キキィッー!

律「はっ…はっ…」タタタッ

指揮官「こ…これは…田井中総理じゃないですかっ!!なぜこちらへ?危険ですっ!!離れて下さいっ!!」

律「うるせぇっー!!」タタタッ

機動隊「「………」」ポカーン…

指揮官「な…何をもたもたしているっ!!総理を護衛しろっ!!」

機動隊「「は、はいっ!!!」」

律「はぁ…はぁ……」

ビルの中は外と違い妙に静かだった…

澪たちはこっちの様子を伺っているっていうのか?



―「澪…澪!」

扉の向こうから聞き慣れた声がする……

バタンッ

律「はぁ…はぁ…和っ!!」

和「律っ!!み…み…澪が…澪が…」ポロポロ

泣き叫んばかりの声を出す和の隣には……





もはや虫の息の音ほどになっている澪がそこにいた……


律「み……澪……?」

澪「…………」

律「澪…何で…何でだよっ!!何で私より先に行こうとするんだよぉっ!!」

律「こんな再会ってありかよぉっ!!おいっ!!聞いてんのかよぉ、澪っ!!」

澪「………とぅ……り…つ…」

律「澪…今何て…?」









澪「……ありがと……律……」にこっ


その笑顔は最後の灯火かのようにすぐに消えてしまった



~~~

???

「ムギちゃ~ん、みんなまだ来ないし、二人で何か遊びをしよ~よ~!」

「あら、いいわね~何をする?」

「んーとねーえーとねー…」

ガチャッ

「「!?」」

「唯とムギか…早かったな…」

「澪ちゃ~ん!待っていたよ~!」ダキッ

「わっ…こらっ!!いきなり抱きつくなっ!!///」

「あらあら…ふふふ…」

「澪ちゃんも来たことだし、律っちゃんとあずにゃんには悪いけど、先にお菓子食べちゃおうよ!」

「そうね…そうしましょ♪」

「盛り上がっているところ…悪いんだけどさ…」

「ん?どったの澪ちゃん?」

「二人はまだ…ここにいるべきじゃない…ここに来るのは早すぎるっ!!戻るべきところに早く戻るんだっ!!」

「………」

「私のせいで二人はここに来ているんだ…せめて二人だけでも戻れるようにする義務は私にはあるっ!!」

「澪ちゃん……」ギュッ

「! ゆ…唯……///」

「澪ちゃん…苦しかったんだよね…ごめんねぇ…」

「唯ちゃん……」

「絶対寂しいもん…一人なんて…手を握りあえないし……」

「………」

「今こうして澪ちゃんの気持ちが分かり合えるのも…手を握って気持ちがつながっているからなんだよ…」

「ごめん……本当に二人とも……ごめん……」


「はい♪」サッ

「……!?」

「紅茶よ、澪ちゃんが前気に入ってくれたものよ♪」ニコッ

ズズッ

「…あったかい……」

「あったかあったか♪」

「ふふ…あったかあったか♪」

失って気づいた…

こんなあたたかさが私の周りには実はあったのだと…


「くっ……うぐっ……グスッ…」

「澪ちゃん…泣いてるの?」

「な…泣いてなんかないっ!!///」

「大丈夫よ♪律っちゃんと梓ちゃんはまだ来てないのだから…」

「まったく…二人とも…」

「アハハ~」

「うふふ♪」


「でもね~ムギちゃん…」

「ん?何だよ?唯…」

「そうね~唯ちゃん…」

「む…ムギまで何だよ?」











「どんなに離れていても私たちにはっ!!」

「放課後ティータイムというバンドの絆があるのよっ!!」


~~~


病室・ICU

キュィーン…バスンッ

憂「お姉ちゃん…どうしてなの…どうして私を一人にするのよっ!!お姉ちゃんの意地悪っ!!」

梓「憂……」

医師「もう電圧は上げれないのかっ!!」

看護師「もう最大値なんですっ!!」

憂「お姉ちゃん…先に行ったりしたら…私…お姉ちゃんのこと…嫌いになるよ…いいの?お姉ちゃん…嫌なら目を覚ましてよっ!!お姉ちゃんっ!!」

梓「う…憂……」

医師「くっ…残念ながら…最善を尽したのですが……」

梓「!?そ、そんな…唯先輩…嘘ですよね……?」

医師「……21:34…九時間という長い時間…平沢唯さんはよく闘ってくれました…」

梓「……嫌です…そんなの…嫌です…唯先輩…いつか放課後ティータイムのメンバーで集まろうって言ってたじゃないですか…」

梓「約束を破って行ってしまうなんて…最低ですっ!!約束は守って下さいよっ!!グスッ…」












ピピッ…ピピッ…

ピピッ…ピピッ…

憂「お姉…ちゃん…?」

梓「唯先輩…?」

医師「奇跡だ…本当に奇跡が起こったんだ…人工呼吸に切り替えるっ!!呼吸器をっ!!」

看護師「はいっ!!」




梓「唯先輩…信じてましたよ…グスッ……」

憂「うっうっ…お姉ちゃぁん…大好きだよぉ…ありがとぉ……」




病院

『手術中』フッ…

ガラッ

斎藤「先生!紬さまは…!」

執刀医「急所の近くに弾丸がありましたため苦戦しましたが…何とか成功しましたよ…」

斎藤「あぁ…ありがとうございます…何とお礼を申し上げれば良いものやら…」

執刀医「頑張ったのは彼女ですよ。私はただ、彼女の努力に手助けをしただけです…」スタスタスタ

斎藤「うぐっ……ふぐっ……」



救急車内

律「澪っ!!しっかりしろっ!!お前はそんな弱っちい奴じゃないだろっ!!」

救命士「止血しましたが…輸血が間に合わない…」

律「なぁっ!!もっと急げよっ!!澪が死んでしまうんだぞっ!!おいっ!!急げよっ!!」

救命士「落ち着いて下さい!こちらも最短ルートかつ最速で病院に向かっておりますから!」

和「澪……澪……」




別病院

『手術中』パッ

律「澪…頼むから…死なないでくれ…」

和「澪……」

―「総理!こんな所にいたのですか!」

律・和「!!」

副総理「心配しておりましたよ!まったく…真鍋補佐官まで…」

和「ごめんなさい…」

副総理「…?誰の手術ですか?」

律「そ…それは―」

和「秋山澪…今日一連に起きたテロの首謀者…」

副総理「ええっ!?」

和「でも……私たちの親友でもあるんです!」

副総理「(なおさら)ええっ!?」


……

キャスター『ニュースです。本日一連して起きた閣僚テロの被害を受けた平沢厚労大臣の意識が回復、琴吹財務大臣の手術が成功したもようです』

キャスター『今回のテロにつきまして、警視庁はテロ集団を摘発。摘発に際し負傷した首謀者が回復してから逮捕に移す方針です』

コメンテーター『いやぁ…まさか、こんな立て続けに閣僚が狙われますとは…分からない世の中ですねぇ…』

キャスター『戦後史上初のテロ事件の終焉を迎えることができ、一安心と言えば一安心ですが…』

コメンテーター『今回のテロは国民が巻き込まれなかったものの、内閣の立て直しに時間が掛かると思われます』

キャスター『これからの田井中総理の頑張りに期待したいと思います。次のニュースは…』


……


病室・ICU

唯「あはは!律っちゃんマスコミから応援されているよ~!」

憂「そうだね!でもお姉ちゃんも早く退院できるように頑張ってね!」

唯「ガッテンです!」ビシッ



数日後・病室

バタンッ

和「………」

澪「………」

和「…意識…戻ってるんでしょ?」

澪「バレちゃったか……」

和「当たり前よ…そんなことをしても裁判から逃れられないわよ…」

澪「うん……」

和「今さらだけど…怖いの…?」

澪「うん……」

和「もう…私よりも裁判に慣れているかと思っていたのに…クスッ」

澪「………」

澪「でも…もう良いんだ……」

和「………」

澪「私がやってきたことは決して許されないこと…それを特別に償うことができるんだ……」

澪「それなりの覚悟はある…全部正直に話すつもりだ…」

和「その調子よ…澪!頑張らないとっ!澪が償えるよう、応援しているわっ!」

澪「うん……今私にできる精一杯のことをしよう!」



同じセリフを誓ったあの日と違って今の私の心は決して重くない…

そうか…私は和に対して求めていたことはこのことだったんだ……

今やっと気づけた気がする…


ありがとう……和……





公判62日目

訴因変更などもあり、審理の長期化、異常とも思える公判日数…

3年近くもかかった……

もはや私の人生の大半は、裁判に費やされたと言ってもいい…

そう…私はこのくだらない、裁判というやりとりでピエロを演じてきたのだ…

だが、今は心が軽い…


裁判官「主文、被告人秋山澪に8年3月の禁錮に処す」



!?


私にしては軽い刑ではないか……?


前科の仮釈放の取消しを含め、
他に爆発物取締罰則第1条違反、騒乱、殺人、監禁、住居侵入などを首謀したのだ…

それらをを鑑みたら、死刑か検察側が主張する無期禁錮が妥当だというのに……


裁判官「この判決は、あなたの裁判に対する積極的な態度から出たものです。
    裁判は見せしめだけのものではありません…
    この裁判はあなたの更生のためでもあります…
    あなたにはまだやり直すことが出来るのです…
    この判決のように、あなたの頑張り次第であなたの未来はより良いものとなるで    しょう…頑張りなさい……!」


自然と笑みが出てくる…

澪「はいっ…!」

裁判官の顔を覚えておきたい…なのに涙腺がゆるいせいか見えない……

裁判官「良い返事です…!」ニコッ

カンッ…カンッ…


生まれて初めて見たあったかい裁判であった…




数年後…

澪「………」

看守「手紙だ!」

澪「あっ!はい!」

看守「今回はいつも以上にあるなぁ…紙と鉛筆を用意するか?」

澪「あ、はい!お願いします!」

カサガサ…

澪(和からだ…)

『月一の手紙ももう数十回もやっているのね…
 元気にしているかしら?私たちは相変わらず元気にしております。
 律の内閣ももう安定していて正直ここまで持つとは思わなかったわ…(ここ律に内緒ね)
 面会が出来るまでまだ時間はかかるけど、面会出来る日を楽しみにしているわ。
 本をまた提供するね。これで寂しさを紛らわしてね!
 ………
 ………
 刑期が終わること、澪のこれからを祈って…
 あなたの親友 真鍋和より』

澪(和……いつも月一に本を数冊送ってくれるよな……)

澪(あっ…これ唯の手紙で憂ちゃんが気に入っていると言ってた本だ…すぐ読もうと…)


澪(次の手紙は…律だ…忙しいはずなのに大丈夫かよ……)


『お~す!澪!元気にやっているかー!美人総理律っちゃんさまからの手紙だー!
 ところで、私の支持率が上がったんだぜー!ついに7割を突発!
 澪にも見せてやりたかったぜ!くっー!』

澪(あいつ…前の手紙見てないな…刑務所でも新聞は読めるのに…)

『しかーし!自慢はそれだけじゃなーい!この前、国連でカッコ良い演説を披露したら、大喝采を浴びたぜ!
 もしかしたらノーベル平和賞?だったりしてな!』

澪(調子に乗ってるな…まぁ、あの演説は本当に良かったからよしとするか…)

『それよりもさ、澪も世界に目を向けて見ろよ!本だけじゃ分かんねぇことだらけだしさ!
 グローバルを感じてみろよ!出所したすぐ私の所に来い!
 律っちゃん総理がグローバルというものを体感させてやる!』

澪(律……)




私は何度も安堵した。
律を殺そうとして失敗したことに…

あの時もし成功していたら、今こうして律と文通をすることすらなかったのだから…

あの時の自分が本当に怖かった…

だが、今は律からの手紙がある…

あったかい…

これが親友なのだろうか…

私がどんなことをしても受け入れてくれる仲間なのだ…

こんな大切なことに気づくのに、時間がかかりすぎてしまったのだな…


澪(出所したら、律とどこに行こう?)

澪「ふふ…細かいことは後で考えよう…今私に出来る精一杯のことをしよう!」

私の胸の高鳴りはまたおさまる気配がしなかった…




終わり



最終更新:2010年02月12日 01:19