この人、10数年前と同じことやってる
私がクスリと笑うとさわちゃん先生はひどいと言った
そういえば、ここまで前と同じことを繰り返しているような気がする
そして着々とりっちゃんの命日に近づいているのも気がついていた
合宿が終わり、私はようやくギターを弾く感覚を思い出し始めていた
しかし、咳の方も少し酷くなっていたような気もしていた
でももうじき学園祭だ!そんなこと気にしていられないよ
確か、前の学祭…ってか今回の学祭は私は風邪を引いて皆に迷惑をかけたんだった
体調管理もちゃんとしなくちゃ!
そう意気込むとまた咳が出た。幸先不安だ
そして
梓「いよいよ来週ですね!学祭!」
あの時は既に風邪は引いていたはずだ、しかし、まだ私は元気だ
そういった意味では少しだけ過去を変えたのかもしれない
ならばりっちゃんも死なせずにすむかもしれない
澪「みんな!頑張ろう」
一同「おーーっ!!!」
澪「いよいよ明日だな…」ガタガタ
私は歌の途中で咳が出るかもしれないのでボーカルは澪ちゃんだ
唯「大丈夫だよ、澪ちゃんなら!」
私のせいでこうなったのに、私が言っても意味無いか
澪「あ、あ、ありがとう」ガクブル
律「まぁ気楽に行こうぜ?緊張しても楽しんでも学祭は一回キリだからな」
紬「そうよ、どうせなら楽しみましょう?」
澪「みんな…」
この二人の言葉は私のとは違って重みがある
私のはただ責任から逃れているだけだ…
その分、ギターは頑張ろう!私はそう決意した
学祭当日
律「いや~案外良い演奏ができたなぁ」
梓「唯先輩!とっても良かったです!」
唯「ありがとう、あずにゃん」ポロポロ
澪「おい唯、学祭は来年もあるんだぞ?泣くにはちょっと早いだろ」
そう、私は少しだけ涙もろくなっていた。皆より年上だから?だが、そんなことはどうでも良かった
過去は変えられたのだ
ならばりっちゃんのことも変えられるハズなんだ
そしてまた時は過ぎ去っていく…
……………
11月27日、日曜日
私は今日で30歳………いや、17歳になる
そして今日、りっちゃんは死ぬはずだ
予想通り、外は雨だった
携帯を見てみるとメールが入っていた、りっちゃんからだ
律『今日、誕生日だったよな?家遊びに行っていい?』
ここは断るべきなのだろうか…
しかし、今日一日りっちゃんを守り抜けばりっちゃんは死なないはずだ
色々悩んだが、結局私はりっちゃんを家に呼ぶことにした
りっちゃんを死なせないために
部屋を降りると、まず憂が私の誕生日を祝ってくれた
今年で三十路な私としては少しだけ複雑な心境だった
両親は今日は帰ってこれないらしい
娘の誕生日なのに帰ってこないとは薄情な親だ
今更ながらそう思った
しばらくするとインターホンが鳴った
唯「私が出るよ」
ガチャ
唯「はーい」
パンッ
唯「うわっ!?」
律「へっへぇ、誕生日おめでとう!」
唯「りっちゃん!」
しばらく遊んでいるとりっちゃんが言った
律「何か腹減ったなぁ」
そら来た、意地でもここは外へは出させないぞ?
唯「憂がねぇ、腕によりをかけて料理作るらしいよ、もちろんりっちゃんの分も」
律「え?まじで?」
ほぉら、食いついてきた
唯「うん、だからもうちょっと待とう?」
律「そうだな!」
よし、まずは順調だ
律「ふぅ、憂ちゃん!ごちそうさまでした!」
憂「お粗末様でした」
律「それじゃあ私はそろそろ」
ここが大勝負だ
唯「りっちゃん!今日は泊まっていきなよ!」
律「え?いや、でも明日学校だし…」
唯「大丈夫だよ!明日早起きすれば」
律「ん~、でも」チラッ
憂「私のことでしたらお構い無く」
ナイスうい!
律「いや、でも悪いからやっぱ帰るわ!ばいばい!」
唯「りっちゃん!!!」
憂「行っちゃったね」
唯「………」
その日の夜、私は泣いていた
唯「まだりっちゃんが死んだって決まったわけじゃないのに………」ポロポロ
涙が止まらない
私は私にできることは全てした
これでもしりっちゃんが死んでもそれはりっちゃんの運が悪いだけだよね?
唯「………」ゴホッゴホッ
唯「………」
唯「…zzz」
ジリリリリリ
唯「うぅ………」
カチャ
唯「知らない間に寝てたのか」
唯「………何か学校行くのやだな」
憂「お姉ちゃん、朝だよ!起きて!」
唯「今行くよぉ!」
……
唯「ん~、結局教室の前まで着いた」
唯「またこの扉が開けられない…」
前みたいにりっちゃんが後ろから肩を叩いてくれないものか…、そんなことを考えていたが思い切って扉を開けてみた
ガラガラガラ
私はすぐにりっちゃんの席を見た、が、誰もいない
唯「ムギちゃん、りっちゃんは?」
紬「まだみたいねぇ」
唯「そっかぁ」
だんだん不安になってくる…
そしてりっちゃんが来ないままチャイムが鳴り、先生が入ってきた
心なしかとても表情が暗く見える
先生「出席を取るぞ~」
先生が名前を読み進めるにつれて不安も高まっていった
ガラガラガラ
律「すんませーーん!!!寝坊しました!!!」
唯「…りっちゃん」
紬「あらあら」
何てあっけないんだ
今までの私の心配を返して欲しいくらいだ
先生「これがお前の望んだ世界なのだろう?」
唯「………え?」
時が止まった…ような気がした
律「私は生きていた、次にお前は何をするんだ?」
唯「何言ってんの?」
紬「あなたが望んだのはこれだけなの?」
唯「確かにりっちゃんが生きてたのは嬉しいけど………」
澪「けど………なんだ?」
唯「澪ちゃん!どうしてここに?」
梓「あなたはまだ何かを望むのですか?」
唯「………」
唯「私、皆と一緒に卒業したいの!」
律「それは都合が良すぎるだろ」
澪「だから望みを叶えるのは嫌だったんだ」
紬「何かを叶えてやれば、何でも叶うと思っている」
梓「あなたは最初は一つしか望まなかったのに」
唯「そんな…、どうして………」
梓「どうして?」
澪「決まっているだろ」
紬「それはあなたが」
律「たくさんの事を望みすぎたから」
澪「確かに当初の望みは叶えてぞ」
梓「ただ知っておいてください、過去は変わらないと」
紬「未来に生きてちょうだい、未来は変わるのだから」
律「だから、いつまでも過去に囚われるな」
唯「ちょっと、意味分かんないよ」
律「私たちの言いたいことは伝わったか?」
澪「決して忘れないで欲しい」
紬「いつでも覚えておいて欲しい」
梓「もう二回目はありませんから」
律「さぁ、目覚めろ」
…
唯「ゲッホ、ゲホッゲホッ」
唯「く、苦しい………」コホッ
唯「そうか私、練炭で自殺しようとしてたんだ」
唯「早く、窓を開けなくちゃ」ゴホッゴホッ
ガラッ
唯「うっ、煙が目に染みる…」
唯「………生きてるんだ、私」
自殺なんて、私にしては思い切ったことしたなぁ
暗闇の中で私はそんなことを思っていた
やっぱり暗闇は落ち着くなぁ
ん?
ちょっと、眩しいよ!
でもこの光、暗闇の何倍も落ち着く………
この光の先には何が…
「早く来いよ!」
ふふっ、今行くよ
「私はここまでだ」
そんな、酷いよ
「唯、お前はちゃんと生きろ!」
でも、私は
「大丈夫だよ唯なら」
うん、分かった。頑張るよ!
「あぁ、ずっと見てるからな」
約束だよ
「あぁ、約束だ、さぁ、行け!」
唯「りっちゃん!!!」
憂「お、お姉ちゃん!」ビクッ
唯「あ、うい」
ここは…、病院か
憂「お姉ちゃん!何であんな危ないことしたのよ!」ポロポロ
唯「あぁぁ、ごめん、憂!ね?ほら、この通り元気だから!」オドオド
憂「もうっ、バカっ!」
唯「えへへ、ごめんねぇ」
……
一年後、11月27日
唯「ねぇ、りっちゃん?私は夢の中でりっちゃんが言ったような人間になれたのかな?」
唯「ちゃんと仕事も頑張ってるんだよ?」
唯「あ、そうだ!この前ね、昇給したんだ!」
唯「あの時はほんとにありがとう」
澪「唯!そろそろ帰ろう!」
梓「先輩!空気読んでくださいよ」
澪「ん?なんだ?」
梓「はぁ」
紬「あらあら、うふふ」
唯「ごめんねりっちゃん、また来年も来るよ」
唯「みんなぁ、待ってぇ!!!」
~fin~
最終更新:2010年02月07日 00:17