ピンポーン
憂「? 誰だろうこんな時に…」
憂「はーい」
律「おっす憂ちゃん」
澪「唯はいるか?」
憂「皆さん…お姉ちゃんは今お買いものに行ってます」
紬「あらあら、そうなの」
律「なら少し待たせてもらってもいいか?」
憂「別に構いませんよ、何かあったんですか?」
澪「あぁ、実は唯に渡したいものがあってな」
律「じゃーん!これだ!」
憂「? これは…ケーキ?」
澪「そうだよ、帰りに美味しいケーキ屋さんを見つけたんだ」
紬「だから唯ちゃんにも食べてもらいたいと思って買ってきたの」
憂「そうだったんですか…わざわざありがとうございます、さぁ皆さん、上がってください」
律「じゃぁお邪魔しまーす!」
……
唯「ただいまー」
憂「お帰りお姉ちゃん」
律「よう」
唯「あれ?どうしてりっちゃん達がいるの?」
紬「美味しいケーキを食べてもらいたくて届けに来たの」
唯「そうだったんだー、ありがとうみんな♪」
澪「ただのケーキじゃないぞ、箱を開けてみてくれ」
唯「どれどれ…うわぁ!ギターのお菓子が乗ってる!」
律「すごいだろ!唯の驚く顔が見たくてわざわざ待ってたんだぞ」
紬「気にいってくれた?」
唯「うん!ありがとうみんな♪」
澪「ははっ、唯のその顔が見れただけで待ったかいがあったな」
唯「…あれ?ギターといえば…」
律「? どうかしたのか?」
唯「…あっ!ギー太を学校に忘れてきちゃったよ!」
澪「何やってんだよ、ドジだなぁ」
唯「…まぁ明日とりに行けばいいや」
憂「そうだ、皆さんも晩御飯を一緒に食べませんか?」
律「あー、私達はいいよ」
澪「ただ唯にケーキを届けに来ただけだからさ」
紬「また今度御一緒させていただくわ」
憂「そうですか、残念です」
律「それじゃ唯の顔も見たことだし、そろそろ私達帰るな」
唯「うん!みんな今日はどうもありがとう!」
澪「また明日学校でな」
紬「では、お邪魔しました」
……
唯「…ふぅ、ごちそうさまでした」
憂「お粗末さまでした」
唯「さて、ご飯も食べたことだし次はアイスを…」
憂「! お、お姉ちゃん!」
唯「ん?なーに?」
憂「さ、先に皆さんから頂いたケーキを食べた方がいいよ!」
唯「んー、確かにそうだね」
憂「ほっ…」
唯「それじゃいただきまーす」もぐもぐ
唯「んまいっ!」
憂「本当だ、美味しいねぇ」
憂(今日は何とか誤魔化せたな…でも明日からはどうしようかな…)
―次の日 通学路
唯「あ、おはよう和ちゃん」
和「おはよう唯、あら?今日はギターを持ってないの?」
唯「それがさー、部室に忘れてきちゃったんだ」
和「そうなの?まぁなんとも唯らしいわね」
唯「えへへ…でも早くギー太を迎えに行ってあげなきゃ」
―部室
がちゃ
唯「やっほーギー太、迎えに来たよー」
唯「…あれ?ギー太がいない」
唯「ギー太?ギー太ー、どこー?」
唯「…ない、どうして?」
がちゃ
律「おーっす」
唯「あ、りっちゃん!」
律「唯、随分早いな…って、どうしたんだそんな真剣な顔をして」
唯「ギー太が…ギー太が…!」
律「ギー太がどうしたんだよ?」
唯「ギー太が行方不明なの!!」
律「はぁ?ちゃんと探したのか?」
唯「探したよ!でも見付からないの!」
律「他にどこかに忘れたってことは?」
唯「それはないよ!ここと部屋以外で使うことなんてないもん!!」
がちゃ
澪「どうしたんだ、やけに騒がしいな」
紬「何かあったの?」
梓「どうせまた遊んでたんじゃないですか?」
唯「みんな!私のギー太を知らない!?」
梓「…!」
澪「ギー太?部室に忘れたんじゃなかったのか?」
唯「その筈なんだけど見当たらないの!!」
紬「他の場所に忘れたなんてことは?」
唯「そんな訳ないっていってるじゃん!!何度も言わせないでよ!!」
律「お…おい…落ちつけよ唯…」
唯「そんなの無理だよ!だってギー太は私の大切な…相棒なんだから!」
澪「唯の気持ちはわかるよ…でも少し落ち着け、な?」
唯「……」ギロッ
澪「な、なんだよその眼は…?」
唯「こんなこと言いたくないんだけどさ…」
唯「私はこの場所以外でギー太を弾くことなんてない…なのに無いってことは…」
唯「…この中の誰かが私のギー太を盗んだってことだよね?」
澪「そ、そんな馬鹿な…!」
紬「酷い…唯ちゃんは私達を疑ってるの…!?」
律「おい唯!いい加減にしろ!仲間を疑うなんて最低だぞ!」
唯「でもそれ以外に考えられないじゃん、そうだよね、みんな」
律「そ、それでも私達は盗んでない!!」
唯「どうしてそう言い切れるの?証拠はあるの?」
律「証拠はあるさ、私達は昨日一緒に帰ったんだ、その中には誰も唯のギー太を持ってる奴なんかいなかったよ」
澪「そうだよ、それは私達が保証する!」
唯「澪ちゃん達の保証は信用ならないなぁ…」
紬「ど、どうして!?」
唯「だってみんながグルの可能性もあるよね?」
律「! お前!!」
唯「…ねぇ、あずにゃんは昨日一緒に帰らなかったの?」
梓「…え?私ですか…?」
唯「そうだよ、ねぇ、どうなの?あずにゃんはさっきから黙ってるけどさぁ…本当はあずにゃんが私のギー太を盗んだんじゃないの?」
梓「そ…それは…」
梓(今ここで真実を話した方がいいよね…それじゃないと唯先輩は先輩方をもっと傷つけてしまう…)
梓(…でも、本当のことを話したら唯先輩は間違いなく私を軽蔑するだろうな…そんなの嫌だ…)
梓(私は…唯先輩に嫌われたくない)
梓「…私は何も知りません」
唯「…本当に?」
梓「…はい、本当です」
唯「…ふーん、まぁいいや…ならみんな嘘つきってことになるね」
律「はぁ!?どうしてそうなるんだよ!?」
唯「だってそうじゃん、私に本当のことを話せないんだもんね?」
澪「だから、私達はさっきから本当のことを言っているんだって!」
唯「ははっどうだか…ならどうして私のギー太は行方不明なんだろうね?」
紬「そんなこと知りません!!」
唯「ほーら、また嘘を吐いたよ!」
紬「…どうして?どうして私達のことを信用してくれないの…?」ポロポロ
唯「泣いたって私は騙されないからね」
バン!!!
律「てめぇ…いい加減にしやがれ」
唯「何?もしかして私を脅すつもりなの?」
律「黙れ…それよりもムギに謝れよ…」
唯「どうして?」
律「昨日のケーキ…あれを唯に買っていこうって提案したのはムギなんだぞ…」
律「唯ならきっと喜ぶからって…わざわざお前の家まで届けようって言いだしたのもムギなんだ…」
律「そんな優しい奴がギー太を盗むと思うか?なぁ?」
唯「……」
律「なぁ!?聞いてんのかよ!!何とか言ってみやがれ!!!」
唯「…あぁ、そういうことか、分かったよ」
律「何がだよ!?」
唯「ギー太を盗んだお金でケーキを買ったんでしょ、それかもう売ってしまったからそのお詫びのつもりだったとか…」
唯「…だとしたら、本当に最低だね、ムギちゃんって」
紬「違う…私は…ただ唯ちゃんに喜んでもらいたかっただけなのに…」
唯「うるさい、早く私のギー太を返してよ、ほら、返してよ」
唯「返してよ!!!」
紬「う…ひっぐ…うえええええん!」ポロポロ
律「てめぇ…ぶっ殺してやる!!!」
唯「あははっ!今度は暴力?やめなよりっちゃん、それは自分の罪を認めている様なものだよ!!」
律「うるせぇ!!!」
澪「落ちつけ律!!」
律「澪!離せぇ!!」
澪「ここで唯を殴ったってどうにかなることじゃないだろ!?」
律「でも…あいつはムギの気持ちを踏みにじったんだ…それが悔しいんだよ…!」ポロポロ
唯「あははっ!今度はりっちゃんが泣くんだ!面白いねぇ…」
澪「黙れよ」ギロ
唯「あれ?今度は澪ちゃんが怒るの?」
澪「……」
唯「今度はだんまり?ねぇ、なんとか言ってよ嘘つきさん」
澪「…私達はもう帰るよ」
唯「どうぞご自由に、でもギー太は返してよ」
澪「だから私達は知らないよ」
唯「何度も言わせないで、あなた達以外に考えられないんだから」
澪「なら勝手にそう思ってろ」
唯「そうだね、それしか考えられないんだから」
澪「…唯、お前がそんなことを言う奴だったなんて思わなかったよ」
澪「正直…見損なった」
ばたん
唯「…あいつら、結局ギー太を返さなかった」
唯「ふざけるな…ふざけるな!!」
バン!!
梓「ひっ!」ビクッ
唯「あぁ…あずにゃんいたんだ」
梓「は、はい…」
唯「あいつらと一緒に帰らなかったってことは…あずにゃんは犯人じゃないんだよね?」
梓「……」
唯「ねぇ?そうなんだよねぇ???」
梓「そ…そうです」
唯「…そっか♪あずにゃんはいい子だね、いつまでも私の味方でいてね?」
梓「は…はい…勿論です…」
唯「ありがとうあずにゃん、大好き♪」ギュッ
梓「……」
―帰り道
唯「…ねぇあずにゃん」
梓「…なんですか?」
唯「一緒に手を繋いで帰ろう?」
梓「……」
唯「…だめかな?」
梓「! そ、そんなことないです!」
唯「えへへ…それじゃ…」ギュッ
梓「はい…」ギュッ
唯「あずにゃんの手、柔らかくて気持ちいねぇ♪」
梓「唯先輩の手も柔らかくて気持ちいいですよ」
唯「そう…?えへへ…なんだか照れくさいね、まるで恋人同士みたい♪」
梓(恋人同士…か)
梓「…そうですね」
唯「それよりさ、これからのことについてなんだけど…」
唯「私ね、あいつらに復讐してやろうかと考えているんだ」
梓「復讐、ですか…?」
唯「うん!私のギー太を盗んだんだもん、痛い目にあってもらわなくちゃ」
唯「…当然あずにゃんも協力してくれるよね?」ニコ
梓(私の想像していた恋人同士とは違う…だって、私の想像の中の恋人はもっと素敵な笑顔で笑うんだもん…)
梓(こんな歪んだ笑みを浮かべたりなんかしない…それでも、私は唯先輩が好きで、ずっと一緒にいたいと願ってしまう。だから私は…)
梓「…はい」
梓(この人の願いを叶えよう、いつまでも隣にいる為に)
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/:::::::::リ ヒソ::::::::::::::: ヒソ /::::::/::::::/:::::::::| 第一部
|:::::::: ′ /:::::::「`)イ::::::::::::| 完
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最終更新:2010年02月04日 00:54