こうして!
お姉ちゃんが元気になった頃に演奏を聞かせる事を
約束してお医者様には帰ってもらいました
あとはおねえちゃんの目が覚めるのを待つだけです
唯「すーすー…」
憂「うふふ、お姉ちゃん頑張ったね…」
軽音部の皆さんは解散して
私だけお姉ちゃんに付きっ切りで見ています
猫「にゃあ~」
唯「すーすー…」
憂「お姉ちゃん起きないね~」
猫「にゃあ~」
唯「すーすー…」
憂「ふふ、こうして見るといつも朝寝坊してるお姉ちゃんそのものだよ~」
猫「にゃあ~」ぺろぺろ
唯「むぅ~…」
憂「!!」
唯「ふぁ~…」
憂「お姉ちゃん!」
唯「うぅ…なんだか長い夢を見ていたみたい…」
憂「良かった!手術は成功したんだよ!」
唯「いままでの寝ぼけてふわふわした感じがなくなってすごくすっきりしてるよ~」
猫「にゃあ~」スリスリ
憂「梓ちゃんもずっとおねえちゃんのそばに居たんだよ?」
唯「…?」
唯「あずにゃん…あずにゃんどこー?」
猫「にゃぁ~」ごろごろ
憂「…お姉ちゃん?この子があずにゃんだよ?」
唯「え…?」
猫「ふに~♥」
唯「も…もう!冗談きついよ…あずにゃんって小さくてかわいい人間の女の子だよ…?」ワナワナ
憂「お姉ちゃん…梓ちゃんは…」
猫「にゃあ~?」
唯「そんな薄汚い猫、知らないよ!」
猫「にゃ~」
唯「近寄らないで!」バシッ
猫「に゛ゃっ!!」
憂「!」
唯「あずにゃん…あずにゃんはどこにいるの!?」
憂「お姉ちゃん落ち着いて!!」
猫「にぃ…」
唯「いやあぁぁぁ…!あずにゃあああん!あずにゃああああん…」ぽろぽろ
猫「にゃあ…」
唯「あんたなんか知らないよぉ!!」
猫「…」
憂「梓ちゃん…」
お姉ちゃんは突然の現実を受け入れる事が出来ませんでした
ずっと小柄でポニーテールで大好きな後輩だと思っていたのが猫だったんです…
憂「でもその子はお姉ちゃんの事ずっと心配してて…ずっと傍に居たんだよ?」
猫「にゃあにゃあ…」
唯「いやだ…気持ち悪いよぉ!はやくそんな猫どっかに捨てちゃってよ!」
猫「にゃあにゃあ…」ぽろぽろ
唯「そもそもここは病院だよ?猫なんて不潔だよ!!」
憂「お姉ちゃん…」
猫「にゃあにゃあ!!」
唯「出て行ってよ!」
猫「みゃっ!!」
お姉ちゃんは枕を猫に投げつけました
猫はそのまま病院から逃げ出しました
憂「…」
唯「もう疲れちゃったようーいー…ちょっと眠るね…」
憂「うん…私は皆に連絡するね」
唯「ありがとう…」
~~~
――輩――唯先―-
唯「ほぇ?」
梓「唯先輩!」
唯「あっ!あずにゃん!」
梓「私を置いていくなんてひどいです!」
唯「えっえっ?」
梓「私の事嫌いになっちゃったんですか?」グスッ
唯「あわわ、そんなわけないじゃん!あずにゃんは大切な後輩だよ!」
梓「唯先輩…私は唯先輩が大好きです…」
唯「私もあずにゃん大好きだよ~たった一人の大事な後輩だもん♪」
梓「もうっ…」
唯「あずにゃんみたいな後輩が出来て私は幸せだよ~」
梓「私も幸せです…」
唯「あれ…あずにゃんがだんだん薄く…」
梓「――ずっとずっといっしょですよ…唯先輩…」
唯「待って!待ってよあずにゃ~ん!!」
ガバッ!
唯「夢…」
唯「あはは…そっか…そうだよね…」ぽろぽろ
唯「あずにゃんは…」
私は気付いてしまいました
中野梓なんて最初から存在しない、後輩の欲しい私が生み出した架空の人物だったのです
ちょうどそれが脳血腫の病気と重なって猫を後輩と思い込んでいただけなのです
唯「あっ!」
カーテンの外にはまたあの薄汚い猫がいました
唯「ずっとこっちを見てる…あっちいっちゃえ!」
私はシッシッという動作をした後病院のカーテンを閉じるのでした
猫「にゃあ…」
翌日、りっちゃん達がお見舞いに来てくれました
律「唯!調子はどうだー?」
唯「りっちゃん!もういますぐにでも退院できそうだよー」
憂「お医者様も治りが早いって褒めてくれてるんです、後遺症も無いみたいで…」
唯「これならいますぐにでもギター弾けちゃうよー」
唯「あ、でも手術で髪の毛そっちゃったから、まだ短髪なんだけどね」
紬「短髪の唯ちゃん…いけます!」
澪「そういえば梓はどうしたんだ?」
唯「…」
憂「澪さん…その事にはあまり触れないであげてください…」ヒソヒソ
澪「あっごめん…」
律(唯の奴、表面上は元気そうだけど、…)
紬(やっぱり梓ちゃんが猫だったのがショックみたい…)
……
ザー
憂「凄い雨だねー」
唯「うん…」
猫「…」
唯(あの猫ずっとあそこにいる…)
猫「にゃあ…」
――ずっとずっといっしょですよ…唯先輩…
唯(ううん、あの猫はあずにゃんじゃないんだよ…)
唯(あずにゃんなんてこの世界にはいないんだよ…)
唯(世界のどこを探したって中野梓は居ない…)
唯(…)
唯(あずにゃんが傍に居てくれるならずっと夢を見てればよかったのかな…)
唯(いままでの事全部夢だったんだよね…)
唯(あずにゃんが入部してきてから…)
唯(あずにゃんが猫耳つけたからあずにゃんって命名したのも…)
唯(ギターを教えてくれたのも…いっしょに合宿に行ったのも…)
唯(いっしょに泊まったのも…いっしょに出かけたのも…)
唯(うぅ…)ぽろぽろ
そして退院の日がやってきました
唯「先生、お世話になりました…」
憂「本当にありがとうございました」
律「これで晴れて唯完全復活だなー」
澪「これからは体の異変に気がついたらすぐに言えよ」
唯「うん、本当に心配かけてごめんね…」
猫「…」ぺたぺた
唯(ずっと後を追いかけてきてる…)
唯「…」キッ!
猫「にゃ!!」
私が睨み付けると猫は道端の茂みに隠れました
澪「唯…」
唯「あんな猫知らないもん!」
猫「にゃあ…」ぽろぽろ
…
澪「なあ唯…あの猫の事覚えてないのか?」
唯「何の事だかわからないよ!」
律「お前とあの猫は凄く仲が良かったじゃないか…」
紬「ええ…あの子も凄く唯ちゃんに懐いてたのに…」
唯「わ…私と仲良かったのはあずにゃんだもん!」
澪「そ…そうだよね…変な言ってごめん…」
紬(まるであの頃の唯ちゃんと正反対ね…)
律(これは放っておいたほうがいいかもな…唯の問題だし…)
律「ここで解散だ!唯」
唯「え?」
律「唯は退院したばっかりなんだし、今日はもう帰ってゆっくり休め」
唯「え…大丈夫だよ~」
紬「病気を侮っちゃいけないわ!」
憂(皆さん…気を使ってくれてるんだ…)
憂「お姉ちゃん、今日は早めに帰ろ?」
唯「う~ん…そうだよね…わかったよ~」
律「よし、じゃあ唯また学校でな!」
澪「憂ちゃん、唯の事頼むね」
憂「はい!」
紬「部活の時は退院祝いにおいしいお菓子を用意するわね~」
唯「うん!皆ありがとね~」
そして皆さん解散しました
猫「にゃあ…」とことこ
憂(やっぱり梓ちゃんずっとついて来てる…)
憂(本当にお姉ちゃんのことが大好きなんだね…)
憂「お、お姉ちゃん!」
唯「わ、どうしたの?」
憂「ちょっと忘れ物しちゃったみたいなの…」
唯「えぇー!憂ったらうっかりさん!じゃあいっしょに取りに戻ろうか?」
憂「ううん、お姉ちゃんは先に帰ってて?一人で大丈夫だよね?」
唯「大丈夫だけど… 」
憂「家の鍵渡しておくから先に帰ってて!」ダッ
唯「あ、ういー…」
そうして私は一人になってしまいました
唯「…」
猫「…」とことこ
唯「…」チラッ
猫「! 」ビクッ
まるでだるまさんが転んだみたいです
私が振り向くと物陰に隠れ、こっちの様子をずっと伺ってくるのです
唯(私が怖いならついて来なければいいのに…)
猫「…」
唯「…」
猫「にゃあ…」
唯「…」
唯「…」てくてく
猫「…」とことこ
唯(そういえば…お腹すいたな…)
唯(お金もあるし…)
唯(アイスでも買って帰ろう…)
唯(300円…これならギリギリパナップが買える…)
猫「…」
唯(スーパーに行こう…)
唯「…」てくてく
猫「…」すたすた
スーパー!
店員「いらっしゃいませー!」
唯「…」
店員「あ!お客様困ります…店内はペット入店禁止です」
唯「え…」
猫「にぃ…」ふるふる…
唯「あ…」
唯(追い返しちゃえ…)
猫「…」ふるふる…
そのとき、
そのときなぜかその薄汚い猫の姿がある一人の女の子と重なったんです
「私を置いていくなんてひどいです!」
唯「え…」
「私の事嫌いになっちゃったんですか?」グスッ
唯「…」
店員「お客様?」
唯「ごめんなさい、今日は帰ります」
猫「…」
唯「…」
スーパーの前には屋台が開いていました
唯(1個150円…)
猫「…」
唯「…」
唯「えへへ…」
唯「いっしょに鯛焼き食べよ?あずにゃん」
猫「!」
猫「にゃ…」ぽろぽろ
猫「にゃあ~♥」
終わり
最終更新:2010年02月10日 01:38