コンコン

聡「姉ちゃーん、いつまでトイレ入ってるつもりだよ?」

律「ぐすっ…も、もうちょっと待って…」

聡(え、まさか泣いてる?)

聡「まったく長ぇウンコだなー…部屋で待ってるから終わったら呼び来てよ」

律「うん…」

律「どうしよ…変なこと思い出してきて、涙止まらないっ」

律「また…パンダみたいってバカにされるじゃんかよぉ」

律「…っく」



数日後

澪「おはよう、律!」

律「うん、おはよ」

律「あれから梓とは調子良いの?」

澪「ああ! バッチリだよ」

澪「きっと相性が良かったんだなぁ」

律「…仲がよろしいようでなによりですわー」

澪「えへへ」

律「デートとかはしないのかよ?」

澪「…ちょっと、恥ずかしいかな」

律「は?」

律「別に恥ずかしがることねーじゃん。お前らはどういう付き合いしていく気なわけ?」

澪「ひ、ひっそりと」

律(もう山にでも潜ってろよ…)

澪「…今日は梓と何ができるかなぁ」

律「さぁ」

澪「もう毎日が楽しくてしょうがないよ」

律「そーですね」

澪「付き合うってこんなにも良いことだったんだぁ…」

律「…ちっ」

澪「律も誰かと付き合ってみたら? とっても楽しいよ?」

律「…んだよっ」

澪「え」

律「うるさいんだよっ!!」

律「人の気も知れずに、幸せオーラぷんぷん振り撒きやがって!」

律「いちいちどうでもいいこと話題に出してくんなよっ!」

澪「ご、ごめん…」

澪「調子に乗りすぎちゃったよね…」

律「……」

澪「ごめんね、律」

律「……」

律「…私こそ怒鳴って悪かったよ」

澪「う、ううん。気にしてないから」

律「そっか…」

律「……」

澪「……」



放課後

律「……」

澪「……」

唯「む、ムギちゃん」ヒソ

紬「ええ…」ヒソ

唯「なんかすっごく気まずい雰囲気…」

紬「何かあったのかしら」

律「…ムギ」

紬「はいぃぃ!?」

律「お茶のおかわり貰える?」

紬「た、ただいまお持ちしますっ」

唯「ムギちゃんテンパりすぎ! 落ち着いてー!」

紬「ど、どうぞ」

律「ありがとう」

紬「……」ジー

律「…私の顔に何かついてる?」

紬「え! あ、ごめんなさいっ」


紬「ゆ、唯ちゃ~ん」ギュ

唯「ムギちゃん! ご無事でっ」ギュ


律・澪「…?」


唯「とりあえずこの重い空気をどうにかしなきゃ!」

紬「でもどうすれば…」

唯「私にどーんと任せなさいっ」

紬「えー…」


唯「りっちゃん! 澪ちゃん!」

律・澪「何…?」

唯「一瞬だからよく見ててねー…」

律・澪「え?」

唯「はいっ」

「……」

唯「ほ、ほらー! 親指が伸びちゃったよぉ~!?」

唯「びっ、ビックリしたでしょ! ね? ね!?」

紬(ゆ、唯ちゃん…)

澪「おもしろかったよ、唯」

律「すごい、すごい」

唯「あぅ…」シュン

唯(目逸らして言ってるじゃん…)

ガチャリ

梓「また遅れちゃいました」

唯「きた! 救世主!」

梓「な、なんですか! いきなり…」

澪「梓…」

律「……」ピクッ

梓「澪先輩! 聞いてくださいよー」

梓「実は今日、純が…」

澪「そ、そうなんだ」

律「…はぁ」

律「あのさ」

梓「はい?」

律「イチャつくなら外でやってほしいんだけど」

梓「!」

澪「り、律っ」

律「二人がお熱いのは十分こっちにも伝わってるからさ。ね?」

梓「な…何言ってるんですか!?」

律「言葉の通りじゃんかよ」

紬「り、りっちゃん」

唯「あわわわ…」

梓「別にイチャついてなんかいませんっ! ね、澪先輩!」

澪「そ、そうだよ」

律「そういうところがそうだって言ってんだよ」

律「あ~いいねぇ、羨ましいねぇー」

梓「ちょっ…本気で怒りますよ!?」

唯「あ、あずにゃん落ち着いて…」

律「なんで怒るのさ? 私は部活の邪魔をするなって注意したんだぞ?」

梓「部活も何も、お茶飲んでお菓子食べてるだけじゃないですか!」

律「それも含めてうちの活動なんだから仕方がないだろ」

梓「ふざけてるんですかっ!!」

澪「ちょ、ちょっと…二人とも」

律「梓もそうだけど、澪もなんだからな」

澪「え」

律「マジで何なんだよお前ら…」

律「自分達が気まずい雰囲気作ったりしてることにも気づいてないし」

律「そもそも女と女で付き合ってるとかバカみた―――」

パンッ

律「―――え」

澪「…っ」

梓「み、澪先輩…?」

唯・紬「!!」

律「…痛いじゃん、なにすんのさ」

澪「律、お前…最低だっ」

ガチャ、タタタタ…

梓「澪先輩! 待って!」ガチャッ

律「…ちっ」

唯「ど、どうしよう」

紬「……」

律「あーあ、ほっぺたジンジンするよ」

律「今日のところはもう部活になんないね。てなわけで各自解散~」

唯「で、でも」


律「仕方がないじゃん? そんじゃ、私はこれで…」

紬「待ちなさい!」


律・唯「!?」


唯(ムギちゃんが…怒ってらっしゃる?)

紬「りっちゃん、座って」

律「だ、だから解散だって」

紬「座って」

律「…な、なんだよ」ス

唯「ムギちゃん?」

紬「とりあえずお茶でも飲んで落ち着いて」

律「? ……」ゴクッ

紬「落ち着いたかしら?」

律「…まぁ」

律「てか何だよ? もしかしてさっきのことで私に説教でもする気?」

律「私はあいつらに本当のことを言っただけで…」

紬「りっちゃん」

律「は、はい…」


紬「悩み事、あるんでしょ? 私に話してみて?」

律「え」


唯「悩み事?」

律「何かと思えば…そんなことかよ」

紬「ううん、そんなことじゃないよ」

紬「りっちゃんはいつも何か悩んでたりすると自分に素直になれなくなるわよね」

律「なっ…」

唯「そ、そうだったの?」

律「知らねーよ!」

紬「思ってもないことを言っちゃったり…そうでしょ? りっちゃん」

律「…ち、ちが」

紬「違わない」

律「うう…」

唯「おおぅ、りっちゃんが押されてる…!」

紬「話した方がきっと楽になると思うよ?」

律「……」

紬「一人で抱え込んでても仕方がないもの。ね?」

律「…いいの?」

紬「ええ」

律「ムギ…ごめんなさい」

紬「謝るのは後で澪ちゃんと梓ちゃん達と一緒にでいいから」

律「あ…」

唯(ムギちゃん…なんかお母さんみたい。ていうか…あれ、もしかして私今空気になってる…?


紬「―――そうだったんだ…」

律「……」

唯「…りっちゃんっ」ギュ

律「わっ…いきなりなんだよ」

唯「りっぢゃあ゛ああんっ」グスッ

律「な、なんでお前が泣くんだよ!?」

唯「つ、辛かった…よねぇ…ひぐっ、ぐすん」

唯「わああああんっ」

律「ちょ、ちょっと…唯ってば」

紬「ふふ、よかったね。りっちゃん」

律「えー…///」

唯「ぐす、ぐすんっ」

律「あー…よしよし」

律(…まったく、私が泣きたいぐらいだってのに)

紬「そっか、やっぱりりっちゃんは澪ちゃんが好きだったんだ」

律「な、なんで?」

紬「そんな気はしてたもの」

律「ムギには何でもお見通しだな」クスッ

紬「ふふ」

唯「…でも、どうするの? りっちゃん」

律「ん?」

唯「このまま澪ちゃんに本当のこと言わないでおくの?」

唯「そんなのだめだよぉ…」

律「……」

紬「その前に、まずは謝ることがさきだと思うわ」

紬「澪ちゃんとても怒ってたもの」

唯「あう…」

律「…だよな」

紬「謝った後のことは、りっちゃんの判断しだいね」

律「ていうか、澪の奴…許してくれるかな」

律「私、あんな酷いことバンバン言っちゃったわけだし…」

紬「それもりっちゃんの謝りしだい!」

律「…うん」

律「二人とも、ありがとね。なんか凄く気分が楽になったよ」

唯「えへへ」

紬「よかったわぁ」

律「ほんと感謝してる…」

ガチャリ

梓「澪先輩…どっか行っちゃいました」

唯「あずにゃん!」

律「…梓」

梓「電話にも出てくれないし…」

梓「律先輩のせいですよっ!? なんであんなことをいきなり!」

律「…ごめん」

梓「! …あ、あやまって済むと思ってるんですか!?」

律「ごめん、なさいっ」

唯「あずにゃん。りっちゃんも悪気があったわけじゃないんだよ」

梓「え?」

唯「実はね」

律「お、おい…」

唯「いつか分かっちゃうかもなんだし、あずにゃんにも言っておこうよ。ね?」

紬「そうね」

律「…う、うん」

唯「実は―――」

梓「…そうだったんですか」

律「本当にごめん」

梓「もういいですってば」

唯「あずにゃ~ん!」ギュ

梓「だから一々抱きついてこないでくださいよぉっ」

唯「あずにゃんがいい子だから仕方がないんだよぉ~」

梓「な、何ですかそれ!?」

紬「ふふふ、じゃあ私も」ギュ

梓「えぇ!?」

梓「それにしても律先輩が…」

律「……」

梓「…そうだとしても澪先輩はそうとう傷つきました。どう落とし前つけるつもりですか?」

律「今、すごく考えてる」

梓「…あきれた」

紬「梓ちゃん…」

梓「でも」

梓「律先輩らしいというか」クスッ

律「な、なんだよそれ…」

梓「ふふ、しっかり澪先輩のこと慰めてあげてください」

梓「それと…ちゃんと律先輩の気持ちも伝えてあげてくださいね?」

律「え…で、でも梓、お前…」

梓「大丈夫ですよ。律先輩なんかに私の澪先輩は取られませんから!」

律「梓…こいつぅ!」ギュ

梓「うにゃーー!?」


律「そうと決まれば、ちょっくら行ってくるよ」

梓「だからどこ行ったのかわからないって…」

律「大丈夫」

梓「その根拠のない自信はなんですかっ」

唯「私も手伝う!」

律「…ありがと、でも気持ちだけでいい」

律「私がやっちゃったことなんだし、けじめは自分でつけたいからさ」

唯「りっちゃん…」


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最終更新:2010年02月21日 00:24