さわ子「あら、そう言えば猫ミミの似合う子が居ないわねぇ」

澪「どういう覚え方ですか!?」

律「とりあえず、私らが直接的な原因で無いことはわかったんだけどさ」

唯「気持ちの整理がつくまでお休みするーってあずにゃんが」

さわ子「ふぅーん…」

紬「はい先生どうぞ」

さわ子「ありがとうむぎちゃん。それであなた達はどうするの?」

澪「とりあえずは梓が話してくるのを待とうかと…」

さわ子「まぁ、妥当ね」

律「さわちゃん、顧問として動かないのかよ?」

さわ子「思春期には良くある突発的な悩みでしょ?私が顔突っ込んだって無駄無駄」

澪(面倒臭いだけじゃないのか…?)

さわ子「それに、こういう問題はバンドを組んでいれば偶に起こる事なのよ」

唯「さわちゃん先生もこういう事あったの?」

さわ子「えぇ。音楽性の違いからファッションの対立まで様々あったわ」

律「あー、さわちゃんの変遷を考えれば解る気がする」

さわ子「そのたびにくっついたり離れたりを繰り返して」

澪「むしろ最後まで一緒だったひとが凄いな…」

さわ子「だから良くある事だって、腹を括りなさい」

紬「でも、梓ちゃんはそう言うのとはちょっと違う気がするんですよね」

唯「私もそう思うなー」

澪「確かに。音楽性の違いだったら梓はちゃんと意見を言うだろうし」

律「それに、飛び出したあと泣きながら唯の名前呼んでたのがちょっと気にかかるな…」

さわ子「泣きながら唯ちゃんの名前を呼んでいた…だと…?」

律「急にどうしたのさ、さわちゃん」

さわ子「そうなると話は別になりそうだわ」

澪「あぁ、でも、唯の名前を呼んでたからって唯の事は嫌って無いみたいですよ」

さわ子「何だか良くわからないわね。むぎちゃんもっとお茶とお菓子お願い」

紬「はーい。良い子で待ってて下さいね」

唯「やっぱり私のせいなのかな?」

律「いや、大丈夫だぞ唯。きっと唯の名前が呼びやすかったから唯の名前を呼んでただけだって!!」

さわ子「ん~…でも何かしら唯ちゃんに関係してそうよね?」

澪「例えば?」

さわ子「例えば……やっぱりわからない。あなた達でしっかり解決しなさいね」

律「あぁ!!投げたな!!」

紬「まぁまぁりっちゃん、さわ子先生は私達で解決する事が大事だって言いたいのよ」

さわ子「そうよ。さすがむぎちゃん。今日のお菓子も美味しいわ」

澪「しかしなぁ…検討がつかないと何をして良いのかわからないよ」

律「そうだな。無理やり聞いたって、梓萎縮するかもしれないしな」

唯「やっぱり、あずにゃんに一言謝った方が良いのかな?」

さわ子「それは止めた方が良いんじゃない?」

唯「どうして?」

さわ子「何も解らずに突然謝られたら、馬鹿にされてるって思うかも知れないでしょ?それに…」

律「それに?」

さわ子「それにある一つの可能性だって考えられるもの。ねぇむぎちゃん?」

紬「そうですねさわ子先生」

律「二人とも何を隠しているんだ?」

澪「むぎ、何かわかったのか?」

紬「可能性に過ぎないから、私の中に留めておくわ」

唯「えぇ~むぎちゃん気になるよぉ」

律「言うんだむぎ!!」

紬「内緒です。ね、さわ子先生?」

さわ子「ね、むぎちゃん」

唯「あぁ、二人だけズルいんだ」

澪「そんなに言われると気になって仕方がないよ」

紬「確実だと思ったら教えてあげるから」

唯「絶対だからねむぎちゃん」

さわ子「その前に梓ちゃんにも了承を取らなきゃね」

律「何だよ~もぅ」

紬「さぁさぁ、余ってるお菓子を片づけちゃって下さいな」

唯律「合点承知ノ助!!」

澪「それじゃあ、今日のところはこれで終わりにするか」

唯「ほーい」

律「ほーい」

さわ子「あぁ、美味しいお菓子で生き返ったわ」

紬「今度はケーキにしようと思っているので来れるときに連絡を下さいね、先生」

さわ子「ありがとうむぎちゃーん」

唯律「ケーキ!!やっふー!!」

澪「まったく、私達は軽音部なんだからな…もう」

律「みんなで楽しくがモットー!!」

紬「ふふふ。あ、私図書室に用事があるので、皆さん先に帰ってて下さいね」

唯「りょうかーい」

律「じゃあなむぎ」

澪「また明日」


さわ子「それじゃあ、途中まで一緒に行きましょうか?むぎちゃん」

紬「はい。さわ子先生」

さわ子「しかし、梓ちゃんがねぇ…退部とは大胆なことを」

紬「それだけ梓ちゃんも悩んでいるんですよ。きっと」

さわ子「むぎちゃん一人に任せちゃって大丈夫?やっぱり私も手伝いましょうか?」

紬「大丈夫です。バンド内の事はバンド内でって言ったのは先生ですよ?」

さわ子「そうだけど…」

紬「多分、私が一番適役なんです。梓ちゃんの気持ちを理解出来るのは私だと思いますから」

さわ子「偉いわね」

紬「梓ちゃんに、大事なメンバーに苦しい思いはさせたくないんです」

さわ子「でも、むぎちゃんも無理しないでね?」ナデナデ

紬「はい。ありがとうございます。さわ子先生」

さわ子「それじゃあ、むぎちゃんさようなら。また明日ね」

紬「はい。また明日」


~図書室~

紬「さぁて、頑張りましょうか」

ガラガラガラ

紬「こんにちは、失礼します。図書の返却に来ました」

司書「琴吹さんこんにちは。これから本を選んでいく?」

紬「えぇ。そのつもりです」

司書「それじゃあ一時間ほど留守番しておいてもらって良いかしら?」

紬「大丈夫ですよ。じっくり選べるので嬉しいです」

司書「助かるわ。お願いね」

ガラガラガラ

紬「さてと、どこかしら…」

紬「あの奥の机かしら?」

紬「あ、居た居た」

紬「梓ちゃん?待たせちゃってごめんなさいね?」

梓「……」

紬「梓ちゃん?」

梓「……zzz」

紬「梓ちゃん疲れてたのね。可愛いわ」

紬「でも、梓ちゃん起きて下さい梓ちゃん?」ユサユサ

梓「……!!にゃっ!!」

紬「遅くなってごめんなさい。疲れてたのに待たせてしまって」

梓「あ、紬先輩でしたか。ビックリしたぁ…」

紬「ごめんなさいね」

梓「いえ、大丈夫です。それで、何の用ですか?退部の事でお説教ですか?」

紬「そんなに構えなくても大丈夫よ。今日は少し梓ちゃんにお話があって来てもらったの」

梓「はぁ…それで、何でしょうか?」

紬「うーんとね?もし違ってたらごめんなさいなんだけどね」

梓「?」

紬「梓ちゃんが部活を辞めたいって言ったのは、唯ちゃんが関係しているわよね?」

梓「!?何でそれを!?」

紬「とある情報筋からね」

梓「だから何だって言うんですか!!」

紬「落ち着いて、梓ちゃん。私は梓ちゃんの味方だから」

梓「フーッフーッ!!」

紬(本当に猫みたい)

紬「それで、梓ちゃん。単刀直入に言うけど」

紬「梓ちゃん、唯ちゃんの事が好きよね?」

梓「!?」

梓「そ、それは、唯先輩だけではなくて、律先輩だって澪先輩だって紬先輩だって好きですよ!!」

紬「ありがとう、梓ちゃん。だけど、梓ちゃんは唯ちゃんだけは特別よね?」

梓「それは…」

紬「likeじゃなくてloveの方よね?」

梓「だったら、だったらどうだって言うんですか!!気持ち悪いって言うんですか!!」

紬「だから落ち着いて、梓ちゃん。私は梓ちゃんの味方よ?」

紬「梓ちゃんが背中を押して貰えない恋に苦しんでいるんじゃ無いかって思ったの」

梓「……」

紬「こんな思いを持ってる自分を気持ち悪い何て思ったり、もし知られたら嫌われるかもって苦しんでない?」

梓「私は…私は…」

紬「持ってはいけない感情を持ってしまったと悲しんでない?」

梓「…同情はいらないですよ。私の気持ちなんてわからないくせに…」

紬「確かに私は梓ちゃんでは無いから、梓ちゃんの気持ち何て想像するしかないわ」

梓「……」

紬「だけどね?梓ちゃん。私は梓ちゃんの気持ちは理解出来るのよ」

梓「だから同情なんていらないですと…」

紬「同情なんかじゃないわ。私も梓ちゃんと同じ道を通って来たのですもの」

梓「…えっ?」

紬「私も声を大にして言えない恋をしていたの」

梓「紬先輩が…?」

紬「えぇ、そうよ。世間一般では許されない恋で、誰にも言えず苦しかったわ」

梓「先輩…」

紬「何でもっと、普通な人に恋をしなかったのか?普通の恋が出来ない自分は欠陥品じゃないのか?って悩んだわ」

紬「悩んでも、誰にも相談出来ずに苦しくて」

紬「友達に気持ち悪いって罵られるのが怖くてたまらなくて」

紬「自分は何て最低なんだろうって思ったわ」

紬「諦めよう、諦めようとしてもその人への気持ちは大きくなるばかりで」

紬「いっそ、遠くに離れちゃおうって思ったの」

梓「!!」

紬「でも離れることは出来なくて」

紬「もう、見てるだけで、同じ空間に居れるだけで良いってそう思うようになったの」

梓「…先輩はそれで、それで満足出来たんですか?」

紬「その後は内緒♪」

梓「!?」

紬「つまり、私が言いたいことはね」

紬「梓ちゃん、あなたの恋は確かに背中を押されるものではないし」

紬「むしろ、指をさされて避けられるものかもしれない」

紬「だけどね、その思いは正しいものなのよ?」

梓「…正しいもの」

紬「そう。決して人に笑われていいものでもないし、蔑むべきものでもない」

紬「梓ちゃんが唯ちゃんに抱く気持ちは、稀なものかもしれないけれど、ごくごく自然なものよ」

紬「だから自分を気持ち悪いとは思わないで」

紬「自分をおかしいとは思わないで」

紬「あなたは素敵な恋をしているのだから」

梓「…先輩…」グシュ

梓「せんぱぁぁい!!うわぁぁぁん!!」グスグス

紬「凄く悩んだのよね?凄く苦しんだのよね?」

紬「もう大丈夫。私が相談にのってあげるし、話を聞いてあげるわ」

紬「だからこれからのことは一人で考えずに一緒に考えましょう?」ギュム

梓「はい」ギュム

紬「梓ちゃん?」

梓「?」

紬「いいこいいこ」ナデナデ

梓「…うわぁぁぁん!!」

紬「いいこいいこ」ナデナデ

梓「うわぁぁぁぁぁん!!」

梓「…ヒック…ヒック」

紬「落ち着いた?梓ちゃん」

梓「はい…ヒック…ごめんなさい…」

紬「どうして?」

梓「先輩は私の事を助けに来てくれたのに…ヒック…私は酷い態度をとってしまいました」

紬「気にしなくて良いのよ?仕方のない事だもの」

梓「でも、先輩は私を信じて自分の気持ちをさらけ出してくれました」グスグス

梓「先輩はそこまでしてくれたのに私は可愛くない態度で…」

紬「そんなこと気にしちゃいけません!!それよりも梓ちゃん?」

梓「?」

紬「梓ちゃんは軽音部に戻ってくれる?」

梓「……悩んでいます」

紬「うん?」

梓「唯先輩の側にいて唯先輩と一緒に演奏したいですし、一緒にお茶もしたいです」

紬「はい」

梓「だけど、唯先輩の側にいて苦しくなるのが悲しくて」

梓「いつか唯先輩に自分の思いを押し付けて困らせてしまうのが怖いんです」

紬「そうね。私達の恋は決してそれ以外の人に押し付けて良いものではないからね」

梓「でも、外から見てるだけで満足出来るのかも心配なんです」

梓「唯先輩を恋人として欲しくなってしまったらどうしようって」

梓「唯先輩に嫌われるのは嫌なんです…」

紬「唯ちゃんは決して梓ちゃんを嫌うような子では無いけど、怖いわよね」

梓「はい…」

紬「でも、ここから先は梓ちゃん本人が決めないといけないわ」

梓「先輩!?」

紬「もちろん、話も聞くし梓ちゃんを突き放す訳じゃないの」

紬「ただ、私の出来ることはそこまでで、後は梓ちゃんの意志にそって動かなくちゃいけないわ」

梓「…はい」

紬「せっかく梓ちゃんの素敵な恋なんだから、梓が思う通りに進まないと」

梓「わかりました…でも、相談にはのって下さいね」

紬「さっきも言ったとおり、もちろんのらせてもらうわ」

梓「それから…戻れたら軽音部には戻りたいです」

梓「でも、どうなるかは自分でもわからないのでもうちょっと待ってて欲しいです」

紬「わかったわ。何かあったらいつでも言ってね」

梓「はい!!」

紬「ちなみに言うと、唯ちゃんは梓ちゃんのことを待ってるわよ」

梓「ほほ本当ですか!?」

紬「えぇ。だから、いつでも帰ってらっしゃい」

梓「はい、先輩」グスッ

紬「ほらほら泣いちゃダメよ?そうだ、これから美味しいケーキのあるカフェに行きましょう?ね?」

梓「…はい」

紬「そこで唯ちゃんのどこを好きになったのか、いっぱい聞かせてね?」

梓「先輩…はい///」


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最終更新:2010年01月02日 18:29