――――静寂な病室に心電図の「ピッ」という音だけが響き渡る
憂は唯の手を取りギュっと握った
それに応えるかのように唯は弱弱しく握り返した
憂「お母さん…お姉ちゃんきっと助かるよ…お姉ちゃん生きたいって思ってるもん」
唯母「そうね…唯は強い子だものね」
唯「……ぉ…かぁ…さん…」
唯母「唯…大丈夫よ、ここにいるから」
唯「ゎ…たし……ぃ…きた…ぃ…」
唯母「うん、生きて…長生きして…お母さんに親孝行してね」
唯はやさしく微笑んだ
唯母「じゃあ憂、お母さん行くね」
憂「うん、気をつけてね」
唯母「唯…大好きよ」
ガラガラ~
憂「…バチスタ…か…」
憂いは深くため息をついた
―――――3時間前「桜高軽音部室兼音楽室」
律「えー、お見舞いいこーぜー」
澪「そんな毎日行ってたら唯が気ぃつかうだろ」
律「そんな奴じゃないよ唯は…」
澪「言っとくが、病人だぞ…とにかく今日は練習!」
紬「唯ちゃん早く元気になるといいわね」
律「唯がいないといまいち…こう、なんていうかなぁ…」
澪「要するに寂しいんだろ…それはみんな同じだ」
梓「そうですよ…寂しいんですよ」
さわ子「そぉよねぇ…」スチャ
梓「ひぃっい、いつのまにっ…ってかこれ」
さわ子「ウフフ…今日はバニーガールよぉっ待てぇぇぇえええ」
梓「絶対いやですぅぅうううう」
―――――1時間後
ジャジャ、ジャジャ、ジャーーーン♪
律「やっぱり迫力ねーナ」
澪「そうだな…今日は解散にしよう」
紬「唯ちゃん…」
梓「先輩…」
―――――翌日
唯母「ここね…明真大学付属病院」
唯母「あの…朝田先生っていらっしゃいますか…平沢なんですけども」
受付「朝田先生ですね…お待ちください…」
受付「…はい、そうです…平沢…さんです、はいわかりました」
受付「ここにいてください、しばらくしたら来ますから」
唯母「あぁ、どうもすみません」
受付「次の方~」
それから5分もしないうちに一人の男性がやってきた…それは朝田ではなかった
男性は軽く会釈し、つられて唯母も返した
「お待たせしましたこちらへ」
唯母「朝田先生ですか?」
藤吉「あぁ申し遅れました私、明真大学付属病院循環器内科医の藤吉圭介と申します」
唯母「あの…」
藤吉「朝田先生の代役とでも思ってください」
藤吉はさわやかに笑った
唯母「は、はぁ…」
―――――藤吉の部屋
藤吉「どうぞ、おかけください」
唯母「…」
唯母はかるく会釈し腰かけた
藤吉「単刀直入に言います、唯さんの心臓はかなり大きくなっています」
藤吉「それに不整脈も時々見られる…早めの手術が必要かもしれません」
唯母「なら…」
藤吉「ですが、とりあえず私たちの病院に移してもらって精密検査して様子を見てからでないと…なにせバチスタは非常に難しい手術ですし」
その後藤吉から様々な説明を受け、軽く混乱状態の唯母に藤吉は軽く微笑んで
藤吉「大丈夫ですよ、我々は最高のチームを持って唯さんを助けます」
その言葉に唯母は「ありがとうございます」と深々と礼をしその場をあとにした
藤吉「…………」
―――――チームドラゴン特設室
藤吉「新しいバチスタ患者が見つかった…16歳の女子高生、
平沢唯ちゃんだ」
伊集院「女子高生ですか…それで」
藤吉「まだ送られてきた資料しか見てないが…かなり心臓が肥大している…」
伊集院「かなり大きいですね…」
藤吉「不整脈や心不全も度々みられるみたいだ」
伊集院「16歳で…」
―――――306号室
憂「おねえちゃん…お見舞い来たよ…軽音部の皆さんと和さんも一緒だよ」
律「元気にしてって…おい、大丈夫かよ唯」
唯「あはは…大丈夫だよ…」
澪「なぁ憂ちゃん…唯ってなにか悪い病気でもしているのか?」
律「ひざの裏にブツブツ、顔面にブツブツ…」
澪「いやぁぁああああ」
紬「りっちゃん…」
律「あはは悪い悪い」
唯「あのね…みんな…私…」
憂「大丈夫ですよ…心配ありませんから…」
梓「憂ちゃん…?」
唯「憂…」
憂「お姉ちゃんは大丈夫です…この人工呼吸器とかも一応ってことでつけられてて」
唯「もう…いいよ」
澪律紬和「憂…ちゃん?」
憂「お姉ちゃんは…お姉ちゃんは…」
唯「憂…ありがとう、でも大丈夫だよ」
唯「私ね…心臓が大きくなる病気なんだって…それで東京の病院に移って手術するんだ」
澪「そんな…」
律「嘘…だろ」
梓「先輩…なんでもないって…手術したから大丈夫だって」
唯「ごめんねあずにゃん…私馬鹿だからいつもみんなに迷惑かけてるでしょ」
唯「だから、こんなことでみんなに迷惑かけたくn」
梓「こんなことってなんですかっ!!」
澪「梓…?」
梓「迷惑なんて…迷惑なんてこと、ないですよ…うぅ」
律「そうだぞ、私たち友達だろ?助け合って当然じゃないか…なにそんなこと気にしてんだよ…唯らしくねぇな」
紬「唯ちゃん…唯ちゃんは私たちの友達なんだからなにも気にしなくていいのよ」
和「唯は変なとこに気を使わなくてもいいのよ」
唯「みんな…ごめんね…わたしやっぱり馬鹿だ…」
唯の白い頬に一つの涙が流れた
憂「おねえちゃん…グスン…明日、東京の病院に移送されるんです」
澪「そっか…じゃあしばらくは会えなくなるんだな…」
律「週末には見舞いに行くからなっイヒヒ」
唯「ありがとう…ありがとう…」
澪「なぁ憂ちゃん…その…唯とマンツーマンで話しさせてくれないか?」
憂「えっ…かまいませんよ…ね、お姉ちゃん」
唯「うん」
律「なんで、マンツーマン?」
澪「みんながいると話しにくい本音とかあるだろ…」
紬「賛成でーす」
律「ムギまで…ならいったん出るか…」
そして外に出た5人はジャンケンで順番を決めた
律→澪→紬→和→梓に決まった
律「最初はわたしだよんっ」
唯「なんだ…りっちゃんか」
律「なんだってどういうことだよ…」
唯「あはは、ごめん…りっちゃんの笑顔見てると元気になれるんだ私」
律「イヒヒそうか…デコビームっ」
唯「ま、眩しいですりっちゃん隊員」
律「どうだ…デコビームの威力は、思い知ったか!!」
唯「あ…あぁ参りましたぁ…」
律「アハハハ…あっそうだ、クラスの皆で千羽鶴作ったんだ」
唯「えっほんとに…うれしいなぁ」
律「唯は愛されてるんだよ…みんなに」
唯「アハハそうだねりっちゃんよりは愛されてるかもね」
律「お前…鶴引きちぎるぞ」
唯「冗談だってばぁ…えへへ」
律「ほれ…ここに忘れてくんじゃないぞ」
唯「ありがとう…ちゃんともってくよ」
律「おっともうこんな…一人5分なんだ悪い」
唯「あぁ…りっちゃん、大好きだよっ」
律「お、おまえ恥ずかしいだろっ///」
唯「照れてるりっちゃんかわいい」
ガラガラ~
澪「次は私か…」
唯「おお澪ちゃん」
澪「唯…お前は軽音部…いや私にとって大切な存在なんだ…唯がいないと寂しいんだよ」
唯「私も澪ちゃんがいないと寂しいよぉ」
澪「私は唯が大好きだっ」ギュウウ
唯「澪ちゃん…それ私が先に言おうと思ってたのにぃ…」
澪「唯…忘れるなよ…いつも唯のそばにいるからな私たちは」
唯「澪ちゃん…ありがとう」
唯「で、私に話したいことって…?」
澪「ええと…その…だから…その…ごめん」
唯「ええええ、ちょっと澪ちゃん…もう」
澪「ム、ムギ交代っ」
紬「え…でも」
澪「お願いっ」
紬「澪ちゃんどうかしたの?」
唯「いや…なんか照れちゃったみたいで…」
紬「(可愛いわね澪ちゃんも)」
…
紬「唯ちゃん…早く元気になってまたティータイムしようね、おいしい紅茶とケーキでまってるから」
唯「うん、ムギちゃんのお菓子すごくおいしいんだ…ほんとにありがとう」
唯「ギー太の時もいろいろとありがとう」
紬「そんな…私は何も」
唯「ムギちゃんのおかげで今の私があるんだよ…ほんとにありがとう」
紬「こちらこそありがとね(やばい、唯ちゃんかわいい♪)」
紬「唯ちゃんは私たちにとって太陽なの」
唯「太陽?」
紬「いつも私たちを照らしてくれる太陽、つらい時も悲しい時も、唯ちゃんを見るとなんだかどうでもよくなっちゃうの」
紬「唯ちゃんの笑顔にどれだけ助けられたか…ほんとにありがとう」
唯「ムギちゃん…うぅ…」
紬「ほら、太陽が泣いたらだれが私たちを照らしてくれるの?」
唯「うぅ…ムギちゃんあなたは神様だぁあああ」
紬「ウフフありがとう…じゃあ時間だから」
唯「ムギちゃん…大好きだよ、えへへ」
紬「はい♪///」プルプル
紬「和ちゃんどうぞ」
律「ムギは何話したんんだ?」
紬「秘密です♪ウフフ」
…
和「唯ぃ」
唯「あっ和ちゃん…えへへ」
和「ほんとに心配したんだから」
唯「ごめんごめん…なんかいっつも和ちゃんには助けられてばかりで…」
和「いいのよ気にしなくても、私だって唯からいろいろともらってるもの」
唯「私から?」
和「そう、唯から…今年の文化祭、楽しみにしてるんだからね」
唯「うん、絶対聞きに来てね」
和「ええ、聞きに行くわよ…ていうかたぶん裏方で聞かせてもらうと思うけど」
唯「あぁそっかぁ…えへへ」
和「この間はこれなくてごめんね」
唯「いいよぉ…和ちゃんの気持ちだけで十分元気出るしメールいっぱいくれたし…えへへ」
和「やっぱり唯には笑顔が一番ね…週末には私も行くから」
唯「うん、ありがとう」
和「唯、無理しちゃ駄目だからね」
唯「ありがとう和ちゃんはほんとに優しいなぁ…あっ和ちゃん、大好きだよっ…フフ」
和「ええ、分かってるわ」
和「次梓ちゃんの番よ」
梓「あっはい…」
ガラガラ~
梓「失礼します」
唯「あずにゃん…」
梓「先輩…さっきは…」
唯「いいよ、気にしてないから」
梓「あ、ええと…私、ネコ飼い始めたんです…あずにゃん2号…えへへ」
唯「ほぉ~あずにゃん2号かぁ~」
梓「怪我してるの見て拾って飼い始めたんですけど、結構可愛いんですよ」
唯「ぜひ見てみたいなぁ…あずにゃん2号かぁ」
梓「あの…先輩…」
唯「どしたのあずにゃん」
梓「あの…きききき…キス…してもいいですか…?」
唯「えっ…」
梓「駄目…ですよね、変なこと言ってすいません」
唯「いいよ…」
梓「ええと…じゃあ失礼します」
梓はそっと唯の唇にキスをした、やさしいキスを
…
律「おい、お前らもこんなことを?」
澪「ば、馬鹿こんなことするわけ…」
紬「(キマシタワー)」プルプル
憂「おねえちゃん…」
和「なかなか大胆ね」
梓「あ、ありがとうございます」
唯「う~ん…」
梓「(やばい下手だったから落ち込んじゃったのかな…)ごめんなさい、私初めてで」
唯「やっぱり甘いんだ…キスって」
梓律澪「(やっぱり!?)」
紬「(もう死んでもいい)」プルプル
唯「憂がね…キスは初恋の味って言ってたんだけど甘いんだよね」
唯「これが…初恋か…」
病室の外にいる全員の視線が憂に向く
憂「えへへ…」
梓「先輩のギターまた聞きたいです、絶対聞かせてくださいね」
唯「うん」
最終更新:2010年01月22日 15:25