私には時々不思議なことが起こります。天気が悪い日、というよりは曇りの日かな?
そういう日には時々、宙に何かがぼんやりと見えるんです。
それが何なのかは分からないけど・・・

紬「唯ちゃん、お茶が入りましたよ」

唯「ありがと~ムギちゃん!」
唯「やっぱり美味しいねぇ~!」

紬「うふふ、ありがとう」


こんにちは、平沢唯です。
何かしなきゃと焦っていたあの日、初めは勘違いから入部した軽音楽部に入って早1年が
経とうとしています。
今日はもうすぐ入ってくる1年生の為の新歓ライブの練習です。

澪「さぁ練習するぞ~!」

律「ワン・ツー・スリー・フォー!」



----合格発表の日----
憂「あった!!」

梓「あった・・・。」


唯「うわぁ~何だか初々しいねぇ!」

澪「そうだなぁ、1年前を思い出すよ」

律「澪のやつ、去年合格分かった時泣いちゃってさぁ~!」

澪「なっ‥泣いてない!変なこと言うなって!」

律「照れるなってぇ!」



紬「うふふ、懐かしいわね。ん‥?」
紬「平沢‥憂‥‥ゆうって読むのかしら?」
紬『憂鬱の憂だなんて変わってるわね・・ゆううつ、うれい‥まさか‥!?』
紬『平沢・・・う‥い!?』

唯「ムギちゃんどうかしたの?」

紬「え!? いえ、何でもないわよ!行きましょう(ニコ」

律「さぁ~て、新入生の顔も見てモチベーションも上がったし練習するぞ~」

紬『まさか・・ね・・?』



----夕方----
紬「ねぇ唯ちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど・・・」

唯「なぁに?ムギちゃん」

紬「えっと・・唯ちゃんって妹さんとかいるのかなぁって・・?」

唯「ん~ん、私は一人っ子だよ?妹は欲しかったんだけどねぇ」

紬「そっ、そう・・ありがとう。じゃあ帰りましょうか」

唯「でもムギちゃん、急にどうしたの?」

紬「え!? ・・いや・・りっちゃんは弟がいるって言ってたけど、私も澪ちゃんも一人っ子だから、唯ちゃんはどうかな?って思って」

唯「そうなんだぁ!りっちゃん弟いていいなぁ~」



----琴吹家----
紬「斎藤さん、あの‥平沢姉妹の件で・・」

斎藤「はっ、姉の方はお嬢様のご学友の唯様でおられますが、妹の方は‥」

紬「平沢憂さんという名前の‥」

斎藤「はい、確かに私共の持つ情報“では”憂様という妹君がおりますが、現在唯様に妹はいない、、少なくとも一緒に暮らしてはいないようですね。」

紬「そう‥斎藤さん、少しその件について調べてもらえるかしら・・?」

斎藤「かしこまりました。」



----翌々日、琴吹家----
斎藤「お嬢様、先日の件についてですが、やはり憂様は正真正銘、唯様の妹君です」
斎藤「ただ、憂様が3歳になるかならないかの時期に里子に出されています。」

紬「里子に‥どうして‥。ありがとう、斎藤さん」

斎藤「いいえ、これは琴吹家にとっても重大なことですから‥」


----新歓ライブ翌日----
昨日の軽音楽部かっこよかったなぁ、特にギターの人がお喋りも面白くって
音楽室行ってみたいけど・・

憂がそう考えていると
純「ねぇ、平沢さん私軽音楽部行ってみようと思うんだけど、一緒にどうかな?」

何たる偶然か、憂は内心ラッキーとも思いながらOKしたのだった。
憂「うん、いいよ行こう!」



同級生「梓~ジャズ研説明会あるって、行こう?」

梓「あ、うん」

憂、梓、共に経緯は違えど一つの方向へ向かっていくのであった。
そして先に音楽室へ向かった憂が見たものは


----音楽室----
憂、純「失礼しま~す」

唯「いらっしゃいませぇ~」

憂、唯「え‥!?」

二人が対峙した瞬間、双方にほぼ同時に何か不思議な、それでいて懐かしくそして暖かい
言葉では表せない感情が流れた。


律「おっ?入部希望者だぁ~! てどうした?唯」

唯「・・い、いや何でもないよりっちゃん」
唯「初めまして、平沢唯です」
憂「初めまして、平沢憂です、名字同じですね」

律「へぇ~何だか顔も似てるなぁ、実は姉妹じゃないのかぁ?」

唯、憂「え?い‥いやでも‥私は、あれ?」

紬「まさか、このタイミングで・・・出会うなんて・・」

澪「ん?どうした?」

紬「いえ、何でもないの」

澪「そう?」


唯と憂はお互いに何かを感じたが、それが何かは分からなかったためひとまず互いに
スルーしていた。
そして、ジャージで演奏する4人、それをドア越しに眺める梓。


----帰り道----
唯『それにしても、あの憂って子何だろう・・?不思議な感じ・・お母さんに聞いてみよう』
憂『何だろう・・?平沢先輩、同じ名字、似た名前、そしてあの感じ・・おば様に聞いてみよう』


----平沢家----
唯「ねぇお母さん、私に妹とかっていたかなぁ?」

母「ビクッ)え・・?ど、どうして?」

唯「何かねぇ、今日軽音楽部に見学に来た子で、平沢憂って名前の正に私の妹!って感じの子がいたんだよ。でも私って一人っ子だし、もしかしたら生き別れの妹かなぁ、なんてアハハ」
母「そ・・そう、不思議なこともあるのねぇ」
母『ど、どうして・・?』

父「・・・・」


----憂の家----
憂「あの、おば様ちょっと聞きたいことが・・」

おば様「なぁに?憂ちゃん?」

憂「あの、、、私にお姉ちゃんとかっていたり‥しないですよね?」

おば様「・・・憂ちゃんはどうしてそう思ったの?」

憂「今日、軽音楽部の見学に行ったら、平沢唯先輩っていう何だか本当のお姉ちゃんのような雰囲気のひとがいて・・それで」


おば様「そうね、憂ちゃんももう高校生ですもの、知るべき時がきたのかもしれないわね」


----琴吹家----
紬「斎藤さん、やはりあの二人・・本物でした。。」
紬「ただ、双子ではなく年子みたいですけど。」

斎藤「そうでございますか。双子でなければ、狙われる危険は低くはなりますが、それでも対象であることに変わりはありません。」
紬「そうね、何か対策を考えなければね。」



約一ヶ月後、入部こそしなかった憂であったが、級友の梓が入部し、そしておば様から
唯は実の姉であること、何らかの事情で今の家に預けられたことを聞かされた。
初めは驚きとショックを感じた憂だったが、唯に感じたあの感情の意味が分かった
喜びの方が大きく、預けられた事実より唯と一緒にいられる時間を大切にするため、
音楽室に頻繁に顔を出すようになっていた。

憂『お姉ちゃん・・まだ本当のこと聞かされてないのかなぁ?』
憂『おば様は、お姉ちゃんから話があるまでは黙ってろって言ってたけど』


唯「このケーキ美味しいねぇ、はいあずにゃんあ~ん」

梓「恥ずかしいですよ‥あ~ん」

唯「うふふ、はい憂ちゃんもあ~ん」
憂「えへへ、あ~ん」

唯「憂ちゃんは素直で可愛いねぇ~」
憂「えへへ~ありがとうございます。」

唯「憂ちゃんは素直で可愛いねぇ~」
憂「えへへ~ありがとうございます。」

紬「ジュルリ」じゃなくて!」
律・澪「え?」
紬「いえ、何でも!」

律「しかし、お前ら本当仲良しだよなぁ!やっぱり姉妹なんじゃないのかぁ?」

憂・紬「ドキッ」


唯「そうかなぁ、でも憂ちゃんみたいな妹だったら嬉しいなぁ!」
唯『でも・・きっとこの子は私の・・やっぱり今度はお父さんに聞いてみよう!』


----平沢家----
唯「ねぇ、お父さん…前にお母さんにも聞いたけど、私って妹いるよね…?」

父「…やっぱり気づいてしまったか‥」

唯「うん・・何となく覚えがあるの‥あの子の顔と、そしてこの暖かい気持ち・・」


父「うん、唯ももう今年で17だ。知ってもいいころかもね。。」
父「確かに、お前には妹がいる。名前は憂。」
父「恐らく、お前が言うその子だろう。」

唯「じゃあどうしてこの家にいないの?」


父「お前と憂は1歳違いだ。にも関わらず、幼いころのお前たちは双子のようにそっくりで嗜好から行動から、何から何まで同じだったんだ。」
父「特に憂の方は、お前とまったく同じような行動をしてな・・・」
父「母さんは、「去年の唯をまた育ててるみたい」と何度も言っていた・・・」
父「それから、母さんがノイローゼになるにはそう時間はかからなかった・・・」
父「だから、お前たち二人のどちらかを父さんが懇意にしている方に預かってもらうことにしたんだ。」


唯「どうして憂が預けられたの・・?」

父「私たちにはどちらを預けるかなんて、選べなかった・・・」
父「ただ、唯は最初おばさんに抱かれた時におお泣きしてな・・・そして憂は泣かなかったんだ」

唯「そんな・・・」

それからお話はお開きになったが、唯はその日なかなか寝付けなかった。


----翌日----
唯「・・・」

律「どうしたぁ?なんか元気ないぞぉ?」

唯「あ、りっちゃん・・大丈夫だよ」

律「そうは見えないけどなぁ?」

憂「・・・」

澪「憂ちゃんも?どうしたの?顔色悪いよ?」


憂「えぇ、なんだか2日ぐらい前から、ずっと誰かに見られてるみたいで・・・何だか怖くて・・・えへへ」
唯「そんな!大丈夫!? よし、私が守ってあげる!(だってお姉ちゃんだし!)」

憂「おね‥唯さん・・ありがとう・・!!」

紬『まさか・・・もう!?』

唯「じゃあ憂ちゃん、今日は一緒に帰ろうか?」

憂「はいっ!お願いします!」
憂『嬉しい、お姉ちゃん!』


----帰り道----
唯「あのね・・・憂ちゃん、ちょっとお茶していかない?」

憂「はい、いいですよ」


----喫茶店----
唯「あの、、たんとうちょくにゅう?に言うね!憂ちゃんって、私の・・・」
言葉に詰まって言いづらそうにしている唯を見て、憂は

憂『やっぱり、お姉ちゃんも本当のことを・・・』


憂「はい、私は唯さんの妹です」

唯「やっぱり、、?初めて見たときから不思議な気はしてたんだけど」

憂「私もです!なんだか、ぽかぽかと暖かいようなそんな気持ちになって」

唯「私もだよ!一目見たときからビビッてきて、うわ~不思議だねぇ!」


それから小一時間話し込んだ二人だった。
生き別れという、重大な出来事にも関わらず元々の大らかな性格と、姉に妹に出会えた
そして、互いにそれに気づいていたことを知った喜びから、そんなことは既に些細なこと
になり下がっていた。


----平沢家----
唯「お父さん、今日憂ちゃんとお話したの。やっぱり私の妹で、向こうもそれを知ってた。」

父「そうか、良かったな、と言っていいものか・・・」
父「唯・・・本当に本当にすまなかった。。」
父「大人の都合でお前たちを離れ離れに・・・とても仲の良い‥ウグッ‥姉妹だったのに」

唯「お!お父さん、泣かないで! 謝らないで!」
唯「たしかに、離れ離れになっちゃったのはすごく残念だと思う・・・」
唯「でもね、私はまたこうして憂ちゃんと巡り合えて、こうしてお話できて、こうして姉妹だって、意識できるのがすごく嬉しいの!」
唯「だから、、、泣かないで?お父さん。」

父「ありがとう。。唯は優しい子に育ってくれたな」

目には涙を浮かべ、優しい微笑みを浮かべながら唯の頭を撫でる父。
唯が知ってくれて一番安堵したのは、誰よりも父なのかもしれなかった。

唯「大丈夫、お母さんにはこのことはまだ言わないから。」
唯「タイミングが良い時に、話してみたいとは思うけど、だからお父さんもお母さんの様子ちゃんと見ててね?」

父「ああ、それに今はノイローゼなんかにはなってないからな。あとは全てタイミングだけだろうな。」



----翌日----
唯「行ってきまぁ~す!」
唯「あれ!? 憂ちゃん!」

憂「えへへ、おはようございます。唯さん」

唯「おはよう、憂ちゃん」


----テクテクテクテク----
憂「あ、あの‥」

唯「ん?なぁに?」

憂「もし、ですけど、本当に例えば、唯さんが嫌じゃなかったら、ですけど」

唯「ふむ?」

憂「お姉ちゃんって呼んでも、いいですか。。?」

唯「お!お姉ちゃん!?」


憂「あ、、、嫌なら、、いいんです。。。ごめんなさい・・・」
唯『お姉ちゃん。。何と素敵な響き。。。』

唯「よし!いいよ!これから私のことはお姉ちゃんって呼んでよ! だって私は憂のお姉ちゃんなんだから!」
憂「今、憂って。。嬉しい。。!」
唯「えへへ、行こうか」
憂「うんっ!」


一見仲睦まじい姉妹の登校風景、しかし影でその姉妹に降りかからんとする何かが動いて
いることをこの段階では誰も知らない。

琴吹家の人間をのぞいては・・・



----放課後、音楽室----
唯「と、いうことで私たちは姉妹だということが分かりました~」

憂「えへへ・・・」

澪・律・梓「えぇ!?えぇぇぇえええぇぇ!!?」

律「マジかよ~! しかもそんな軽い話題でもねぇし。。」

梓「確かに。。ちょっとした、劇的な・・ぁぁぁぁあ」

澪「落ち着け梓、しかし似てるとは思ってたけど、本当に血の繋がりがあったなんてな」

紬「・・・唯ちゃん、憂ちゃん、この後ちょっとお話いいかしら?」

唯「うん、いいよ?」


----ハンバーガーショップ----
憂『あれ?この場面、去年とか曇りの日に見えてた光景だ・・・』

紬「あのね、唯ちゃんと憂ちゃんって今までに何か不思議なことってあったことない?」

憂「私は、お姉ちゃんに初めて会った時のあの不思議な感じと、今感じてるこの、何でしょう?不思議な・・・」
紬「不思議な、何?」

憂「はい、私ここに紬さんと来るのは初めての筈なのに、前にもこの光景を見たことがある気がするんです。」
憂「私はここ、紬さんはそこ、澪さんはその席、そして律さんはそこの席、デジャブよりもすごく鮮明な・・・」


唯「あれ?それって、私たちのいつもの席順だよね?」

紬「やっぱり、唯ちゃんはない?そういうの?」

唯「そうだなぁ~私も大体今日みたいな曇りの日は、何か感じるっていうか見えることがあったなぁ」
唯「よく出てきたのは、とっても優しそうなおばさんとおじさん、あとは可愛い女の子の部屋かなぁ?」
唯「ここにベッド、ここに机、そしてぬいぐるみがあって・・・」
憂「それっ!私の、、部屋かも。。」
唯「えぇ!?そうなの?」


紬「やっぱり。。間違いないわ、貴方たちは姉妹、それもただの姉妹じゃなくて、、うん。」

紬「PTって知ってる?」

唯「父母と教師の‥」
憂「それはPTAじゃ‥」
唯「あ、そっか」

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最終更新:2010年04月01日 20:52