翌日の朝、私は歯を磨きながら昨日のことを思い出す。

 あずにゃんを泣かせたこと。

 あずにゃんに靴の匂いを嗅がせたこと。

 あずにゃんに変態って言ったこと。

 それで興奮したこと。

 思い出すだけで顔がにやける。

 ……だけど。

唯「……あずにゃんに謝ろう」

 その日私は授業の内容が頭に入らなかった。

 それはいつものことか。

 でも違うのは、私の頭の中はあずにゃんでいっぱいだったということ。

 どうやってあずにゃんに謝ろうかずっと考えた。

 そうしているうちに、今日の授業が終わる。

律「唯」

唯「あ、りっちゃん。何?」

律「今日ずーっと暗い顔してるけど、どうかした?」

 私、暗い顔してたんだ。


唯「んーん。何でもないよ」

律「本当に?」

 こういう時りっちゃんは鋭いなぁ。

 そんな深刻な顔しないでよ。

 りっちゃんは笑顔が一番かわいいんだよ。

唯「本当ですりっちゃん隊長!」

 そう言って私は笑顔で敬礼をする。

律「本当だな唯隊員!」

唯「本当でございます!」

律「よしよし。じゃあ部室に行こっか」

 ごめんねりっちゃん。

 私また嘘ついちゃった。

紬「どうかしたの?」

 ムギちゃんが私の前に来る。

唯「なんでもないってー。ムギちゃん今日のお菓子何ー?」

紬「え?えーと今日はクッキーよ」

唯「わーいクッキークッキー!」

 大丈夫かな?

 ちゃんといつもの私になってるかな?

 昨日みたいな、変態な私になってないかな?

 部室に入る。

 すでにあずにゃんと澪ちゃんはいつもの席に座っていた。

 あずにゃんが私を見る。

 その顔はいつものあずにゃんだった。

唯「ねぇあずにゃん」

梓「はい?」

唯「ちょっと二人きりで話そう?」

梓「……はい」

 気のせいかな。

 今あずにゃんが、変態さんの顔になった気がする。


唯「ちょっとあずにゃんとお話するから皆待っててねー」

律「お、ついに愛の告白かなー?」

 りっちゃん、それなら昨日終わったよ。

紬「え!?」

 ムギちゃん、お茶こぼれてるよ

澪「なわけないだろ。行っていいよ唯」

 さすが、澪ちゃんは話がわかるね。

 二人で部室を出て、ドアを閉める。

 そしてあずにゃんの顔をじっと見る。

 ちゃんと、後輩を見る目で。

唯「あずにゃん」

梓「なんですか?」

唯「昨日はごめんなさい!」

 そう言って私は上半身を九十度曲げた。

 ムギちゃんが言ってた。

 バイトでお客様に謝る時は九十度曲げるんだよって。

 だから私もそうしたほうがいいよね。



梓「あの……唯先輩」

唯「昨日の私どうかしてたよ。あずにゃんの泣き顔がかわいくてつい……」

 私は頭を伏せながらそう訴える。

 まるで昨日とは逆の立場みたいだね。

梓「何で謝ってるんですか?」

唯「何でって……あずにゃんに私の靴の匂い嗅がせたりしちゃったし……」


梓「だから、何でそれぐらいで謝ってるんですか?」

 え?

梓「これからもっともっと、すごいことしてくれるんですよね?」

唯「梓ちゃん何を言って……」

梓「唯先輩……」

 やめてあずにゃん。

 そんな何かを欲しがる顔をしないで。

 私あずにゃんに甘いから、そんな顔されたら困るよ。

 欲しいもの、あげたくなっちゃうよ。

唯「自分から欲しがるなんて……いけない子だね」

梓「はい……梓はいけない子です」

唯「……後でたっぷりおしおきしてあげるからね」

 あぁ。

 また私。

 変態になっちゃった。



終わりです。



最終更新:2010年03月07日 01:22