放課後。

ガチャ
梓「こんにちはー」

紬「梓ちゃんktkrwwwwwwwww」

梓「は?」

紬「うはwwwこっち見んなwwwwwwwww」

梓「何を言ってるんですか?」

紬「日本語でおkwwwwwwwwww
  うはwwwww出ましたお約束wwwwwwwwww」

梓「……」

律「すまん梓……
  ムギは朝からだんだんテンションが上がっていって……」

唯「今じゃすっかりこの通り」

梓「……」


律「ムギー、お茶にしようぜ……」

紬「ちょwwwwその発想はなかったwwwwww」


梓「澪先輩来てませんけど」

紬「澪ちゃん空気杉ワロタwwwwwwww」

律「ああ、澪はなんか和と話してた」

梓「へえ」

紬「おkwwwwwww把握wwwwwwww」

梓「……ムギ先輩、うるさいです」

紬「ちょwwwww
  ニコ厨ならこれが普通wwwwwwwwwww」

梓「……」

律「なあムギ、普通にしててくれよ……」

紬「だからwwwwこれが普通wwwwwwwwww
  ゆとりは話を聞かないから困るwwwwwwww」

律「ゆと……?」

梓「普通じゃないですよ、ぶっちゃけキモイです。
  いつものおしとやかなムギ先輩はどこに行ったんですか」

紬「おしとやかwwwwwwwwwwww
  そんなの三次元にあるわけないしwwwwww」

律「さんじげ……?」

梓「はあ……なんか疲れますね」

律「そうだな、トイレ行こうぜ梓」

梓「はい」

唯「あ、私も……」

紬「トイレ行く奴挙手wwwwwノwwwwwwww」

律「お前は来んな」



トイレ。

梓「なんなんでしょうね、ムギ先輩」

唯「予想以上にニコニコにハマっちゃったみたいだね」

梓「もはや病気でしょ、あれは……」

律「……はあ」

梓「律先輩?」

律「……二人には悪いけど、
  なんかニコニコのせいで変な感じになっちゃってるな」

梓「はあ、そうですね」

唯「……」

律「ムギはあんななっちゃたし、
  澪もなんかオカシイし……」

梓「あ、そうだ唯先輩……
  憂のニコニコのあれなんですけど……」

唯「ああ……」

律「なんだ、憂ちゃんもニコニコでなんかあったのか」

唯「自分の公開した動画を自分で盛り上げてたのが
  バレちゃって、晒し者になってるんだよ」

律「うわあ……」

梓「憂は、大丈夫なんですか?」

唯「うん……今日は学校休んでるけど」

梓「そうですか……」

律「ホントにもう……
  ニコニコ動画ってのは最低だな……!」

唯「りっちゃん……」

律「見てる人をこんなにおかしくしちまうんだぜ……
  普通じゃねえよ……
  それからボーカロイドとかワケの分かんないもんまで流行って」

梓「……」


律「悪いけど、ボーカロイドなんて
  どこがいいのか分からない」

唯「……」

律「ボーカロイドの曲をやるんなら、
  ライブにも出たくない……」

梓「……」

律「……ボーカロイド好きのお前らには悪いけど」

唯「いや、いいんだよ……
  嫌いな人もいるのは分かってるし」

梓「じゃあやっぱりオリジナルでやりますか?」

唯「うーん……」

律「別にどうしてもって言うならやってもいいけど……」

唯「でも……」

梓「と、とりあえず音楽室戻りましょうよ。
  澪先輩も交えて決めましょう」



音楽室。

澪「あ、帰ってきた」

和「おかえりなさい」

唯「和ちゃん? どしたの?」

和「ちょっとね」

紬「…………」

律「ムギがおとなしくなっとる」

梓「何があったんですか……?」

和「私がちょっときつく言ってやっただけよ。
  ほんとにニコ厨ってのは打たれ弱いわね」

梓「はあ……」

和「で、本題に入るけど……
  あんたたちホントにボカロの曲をやるつもり?」

律「その話か」

澪「私はやりたいって言ってるのに、
  なぜか和が止めてくるんだよ」

和「当たり前よ、ライブでボカロの曲なんて
  みっともないったらありゃしないわ」

澪「だからボカロにもイイ曲はいっぱいあるって言ってるだろ、
  偏見持ちすぎなんだよお前は」

和「イイ曲かどうかは置いといて、
  ボカロの曲をやるのが恥ずかしいって言ってるの!
  ニコニコでブームだからって、
  一般層が受け入れるわけじゃないのよ?」

澪「そんなのやってみなきゃ分かんないだろ!」

唯「お、落ち着いて……」

和「唯はこっち側よね?
  憂ちゃんにあんなことがあったんだもの、
  ニコニコ関連のものなんてもう見るのもイヤでしょ?」

澪「違う、唯はこっち側だっ」

唯「引っ張らないでよお……」

和「律、あなたはどうなの?」

律「私は……」

澪「律!」

律「私は和側だ」

澪「律……」

律「ニコニコ動画なんて気持ちわりいよ!
  みんなしてボーカロイドだとかなんとか
  得体のしれないものにハマリやがって……!」

唯「りっちゃん……」

律「ムギだってそうだよ……
  なんだよあれ、本人はニコニコ動画っぽい話し方で
  楽しいのかも知れないけど……
  こっちにとってはウザいだけだ!」

紬「………………ゴメンナサイ」

律「とにかく私はボーカロイドなんてオタク臭いの、
  やりたくないっ」


和「ほら、聞いた?
  ボーカロイドなんてオタク臭い、
  これが一般人の反応よ。
  ニコ厨は自分の価値観が絶対だと思い込むから困る」

澪「くっ……」

和「ニコニコを見ている人間なんて、
  しょせん低レベルの人間しかいないってことよね。
  それにボカロ厨も、
  素人に毛が生えた程度のレベルの曲に満足し、
  さらに人前で歌おうだなんて……
  滑稽にもほどがあるわ。
  あーやだやだ」

澪「……っ!
  梓! 梓はどっちなんだ!」

梓「わ、私は……」

和「こっちよね」

澪「こっちだろ!」

梓「……どっちにも付く気はありません」

澪「なっ……どういうことだよ」

梓「二人ともおかしいですよ、
  澪先輩も、和先輩も……!」

和「な、何を言って……」

梓「まず和先輩、
  あなたはニコニコやボーカロイドに対して偏見を持ちすぎです!
  ろくにニコニコを見ようとも知ろうともせず、
  ただ歪められたニコニコのイメージに染まっているだけです!
  本質的な批判・否定ではなく、
  ~厨という蔑称を連呼する思考停止的発言がその証拠」

和「くっ……」

梓「だいたい『ニコ厨は自分の価値観が絶対だと思い込む』
  って言ってましたけど、それあなたのことじゃないですか。
  相手の言葉を受け入れず、
  否定発言だけを後出しジャンケンで押し通し、
  自分の価値観を相手に押し付ける!
  あなたが今やっていたことです!」

和「……っ」


梓「ニコニコやボカロに対してどういうイメージを持つかは人の勝手です……
  ただ誰かによって形作られた歪んだイメージを元にした
  偏見丸出しの幼稚な批判は慎むべきです」

和「……っ」

梓「それから澪先輩も」

澪「はいっ」

梓「否定もいけませんが、
  肯定を押し付けるのもよくありません。
  相手が何に興味があり、また興味がないかを
  冷静に把握し、円滑な対人関係を保つことを心がけましょう。
  ムギ先輩もね」

澪「はい……」

紬「……ハイ」

梓「あと律先輩」

律「な、なんだよ」


梓「律先輩は、ムギ先輩が変になったり、
  憂が傷ついてしまったりしたのは
  ニコニコ動画のせいだと考えているみたいですが」

律「ああ、ニコニコ動画のせいだろ」

梓「それは違います。
  ニコニコ動画というのはただのツールでしかありません。
  ツールと言うのは使いようによって、
  便利なものになったり、
  人を傷つけるものになったりします。
  つまり使いようによるのです。
  ツールそのものが悪いわけではありません」

律「……」

梓「悪いのは、みんなです。
  憂の自演がバレて晒しあげられたのも、
  憂だけが悪いんです。
  ムギ先輩がキモイ口調だったのも。
  ニコニコがきっかけで何かが起こったからと言って、
  ニコニコそのものが悪いと言うわけではありません」

律「はい」

梓「まあそういうことです。
  くだらない喧嘩はやめてください」

澪「分かりました」

和「ありがとうございました」

律「勉強になりました」

唯「……で、ライブはどうするの?」

梓「やっぱりオリジナルでやりましょう。
  オリジナルがせっかくあるのに、
  他人の曲をコピーする必要なんてありませんから」

唯「そうだね」

梓「澪先輩も、それでいいですか?」

澪「ああ……私は、和を見返すためだけに
  ボカロの曲をやろうとしてた……
  そんな理由でやっても意味ないよな」

和「澪……」


律「なんか丸く収まったな」

唯「意外とね」

澪「よし、じゃあもうライブまで日がないし、
  頑張って練習しよう!」

唯「おー!」

梓「はい!」

律「あれ、ムギは……」

紬「………………」

唯「まだ落ち込んでる……」

和「ちょっときつく言い過ぎたかしらね」

――

――――

――――――――


ライブ当日。

澪「よーし今日はライブだー」

唯「がんばるぞー」

憂「お姉ちゃーん!」

唯「あ、憂、来てくれたんだ……
  って、うおぃ!」

律「う、憂ちゃん……」

憂「どうですか、似合います?
  今日ボカロの曲やるって言うから
  来てきたんですよ~」

梓「似合ってはいるけど……」

澪(ボカロの曲やるのは中止になったとは言えない……)

鏡音リンのコスプレでライブ会場にやってきた憂。
傷ついたりもしたけれど、
彼女は根っからのニコ厨なのでした。


       お       わ      り




最終更新:2010年04月06日 00:38