律「ひげっ!」
澪「は?」
梓「……」
紬「……澪ちゃんお茶おかわりいる?」
澪「あぁ、お願い」
律「……」
唯「あはははははりっちゃんおもしろいよぉお!ひげっ!あははは」
律「そ、そうか?ははは…ひげっ!」キュッ
唯「やっやめてよおお腹筋がっ ヒッヒッ、ハジケとんじゃうよぉおお」バンバン
律「そうか!ははは、そうか~!」
唯「うん!ぷははwだめだツボっちゃったよぉ~w」
律(唯……ありがとう……)
律「……」カチャ… ズズ
紬「……」モグモグ
梓「……(本日の星座占いは…)」ペラペラ
澪「はぁー、刺激が欲しい。何か面白いことないかなぁ」ボソッ
律「!! み~お~♪」
澪「…なんだよりt」
律「たこやきっ!」キュッ
澪「うわっ」ガチャン
紬「あぁっ、お茶が!」
梓「ちょっ、私の雑誌にかかってるじゃないですかぁあ!」
律「あっ…」
澪「な、何すんだ律……」プルプル
律「ご、ごめん…澪何か面白いことしてほしそうだったから……」
澪「……たこやきのどこが面白いことなんだよ。ふざけるなよ」
律「うっ……(じ、自分ではかなりレベル高いギャグだと思ったけど…)」
紬「せっかく淹れたお茶が……」
梓「これまだ半分しか読んでないのに……」
律「……」
唯「あはははった、たこ!たこやきって!りっちゃんやばいよ最高だよぉおおお」バンバン
律「そうか!?ははっ、そうかぁあ~…ほら唯、たこやきっ!」キュッ
唯「ふむぁっ!? あははははおもしろいよぉりっちゃ~んwへはははは」
律「ははは唯ぃ~、わははは」
……
唯「それでねうい~、りっちゃんたらねー、たこ……はっ!?」
憂「な、何?たこ何?気になるよぉ」
唯「ふふふ…う~いぃ~?」ソーッ
憂「なぁに?」
唯「たこやきっ!」キュッ
憂「きゃっ!?」
唯「あははははこれりっちゃんのギャグだよぉおすっごいおもしろいでしょー!」
憂「……」
憂「おもしろいッ!!おもしろいよお姉ちゃん流石だね!!!」
唯「違うよりっちゃんが考えたんだよぉ、りっちゃんってホント笑いのてんさい!」
憂「お姉ちゃんがやったから面白いんだよ。天才はお姉ちゃんだよ」
唯「えっ。だから違うよ、これはりっちゃんが……」
憂「ううん、律さんがやっても絶対つまんないよ。想像しただけで氷河期到来恐竜絶滅って感じだよ」
唯「……うい、今のりっちゃんのわるぐち?」
憂「えっ」
唯「お姉ちゃんそういうのゆるさないからね」
憂「あっ…わ、私はただお姉ちゃんの方が凄いって強調したくて……」
憂「ご、ごめんなさいお姉ちゃん…ぅう……」
唯「私じゃなくてりっちゃんにごめんって思いなよ」
憂「あぅぅ…律さんごめんなさぃ……」
唯「…おふろ入るね」
憂「うん……」
……
律「……」ゴクリ
律「…よしっ」グッ
ガチャッ
律「おーっす!掃除当番で遅れちった~」
澪「あぁ…」
梓「……」
紬「あっ。……」
律「……」
唯「りっちゃんおっす!おっすおっす!」
律「! 唯おーっす!!//」
唯「へへへ、元気いいねりっちゃん!」
律「唯もなぁ~、わははは」
澪「さてお茶も飲んだし練習するかぁ」
律(えっ、私まだ来たばっかり……)
梓「ですね」
紬「そうね~」
唯「あぅ、りっちゃんがまだ」
澪「唯、わがまま言ってないで練習するぞ」
唯「でも」
律「いいよ唯、練習しよう」
唯「う、うん…」
澪「早く準備しろよ律、一番ヘタクソなんだからせめてそれぐらいは頼むよ」
律「わ、分かってるよ」
元気印で通っている私だけど、実は中学まではずっと地味で暗い子だったんだ。
唯一の友達は澪だけ。 澪の方はそうじゃなかったけどね、人気あったし……
ずーっと澪の陰に隠れて目立たないようにして……
別にそれでもいいかなって思ってた。
でも高校入学初日、ある出来事がそんな私の気持ちを変えたんだ。
――
律「うぅ、澪ぉ…私のこと置いて先に行くなんてひどいよ」タッタッタッ
その日私は寝坊して、澪の家へ行ったけど当人はもう家を出た後。
「入学式に遅刻して目立ったら最悪」なんて泣きそうになりながら
校門を抜けて式をやっている体育館まで走っていたんだけど、
そこで一人の女生徒とぶつかってしまった。
ドンッ
生徒「きゃあっ!」
律「ひゃあっ!」
律「ひゃあっ!」
生徒「いたた…」
律「あぅっ…ご、ご、ごめんなひゃいっ!!」
生徒「えっ」
律(うわぁあ噛んだしぃ……は、恥ずかしい)
生徒「…ぷぷっ」
生徒「あなた面白いわねwいいわよ別に怪我もしてないし……」
律「そ、しょうですかっ(あ、また噛んだぁあ//)」
生徒「あはははっ、おもしろ~い!」
律「すいません…」
生徒「どうして謝るの?」
律「えっ…」
生徒「あ、それより急いだ方がいいんじゃない?あなた新入生でしょ、そのリボンの色」
律「あ、そうだった!じゃあこれで…」タッタッタ
律(…おもしろいって言われた……)
多分大抵の人からしてみれば、ぶつかって謝って、ただそれだけって感じの話。
でも私には、楽しそうに笑ったその人の顔がとても印象に残って……
単に噛んだのを笑われたってだけかもしれない。
テンパってるのがうけただけかも……っていうか多分そうなんだろうな。
それでも私は、面白いって言ってもらえて嬉しかったんだ。
地味で暗いだけだった私なのに、人に笑いを与えられた。
もしかして私が変わろうと思えば……そういう意識を持って行動すれば、
私は変われるんじゃないか?今までの暗い私、
ただ澪のオマケでなんとなくいる私じゃなくて……
とにかくその時の私には、不思議とそう思えた。
―この高校では変わろう。自分を変えるんだ。
変わるんだ、私。
新しい学校生活の始まりという節目で気持ちが新たになっていたこともあり、
私はすんなりと自分を変える努力を始めることができた。
渋る澪を強引に誘って、いかにも“活発な女の子”がやりそうな軽音部に入った。
常に大きな声を出すように心掛けたし、笑顔を絶やさないようにした。
最初は澪も私の急な変貌ぶりに戸惑っていたけど、
私の変わりたいという意志を感じ取ってくれたのだろう、
徐々にこの新しい私を受け入れてくれた。
それからの高校生活は本当に楽しいものになった。
ムギや唯、そして梓。素晴らしい仲間にも出会って……
―でも二年目の文化祭を目前に控えた秋のある日、私は澪との間に小さな亀裂を生んでしまった。
律『お二人さん仲いーっすねーっ!』
ふとした拍子に友人に抱いた嫉妬の感情。
それが発端。
中学時代までの暗く地味な立場からの反動か、
私の友達に対する独占欲は思いの外強くなっていた。
どの友達にも、私の他にどんな友達が居ようとも“一番”は私であってほしい。
私が一番好かれていたい。
そういう気持ちを非常に強く持つようになっていた。
そんな中、澪が和と私よりも仲良さそうにしているのを見て、
どうしても我慢出来ずにちょっかいを出してしまったのだ。
しかもそれだけではあき足らず、文化祭まで日が無いのにも関わらず
仮病を使ってわざと欠席して澪の気を引こうとまでしてしまい、
結果として更に澪に愛想を尽かされることになってしまった。
結局文化祭当日まで澪との関係は修復されず、
リズム隊である私達の息がバラバラという惨事。
最悪の演奏をしてしまい、ライブは当然大失敗。
ライブに対する意気込みの強かった梓、
このメンバーで楽しくやる事にこだわりを見せていたムギは
当然のように怒り、落ち込み、私の小さな嫉妬から起きた歪みは
この二人との間にも亀裂を生むに至った。
私はなんとか皆と元の関係に戻ろうと努めて明るく能天気に振舞ってみたが、
それも逆効果になった。冷静に考えてみればこうなる原因を作った本人に
そんな態度をされれば尚更腹が立つというのは当然のことだったのだが…
高校に入ってから急に自身の在り方を変えた私には
いまいちそれが掴めていなかった。
明るく振舞って高校生活はいい方向に変わったのだ、
今回もそうしていれば良くなるだろう、との安易な考えを行動に出してしまった。
以降、私は澪やムギ、梓に自分勝手で空気の読めない嫉妬狂いな人間として
部内で嫌われる存在になってしまった。
ただ一人、唯だけは変わらずにいてくれている。
私のつまらないギャグにも大笑いして……
多分、以前の雰囲気を部に取り戻したいんだろうな。
ここまでの経緯は、大体こんなところである。
澪「…まぁ今日はこの辺であがるか」
紬「そうね」
梓「そこそこでしたね。やっぱり課題は律先輩のドラムですか」チラ
律「……」
律「…よーっし!じゃあ帰るかぁ~っ!!」
紬「……(相変わらずうざいテンションね)」
澪「……ハァ~…(疲れてるんだよ、ったく…)」
律「……」
律「あっ、私教室に忘れ物してたんだ。ちょっと取ってk」
澪「そうか。じゃ私ら先に帰るわ」
律「」
紬「行きましょう」ガチャ
梓「……」テクテク
唯「あ……」
澪「行くぞ唯」グイッ
唯「あぅ」
…
律「……はは…」トボトボ
律「忘れてたプリント……あったあった」ゴソッ
律「はぁ~……じゃ、帰るか……」
律「……何がいけないのかなぁ。やっぱりつまんないのかな私」
律「…しちさんっ!」キュッ
律「はは、これいいかも。今度やってみよう」
律「……でもやっぱりつまんないって思われるかなぁ…」
律「…………」
律「……どうして私…こんななんだろ……ぅう……」
「おもしろいよぉ!」
律「えっ!?」
唯「へへ、今のもう一回やってよりっちゃん!」
律「ゆ、唯なんで……帰ったんじゃ?」
唯「あー、えと……私も教室に忘れ物しちゃってたんだぁ」モジモジ
律「なんだそうだったのかー?はは、唯もドジだなぁ~」
唯「えへへすいやせん…」ポリポリ
唯「……」
律「どした、忘れ物あったんだろ?早いとこ取ってかないと、その……」
律「み、澪達に置いてかれるんじゃないか……?」
唯「……」ギュッ
律「ん?なんだ人の腕掴んで」
唯「わ、忘れ物はね、りっちゃんだよ」
律「え」
唯「りっちゃんが私のわすれもの……一緒に帰ろう?」
律「!!……唯……」
唯「えへへへ、りっちゃ~ん」
律「ゆ、唯ぃ~っ……ぅう……グスッ」
唯「ほらさっきのもう一回やってよぉ」
律「グスン… ははっ!いいぞ~……しちさん!」キュッ
唯「あはははおもしろいよぉ!りっちゃん最高だよ~w」
律「そうかぁ?ははは…唯だけだよ笑ってくれるの…ありがとな」ギュウ
唯「そ、そんな」
律「ほんとありがとうな……いっつも唯には救われてるんだ私…」
唯「……」ポンポン
律「ぁうう……唯ぃい~……」
唯「あっ、今日りっちゃんお茶できなかったし帰りにどこか寄ろうよぉ。私おごるよ!」
律「ほ、ほんと?でも悪いよ…」
唯「わるくないよ!まかせてよ~」
律「へへ…それならお言葉に甘えちゃおうかな……」
唯「うん!」
唯「あっ、ここだよここ~。前からおしゃれだなって思ってたんだぁ」
律「おー、いいじゃんいいじゃん!…あ、でもこういうとこ高いんじゃないか…?」
唯「大丈夫だよー、りっちゃん私のおごりだからって気にしないでいいからね!」
律「そ、そうかー?(足りなくなって憂ちゃん呼び出すとかならないだろうな)」
唯「入っちゃうよーん」
カラカラーン♪
店員「いらっしゃいませー。二名様ですか?」
唯「そうです~」
店員「ではこちらのせk」
律「…あっ!」
唯「何りっちゃんどうしたの?…あっ」
澪「よう唯。…と、なんかもう一人」
紬「あらあら」
梓「……」
唯「み、みんなもここでお茶してたんだぁ」
澪「……あ、店員さんその子私らのツレなんで。ほら唯ここあと一人座れるぞ」ポンポン
律「……」
唯「い、いい!私りっちゃんとお茶しにきたんだ」
澪「…唯ィ……」ジロ
唯「あぅっ……」
店員「(何この空気)あ、あの~」
唯「えと、私達やっぱり」
律「いいよ唯、ここでいい。あ、二名ですから」
店員「ではこちらの席へどうぞ」
唯「……(澪ちゃん達のとなりだ…一応仕切りあるけど…)」
律「ふぅー」ドスン
澪「チッ」
唯「ど、どうしよっかなー何にしよう!りっちゃん何でもいいよぉ」
律「えーっとじゃあ私これ…ハーブティーのセットで」
唯「おぉそれ良さそう!私これ頼むから分け合いっこしようよぉ~」
律「へへ、いいぞぉ」
唯「りっちゃんお菓子ネタはとかはないのー?」
律「ん?うーんお菓子ネタかぁ…そうだなー……」
律「ここにあったオレオを食べたのは誰じゃあ!」
律「オレオレ!なんつって」
唯「あははははりっちゃんおもしろすぎるよぉお~!」
律「そうか~?//そんなによかったかぁ」
最終更新:2010年01月24日 00:46