唯「憂、死んでこの世界を終わらせるつもりだね」
静寂がはしった。
憂「お姉ちゃん、なんでそれを…」
憂「お姉ちゃんこそなんで記憶があるの?」
憂「私が死んだ」
唯「それはね…」
唯は世界が終わったこと、セカイにあったこと、憂を生き返らせたこと、これまでのことを話した。
しばらくして
憂は突然泣き出した。
そして私(唯)に言った。
お姉ちゃん、余計なことしないでよ。
そういいはなって憂は風呂をあとにした。
唯も憂をひとりにさせてはいけないと思い、あとを追うように風呂をあとにした。
部屋にこもってしまった憂。
唯は憂の部屋の前で語りかけた。
唯「憂、聞いてね」
唯「私ね、考えて、考えて憂を生き返らせてもらったんだ」
唯「くりかえされる世界でもいい」
唯「未来がない世界でもいい」
唯「憂と一緒なら…」といおうとした直後、
憂「お姉ちゃんは未来に居きるべきなのっ!」
憂が珍しくどなった。
未来という言葉に反応したようだった。
唯は続けた。
唯「それに、この世界を変える方法だって二人なら見つかるかもしれないよ」
憂「お姉ちゃん」
憂「この世界を変える方法はね私が死ぬか…」
憂「私が死ぬしかないの」
言葉を言い含んだあとに言い直したようだった。
唯「(憂さっきから様子がおかしいな…)」
唯「(どうしたんだろう?)」
唯「それにね、憂が死ぬなんて、わたし悲しいよ」
憂はさっきより激しい声でこういった。
「悲しいのはこっちだよ!」
その声はふるえていた。
泣いているようだった。
うっ…ううっ
憂の嗚咽が聞こえる。
やだよお姉ちゃん、お姉ちゃん
そう何度も繰り返していた。
唯「………」
唯「憂、わたしを部屋のなかに入れて」
唯「ほら、憂、泣いてるでしょ…」
唯「ちいさいとき、どっちかが泣いてたらギュってしたよね…」
しばらくたった。
ガチヤ…
憂の部屋のドアが開いた。
憂「お姉ちゃん、入っていいよ。」
憂「全部話してあげる」
憂「この世界について」
憂「ただし約束して」
憂「お姉ちゃんが私の前からいなくならないことを…」
どういう意味だろう…。
憂「この世界はね…この世界は」
憂「私が作ったの」
憂「というより作ってもらったの、今日が繰り返されるようにって」
そんなはずはない、と唯は思ったが…
唯「私に消えないでって言ったよね」
唯「あれってどういう意味?」
憂「………」
憂はしばらく涙ぐんで黙っていたが、
憂「お姉ちゃんはね、今日本当は死んでいるのよ。」
唯は耳を疑ったが、こんなときに憂が冗談を言うはずもなかった。
唯「もっと詳しく教えて」
憂「わかった、今から話すのは本当の9月18日…
あの日、わたしは元気にお姉ちゃんを送りだした
。
お姉ちゃんは初ライブでたのしそうで、家を出る前の笑顔をわたしもみてるだけで幸せになった。
わたしもうかれてて天気予報を見逃してた。
でも、それがわたしが見たお姉ちゃんの最後の笑顔だった。
お姉ちゃん家に帰る途中、車にひかれて死んじゃったの。
6時ごろかな…、急な雨でね、人のあまりとおらない道だから、車の速度もはやくて、発見も遅くて、雨だったから視界も悪くて…
ううっ…雨だとしってたらあんな道とおらないように言っておいたのに
今日がもう一度くればいいって思った。
そんなときにね、あの声が聞こえたの…。
セカイの声が…
そうして世界は繰り返された。
ただね、繰り返された毎日はとてもつらかった、みんな人形みたいで…。
そんな毎日の繰り返しのなか、お姉ちゃんが「一緒に寝ようって…。」繰り返された世界に気づいたみたいだった。
でもね、お姉ちゃんは次の日「毎日がくりかえされるなんていや」といったの。
未来を望んだの
私は気付いた。
この世界は作るべきではなかった。
だからね私はお姉ちゃんのかわりにはねられてみた
世界が終わることを信じて…。
お姉ちゃんに未来をあげたくて…
でもね、世界は繰り返された。
そしてお姉ちゃんは記憶を失っていたの。
私はこの世界を望んでしまった、そして自らの手で壊そうとした罰を受けたんだと思った。
そうしていまこのときに至った。
憂は長いはなしをおえた。
やっとの想いで、泣きながらはなしていた。
唯「そうか、憂が死んだけど世界が繰り返されたのは私が望んだからで」
唯「私が記憶を失ってたのは、毎日世界が繰り返されていることを憂に気づかせないようにしてたからか…」
唯「ねぇ、憂」
唯「今日は一緒に寝ようか」
憂「うん」
憂は泣きつかれたのか、すぐ眠りについた。
唯は考えていた。
憂に、軽音部のみんなに、何をしてあげられるのかを…。
翌朝
唯「う…朝か」
唯「憂、間違っても死ぬなんて考えないでね」
憂「わかってる…」
いつもの憂からは想像できないだだっ子のような返答だった。
唯「今日は学校に行こうと思うんだ」
唯「それでね…憂も学校終わったら、うちの学校の体育館にきてくれないかな」
憂「わかった、すぐ行くね」
憂と唯はそれぞれ学校へ向かった。
クラスについた唯は、文化祭の準備をしながら、係の仕事をしながら、ぞんぶんに話をした。
友達と普段あまり話さないような子とも。
そのうち和がやってきた。
和「唯、文化祭の準備そのへんでいいわよ~」
唯「わかった、軽音部のほう行ってくるね」
唯「それと文化祭終わったら体育館きてくれないかな?」
和「まぁ、なんだか知らないけど、生徒会の仕事終わったら行くね」
唯「うん、わかった」
音楽室
機材を運んだあと、ループする世界のなかで、何度食べたかわからない紬が持ってきたお菓子を唯はしっかりとあじわった。
唯「みんなライブ頑張ろうね」
律「お!やる気だなぁ!」
澪「そうだな、頑張ろう、アハハ…」
唯「澪ちゃん自分に自信をもって、緊張しないで、上手いんだから」
紬「唯ちゃんが澪ちゃんをなだめるなんてね~w」
一同「あはは…」
こんな他愛もない会話、唯はしっかり心に刻んだ。
体育館、舞台袖
『続いては軽音部のみなさんの演奏です。』
ジャーン!!
こえはだめだったけど、ライブは無事に終わった(澪はころんだ)。
唯「ねぇ、みんな」
律紬澪「ん?」
唯「放課後6時頃にここで演奏もう一度付き合ってくれない?」
唯「どうしても演奏を聞かせたい人がいるの」
…
憂「あれ?ここでいいのかな?」
和「あ、憂ちゃん」
憂「和さんもよばれてたんですね」
和「そうそう唯に」
舞台上のカーテンが幕を開けた
軽音部のメンバーがたっていた
そして演奏が始まった
唯「今日はお越しいただいてありがとうございます!!」
唯「今日はわたしめがお世話になった方々への感謝ライブです。」
憂「(お姉ちゃん、何する気なんだろう?)」
いきまーす!ふわふわタイム!
演奏が始まると、澪が律が紬が演奏している感覚を失うような錯覚におちいっていた。
頭の中に声が直接流れ込んでくる…。
唯『みんなごめんね。』
澪律紬「(この声は唯?)」
唯『わけあって、わたしはこれが最後のライブです』
唯『りっちゃん、わたしに真っ先にはなしかけてくれたよね。わたしの馬鹿な遊びにも付き合ってくれて本当に楽しかった。ありがとう』
唯『澪ちゃん。私にギターを詳しく教えてくれたよね。勉強も。わたしがわかるまで優しく教えてくれて。本当にありがとう。もっと自分に自信をもってね。』
唯『ムギちゃん、いつもお菓子もらっちゃって、ギターも無理して値下げしてもらってなんて感謝していいやら、ムギちゃんにはいつも癒されました』
唯『軽音部のみんなのおかげで、わたしのゴロゴロばっかりで、中身のない人生に音楽という華をそえることができました』
唯『和ちゃん。和ちゃんには本当に幼稚園のときから、お母さんのように、お姉ちゃんのように色々教えてくれて、いまでも一番の親友だよ。ありがとう。』
和、律、紬、澪は唯がいなくなることをこころで感じた。涙は溢れてくるけど、顔は不思議と笑顔になった。
唯『憂…ごめんね』
憂「やだぁ、やだお姉ちゃん消えちゃやだよう」
和「憂ちゃん。えんそうはっ…えんそうは黙って聴くものよ…」
唯『憂…ういには一番お世話になったね。』
憂「ぅぅ…」
唯『姉らしいことはひとつもしてやれなかったかな…』
唯『憂…わたしはもういなくなるの』
唯『私はね、憂をうらんでなんて全然ないよ…』
唯『ただね、昔から憂は気負いすぎるところがあって心配なんだ』
唯『たまにはわたしみたいにゴロゴロすることもわすれないでね。』
唯『さて姉として最後にしてやれることなんだけど、それは憂の未来を守ることなんだ』
唯『だから憂もいきれなかった私の分まで人生楽しんでよ!』
憂「わかったよお姉ちゃん、わ゛だしっ強くいきる」
憂「でも辛くなったら…」
唯『大丈夫私は憂の心の中にいるよ。』
憂「ありがとうお姉ちゃん。そしてバイバイ」
唯『よかったそのことばが聞きたかった』
『私は短い人生でもみんなといれて幸せだったよ…』
演奏が終わった。
時計のはりは18時
唯の姿はきえていた。
……
チュン、チュン
憂「あれここは」
平沢母「よかった憂まで死なれたらわたしっ」
(そうか、お姉ちゃんはいないんだ)
憂「お姉ちゃん交通事故だよね」
平沢母「えぇ」
憂「あのね…長い長い夢を見ていたんだ…」
憂「お姉ちゃんがね…」
私はさっきあったことを長い長い時間をかけて話した。
話すとこころが洗われていくようだった…。
澪さんも律さんも紬さんも和さんも同じ夢を見たらしい
そしてそれぞれポケットのなかにはあのときのライブの写真が入っていた。
そこには唯の姿もあった。
憂「あの世界はお姉ちゃんからの最後のプレゼント」
憂「私が生きるために必要な自分自身が生まれ変わる時間だったんだ」
憂「だから私にはあんなにたくさんの時間が必要だった」
憂「だから、わたしいろいろ始めてみるよ」
憂「一歩でも明日にすすみたいから」
おわり
補足
ちなみに唯は自分の死を受け入れるために必要な時間です。
唯にとってのセカイは、妹と生に執着する自分自身
憂にとってのセカイは姉の死を受け入れない自分自身
執着という負の心がうんだ世界だったので、憂と唯が話す時間は与えられましたが、幸せとよべる世界ではなかった。
最終更新:2010年02月23日 02:23