えいっ!!」バシュ
律「球が甘い!」バキュン
梓(と、届け)タタタタタ
梓「……っ」バン
律(ガットに当たった!? どんだけ運がいいんだ? でも、これで)タタタタタタ
律「えいっ!」バシュ
紬「左端……届かない」タタタタタタタ
タン……タン…タン
律「おしっ!」パン
澪「さすが私の律!!」パン
紬「……」
紬(次取られたらおしまい)
紬(……)
紬(……っ)
梓「ムギ……にゃん」
紬「梓ちゃん?」
梓「また、緊張してるみたいですね」
紬「……うん」
梓「今、楽しいですか?」
紬「……どうだろう」
梓「じゃあ、もっと楽しんでください」
紬「そんなこと……どうすればいいの?」
梓「勝つところを想像してください
紬「勝つところ?」
梓「そして、自分の読みがあたるところを想像してください」
紬「……想像するだけでいいの?」
梓「はい。自分が成功するところを想像してください」
紬「…うん」
梓「後はムギにゃん次第です」
紬「……」
紬(勝てたら……きっと楽しいだろうな)
紬(梓ちゃんは大喜びしてくれるだろうし)
紬(きっと私も誇らしいと思える)
紬(……私のサーブを澪ちゃんが受ける)
紬(私はどう動けば勝てるだろ?)
紬(……うん。決めた)
紬「さーてぃふぉーてぃ」
紬「えいっ!!」バシュ
澪(打ち頃の球だ…)タタタ
澪「それっ!」バキュ
梓(緩い球)タタタタタ
梓「それっ!!!」バシュ
律(私の方に来た! これで決める!!)
律「そいやっ!」バキュン
梓(走れば届く……)タタタタタタタタタタタ
梓「えいっ!!」バン
紬(ここ!!!!)
澪(高い球……アウトか? インか? インだ!)
澪「それっ!!」
律(ムギが……)
澪(あがってきてる……?)
紬(ここしかない……左手でスマッシュは初めてだけど)
紬(きっと入る。きっと勝てる。だから……)
紬「それっ!!!」バシュン
梓(ムギ先輩のスマッシュ……力強い……。でも、ちょっとだけ高い……)
梓(お願い、入って!!)
タン……タン……タン…タン
澪「アウト」
帰宅後-律宅
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律「こんなに白熱した試合は久しぶりだったな」
澪「うん、すっごく楽しかった」
律「こんどはムギが万全な状態でもう一度やりたいな」
澪「うん」
律「また練習しに行こうぜ」
澪「律が誘ってくれればいつでも行くよ。だって、カッコいい律が見られるから」
律「///」
澪(照れてる律かわいい)
律「あっ、そうだ」
澪「なんだ?」
律「そろそろいい時間だけど帰らなくていいのか?」
澪「私に言わせるのか?」
律「あっ…………。まぁ、なんだ、澪にゃん。今日は泊まってってくれ」
澪「……うん!」
帰宅後-紬宅
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梓「……負けちゃいましたね」
紬「うん。でも……」
梓「はい。想ってることは同じだと思います」
紬「うん。とっても楽しかった!」
梓「私も楽しかったです」
紬「だけど……」
梓「……はい」
紬「楽しかった以上に悔しいな」
梓「それが勝負です……」
紬「それは分かってるけど……。やっぱり梓ちゃんと二人で勝ちたかった」
梓「そうですね……。でも時間ならたっぷりあります」
紬「うん! 打倒りっちゃん澪ちゃんペアを目指して猛特訓ね!」
梓「はいです!」
紬「そうと決まれば明日から猛特訓ね」
梓「ムギにゃん。明日からじゃなくて今日からするべきです」
紬「……! そうね! 何をすればいいのかしら」
梓「今日わかったことがあります。私達の弱点は持久力です」
紬「そうだね」
梓「だからスタミナをつけるべきだと思うんです」
紬「どうやって?」
梓「夜の体育で」
紬「夜の体育?」
梓「はい、知りませんか?」
紬「うん」
梓「それじゃあ私がムギにゃんの体に教えこんであげるです」
紬「わくわく」
梓「それっ」ガバッ
紬「ひゃん///」
おしまいっ!
補足
※ 唯ちゃんなら和にゃん&憂ちゃんと紅葉狩りに行ったよ
最終更新:2012年10月09日 20:02