一方。

澪「♪~」ゴホッ

唯「♪~♪~」

澪に加えて、唯も弦楽器を手に取り、ともにうたっている。
憂と聡は、唯達のすぐ目の前、体育座りをしながら二人の演奏に聞き入っている、
というかすっかり骨抜きにされてしまっている。

聡「/////」ポー

憂「オネイ…チャン…////」

澪(ちょっと喉が辛くなってきたな…)

唯「♪~♪~」


唯「!」

唯が何かに気付く。

唯「みおちゃん!りっちゃんたちがきたよぉー!」

澪「本当か!?」

憂「あっ!?」

澪「唯っ迂闊だぞ!憂ちゃんが正気に戻ったみたいだ!」

唯「えっ?えっ??」

憂「こんなお馬鹿な手に引っかかるなんて…デモオネイチャンカワイイ////」

憂「ハッ…いけないいけないっ!!」

聡「/////」ポー

憂「聡君正気に戻ってっ!」

バシイッ!バシッバシッ!
憂は聡の頬を数回強くひっぱたく。

聡「い、いたひ…」

憂「武器をもって立ち上がって!
  すぐに退却するよ!」

聡「!!?」

澪「唯、"ヤス"を取れ!」

唯「らじゃーっ!」

澪が巨岩の隙間から何かを取り出し唯に投げ渡す。
唯愛用のヤスだ。続いて澪も黒曜石製の長槍を取り上げる。


聡「おわっ!?」

次の瞬間には、澪と唯の武器は聡の首筋を捕らえていた。

聡「あっ…」

さわ子「はーい。実戦だったら頚動脈切断されてるわ。
    聡君、戦死。」

唯「さわちゃん!?」

さわ子「私のことは気にしないでねー」

憂「クッ…役立たず!!」

聡「えっオレっすか!?オレのことっすか!!
  憂さんだってさっきまで…」

憂「うるさいよっ///」

憂「先生!?死者の武器をとっても大丈夫ですか!?」

さわ子「ええ、いいわよぉ。」

憂は聡の右手から銅鉾を奪い取る。

聡「あっ…」

右手に銅鉾、左手に七支刀をもって唯たちから距離をとる。
更に背中にはあの大盾を背負っている。

律「みおー!ゆいーー!!」

梓「到着です!」

紬(唯ちゃんと澪ちゃん妖精さんみたい////)ハァハァ

憂「ふふ…ウフフ、律さんたちまできたってことは
  和さんもやられたようですね?」

律「ああ!和は私らが倒した!」

梓「えっなムググ」

紬は梓の口を片手で封じる。

憂「?」

憂「まあいいです。」

憂「そうだよね、白兵戦では長い武器のほうが有利だし。
  律さんたちは長槍、おねいちゃんが銛(もり)か…」

律「よし、澪と梓は弓をとれっ!!」

憂「そうはいきません。」

憂はとっさに駆け出し…

梓との間合いを詰める。

梓「えっ…」

ほんの一瞬の後には
梓の両首筋には左右から銅鉾と七支刀が突きつけられていた。

さわ子「はい、あずさちゃん死亡。」

梓「そんな、あっさり…」

憂「梓ちゃんたちも迂闊に近づきすぎだったよ?」クスッ

憂「さて、次いきます。」

律「かっ囲め!!」

澪以外の三人が憂に襲い掛かる。

憂は銅鉾を薙いで律と唯を後方に退散させ、
七支刀の枝の一つで紬の槍を受け止める。

律「あっぶねえええ!」

唯「憂本気だ…」

紬「憂ちゃん!?」

憂「七支刀は単なる祭具ってわけでもないみたいですよ。防御に向いた、
  たくさん枝のある十手(じって)みたいな。」


憂はそのまま、黒曜石と木棒を連結している部分で力を込める。

パキッ!

黒曜石の部分は根元から折れる。

紬「あっ…」

憂「それでもう、ただの棒です。」

律「みお、何してるんだ!?早く射掛けろ!」

澪「あ、ああ!!」

憂は七支刀を腰帯に差し込むと、すばやく背中から大盾を抜き取り、
左手に構える。

ヒュン!

澪の矢は正確に憂を捕らえてたが、大盾に弾かれ落ちる。


澪「失敗かっ!?」

律「澪っ!お前がもっと早く…!!」


和「みお、ごめん。」

澪「え?」

後方から和の声が聞こえ、澪は背中に硬い物が物体の感触を覚える。
和の鉄剣が澪の背中に押し当てられていた。

さわ子「はい澪ちゃん、背面から切りつけられ脊椎損傷。
    戦闘不能、よって失格。」

澪「ひ、ひきょうな…」

和「お互い様よ。」

憂「和さん!?失格になったんじゃ!?」

和「それはあんたが欺かれてたの…」

憂「////」カァッ

澪「まさか、和が…私までだまされたぞ!!」

律「ahahaha!!」

澪「ごまかすなっ!」

和「さてと。」

和は唯の前に出る。

和「律たちの話に聞き耳立ててたけど、
  さしずめ森のセイレーンってとこね。やるじゃないの唯。」

唯「和ちゃんも近所のオバちゃんワンピース着てるみたいだよ!」

和「はぁー…あんたの感覚にはいつも脱帽させられるわ。」

和「いくわよ。」

唯「うん!」



律「いいのか憂ちゃん、和といっしょに唯を叩かなくて?」

憂「私がおねいちゃんに二対一で向っていくような、
  そんな真似ができると思いますか?」

憂「律さんと紬さんはどうぞご自由に♪」ニコッ

律「さーすが憂ちゃん、うちの愚弟にも爪の垢せんじて
  飲ましてやりたいよ。」

律「じゃ、遠慮なくっ!!」

紬「いくわっ!!」

聡「いやー皆さんよくやるよなー。」

澪「おい聡、お前の、さっきのアレはいったいなんなんだ?」

聡「え、いや、あは、あははっは!!/////」

梓「決着はどうなるんでしょうか?」

さわ子「勝負はいつもほんの一瞬よ。どんなに強い人間であっても、
    必ず常勝とは限らないわ。まして凡人なら、ね。」

純「憂は間違いなく魔人ですね…」

そう、勝負は一瞬。

和「くっ…」

唯「ぬぅ…」

さわ子「きわどいけれど、唯ちゃんの勝ちね。」

唯「やったーーー!!」

和「ふふ、負けたわ。」ニコ

律「憂ちゃんどうする?和が負けたぞ?」

紬「さぁ…」

憂「私一人でも、勝てる自身はありますけど…」

憂「"わがきみ"が敗れたので降伏します。」

紬「えっ、いいの?」

憂「いいんです♪王手をかけられれば、
  竜王が残っていても意味ないでしょう?」ニコッ

唯「じゃあ私達の勝ちだね!」

和「そういうことよ。」

律「よしっ!」

紬「もうちょっと活躍したかったな♪」



―そして、勝者の権利が執行される―

和「さ、あんたたちは、わたしたちに何を望むの?」

紬「せいどれムグッ」

律「ムギのことは気にしなくていいから。
  唯、お前に任せる。」

紬「ムグムグ…」

澪「私も唯に任せる。こっちは途中退場だしな。」

梓「わ、わたしも…」

唯「じゃあ、和ちゃんたち…」

和「…」

唯「残った一週間を私達と一緒に…」

唯「『じょうもんせいかつ』楽しもう♪」

和「ふ、あははは!唯らしいわね。ええ、従います。」

唯「よーしきまりっ!」

さわ子「決まったところで、今日は熟成させといた
    イノシシを食べましょうか。」

和「それは、楽しみですね♪」

梓「わ、わたしは遠慮します…」

唯「そうだ♪ムギちゃんが楽器作ってくれたんだよ!」

憂「さっき弾いてた奴だよね?」

唯「うん!」

紬「太鼓や木琴みたいなのも作ってあるから、
  今日は私達の演奏を聴いてね。」

憂「楽しみです!ね、純ちゃん!」

純「うん!(こ、これは、わたしもレギュラーメンバー入りってこと!?)」








聡「…」ソローリ

律「おい、聡。」

律「どこ行く気だ?」

聡「ちょ、ちょっとトイレ…」

律「言っておくが、お前への勝者の権利は
  姉であるこの私が譲ってもらった。」

澪「聡可哀想に…」

聡「い、いったい、なにがはじまるんでしょうか???」アセッ

律「…」ニタア

聡「澪姉ぇっ!!た、たすけ…」

澪「お前の死に水はとってやるからな…」


いやぁぁっぁぁぁっぁぁ-----------!!!!!




グツグツグツ…

和「そう、そんなことがあったの…」

律「私がもっと早く気付いてればよかったんだけど…」

和「無神経、という評価しかできませんね、先生。」

さわ子「ごめんなさい…」

梓「せんせい、もういいですから…」

さわ子「あずさちゃんごめんねっ!!」ギュギュ

梓「…」

梓「離してください。」

さわ子「ごめん。」

律「あずさ抱きしめは唯の特権だしな。」

人間イス(律がすわっている)「ゴクリ…」

律「椅子がつばを飲み込むな。」

人間イス(ねーちゃん後で覚えてろ…)

さわ子「りっちゃんたちが持ってきたときには、わかってたんだけど、」

さわ子「ショック的教育効果に期待しようと…」

和「安易過ぎですね。」

澪「浅はかです。梓の傷は計り知れないんですから!」

さわ子「ごめんなさい…」

梓「…」

和「もう少し言わせてもらえば、最近よく耳にする…」

和「エコテロリストに非常に似た思考だと思いますよ。」

唯「エコエコアザラク??」

和「エコテロリスト。捕鯨反対、動物虐待反対ということを掲げて、」

和「この理想を実現するために
  テロリストまがいの手を使う人たちのことよ。」

律「その人たちは動物を大切にして、命奪わないようにってんだろ?
  さわちゃんとぜんぜんちがうじゃん。」

和「そうね…強いてまとめれば、二点。」

和「一つは結果を重んじるあまり、手段に無関心なとこ。
  エコテロリストなんかは裁判官の判決の執行と同じように
  自分たちの使う手段を考えているような気さえするわ。」

さわ子「…」

和「もう一つは、精神的基盤や行動方針といったものを作り出していく方法、
  つまり考えを進めていく方法。」

和「"生命を大切に"という信念は大切なことだけど、」

和「この信念から、さらに様々な基盤や方針を作り出していく途中で
  歪みや不自然さが作り出されていくと思うの。」

和「幅広い考えや知恵を考えてもみないで、自分の考えだけを磨きあげる。
  ようするに、理論や信条にとらわれ過ぎて…」

和「常識、コモンセンスを軽視してるのよ。」


唯「???????」???????

憂「おねいちゃん、あとで解説してあげるね♪」

唯「うん、お願い!」

さわ子「教師として失格の炊印を押されたようなもんね…」シュン

和「あずさの何分の一かぐらいのトラウマにしかなりませんよ。」

和「あとは、先生と梓のことなので、これくらいにしておきます。」

さわ子「ほんとうに、ごめんね、あずさちゃん…」

梓「本当にもう大丈夫ですから…」

和(あとは時間と本人達の係わり合い方次第かしら。)




そして数ヵ月後、軽音部部室

唯「みんな、来たよー!」

律「ちーっす!」

紬「いま、紅茶入れるわね?」

澪「…」

梓「…」ドヨーン

唯「澪ちゃん、あずにゃん、どうしたの?」

澪「この雑誌、見てくれ…」

律「何々…」

『戦国時代に自衛隊がタイムスリップするなら…
 女子高生が縄文時代に居たっていいじゃない!
 熱血美人教師監修による実録ドキュメント―』

『じょうもんせいかつ!』

『Now On Sale!!』

唯「えっ、えっ!?」

律「ちょっくら職員室まで行ってくるか、なあ?」

澪「…」

梓「…」

黙って立ち上がる澪と梓。

紬「熱血美人教師ってだれかしら?」


おしまい!!



最終更新:2010年02月14日 04:10