唯「あれっ、澪ちゃんなんでメガネかけてんの?」
風子「え、いや私は……」
唯「あっ、これ借りてた漫画!
面白かったから続きも貸してね!」
風子「え、あの……」
唯「じゃね~澪ちゃ~ん!」たたっ
風子「いや私は秋山さんじゃ……
あ……行ってしまった……」
風子「漫画を押し付けられてしまったけど……
私から秋山さんに返した方がいいかな……
今さら平沢さんの間違いを訂正しに行くのも気まずいし」
風子「そういやなんの漫画を貸し借りしてんだろ」がさごそ
『汁まみれ姉妹~近親レズ姦2・もう止まれない~』
風子「え゛っ……」
風子「ま、まさかこんなのを読んでたなんて……
秋山さんも平沢さんも、
こういうのと縁遠い感じに見えたけど」
風子「これ秋山さんに返さないと……
あ、いや……私にこれを見られたって分かったら、
秋山さんきっと恥ずかしいよね……
多分平沢さんとの間だけの秘密のやりとりなんだろうし」
風子「よし……すきを見て、
平沢秋山両名にバレないように、
こっそりと……秋山さんの机に入れておこう」
教室「わいわいがやがや」
風子「たしか秋山さんの席はここだったはず」
風子「よし、バレないように」
風子「こっそりと」
風子「……入れておこう」スッ
澪「あれ、何やってるの?」
風子「うゎっ!?」
澪「な……なにか私の机に入れなかった?」
風子「い、い、い、い、入れてな……
いいいや入れたけど、あのそれは
平沢さんから預かったというか……
あ、中身は見てない、見てないから」
澪「唯からの預かり物……?
なんだろう……」がさごそ
風子「あっ、ここで見ない方が……」
澪「えっと、しるまみれしまい……きんしんれず……
って、なんだこれっ!」
風子「だから平沢さんからの」
澪「ゆ、唯がこんなもの私によこすわけないだろっ……!
変な冗談はやめてっ」
風子「えっ、でっ、でも……」
澪「ほらっ、これ持ってって!
もう二度と私にこんなの見せないでっ!」ぐいっ
風子「え、ええぇ~……」
風子「私の手元に戻ってきてしまった……
謎のエロ本が……」
風子「秋山さんはこれについて知らない感じだったな……
もしかして平沢さんの間違いなのかな」
風子「よし、もう今のうちに平沢さんに返しに行こう……
ついでに間違ってたことも説明しとこう、
私の名前とこのエロ本について……」
風子「こういうのは時間が経てば経つほど
言いにくくなっちゃうからね……」
風子「あっ、平沢さ~……」
キーンコーンカーンコーン
先生「席について~」
風子「うっ……」
――
――――
――――――――
キーンコーンカーンコーン
先生「はい、今日はここまで~」
風子「はー、やっと終わった。
よーし、こんどこそ平沢さんに……」
唯(う~、便所便所便所~!!)だだだだだだっ
風子「あっ、待って、平沢さん……!」がたっ
廊下「わいわいがやがや」
風子「うう、見失ってしまった……
どこ行っちゃったんだろ」
憂「あっ、澪さん!」
風子「平沢さん!」
憂「ちょうど澪さんに会えて良かった~。
あの、これお弁当なんですけど、
渡しといてもらえませんか?」
風子「えっ……渡すって、誰に?」
憂「も~、そんなの分かりきったことじゃないですか~。
じゃ、お願いしますね!」たたっ
風子「あっ、ちょっと平沢さんっ、どこ行くの……!
私はあなたに返さなきゃいけないものが……ぁぁぁ」
教室。
キーンコーンカーンコーン
先生「授業始めるぞー」
唯「ふぃーすっきりすっきり」
風子「あ、平沢さん帰ってきた……
もう、どこ行ってたんだろ……
また話しそびれちゃったよ」
風子「私の手元にあるのは、
謎のエロ本と、誰かに渡さなきゃいけないお弁当……
どっちも秋山さんと勘違いされて、
平沢さんから押し付けられたもの……」
風子「お弁当はあとで秋山さんに渡せば良いか……
エロ本は平沢さんに返して、
ちゃんと間違いを説明しないとなあ」
先生「こら高橋、何を一人でブツブツ言っとる」
風子「あっ、す、すいませ……」
キーンコーンカーンコーン
風子「昼休みか……」
おさげ「風子~、お昼食べよ」
風子「あ、うん」
おさげ「? ……なんでお弁当が二つもあるの?」
風子「誰かに渡さなきゃいけない……らしいの」
おさげ「……らしいって?」
風子「私にもよく分からない……
ちょっと待ってて」
おさげ「うん」
律「澪唯ムギ和~、昼飯食おうぜ~」
和「もうおなかペコペコだわ」
紬「数学の時間ってお腹すくわよね」
澪「あ、私、購買でパン買ってくる」
律「いってら~」
唯「あれー、おっかしいな……
お弁当がないよ~」
和「忘れてきたんじゃない?」
唯「多分そうかも」
紬「おっちょこちょいね~」
風子「あの~……」
律「ん? 澪、学食行ったんじゃないのか?」
紬「もう戻ってきたの?」
唯「財布忘れたとか」
和「ていうか、なんでメガネかけてるの?」
風子(なんでこの人たちはクラスメイトの顔を覚えていないの……)
律「あれ、弁当持ってんじゃん澪」
風子「ああ、これは……
秋山さんに渡そうと……」
律「何いってんだよ、秋山はお前だろ~」
風子「いや、あのね、私は……」
唯「あっ! それ私のお弁当じゃん!」
和「へ?」
風子「え? ええそうよ、
これはもともと平沢さんが持ってたやつで……」
唯「なんで私のお弁当を澪ちゃんが持ってるの?
返してよ!」
風子「えっ、いや、だから私は……」
律「おい、澪……お前、唯の弁当を……」
風子「あ、いや違うの、盗ったとかじゃないの、
平沢さんが私に渡してきて……」
唯「渡したりなんかしてないよ!
わけわかんない嘘つかないでよ、澪ちゃん!」
風子「だから私は~……」
和「澪、素直に自分の非を認めて謝った方がいいわよ」
紬「そうよ、澪ちゃん……今なら許してもらえるわ」
風子「もう……私の話を聞いてよ……」
唯「聞きたくないよ、澪ちゃんの話なんか」
和「唯……」
唯「もうどっか行ってよ!
澪ちゃんなんか大嫌い!!」
風子「わ……分かったわよっ……!」たたっ
廊下。
風子「ああーもうダメだ、
私のせいであらぬ誤解を産んでしまった……」
風子「秋山さんに謝っとかないと……
どこ行ったんだろう……食堂かな」
憂「あ、澪さん。何やってるんですか、こんなとこで」
風子「平沢さん……平沢さんこそどうしたの……
教室でお昼食べてたんじゃ……」
憂「? そうですけど。
なんで知ってるんですか?」
風子(なんで敬語なんだろ、しかもなんかそっけない……
あ、さっき私が怒らせちゃったから距離をとってるのか……
まず謝って誤解を解かないとね……)
風子「実はね……私、秋山さんじゃないの。
顔はよく似てるけど、別人なんだ。
ほら、生徒手帳」
憂「えっと……高橋、風子さん……
あ、そうだったんですか~。
すみません、間違えちゃって……
メガネかけてるからおかしいなーとは思ったんですよ」
風子「あはは……」
憂「いやーそれにしてもホントそっくりですね」
風子「それと、さっき渡されたお弁当も間違いだから」
憂「あ、そっか……
ごめんなさい、意味分かんなかったですよね、
いきなりお弁当押し付けられて」
風子「いいのよ、気にしないで。
誤解が解けたなら、もうそれでいいから」
憂「はい、すみませんでした」
風子「あ、そうだ、友達にも教えといてあげて。
私と秋山さんは別人だって」
憂「へ? はあ……」
(友達……って梓ちゃんたちかな?
なんで教える必要があるんだろ)
キーンコーンカーンコーン
風子「あら、もう昼休み終わり?」
憂「今週は昼休み短縮週間で、いつもより20分短いんですよ。
じゃあ私、もう行きますね!」たたっ
風子「えっ、教室は向こうなのに、どこ行くんだろ……
まあいっか、間違いは正されたことだし」
風子「あ、エロ本のこと言うの忘れてた……
後で言えばいいか……」
教室。
風子「ふー、間に合った」
おさげ「なにやってたの?
軽音部の子たちと喧嘩してたみたいだけど」
風子「ああ、あれはもういいの、
誤解は解消されたから」
おさげ「ふうん?」
風子「あ、そういやお昼ごはん食べそこねちゃった」
おさげ「授業中に食べれば~?」
風子「無理だよ、あはは」
風子(心に引っかかっていたものが
ひとつ無くなっただけでこんなにもスッとするなんて……
あとはエロ本を返せばもう全部おしまいね……)
――
――――
――――――――
キーンコーンカーンコーン
澪「あー、やっと放課後か。
唯、ムギ、律、部活行こう」
澪「唯?」
律「おい、澪……
あんなことがあったのに、何を気軽に……」
澪「あんなことって?」
紬「昼休みのアレよ、忘れたの?」
澪「昼休み? 昼休みは私はずっと購買に……」
律「は? なにバカなこと言ってんだよ、
購買行ったと思ったらすぐ戻ってきたじゃねーか」
紬「そしてその手には唯ちゃんのお弁当が」
澪「はあ? さっきから何の話をしてるんだよ?
私は今日のお昼休みはずっと購買でパンの争奪戦をしてたんだよ。
唯のお弁当なんて知らないよ」
律「お前こそ何の話をしてるんだ!
私たちは確かに見たんだよ!
昼休みに、この教室で、お前を!
なあムギ、唯」
唯「うん」
紬「見たわ」
澪「はあ~?」
律「和も見たよな?」
和「ええ、ばっちり見たわ。
澪、言い逃れようとしたって無駄よ。
謝るなら今のうちなのよ」
澪「何言ってるんだ、みんな……
冗談にしちゃタチが悪いよ……」
律「冗談なんかじゃないよ」
紬「そうよ澪ちゃん」
澪「そうか……分かったぞ……
みんなで私をはめようとしてるんだろ……
はは、そうはいかないぞ……」
律「み、澪?」
澪「わ、私はお前らの策なんかにはハマらないからな……
私を陥れようとしたって、無駄だからなっ……!」だだだっ
律「おい、澪!! まてっ……!」
最終更新:2010年05月03日 22:05