PM 9:40


梓「遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い」


キーボード「あ、梓ちゃん、落ち着いて……」


ベース「しかし、本当に遅いな……何やってるんだ、二人とも」



律「待たせたな!!」


梓「……来たぁ!!」


梓「律先輩……それに、ゆ、唯先輩……!?」


唯「えへへ、来ちゃったぁ~」

梓「な、なんで唯先輩がここに……?」


唯「うん、まあ、色々あって」


梓「そ、それにギターは……?」


律「それが……」


唯「色々あって、逃げられちゃった……テヘ」


梓「は、はぁ~!?」

律「とにかく、準備をして……」


――バタン!


「はぁ、はぁ」


律「おや……ようやくお姫様のご到着だ」


澪「はぁ、はぁ」


澪「律………」


澪「探したぞ………!」


律「マイナス5℃の気分はいかがでしたか、お姫様?」


澪「律…………」


澪「よくも………よくも、騙したな……!」


律「なんのこと?」


澪「……なにが『閉じ込める』だよ!」


澪「……なにが、『死ぬ』、だよ……う、ウソばっかりついて…………!」


澪「わ、わたし……ゔっ……ほ、ホントに、死ぬかと…………」


律「……馬鹿だなぁ、私が澪を殺すわけないじゃん」

澪「…………だ、だって!!!」


律「……ちょっと待ってろ」


澪「…………」


律「……ほら、これ」


澪「…………」


澪「これ………」


澪「……わ、私の……ベース………どうして……?」

梓「えぇ、律先輩、まだ返してなかったんですかぁ!?」


律「だって、会う機会がなかったし」


澪「…………」


梓「澪先輩……律先輩って、2年かけてそれを探し回ったんですよ?」


梓「……その経験からか、その後も人から頼まれて盗まれた楽器を取り返したり、
不正売買を取り締まったり……
練習もせずに、余計なことばっかりしてますけど」


律「いらん事は言わなくてよろしい」

唯「不正売買……そうか、それで楽器屋の店長は被害届出すのを渋ってたのかぁ……」



澪「…………グスッ」


律「ほ、ほら。泣くな澪………」


澪「わ、わ゙たし……律に……言わなくちゃいけないことが……」


律「…………」


律「あ~、その事だかな……」

律「……私もお前を騙しただろ?」


律「だから……」



律「あれで、おあいこだ」



澪「律………ポロポロ」




梓「あ、あのぉ……お取り込み中の所、申し訳ありませんが、時間が……」

律「や、やべぇ、今何時!?」


梓「9時50分です」


律「あと10分で開始じゃねーーかぁ!!」


律「なんでお前はそんなに落ち着いていられるんだ!?」


梓「ぜ、ぜん全然落ち着いてませんって!!」


梓「ああ、どうしよどうしよ……」


キーボード「……あ、あのぉ、そう言えばギターさんは?」

律「あ、そう言えばギターがいないんだった!!」


梓「ど、どうするんですか!?」


律「どど、どうしよどうしよ……」


梓「どーするんですかぁぁぁーーーー!!」



唯「あ、あのさぁ……」


唯「……私、弾けるかも」


梓「…………へ?」


律「え…………マジ?」


唯「う、うん……実は昨日、寝る前にずっとCDかけてたから……」


唯「頭に付いちゃった……エヘ」


梓「え、そ、それだけで弾けるんですか!?」


唯「うん、多分」

唯「でも……」


唯「でも、ギターがないと……」


唯「私、ギー太が燃えちゃったから……」


律「おい」


梓「け、結局ダメじゃないですかぁぁぁーーーー!!」


律「ああ、どうしよどうしよ」

―――――――――――――――――――

PM 9:55


女「はぁ、やっと着いた……」


女「もう、この遊園地、中に入ってからも広いんだから……」

女「そろそろ、始まってるかしら……?」


ブォォォ


ガチャ


男「お嬢様、先ほどのロッカーの中身をお持ちいたしました」

女「あら、ありがとう」


女「持ち主が分かるといいんだけれど……」


男「……こちらです」


女「…………」


女「……これって……ギター? 一体誰のかしら?」


女(あれ、でも何処かで見た覚えが……)

―――――――――――――――――――

PM 9:58


梓「ああ、どうしよどうしよ……」


律「いや、これもう終わっただろ」


唯「ああ、私のギターさえあれば……」


澪「ベースなら一本余ってるんだがなぁ……」



ガチャ


女「あのぉ……失礼しま~す」


唯澪律梓「………………」

唯「む…………ムギちゃん!?」


紬「……えぇ!?」


紬「皆さんお揃いで……一体どうしたんですか!?」


澪「む、ムギこそ一体どうしたんだ……?」


律「あぁ、ムギの会社はこのイベントの主催だから……」


梓「む、ムギ先輩、助けて下さい!!」

紬「どうかしたの?」


梓「ギターが一本足りないんです!!」


紬「ギター……?」


紬「あ、そうだ。さっきこんな物を手に入れたんだけど……」


紬「これ……」


唯「……そ、それ…」


唯「………ギ………ギ……ギ……ギー太!!!」


唯「どうして……!?」


律「――お、おい、もう始まるぞ、急げ!」

梓「――唯先輩、ギターあったんですか!? 早くっ!!」



唯「ま、待って、まだチューニングが……」



律「いいから急げ、もう出るぞ!」


梓「……こんばんは!!」

ワァァァァァーーーー!!!!


梓「えっと……Nyan☆Nyansです!」


梓「今日は、このようなイベントにお越しいただき、本当にありがとうございます!!」


梓「それでは、聞いて下さい」


梓「『恋の方程式』」


―――――――――――――――――――
――――――――――
―――――


ベース「あの……良かったら次の曲、変わりに弾かない?」


澪「え……!? そ、そんな悪いですって」


キーボード「皆さん、お友達みたいですし……」


紬「でも……流石に3人もチェンジするのは、ちょっと……」


澪「顔でバレるしな」


ベース「あ、それなら私にいい考えが……」

パッ……

――キャア!
――あれ、停電?
――演出とかじゃないの?

梓「皆さ~ん、聞いて下さい!!」


梓「実は、照明の機械が故障してしまったらしくて……」

梓「演奏には支障がないのでご安心下さい」


梓「――それでは、次の新曲は……」


梓「唯さん、ボーカル(ボソッ」


唯「えぇ~!? だ、ダメだってそれは!」


梓「……もうこの際、思いっきりやっちゃいましょう!」


梓「放課後ティータイム、復活ライブです!!」


律「……お、いいねそれ!」


紬「何の曲をやるんですか?」


澪「……そりゃあもちろん、あの曲だよな?


梓「唯先輩、歌詞覚えてます~?」


唯「お、覚えてるよ~!」


律「よし、じゃあいくか!」

梓「――それでは、次の新曲は……」

唯「『ふわふわ時間』!」

―――――――――――――――――――

キミを見てると いつもハートDOKI☆DOKI
揺れる思いは マシュマロみたいに ふわ☆ふわ

いつもがんばる キミの横顔
ずっと見てても 気づかないよね

夢の中なら 二人の距離 縮められるのにな

あぁ カミサマお願い
二人だけの Dream Time ください☆
お気に入りのうさちゃん
抱いて

今夜も オヤスミ♪


唯「ふわふわ たぁいむ♪」

―――――――――――――――――――

1ヶ月後


――お客様にお知らせします
――3番ゲートに到着予定の便は……


憂「……えっとぉ」

憂「確か、この辺だったはず……」

憂「あ、いた! お姉ちゃ~ん!!」


唯「……うい!!」


憂「お姉ちゃ~ん!」


唯「う~い~!!」

ガシッ

憂「あはは、久しぶり……」

唯「会いたかったよぉ、うい~!」

憂「私も会いたかったよ~、お姉ちゃん」

憂「中々帰ってこれなくて……ごめんね?」

唯「ううん、憂も向こうで忙しかっただろうし」

憂「それじゃ、帰ったら美味しい料理、たくさん作るね!」

唯「……いや、せっかく帰ってきたんだから、憂はゆっくりしてって! 私が作るから!」

憂「えぇ、お姉ちゃんがぁ~!?」

唯「大丈夫、澪ちゃんにたくさん料理習ったし~」

憂「えぇ、ほんとに~!?」

唯「うん、それから、それから……」

憂「えぇ、すご~い!」

…………………
…………


END



最終更新:2010年02月26日 01:26