唯の部屋

唯「お母さん達も心配なんだよね」

唯「早く決めなきゃ……」

唯「あ、パンフレットは飛ばしたんだった」

唯「どうしよ……」

唯「他に何か取り寄せてなかったかなぁ」ゴソゴソ

ガタン!

憂「何の音!? お姉ちゃん大丈夫!?」

唯「だ、大丈夫だよ、本が落ちただけ」

憂「あ、これ……」

唯「小学校の卒業アルバムだぁ、懐かしい」


~~~~~

夕暮れ、公園

和「唯ちゃん、帰ろうよ」

唯「やだ!」

和「なんでー? もう暗いよ?」

唯「いいもん! 平気だもん!」

和「怒られるよ」

唯「憂がいればいいよ、憂だけいればいいんだよ」

唯「お母さんもお父さんも、私より憂の方が好きなんだよ……」

和「?」

唯「ぐすっ」

唯「うわぁ~ん!」

和「ゆ、唯ちゃん!」

唯「な、なんでぇ……なんで、ういばっかり……うぇ~ん!」

和「よしよし」ナデナデ

唯「ふえぇ」

和「唯ちゃんのお母さんとお父さんは、唯ちゃんの事が大好きだよ」

唯「そ、そんな事無いよ、いっつもいっつもうい、うい、って……」

和「それはね、唯ちゃんが素直じゃないからだよ」

唯「わ……たし?」

和「うん、唯ちゃんがもっと素直になれば、きっと二人とも唯ちゃんを見てくれるよ」

唯「ほんとう?」

和「ほんとだよ。私も素直な唯ちゃんの方が好きだよ」

唯「えへへ、私も和ちゃんの事大好きだよ!」

~~~~~

唯「で、帰って『お母さ~ん! 好きー!!』って」

唯「お父さんは私が言わなかったから拗ねてたみたいだけど」

憂「そういえばおぼろげに記憶があるような無いような」

唯「まぁそれで反抗期は終わったんだよ」

憂「さすが和さんだね」

唯「和ちゃんにも弟妹いるからね~お姉ちゃんとしては私のが先輩なんだけど……」

憂「それじゃ普通逆なんじゃ」

唯「細かい事は良いの!」

唯(そうだ……泣いてるといっつも和ちゃんが慰めてくれた)

唯(大好きな和ちゃん……)

唯(素直に……か)

唯「答えなんて、最初から出てたんだね」ボソ

憂「えっ?」

唯「憂! ちょっと出掛けてくる!」

憂「う、うん」

唯「後ね、お母さん達に言っといて!」

憂「何を?」

唯「桜ヶ丘高校に行くって!」

憂「!」




和「結構遅くなっちゃったわね……」

唯「和ちゃん!」

和「唯!?」

唯「はぁ……ふぅ……」

和「ど、どうしたの? そんなに息切らして」

唯「ご報告があって、走って参りました!」

和「何? 志望校決めたの?」

唯「うん! 桜ヶ丘高校! 和ちゃんと一緒だよ!」

和「ちょ、ちょっと唯!」

唯「自分で決めたよ」

唯「人によってさ、決める基準や決め方は違う。やっとそれに気付いたんだ」

唯「私は……大好きな親友と楽しい高校生活を送りたい」

唯「誰に言われたからでもない、私が私の意志で、和ちゃんと一緒にいたい」

唯「いつかはお別れするだろうけど、いれる間は一緒にいる」

唯「これが私の素直な気持ち」

唯「私の決めた進路……私の望みなんだ」


和「……ダメね」

唯「えぇ!?」ガーン

和「私と同じ高校に行きたいなら……必死に勉強しなさい」


唯「うん!!」

和「ありがとう、唯」

唯「え、なんで和ちゃんがお礼言うの?」

和「ふふふ、唯に素直になれなんて昔言っておいて、自分が素直じゃないなんて笑えるわね」

唯「覚えてたんだ……」

和「ええ覚えてるわ、唯の失敗談は全部」

唯「あーん、忘れてよー」

和「ほんとはね、私も唯と離れるの嫌だったの」

唯「和ちゃん」

和「一緒に……頑張ろうね」

唯「おー!」


唯「目指せ桜ヶ丘ー!!」

和「ちょ、ちょっと大声は恥ずかしいわよ」



澪「あの子達も桜ヶ丘志望なのか」

律「メガネの子はとにかく、もう一人はなんだか抜けた顔だな~」

澪「人の事が言えるか」ゴン

律「いってぇ! やっぱり澪と同じ高校なんてやめれば良かった!」

澪「あー、どうぞどうぞ」

律「ったく、澪みたいな奴に限っていざとなったら泣きまくるんだよ」



数ヵ月後

唯「えっと私の番号は……」

和「あ、あった! あったよ唯! 私受かってる!」

唯「ど、どこだ……人垣で見えないよ」

紬「双眼鏡貸しましょうか?」

唯「あ、どうも」ヒョイ


和「どうなの?」

唯「しゃー!! おらー!! 受かっとるやないかーい!!」

和「どんな喜び方よ……とにかくおめでとう」

唯「ありがと、和ちゃんもね……そうだ、双眼鏡ありがとうございました」

斎藤「いえ、どういたしまして」


唯「あれ? 綺麗な女の子だったような……」

斎藤「その方とはいずれまた会えるでしょう」

和「は、はぁ」


唯「二人とも受かってて良かったね」

和「唯なんて三年の途中から勉強始めたのにね、追いつかれるとは複雑だわ」

唯「もう全部抜けちゃいました……」

和「持続力があればねぇ」

唯「面目ない」

和「ま、唯はそれで良いのよ、今は」

唯「えへへ」

和「私だけじゃなくて、頼れる友達がもっと増えると良いわね。一緒に成長出来る仲間が」

唯「出来るよ! 和ちゃんも一緒だもん!」フンス

和「どういう根拠よ……」

唯「ところで入学式っていつだっけ?」

和「また始まった」

唯「お世話になります」

和「ふぅ、こういう役目は変わらないみたいね」

唯「和ちゃんが一番上手く私を使えるんだよ!」

和「何バカ言ってんのよ」


唯「楽しみだね、高校生活!」

和「そうね……悔いの無い三年間にしましょう」


唯「うん!」

和「とりあえず……部活でも探してみたら?」



おわり



最終更新:2010年02月24日 15:38