ハデスめがけて図太い黒紫色の雷が落ちた。

プスプス…

梓「はあ、はあ、どうだ…」

ハデス「どうだ…だあ?なめやがって…」

梓「そんな…」

梓は限界だった。
あれだけの闇の力を使えば反動も相当なものになる。

ハデス「くそやろおおおおおお!!!!!!!!ガキのくせにいいいいいい!!!!!
    俺を怒らせたらどうなるか教えてやる!!!!!!」

ハデスが怒り髪を赤く染める。
闇の力を解き放つと梓のそれとは比べ物にならなかった。
梓に絶望がよぎる。

梓「はあ、はあ、はあ…ヤバい…」

ドサ…

はあ…はあ…

さらに体力が限界に達し崩れ落ちた。


ハデス「なんだもう動けないのか!!!!
おまえは俺の闇に取り込んでやろう!!!!」

ハデスが梓の腕を掴む。
梓の体が少しずつ消えていく。

しゅわあ…

ハデス「ハッハッハ!!!本気を出すまでじゃなかったなあ。」

梓の意識が完全に消えた
しかしここで梓が本来持つ力による防衛機制が働く。

ハデス「こいつの心は闇に消え…な、なんだ!俺の体が消えていく!」

気付くと立場は逆転しハデスの体がみるみる消えていく。
ハデスは予想外の事態に動揺する

ハデス「俺がこいつに取り込まれているだと!
このガキの闇はどんだけ深いんだ!冗談じゃねえ!」

ハデスは必死に手を放そうとするがもはや手遅れ
闇が捕えたものをたやすく手放すわけがない

おぼ…えてろ…


梓「は!」

和「気がついた?お疲れ様。」

梓「ハデスは!?」

和「あなたが倒したわ。」

梓「覚えてない…ってうわ!なんで右腕以外日焼けしてるの!?」

フィル「火傷でもしたんだろ?おまえはハデスを取り込んだんだ。
    だいたい英雄が闇の力を使うだなんてどうゆうことだ!」

梓「私が…あいつを…」

すぐに梓にはこれが何を意味するか理解できた。
闇へと落ちるタイムリミット。
闇の力の使用とハデスの吸収がそれを急激に加速させた。

ヘラクレス「そんなこと言うなよフィル!
      梓ちゃんは立派な英雄だ!なんたってあのハデスを倒したんだ!」

フィル「ま、まあそこは評価してやるよ。」

ヘラクレス「素直じゃないなあ…まあ気にしないで。これでもフィルはほめてるんだ。」

梓「そういえば英雄の心貰ってない!」

フィル「おまえはバカか!もう持ってるじゃねえか!そのちっせえ胸によ!」

梓はどうゆうことかと一瞬悩むがすぐに答えにたどりつく。

梓「なんだ…そうゆうことか…って最後のは余分です!」

ヘラクレス「あれ、フィル?それは梓ちゃんを認めたってことだね!?」

フィル「う、うっせえ!勝手にしろ!俺は行く!」

梓「私もそろそろ行こうかな…」

和「今日は休んで行きなさい。頑張りすぎよ。」

梓「えっと、じゃあ…お言葉に甘えて…」



―宿舎―

結局心を復活させる方法は見つからない…


やっぱり私がハートレスになるしかないのかな…


でもそしたらみんなに…会えなく…あえなぐなっぢゃう…


ぞんなの…いやだ…ごわいよ…せんばいたぢと…っと軽音部やりだいよ…


もうどうじたらいいのがわがんないよ……せんばい…


ぐず…


和「隣、いい?」

梓「う…お、おごしちゃいましたか…」ゴシゴシ…


和「ううん、私も寝れなかったの。こっちに来てから寝れなくて…
だから一緒に寝よ。ね?」


梓「ありがとう…ございます…………」


和「大丈夫…?」


すう…すう…


和「もう寝ちゃった…よほど不安だったのね…
私にはこれくらいしかできないわ…唯は何やってるのよ…」




―翌日―

梓「お世話になりました。」

フィル「おまえがこの世界の英雄にならないと思うと安心して寝れるわ!」

ヘラクレス「キミならいつでも歓迎するよ。」

和「気をつけてね。」

梓「はい。行ってきます。」




―モンストロ 喉内―

梓「それにしてもここはなんか…ブヨブヨしてて気持ち悪い…」

トコトコ…

梓「人形があるいてる…ねえ!」

ピノキオ「わあ!びっくりした!なあに?」

びっくりした!?この子人形なのに心がある!

梓「ここはどこかな?」

ピノキオ「ここはモンストロっていうオオクジラの中だよ。」

梓「だからこんなブヨブヨなんだ…」

ピノキオ「お姉ちゃん!あそぼ!」

この子は憂を目覚めさせるヒントになるかもしれない…
少しくらいなら連れ出しても構わないよね…

ピノキオ「お姉ちゃん?」

梓「じゃあ私と他の世界に行ってみる?」

ピノキオ「行きたい!」

唯「みーつけた!迷子になっちゃうからおうちにかえろ?」

梓に残された時間は少ない。
しかしここで運悪く唯とはち合わせてしまう。

梓「大丈夫ですよ。これからは私がこの子の面倒を見ますから。」

唯「あ…あずにゃん!」

梓「ほら、いこ!」

ピノキオ「うん!」

唯「ま、待ってよあずにゃん!

梓「ピノキオ君、先に行ってて。」

ピノキオ「わかった!」

梓を残してピノキオはさらに奥へと進んでいった。


唯「なんでこんなことするの!?これじゃまるで誘拐だよ…」

梓「心を持った人形なんてめったにないですから…
心を失くした人を復活させる方法が分かるかもしれない。」

唯「憂のこと…?」

梓「先輩には…関係のないことです…」

唯「こんな風に助けたって憂は喜ばないよ…」

梓「し、しつこいですよ…」

唯「あずにゃんは何を隠してるの?」

そんなこと言えない…

唯「悪い子になったようには見えないし…
  それにすごく不安な顔してるよ…悩み事があるなら話して、ね?」

梓「先輩に何が分かるんですかっ!」

唯「なんでも分かるよ…だってあずにゃんのこと大好きだもん。」

唯「でも何に悩んでるかはやっぱり話してくれないとわかんないかな。」

本当はみんなとずっと一緒にいたいことも闇に落ちたくないことも

それを全て話したら…先輩はどうなるんですか…

ぐす…

唯「ぎゅ…」

梓「私にも…私にも分からないです…私がどうしたいのか……怖いんです…」

唯「大丈夫だよ…あずにゃん。」

梓「でも…やっぱり先輩には話せない……ごめんなさい…」

唯「そっか…無理に聞こうとしてごめんね。
  私に答えられるか分かんないけど整理がついたら話してね」

梓「はい…せんぱい…」

でも整理がついた時にはもう…私は…

わああああ!!!!

唯「ピノキオくん!?」

梓「…い、行きましょう…」ゴシゴシ


奥に進むと2本の長い触手を持つ怪物がいた。
ピノキオは牢屋状の怪物の腹部に閉じ込められている。

キシャアアア…

唯「あいつのおなかにピノキオくんが閉じ込められてる!」

梓「…倒せますか?」

唯「倒せるよ!
  私とあずにゃんなら!」

梓には分かっていた。
この戦いが終わるころには私の猶予はなくなる。
できれば戦いたくなかった。
でも唯のあの無邪気な表情を見ていたらそんなことどうでもよくなった。

私も先輩と一緒に戦いたい。

梓「…そうですね。先輩は前線であの長い腕に気をつけて戦ってください!」

唯「わかった!」



唯「やあああ!!」ザシュザシュ!!

グウウ…キシャアア!!

相手を切りつけることに夢中になり周りが全く見えていない。
2本の触手は唯に襲いかかる。

ブオブオン!!

しかしそんなことには目もくれない。

梓「イカズチよ!」

バチバチイ!!!

梓の剣から走る電撃が2本の触手を弾き飛ばす。

クワアア…

梓「先輩には絶対触れさせませんよ!」

唯「さすがあずにゃんだね!」

もはや怪物がやられるのも時間の問題だった。
梓の電撃は完璧に攻撃を防ぎきる。梓を信じる唯の攻撃は勢いを緩めることはない。

ザシュ!!シュワア…

そして圧倒的な力に怪物は消え去った。
梓の猶予時間とともに…


ピノキオ「ありがとう!!お姉ちゃんたちすごいね!」

唯「でしょー!やったねあずにゃん!」

梓「ええ…そう…でずね…」

恐る恐る右手を覗く。
闇の侵食はあと指の先を残すだけとなった。
これで梓に選択肢はなくなった。

唯「あ、あずにゃん…?また行っちゃうの…?」

梓「う…ごめんなざい…」ポロポロ

嫌だけど…消えたくないけど…もうこうするしかない…

唯「…あずにゃんがどこに行ったって何をしたってあずにゃんの先輩だから!
  私たちは…心で繋がってる。だから大丈夫だよ。」

梓「はい…」ポロポロ

唯「だからまた会えるよ!約束する!」

その言葉に梓は流れる涙を拭い、まっすぐ唯を見つめた。もう目に迷いはない。

梓「先輩のおかげで…決心がつきました…」

唯「えっへん!先輩だからね!!」

梓「へへ…ありがとうございます…また会いましょう。」


いつか



また


今一度答えを聞こう

梓「キングダムハーツで憂の心を手に入れて見せる…
  私がハートレスとなって!」

もう迷わない。先輩はいってくれた。また会えると。
その言葉を信じて私は闇へと進む。

いいだろう

ならばさらなる闇へ進め



さらなる…闇へ…

光りなき暗闇の中


おまえの目には光が映る


勇者よ、思うがままに進め


闇夜を歩く猫のように


さすれば道は開かれん


Reverse story END



最終更新:2010年03月03日 01:18