澪「和、大丈夫?なんか顔色悪いけど」

和「だ、大丈夫よ」

 便意は、もはや痛みに近くなっていました。そんな時、大変なハプニングが起こってしまったのです。

「あ、危ない!」

 バシイイイイイン!

和「・・・っ!」

 なんと、飛んできたボールが私のお尻に直撃したのです!

和「・・・いっ・・・あ・・・・!」

 ちょっと出たような気がしたけど、考えないことにしました。


澪「和!」

和「だ、だいじょう、ぶ、だから!」

 私は確信しました。あと一撃、あと一撃でもお尻に衝撃を受ければゲームオーバーだと。
 その後、チームに迷惑を掛けながらも、ついに6時限目を耐え抜くことができました。

和「やっと、終わった」

 クラスメートたちが一斉に教室に戻っていきます。
 みんな早足でしたが、私はスピードを出すことが出来ないので超スローペースで歩きまし
 た。
 澪だけは私の歩きに合わせて一緒にいてくれました。

和「澪・・・先に戻ってくれていいから」

澪「ううん。和と一緒に戻りたいんだ」

和「あ、ありがとう」

 体育館には、私と澪だけです。

澪「ね、ねえ和」

和「なに?」


澪「驚かないで・・・聞いてくれる?」

和「うん。それで?」

澪「私・・・和のことが好きなんだ」

 場が静まりました。澪の突然の告白。
 この雰囲気的に、好きというのはどう考えても友達としての意味ではないことはわかりました。

和「・・・そう」

 澪の気持ちは嬉しいけど、なんでこのタイミングなのでしょうか?
 せめてトイレに行った後に告白してくれれば冷静に答えることが出来ただろうに。
 この時の私は思考力が低下していたので、その場で答えを出すのは良くないと判断しました。

和「ちょっと、考えさせてもらっていいかな?」

澪「うん。わかった」

 澪はそう言うと走って行ってしまいました。


 どのくらいの時間がたったでしょうか。もう帰りの生徒がちらほら見えます。
 私は徐行運転で歩き続けていました。トイレまではあと少しでした。

憂「和さん。体育だったんですか?」

 憂が現れました。ここまで来ると狙ってるのではないかと疑ってしまいます。

憂「あの、今いいですか?」

和「悪いんだけど、ちょっと待ってて」

憂「お時間は取らせません!話を聞いてもらいたいんです!」

 問答無用でした。この子には意外と強引なところがあります。

和「わ、わかったわ。何?」

憂「私、和さんのことが好きなんです!」

和「・・・・・・え?」



憂「小さいことから私とお姉ちゃんの面倒を見てくれて、
  すごく頼りになってかっこいい和さんが、ずっとずっと好きでした」

和「ま、待って!」

憂「!?」

和「お願い・・・今は答えられない。考える時間をちょうだい」

憂「わかりました。私、待ってますから」

 憂もどこかに去って行きました。
 まさか私が女の子に2人連続で告白されるなんて、偶然にしても出来すぎています。
 ですが、そんなことを考えている余裕はありません。
 私はすぐにトイレに向かいましたが、どうやら混んでいるようです。
 良く考えたら授業が終わったばかりの放課後。トイレが混みあわないはずがありません。


 そこで私は考えました。通常の教室付近のトイレはすべて使用不能であると。
 だとすれば、音楽室の近くにあるトイレが現在の位置からもっとも近く、混雑していないト
 イレです。
 私は進路を変更し音楽室付近のトイレに向かいました。

律「和ー!」

 途中で律と出会いました。2度あることは3度あると言いますが、まさか律はね。
 その時の私はそう思っていました。

律「どこ行くのー?」

和「音楽室の・・・近くのトイレ」

律「お、じゃあ一緒に行こうぜー」

 私と律は2人で音楽室を目指しました。私の歩みが遅いことに関しては律は突っ込みませんでした。

律「ねえ和・・・また書類書き忘れちゃった」

 いきなり律がそんなことを言いましたが、怒る余裕などありませんでした。

和「そう・・・」

律「怒らないの?」

和「ええ・・・」

律「和。私がなんで書類をいつも書き忘れてるか・・・わかる?」


和「・・・」

律「それはね・・・書類を出さなかったら、和に叱ってもらえるから」

 律にそんな趣味があったとは驚きでした。

律「和・・・私は和が好きなんだ」

 これはもう驚きませんでした。

和「ごめんなさい・・・考えさせてもらえる?」

律「おう。いきなりごめんな」

 気が付くともう音楽室の前でした。律が中に入ろうとすると

唯「和ちゃん!」

 唯が飛び出してきました。


和「あ、あのね唯。話があるならトイレに行ってから」

唯「大好き!」

 いきなりかよ。

唯「和ちゃ~ん」

 唯が抱きついてスリスリしてきます。

唯「和ちゃん!私和ちゃんが大好き!だから付き合ってほしいの!」

律「え・・・?」

澪「唯・・・!お前もか!?」

 音楽室の中には澪もいたようです。というか紬と梓もいました。軽音部員勢揃いです。

律「は?お前もってどういう・・・」

憂「もしかして、みなさんも!?」

唯「憂!」

 憂も来てしまいました。



 しばらく後。

和「・・・」

律「この場で結論を出してもらうぞ、和」

 私は音楽室、つまり軽音部の部室の中にいました。
 周りには律、唯、澪、憂の私に告白した面々と、紬と梓がいます。
 結局まだトイレには行けてません。もはや痛みは激痛になっています。
 周りに押し流されて告白の返事を今ここで決めることになってしまったのです。
 口もまともに動かなくなり反論できず連れてこられました。

唯「和ちゃん、なんだか青ざめてるけど大丈夫?」

和「あ、と・・・・」

 もうしゃべることすらままなりません。激痛に耐えるのに精いっぱいでした。

澪「和・・・どんな結果になっても、みんなそれを受け入れるから」

憂「はい。覚悟はできてます」

紬「すごいことになってきたわね、うふふふ」

梓「ムギ先輩、うれしそうですね」


 結論を出すにしても、口が動かないのだからどうしようもありません。
 しかも椅子に座ってしまったので、立つのもきつい状態でした。

唯「和ちゃん!」

律「和!」

澪「和・・・」

憂「和さん」

 とにかく立たないと。立ち上がるには誰かの助けが必要です。
 私は考えなしに、右手を一番近かった人物に差し出しました。

梓「え、私?」

 私が右手を差し伸べた先には梓がいました。


律「和・・・梓を選ぶのか」

唯「あずにゃん。羨ましいよ」

憂「梓ちゃん、かわいいもんね」

澪「それが和の答えなら」

和「ち、ちが・・・」

 違う。私はただ立ちたいだけだったのに。面倒な勘違いをされてしまいました。

梓「・・・すいません。あなたの気持にはお答えできません」

 その上フラれました。


唯「結局みんなふられちゃったね~」

澪「まあ、しょうがないか」

憂「告白できてすっきりしました」

 しかしおかげで話がまとまって私が解放されそうです。
 これは今しかない。そう思って私は全力で立ち上がりました。手伝いなしでも何とかなりま
 した。
 しかし、足はプルプルで、お尻を突き出した変な体制で止まってしまいました。
 これ以上は動けそうにありません。

律「ははは、和~変なポーズするなよーお尻出しちゃって」

唯「和ちゃんおもしろ~い」

 好きこのんで変なポーズをしたわけではありません。波が来て動けなくなったんです。



律「あー、私も告白してスッキリしたわ。
  和ったらモテモテでうらやましいぞー!この!」

 その時、歴史が動きました。律は、私の突き出したお尻を思いっきり叩いたのです。
 律なりの照れ隠しのコミュニケーションなのでしょうけど・・・。

 スパアアアアアアン!

和「あ・・・」

 あと一撃、あと一撃でゲームオーバー。私はさっきそう言いましたね。
 そう、



 ゲ ー ム オ ー バ ー で す




その後の詳しいことは、今回は割愛させていただきます。
私は、私の友人達の前で脱糞しました。このお話は要するに、それだけです。

このお話を通して、私が皆さんに伝えたかったこと、
それは「強く生きる」ということです。

私は、友人たちの前で脱糞するという行為をしてしまいました。
ですが、こうして私は今でも強く生きています。
人は、どんな絶望的な状況に陥っても、強く生き抜くことができるんです。

もちろん、友人たちの支えもありました。みなさんも、お友達を大切にしてください。
そして、友人が最悪な状況になったら、助けてあげてください。

私たちには無限の未来が待っています。
みなさんのこの先の人生で、私の話が少しでも役に立ってくれれば幸いです。

最後に、先生方。今日までありがとうございました。桜高の思い出は一生忘れません。

これで、私のスピーチを終えたいと思います。長々と聞いてくださり、ありがとうございました。

卒業生代表、真鍋和。




おわり



最終更新:2010年03月17日 01:35