律「あいつがその気なら、私だってもっと高い金額を請求してやる!!」

唯「やめなよ~りっちゃん。澪ちゃんなりの冗談だよ、きっと」

律「ケンカしてるんだから冗談は通じません!!」

梓(子供だな~)

律(……でも今まで何回もケンカしてきたけど、その都度お互いの最初の一言は真面目なものだった)

律(それに、澪がこんな子供じみたことするとも考えられない……)

律(何か……、意味があるんじゃ……)

律「……」

紬「りっちゃん?」

律(待てよ……。よくよく見てみたら数字と数字の間にスペースがある)

律「……」

律「もしかして……!?」

唯「何かわかったの?」

律「誰か元素の周期表持ってない?」


梓「化学の教科書なら」

律「サンキュー。おっ、最後のページに付いてんじゃん」

律「どれどれ?」

紬「あ、そっか。元素記号でメッセージを送ったって訳ね」

律「たぶんそうだと思う。まったく澪は照れ屋さんなんだから~」

梓「でも、なんでそんな回りくどいことを……」

唯「きっと彼にバレないようにだよ
  澪ちゃんからりっちゃんへ愛のメッセージが込められているんだよ~」

梓「は、はぁ……、そうですか」

唯「私もあずにゃんに愛のメッセージ送ったことあるけど、憂に携帯確認されて怒られたんだ~
  『お姉ちゃん! 女の子同士でだなんて許しません!!』って」

梓「確かに何度か気持ち悪いメールを貰ったことありましたが……」

紬「女の子同士の何がいけないのかしら?」

梓「いや、ツッコミどころはそこじゃなくって
  憂が唯先輩の携帯をいちいち確認しているってとこじゃないかと」

唯「だから、澪ちゃんも彼に携帯を見られても言い逃れできるように暗号で送ったんだよ」

梓「余計に怪しまれませんか?」


律「もう、お前らうるさいぞ。えっと『16 8 16』で区切られてるから……」

律「……硫黄のS、酸素のOで、もひとつSっと」

紬「あれっ? それって……」

唯「SOS……」

梓「助けてってこと……、ですかね?」

   「・・・・・」

律「澪っ!!!!」ダッ!!

唯「ああっ! りっちゃん!?」

紬「お、追いかけましょ!!」

梓「は、はいっ!!」








律(澪、澪、、、、、澪ッ!!)





カラオケ店

律「ハァ、ハァ……。あ、あのっ!!」

「いらっしゃいませ」

律「秋山澪か男って名前で部屋とってませんか? 友達なんです」

「お待ちください……、はい男様のお名前で230号室に」

律「澪っ!! 待ってろよ!!」

「ああっ! お客様!?」

唯「ハァハァ……、りっちゃん早いよ……」

紬「店員さん! 今からこの店私たちの貸切にしてください!!」

「えっ!? しかしまだ他のお客様が……」

紬「いくら欲しいのかしら?」バサッ!!

梓「束っ!?」

「よ、よろこんでっ!!」



230号室

律「澪っ!!」バン!!

律「……!?」

律「そ、そんな……!!」

唯「りっちゃんどうしたの!?」

紬「澪ちゃんは無事?」

梓「!? これは……酷い……」

律「お、男が……」






男「……」







律「死んでる……」


 ・ ・ ・ ・ ・

紬「お店の人に警察を呼んでもらったわ……」

唯「いったいどういう事なのかな……」

梓「部屋に男さんの死体だけで、澪先輩は姿も形もない……」

律「澪……、変な事件に巻き込まれたんじゃ……」

紬「そう言えば! 澪ちゃんからのメール、続きあったんじゃない?」

律「そ、そうだ!? きっとそれも暗号に……!!」

梓「一応、化学の教科書持ってきてます!!」

律「でかした梓!!」

  カチャッ

梓(ん?何か踏んだ……?)

梓(こ、これはっ!? 澪ちゃんファンクラブの会員カード!? なんでこんなところに?)

梓(しかも会員No.0001 すなわち曽我部名誉会長のだ!!)

梓(い、嫌な予感しかしない……)


律「え~っと、さっきのメールは……」

律「73 53 53 19 92 16 8 92 19 8」

紬「当てはめていくと……、Ta I I K U S O U K O」

唯「たいいくそうこ?」

梓「!?」

梓(以前、夕暮れの体育倉庫に二人っきりで閉じ込められてみたかったって言ってた)

梓(決まりだ!!)

梓「行きましょう!! 色々と手遅れになる前に!!」

唯「でもどこの体育倉庫かわかんないよ」

梓「桜高です! 間違いありません!!」

律「あ、梓がそこまで言うなら」

梓(曽我部先輩、早まらないでくださいっ!!)


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────────
────

時は遡り律たちがカラオケ店へやってくる2時間程前────


男「ほらほら、抵抗しないとやられちゃうよ?」

澪「やめてっ!!」

男「そうそう暴れろ暴れろ。汗が滲んできたほうが色っぽく映るからさ♪」

澪「嫌っ!!」

男「ああ~、まだ挿入もしてね~のになんか気持ちよく……、あれっ?」

男「おかしいな……、なんで俺が眠……た……」

男「zzzzzzzz……」

澪「た、助か……た……」

澪「zzzzzzzz……」


 ・ ・ ・ ・ ・

恵「ふふふっ、さっきは2人の幸せを願うってカッコつけちゃったけど……」

恵「私の秋山さんにあんなにもくっつくなんてやっぱり許せない!!」

恵「2度目のドリンク注文の時に、裏サイトで仕入れたこの睡眠薬をたっぷりと入れたから」

恵「フリータイム時間終了まではグッスリのはず」

恵「何も出来ずにお客さんもうお時間ですよ~。本日のデートの終点で~す。ザマーミロwwww」

女店員「曽我部さん、次の勤務の人来たからそろそろ上がりね」

恵「う、うん」

女店員「私、最後にトイレチェックしてくるから」

恵「わ、わかった」

女店員「また後でね」

恵「……」

恵「私も一応さっきの部屋チェックしてくるか……」

恵「そろそろ薬も効いてきた頃でしょ」




230号室

  ガチャ

恵「!?」

恵「お、男が秋山さんに覆いかぶさってる!?」

恵「しかも、着衣に乱れがっ!!」

恵「秋山さん……、目から涙……? まさか無理やり!?」

恵「……」ゴゴゴゴゴゴ……!!

恵「あ~も~いいや! 殺っちゃおう♪殺っちゃおう♪殺っちゃおう♪」

恵の頭の中の天使と悪魔(ちなみにイメージモデルは澪)『そう、殺っちゃお~う♪\(^o^)/』

  ガシッ! ボカッ!

 男は死んだ……


 ・ ・ ・ ・ ・

恵「はぁ、はぁ……」

恵「や、殺っちゃった……」

恵「とりあえずこんな部屋に秋山さんを置いておけない……!!」

恵「よいしょ、よいしょ……」

 ・ ・ ・ ・ ・

女店員「あ、曽我部さんもう上がりの時間……って!?」

女店員「ど、どうしたの!? その子?」

恵「わ、私の高校の後輩でなんか独りでカラオケに来ててね」

恵「でもずっと徹夜続きだって言ってたから心配して部屋見に行ったら案の定寝てて」

恵「このまま置いてくのも可哀想だから、この子連れて帰るわ」

恵「悪いけど電話でタクシー呼んでくれない? それとさっきの約束はまた今度ね」

女店員「え、ええいいわよ。話はいつでも出来るしね」

恵「ありがとう、本当にごめんね」

女店員「うふふっ。気にしないで。いい先輩さんね」


 ・ ・ ・ ・ ・

恵「よいしょ、っと」

澪「zzzzzzz……」

運ちゃん「どちらまで?」

恵「さ、桜ヶ丘高校までお願いします」

  ブロロロロロロ……

恵(も、もうここまできたら引き下がれないわ……)

恵(行けるとこまで行ってやるんだから……)

恵(手始めに夕暮れの体育倉庫で……)

恵「ぐ、ぐふふふふふ////」

運ちゃん(なんか変な客乗せちゃったな~……)


────
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澪「う、う~ん……」

恵「気付いたかしら……?」

澪「曽我部……先輩?」

澪「ここは……?」

澪「!? そうだ! 私、あの男に騙されて!!」

恵「安心して秋山さん、もうあいつはこの世にいないわ」

澪「へっ?」

恵「これからはずっと私があなたを守ってあげる」

恵「あなたをずっとそばで見ててあげる」

澪「何を言って……」

澪「って、なんで私、後ろ手で縛られてるんですか!?」

恵「……」

澪「それにここは学校の体育倉庫!?」


恵「そうよ、私の夢だったの。ついに二人っきりね……」

澪「お願いです、今すぐ解放してください」

恵「わ、私は秋山さんを助けてあげたのよ?」

澪「それは……、ありがとうございます。でも、なんで私は縛られているんですか?」

恵「だって……」

澪「私をどうするつもりなんですか?」

恵「ど、どうもしないわ。ずっと一緒にいるの」

澪(埒があかない……か)

澪「……」カチ、カチ

恵「なにうしろでコソコソしてるの!?」

澪「!?」

恵「見せなさいっ!!」

澪「くっ……!!」

恵「携帯? メール? 送信済み……。相手は……田井中律、確か幼馴染の……」


恵「ふふふっ。でも上手く打てなかったようね」

恵「ほら、全部数字になっちゃってるわよ」

恵「これじゃあ、イタズラだと思って助けなんて来ないわね」

澪「……」

恵「無理もないわ、だってあなたさっきからずっと震えてるんですもの」

恵「寒いの? だったら、私が暖めてあげるわ。体温で」

恵「お願いだから、ちょっとの間だけ抱きしめさせてちょうだい」

恵「あんな男のような酷いことはしないから……」

澪「……」

恵「秋山さん……。私あなたのために犯罪者になっちゃった……」

恵「だけど、全然後悔なんてしてないわ……」

恵「だってあなたを手に入れる事ができたんですもの」

恵「う、うふふふふふふふへへへへへへひひひひひひ!!」

澪(く、狂ってる……!!)

澪(お願いだ……、律! 気付いてくれ!!)


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律「さわちゃ~ん!!」

さわ子「こらっ、職員室ではそんな大声出さないの」

唯「さわちゃん! 今はそんなこと言ってる場合じゃないの!!」

さわ子「なに? どういう事? それにあなた達息も上がって汗だくじゃない……
    はっは~ん。さてはライブの体力付けるために走ってたのね?」

さわ子「えらいわ~。やっぱり顧問がしっかりしてると自主性も育つのねっ!!」

梓「自主性は育ちまくりです。なんせ超放任主義の顧問なもんで」

紬「さわ子先生! 体育倉庫の鍵ありますか?」

さわ子「体育倉庫の鍵? まだ運動が足らないの?」

律「いいから教えて!」

さわ子「な、何よ……。鍵の類だったらあっちに纏めて吊り下がってるわよ」

律「よし!」


律「え~っと……」

唯「りっちゃん、あった?」

律「……ない」

教師「ああ、体育倉庫の鍵ならちょっと前に曽我部が来て持っていったぞ」

教師「なんでも、倉庫に大事な忘れ物があるらしくってな」

教師「生徒会長でしっかり者だったけど、結構おっちょこちょいなとこもあるんだな~」

梓「やっぱり!!」

唯「あずにゃん!?」

梓「急ぎましょう!!」

紬「梓ちゃん、やっぱりってどういう……?」

梓「後で説明します!!」

梓「とにかく今は急いで体育倉庫へ!!」

律「お、おうっ!!」


 ・ ・ ・ ・ ・

澪(もう、どれくらいの時間抱きつかれてるだろう……)

澪(本当に、これ以上は何もしてこないんだな……)

澪(でも……、結局律も助けにきてくれない……)

澪(メールの意味、わかってくれなかったのかな……)

恵「あ、秋山さん」

澪「ひ、ひゃい!!」

恵「あ、暖まったかしら?」

澪「あ、は、はい。もう充分……」

恵「そう……、よかった……」

澪(本当に暖めようとしてくれてたんだ……。私の事を心配して……
  やり方は極端だけど、実は良い人なんじゃ……)

恵「じゃあ、お願い聞いてくれない?」

澪「私にできる事なら……」

恵「パンツ見せて」

澪(前言撤回)

澪「い、嫌です」

恵「いいじゃない! 減るもんじゃないんだから」

澪「そういう問題じゃありません!」

恵「チラッとでいいから、チラッと。ほら暖簾から店主が『まいど!』ってするみたいに」

澪「変な例えしないでください!!」

恵「じゃあ居酒屋で客が『やってる?』って感じでもいいわ!!」

澪「一緒です!!」

恵「そんな殺生なっ!!」

澪(やっぱり変態だっ!!)

律「みお~~~~!!」

澪「律っ!!」

律「ここを開けろ~!!」ドンドン!!

恵「無駄よ! 内側からつっかえ棒で扉を開かなくしてるんだから!!」

律「くっそ~!!」

澪「律!! 私は無事だから!!」


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最終更新:2010年04月09日 00:50