平沢家
唯「……あの…憂? これって……」
憂「うん。イナゴの佃煮。珍しいから買ってきちゃった」
唯「うへぇ……」
憂「やっぱり、食べられないよね~…」
唯「なんていうか…タイミングが悪いっていうか…」
憂「じゃあこれは? 蜂の子!」
唯「う、憂~~……」
憂「ごめんねお姉ちゃん、ちょっと悪乗りしすぎちゃったね」
唯「アイスと一緒なら食べられるかも……」
憂「!?」
・ ・ ・ ・ ・
唯「あ、そうだ憂~」
憂「なに?お姉ちゃん」
唯「お父さんって仕事なにしてるのかな~?」
ガッシャ~~~~ン!!!!
唯「憂!? どうしたの!? お皿たくさん割れちゃったよ!!」
憂「お、おねおねお姉ちゃん! なななな、なんで今更そんな事聞くのかなかな!?」
唯「落ち着いて憂!!」
憂「ご、ごめんね。まさかお姉ちゃんがそんな事気にして
生きてたなんて思ってもみなかったから…」
唯「なんだかさりげなく貶されるような気がしないでもないけど…」
唯「今日、軽音部のみんなに親の仕事知らないなんておかしいって言われたの」
憂「おかしくなんかないよ! 普通だよ普通!!」
唯「え~……でも~……」
憂「…うん、そうだね…」
憂「お父さんはね…普通のサラリーマンだよ」
唯「でも普通のサラリーマンがこんなに海外出張なんてするのかな~」
憂「じゃあ、普通じゃないサラリーマンなんだよ」
唯「……憂」
憂「うっ……(さすがにお姉ちゃんのことバカにしすぎちゃったかな……)」
唯「そっか~。普通じゃないなら仕方ないよね~♪」
憂「へっ?」
唯「よし! 謎は全て解けた~!!」
憂「う、うん。お姉ちゃんよかったね」
唯「でも、ここ3週間ほど帰ってこないよね~。連絡もないし…」
憂「……うん」
唯「前は2週間に一度は必ず帰ってきてたのにね~」
憂「大丈夫だよ、お姉ちゃん。お父さんお母さん、必ず生きて帰ってくるから…」
唯「憂?」
憂「何も…心配いらないよ…」
深夜 公園
DQN1「本当かよそれ?」
DQN2「マジだって。昨日この公園でナイスバデーな女が布1枚でいたんだって」
DQN2「たしか…このすべり台で……いた!!」
DQN1「うぉぉぉwwwwマジだwwwwwしかもすっげータイプwwww」
茜「……」
DQN2「姉ちゃんこんなとこで寝てたら危ないよ~」
DQN1「そうそう俺らみたいな不良にイタズラされちゃうぞwwww」
茜「……」
DQN1「ビビって声も出ないとよwwwwww」
DQN2「都合いいじゃんwwwwあの茂みでやっちまおうぜwwwww」
DQN1「おら!こいよ!!」グイッ!!
茜「……」
DQN1「うぇうぇwwwwあんまり大人しくても盛り上がらねえなwwww」
DQN2「うっせーハゲwwww早く俺にもやらせろよwwwww」
DQN1「待てよwwwwってなんだ?
おい、姉ちゃんの方から肩に腕回してきやがったぞwwww」
DQN2「うはwwwww淫乱少女キタコレwwwwww」
茜「……」コキッ
DQN1「へっ……?」
DQN2「あ?」
DQN1「い、痛ってぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
DQN1「何しやがったこのアマぁぁぁぁぁ!!!!」
茜「安心して…肩を脱臼させただけだから…」
DQN2「て、てめぇ……!!」
茜「今だったらこれだけで許してあげるけど?」
茜「なんだったら躰の節という節を全て外してあげましょうか?」
茜「それでコンパクトに折り畳めるようにしてあげる」ギン!!
DQN2「ひっ!?(こいつの目ヤベェ……!!)」
DQN「「覚えてやがれ!!」」
・
・
・
茜「ふぅ…」
茜「日本って平和…」
茜「あの国じゃ関節1つじゃなかなか帰ってくれなかった…」
茜「いったい何人殺したかな…」
茜「でも、ここは殺さなくったってわかってくれる…」
茜「……」
茜「本当に…日本って平和…」
翌日 放課後
律「で、茜の楽器は…コレ?」
茜「は、はい……」
澪「これは…予想外だったな…」
紬「管楽器だったなんて…」
梓「入る部、間違えたんじゃない…?」
唯「重そうだから軽音楽じゃないよね~」
澪「いや唯、そういう問題じゃないんだ」
茜「あ…やっぱりご迷惑でしたか…?」ウルッ
澪「いやいやいやいや! 迷惑だなんてそんな!」
紬「そうよ! 素敵よ! ユーフォニアム!!」
律「うんうん! 私たちの音楽の幅が広がるよ!!」
梓「そうだよ! バンドサウンドに新たな風を吹き込もうよ!!」
唯「えっと…えっと…。か、かっこいいよそのラッパ!!」
澪律紬梓(ら、、、ラッパーーーーーーー!!!!!)
・ ・ ・ ・ ・
澪「ま、まぁ…軽音楽部じゃなくて吹奏楽部だろってツッコミはなしにして…」
茜「すみません…でも、どうしてもみなさんと一緒にいたいんです…」
律「いいじゃん! 面白そうだし」
梓「そうですよ! バンドと管楽器を一緒にしちゃいけないなんて決め事ありませんよ」
紬「そうね。茜ちゃんはいつからこのユーフォニアムを?」
茜「えっと…これは父の形見で私のものになってから10年くらいになります」
紬「そうなの…お父様の…」
茜「はい…」
澪「そっか…」
梓「大切な…思い出ですね…」
唯「でも、10年もしてたら相当上手いよね?」
律「そうだな、ちょっと演奏聴かせてもらおうか」
紬「ぜひ聴いてみたいわ♪」
澪「うん。私からもお願いするよ」
茜「吹けません」
澪「えっ?」
茜「初心者です」
澪「で、でも…」
茜「初心者なので」
澪「……」
梓(やっぱりちょっとおかしい子なのかな……)
茜「初心者ですが何か?」
軽音部一同「・・・・・」
茜「それでも…こんな私でも、ここに置いてくれますか…?」
律「あ…、え~っと…」
唯「みんな、私も楽器なんて超初心者でこの軽音部に入ったんだよ」
唯「扱う楽器は違えどあの頃の私が今のデビちゃんなんだよ」
唯「私は…私はデビちゃんを応援するよ!!」
茜「平沢…先輩…」
澪「そうだな…唯の言う通りだよ」
紬「ええ。一緒にがんばりましょ」
梓「同じ学年の仲間ができて嬉しいよ、茜」
律「よ~し!軽音部部長である
田井中律が三浦茜の入部を許可する!!」
茜「みなさん……」
茜「ありがとうございます!!」
・ ・ ・ ・ ・
紬「ごめんなさい、私今日はそろそろ…」
澪「何かあるのか? ムギ」
紬「うん。バイト入らなきゃいけないの…」
梓「まだ、あのバイト続けてたんですか?」
紬「ううん。なんだか人不足らしくって…2、3日入れないかって頼まれちゃったの」
律「お~、ムギも頼りにされてるね~」
紬「ごめんね。それじゃあまた明日」
唯「がんばれ~!ムギちゃん!」
・ ・ ・ ・ ・
澪「ムギ…大丈夫かな…」
律「なにが~?」
澪「テロの犯行声明が出されたのつい最近だろ? 帰りも遅くなるだろうし…」
梓「確かに…こんな時期に社長令嬢が夜道を一人歩きだなんて危険ですよね…」
茜「……」
澪「もっと言うなら、ムギの働いてるマックスバーガーも外資系だろ」
澪「あえてこんな時期にバイトのヘルプに呼ぶなんて…」
梓「テロ組織と繋がっているのが、マックスバーガーの親会社…ということですか?」
律「おいおい…考えすぎだって。澪は心配性だな~」
唯「そうだよ! なんだかよくわからないけど…
いざとなったらアリさんが助けてくれるよ」
律「お前はま~だアリとか言ってるのか…」
澪「うん…そうだな。ムギ専用の護衛がいるから心配することもないか…」
茜「あの…その護衛って、実力はどれくらいのものなんですかね…?」
律「そうだな~…澪が『食べられちゃう!』って勘違いするくらいかな」
澪「お、おい!!」
茜(強いって事か……)
梓「なんでそんな事聞くの?」
茜「私も…琴吹先輩のこと…心配だから…」
・ ・ ・ ・ ・
澪「さ~て、それじゃあ私たちは練習を…」
茜「あの…私もそろそろ……」
律「購買に行くの?」
茜「はい」
唯「デビちゃん! 今日は何か余ってるように祈ってるよ!」
茜「ありがとうございます。それじゃ…」
・ ・ ・ ・ ・
澪「あの子、いつ練習するんだろ……」
律「しょうがないじゃん。生きるのに精一杯なんだし」
梓「ヘビやカエルが主食ってのもかわいそうですもんね」
澪「うっ…それもそうだな…」
マックスバーガー
紬「……」
ひとみ「い、いらっしゃいませ~…」
「お嬢様、申し訳ありません。コーヒーを1つお願いします」
「お嬢様、照り焼きマックスバーガーをお願いします」
「お嬢様、ポテトも一緒にお願いします」
「お嬢様、こちらのクーポンは使えますでしょうか?」
「お嬢様、どうかこのわたくしにスマイルをお願いします」
「お嬢様、この汚らしい豚めに紬お嬢様の唾液入りコーラをお願いいたします」
「「「「「「お嬢様! お嬢様!」」」」」
客「うわっ!? 何このお店!!」
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ひとみ「お疲れ様、琴吹さん。もう時間だから上がってもいいわよ」
紬「今日は…本当に申し訳ありません!」
ひとみ「ああ、いいのいいの。なんだかんだ言ってこの店の売上記録作っちゃったしね」
ひとみ「だから気にしないでね。明日もよろしく」
紬「はい…お疲れ様でした」
・ ・ ・ ・ ・
紬「結局バイト中はずっと張り付かれてた…」
紬「クスン…」
紬「私の気なんて知らずに…」
紬「ひとみさんはああ仰ってくれてたけど、きっとご迷惑に違いないわ…」
紬「……」
紬「もう怒ったわ! 黙って裏口から出て一人で帰ってやるんだから!!」
マックスバーガー 従業員出入口前
紬 キョロキョロ…
紬「誰もいなさそうね…」
紬 ソロ~リ
紬「うふふ。なんだか鬼ごっこしてるみたい」
紬「この路地裏沿いに行ったら気付かれずに駅まで行けるわね
ちょっと暗くてよく見えないけど…」
グニッ
紬「あらっ? 何か踏んだかしら…?」
紬「!? ひ、人が倒れてる!!」
紬「こ、この服は琴吹家シークレットサービスの!?」
紬「しかも何人もやられてる……」
ガサッ
紬「だ、誰っ!?」
茜「……」
紬「茜…ちゃん…?」
茜「見られて…しまいましたか…」
紬「い、いったい何をしてるの…?」
茜「生きるためには必要なんです…」
紬「そ、そんな!?」
茜「琴吹先輩も一人でこんなところをうろついて…危ないですよ…」
紬「や、やめて…。お願いだから…その手にあるものを捨てて」
茜「残念ながら…もう止めることはできません」
紬「何があなたをそこまで…」
茜「貧しさ…です…」
紬「お、お願い…考え直して…」
茜「他に…選択肢はありません…」
紬「どうしても……って言うの?」
茜「はい」クワッ!!
紬(ああ……)
平沢家
憂「お姉ちゃんお風呂沸いたよ~」
唯「は~い」
・ ・ ・ ・ ・
ザバ~ン…
憂「今の内に…」
ピポパポ…prrrrrrr…
『はい、琴吹家諜報部ホットラインサービスです。あなた様のIDとパスコードをご入力ください』
憂「えっと…」ピポパポピ…
『……認証いたしました。ようこそ
平沢憂さま。どのようなご要件で?』
憂「父と母の現状報告を…」
『かしこまりました。しばらくお待ちください…』
憂「……」
斎藤『お待たせいたしました。諜報部管轄主任の斎藤でございます』
憂「あの…何か進展はありましたか?」
斎藤『はい、ちょうど先程ご両親の無事が確認されたと連絡が入ったところでした』
憂「本当ですか!?」
斎藤『はい、平沢様は無事にございます』
憂「よかった…」
斎藤『もうすでに、あちらの国を発たれたらしいので明日中には日本にお帰りになられるかと』
憂「本当に…ありがとうございます!」
斎藤『いえ、平沢様にはこちらの方がお世話になりっぱなしでございますゆえ』
唯「うい~~! シャンプーなくなってるよ~!」
憂「は~い! ごめんね~!」
憂「あ、あの。それでは、失礼します」
斎藤『はい、おやすみなさいませ』
憂「おやすみなさい」ガチャ…
唯「うい~~?」
憂「うん、今行くね~!
あのねお姉ちゃん、明日お父さんとお母さんが帰ってくるよ♪」
最終更新:2010年03月26日 00:45