唯「うんたん……?……うんたんうんたん……」

「うんたんうんたん」

唯「うんたんうんたん」パンパン

唯「澪ちゃんとりっちゃん……。それとお姉ちゃん」

「えへへ、よく思い出してくれたね」

唯「澪ちゃんとりっちゃん、今は?」

「唯ちゃんと同じ桜高だよ。軽音部で唯ちゃんを待ってる」

唯「軽音部?軽い音楽ってことは口笛とかカスタネットができればいいのかな?」

「え!?うーん、そうだよ!」

唯「そっか!よーし!」



後日 音楽室

ガチャ

律「みんなー!新入部員を連れてきたぞー!」

澪「本当か!?」

紬「歓迎いたしますわ~」

唯(お姉ちゃんの嘘つき~……!口笛とカスタネットができれば大丈夫って言ってたくせに……)

律「ムギ!お茶の準備だ!」

紬「はい~」

律「ささっ、座って座って!」

唯「あ、あのぅ……はい……」

澪「あ、あれ?」

唯(この子が澪ちゃん。黒髪ロングが特徴的で泣き虫で……)

律「お、澪も気付いたかー!この子は前に職員室でプリントをばら撒いたトロ……ドジっこちゃんだぜ!」

唯「久しぶりだね、澪ちゃん」ニコッ

律「あれ?二人はもう知り合いか~?」

澪「いや、私も職員室で会っただけだけど……」

律「ってぇことは、部員の名前を予習してきたんだな!さすが平沢さん!」

唯「い、いやぁ……それほどでも///」

唯(私達は会ってるんだよ、りっちゃん。……そんなことより)

律「ま、そんなことよりケーキでも食べて食べて!」

唯(やっぱりギターなんてできるわけないよ……。私はカスタネット専門なんです……みんなに迷惑かけたくないし)

唯「あ、あの!」ガタッ

律「ん?どしたー?」

唯「じ、実は軽音部に入部するのやめさせてくださいって言いに来ました!」

律「へ?」ポカーン

唯「私ギターなんて弾けないし、軽音部ってもっと簡単なことやると思ってて……」

澪「そんなの大丈夫だよ!私も少しはギター弾けるし、教えられることは教」

律「そっかぁ。できないならしゃーないな」

澪「え……?」

紬「そうね。無理に引きとめるのも悪いし」

澪「ちょ、ちょっと待てよ……」

唯「本当にごめんなさい……それじゃあ」

唯(ごめん……。澪ちゃん、お姉ちゃん)

律「じゃあ気を付けて帰ってね~」

唯「うん、ありがとう」

紬「良かったら、またお菓子を食べにきてね」

唯「わかったぁ。ありがとね~」

澪「ちょっと待って!」

律「お?どうしたー?澪」

澪「よ、良かったら私達の演奏だけでも聴いて行かないか?」


唯(澪ちゃんとりっちゃんの演奏……か。あの時のうんたん以来だ)

唯「うん、私も聴きたいな。澪ちゃん達の演奏」

律「どうしたんだよ澪ー。そんなに必死になって」

澪「逆に何でお前はそんなにあっさり引き下がるんだよ!軽音部が廃部するかどうかの瀬戸際なんだろ!」

唯(澪ちゃん、やっぱり今でも……)

律「そりゃあ、そうなんだけどさー。平沢さんギターできないって言うし、ムギの時に無理に引きとめたら可哀想って言ったの澪だろ?」

唯(カスタネットしかできまへん)

澪「ぐ……、そうだけど……」

紬「それに、他にギターができる子が入部するかもしれないじゃない?ねぇ、りっちゃん?」

律「そそ。慌てない慌てない。一休み一休み」

唯(私のせいで揉めてるみたい……)

唯「あのぅ……」

澪「あ、ごめん……」

唯「えーっと……。演奏してくれるんじゃ……」

澪「そうだな。いいだろ?律、ムギ」

律「まあ、別にいいけど」

紬「私も、二人がそう言うなら」

澪「平沢さん、私達まだまだ下手っぴなんだ。でも平沢さんのために心を込めて演奏するから……」

唯「うん、見てるよ。澪ちゃん」

澪「準備はいい?」

律「いつでもOKだぜ!」

紬「私も!」

澪「……」

律「澪?」

澪「あ、ごめん。私もいつでもいいぞ」

唯(頑張れ!みんな!)

律「じゃあ行くぞー!1、2」

~♪

~♪

――――――――――――
――――――――
――――
澪「ふう……」

唯「わぁー!」パチパチパチ

律「へへへ、どうだった?」

唯「なんて言うか、すっごく言葉にしにくいんだけど……あんまりうまくないですね!」


律「バッサリだー!」

唯「でもでも、みんなが音楽が大好きなことはわかったよっ!」

唯(澪ちゃんもりっちゃんも、あの時からずっとずっと音楽が大好きだったんだね)

律「だ、だろぉー!?私達の演奏は真心勝負なのさ!」

唯「私何にもできなくて、きっと下手っぴだけど……、私もみんなといっしょに演奏がしたい!」

澪「私も平沢さんと一緒に演奏したい。いいよな?律」

律「んー、まあ澪が言うならいいか。ちゃんとギター教えてやってくれよ」

澪「わかってる。良かったな、平沢さん!」

唯「ありがとう澪ちゃん。また助けられちゃったね。えへへ」

唯(うんたん仲間再結成だね。澪ちゃん、りっちゃん)


――――――――――――

学園祭当日 音楽室

さわ子「これがその衣装です!」

律・澪・紬・梓「ん?」

唯「失礼しまーす……///」

律「唯!」

澪「来てたんなら真っ先にここに来い!」

梓「みんな心配してたのに……」

―――――――――――
――――――――
――――

唯「ギ、ギー太がぁぁぁぁあああああ!?なぃいいいいいいいい!?」

律「ば、ばかたれー!」

唯「ごめんみんな!やっぱり私、ギー太と一緒にライブに出たい!ギー太も軽音部の一員だもん!」

律「ふふ、わかってるって。行ってこい」

澪「唯とギー太が来るまで私達がなんとかする」

梓「絶対間に合ってくださいね!みんなと一緒じゃなきゃ嫌ですからね!」

紬「唯ちゃんのことを信じて待ってるわ」

唯「ありがとうみんな!行ってくる!」



講堂

アナウンス「これより、軽音楽部・放課後ティータイムによるライブを開始します」

律「1、2、3!」

~♪

澪「ふでペン FU FU~♪ふるえる FU FU~♪」

澪「はじめてキミへの GREETING CARD♪」


~♪

ねえ、私。

律にイジメられて、泣いてばかりだった私。

心配しなくていいよ。

今は人前で演奏することも、唄うこともできるようになったよ。

あの時、お姉ちゃんに会ってなかったら、きっとこんなことできなかったと思う。

お姉ちゃん、どこかで私を見てくれていますか?

去年の学園祭以来会ってないけど、なんだかずっと側にいてくれたような気がします。

お姉ちゃん、ありがとう。

~♪


~♪
ねえ、私。

一人ぼっちで、音楽が大嫌いだった私。

心配しなくていいよ。

きっと音楽が好きになるから。

大好きな先輩達と、楽しい演奏ができるから。

あの時、軽音部を辞めなくて本当に良かった。

お姉ちゃんの言葉があったから、こんなに楽しく演奏できてるんだよ。

ありがとう、お姉ちゃん。
~♪


~♪
ねえ、私。

友達がいなくて、寂しい思いをしていた私。

心配しなくていいよ。

何よりも大切な友達が、たくさんできるから。

先生。

今は毎日、友達のためにお茶を入れています。

きっと今の私は、先生よりお茶の入れ方がうまくなってると思います。

いつでも飲みに来て下さいね。
~♪


~♪
そういえば子供の頃、近所の公園で、変なねーちゃんに会ったな。

確かカスタネットをやったらアイスを奢ってくれて……。

ん?奢ってもらってないんだっけ?

ちきしょー、忘れちまった。

もしどこかで会えたら、奢ってもらお。

って、なんでこんな時にこんなこと思い出してんだ?……変なの。
~♪


~♪
ねえ、私じゃない私。

キミは私達がめぐり合うように、ずっと頑張ってくれてたんだよね?

何をしていいかわからなかった私に、道を示してくれたよね。

キミのおかげで、最高の仲間に出会えたよ。

ねえ、私もキミに何かしてあげたいよ。

何か恩返しがしたい。

私にできること、ないかな?
~♪



体育館

バーン!

憂「お姉ちゃん!」

唯「憂!ここへ来てやっと出番だね!ピース!」

憂「え?お、お姉ちゃん頑張って!」

―――――――――――
――――――――
――――

唯「ここが、今いるこの講堂が、私達の武道館です!」

唯「最後まで思いっきり唄います!ふわふわ時間!」

~♪

ジャジャ、ジャジャ、ジャーン

唯・澪・律・紬・梓「けいおん!サイコー!」



「ふふ」

「やっぱり私がいないとダメだね~」



後日 音楽室

澪「変なこと言うけどさ、みんなは唯にそっくりな人に会ったことがあるか?」

律「なんだよそれ。ホラー映画か?」

澪「いや……うまく言えないんだけど……」

梓「あります」

澪「梓!?」

梓「多分だけど……。アレは唯先輩であって唯先輩じゃないって言うか……」

梓「とにかく私はその人のおかげで、音楽を好きになれたんです」

紬「私も会ったことがあるわ」

澪「ムギも!?」

紬「私はその人に友達の素晴らしさと、お茶の汲み方を教えてもらったの」

律「へ~、ムギのお茶汲み師匠はその唯っぽい奴だったのか。んで、澪は?」

澪「私は……」

律「どうした?」

澪「律にいじめられてるところを助けてもらった」

律「……。へー……」

澪「思い出したらムカついてきた」

律「おいおい!もう時効だろ!?それに今は散々私をいじめてるじゃねーか!」

澪「律が変なことばっかりするからだろ!」

紬「唯ちゃんは?その人と会ったことない?」

唯「ああ、あるよー」

律「唯にはどんなエピソードがあるんだ?」

唯「エピソードって言うか……」

唯「ありすぎて何を言えばいいかわからないな~」

澪「え!?そんなに会ってたのか!?」

唯「うん。だって時々、家にご飯食べに来てたし」

澪「ええ!?その人は今どこに!?」

唯「さぁ?そう言えば学園祭以来ぱったりと来なくなっちゃった」

梓「あの人は一体何者なんですか!?」

唯「えーとね。あれは私の」

澪「やめておかないか?」

唯「え?なんで?」

澪「何かそれを聞くと、一生あの人に会えなくなる気がするんだ」

唯「そう?」

梓「そうですね。きっとあの人は、私達をめぐり合わせる妖精か何かだったんですよ」

唯「いや、あれはね……」

律「ぷっ、なんだよそれ」

紬「なんとなく澪ちゃんの言うことがわかるかも。それよりお茶のおかわりはどう?」

澪・律・梓「いただきます!」

唯「……」

唯(まあ、いっか)


……

ガシャアアアアン

「ふぃー。ただいまー」

唯「おかえり」


「ごめんね~おばあちゃん。本当はちょっと見てるだけのつもりだったんだけど、澪ちゃんがいじめられてるのを黙って見てられなくて……」

唯「いいよ。でもそのせいで随分苦労したみたいだね」

「私のせいで危うく未来が変わっちゃうところだったからね!さすがに焦ったよ~」

唯「ふふ、お前は私と違って頭がいいから、タイムマシンとか色んなモノを発明するね」

「私の発明品で、私が見えてるものがおばあちゃんにも見えてた?」

唯「うん。見えてたよ。若い頃のみんな、可愛かったなぁ」

「今は会うことすらできないもんね」

唯「……」

「どうだった?数年ぶりの友達は?」

唯「言葉にできないよ。もう一度みんなに会いたい」

「何言ってるのさ!みんなの分まで、おばあちゃんには元気でいてもらわないと!」

唯「そうだね」

「ね、今度はおばあちゃんの大学時代の友達を見に行きたい!」

唯「さすがに疲れたよ。今日はもう休もうよ」

「ちぇ、つまんないのー」

唯「ふふ、時間はたっぷりあるでしょ?私もまだ死ぬつもりないし」

「もう!縁起でもないことを!」



おしまい!



最終更新:2010年02月13日 02:47