紬「……行っちゃったね」
和「はあ、素直に謝ればいいものを」
律「うーん、澪はこうなると頑固だからなあ……
どうしたもんか」
紬「とりあえず部活行きましょ」
律「そうだな……唯はどうする?」
唯「ん……後で行くよ」
律「そっか……じゃあ先行ってるな」
紬「急がなくていいから、後で来てね、唯ちゃん。
おいしい紅茶を用意しとくから」
唯「うん……」
唯「……」
唯「……はあ」
唯(なんで澪ちゃんはあんなことしたんだろ……
私のお弁当を盗むなんて……)
唯(ただの悪ふざけなんかじゃないよね……
もしかして、私のこと嫌いになったのかな……
私、なんか嫌われるようなことしたかな……
澪ちゃん……)
風子「平沢さん!」
唯「!」
風子「あー、よかった。
やっとゆっくり話できるよ……」
唯「あ……みんながいなくなるの待ってたの?」
風子「うん、そうなの。
まあみんながいるとこでは話しづらいというか」
唯「え……な、なに?
謝ってくれるんなら……
別にみんなの前でも……」
風子「謝る? なんで?
昼休みのことはもうお互いに誤解を解いたじゃない」
唯「はっ!?」
風子「実はね、これを……」
唯「なにこれ、本?」
風子「たしかに渡したから。
自分で返しといてね、じゃあね~」たたっ
唯「…………は?」
唯「え、どういうこと?
お互いに誤解は解いたって……
昼休み以降まともに澪ちゃんと話してもいないのに」
唯「それに、この本……
なんなんだろう……」がさごそ
『汁まみれ姉妹~近親レズ姦2・もう止まれない~』
唯「え゛っ……なにこれ……
みんながいるとこでは話しづらいって……
こういうこと?」
唯「どういうつもりなんだろ、澪ちゃん。
私のお弁当盗って、謝る気もなくて、
あげくこんな本を私に押し付けて」
唯「本当に私のこと……
嫌いになっちゃったのかな……」
唯「きっとそうだよね、
嫌いな相手じゃなきゃこんなことしないよね」
唯「何か嫌われるようなことしたかな……
最近はちゃんと練習もしてるし、
澪ちゃんのお菓子は勝手に食べたりしてないし、
借りてた漫画は今朝ちゃんと返したし」
唯「はあ……澪ちゃん……
せめて私のどこが嫌いか、
言ってくれればいいのに……」
唯「部活行こ……」
昇降口。
風子「ふー、心残りは全部解消されたーっと」
憂「あ、高橋さん!」
風子「あっ、平沢さん、早いわね、
さっき教室で話してたとこなのに……」
憂「教室で話し?」
風子「そうよ、話してたじゃない。
あの本も返したし」
憂「本って?」
風子「あの本よ、あの本」
憂「なんのことですか?」
風子「もう、とぼけないでよ。
あれを言わせる気……?」
憂「言ってもらわないと分かんないんですけど」
風子「えー、もう、言いたくないわよ、
あんな恥ずかしいタイトル……」
憂「言ってくださいよ、まわりに誰もいませんから」
風子「えー、じゃあ言うわよ……
確か、えっと……
『汁まみれ姉妹~近親レズ姦2・もう止まれない~』
……だったかな……もう、なんてこと言わせるのよ」
憂「ちょ、ちょっと待ってください……
なんでその本を知ってるんですか……」
風子「え? だから、平沢さんが私を
秋山さんと間違えて返してきたんじゃない」
憂「…………」
風子「いやー、でもまさか平沢さんと秋山さんが
あんな趣味だったとは思わなかったわ」
憂「……」
風子「あっでも安心して、
このことは誰にも言ってないし、
私は趣味で人を見る目を変えたりしないから」
憂「……ひとつ、聞いてもいいですか」
風子「何?」
憂「私が高橋さんにその本を渡したとき……
私は髪をくくっていましたか」
風子「そういえばくくってなかったわ。
ていうか何でくくったりほどいたりしてるの?」
憂「……わかりました」
風子「なにが?」
憂「全てが」だだっ
風子「ちょ、平沢さん!?」
女子トイレ。
澪「はあ……
なんなんだよ、みんな……
私のことをハメようとして……」
澪「私……嫌われちゃったのかな。
そうだよな、
私なんて好かれるわけないよな……」
澪「服装も髪型もダサいし、
お喋りも下手だし、
そのくせ暴力的……」
澪「ははっ、よく考えたら嫌われる要素ばっかりだな……」
澪「もう部活辞めよう……
さよならみんな……」
和「あっ、澪」
澪「の、和……」
和「どうしたのよ、澪。
ただでさえ暗いのに余計暗くなって」
澪「酷いな……」
和「ちゃんと唯に謝った?」
澪「謝るも何も……私は何もしてないんだ」
和「まだそんなこと言って」
澪「ほんとなんだよ、和!
私はなんにもやってない!
みんなこそ、私を陥れようとしてんだろ!
そうなんだろ、私のことを嫌いで……!」
和「ちょ、ちょっと落ち着いて。
陥れようとなんてしてないわよ……」
澪「で、でもっ……
私は何もやってないのにっ……」
和「分かった、分かったから。
何もやってないって言うんなら、
ちゃんと唯たちにそれを説明した方がいいわ」
澪「でも聞いてくれるわけないよ……」
和「とりあえず話だけでもしてみなさいよ。
お互いの言い分を話した上で、
そこからミゾを埋めていくことが大事なのよ」
澪「うう……」
和「ほら、音楽室に行きなさい。
まともに話を聞いてくれないようだったら、
生徒会室に来て私を呼びなさい、
一緒に行ってあげるから」
澪「うん……ありがとう、和。
行ってみるよ……」
和「頑張ってね。
仲直りすることを祈ってるわ。
喧嘩してるあんなたたちなんて、
見ていたくないからね」
澪「うん……」
音楽室。
ガチャ
唯「……」
律「お、唯」
紬「よかった、来てくれて」
梓「こんにちは、先輩」
唯「うん……」
梓「? なんかあったんですか?」
律「まあ、澪と……ちょっとな」
梓「喧嘩ですか、珍しいですね。
早く仲直りしてくださいね」
唯「もう絶対無理だよ」
梓「えっ」
紬「ど、どしたの唯ちゃん」
唯「仲直りなんて出来ないよ……
澪ちゃん私のこと絶対嫌いだもん」
梓「な、なんでいきなり嫌われてんですか」
唯「それが分かんないんだよ、
ホントにいきなりだよ、いきなり」
梓「はぁ」
唯「まずお昼休みにね、
澪ちゃんが私のお弁当を盗ったの」
梓「なんで澪先輩が盗ったって分かったんですか」
唯「澪ちゃんが手に持ってたから」
梓「……はあ?」
唯「いや、本当なんだよ。
まるで見せびらかすみたいに持ってたの。
そうだよね、りっちゃん、ムギちゃん」
律「ああ、そうだな」
紬「隠す気なんて全然なさそうだったわね」
梓「へえ」
唯「それで理由を問い詰めてもわけのわかんない言い逃れして、
全然話にならなかったの」
律「あれはひどかったなー」
唯「あ、なんか話してたらムカムカしてきた……
ムギちゃん、紅茶!」
紬「はいどうぞ」
唯「そして極めつけが、さっきだよ」
律「さっき? 何かあったのか?」
唯「りっちゃんとムギちゃんが部活行った後、
澪ちゃんが教室に戻ってきて
私に話しかけてきたの」
律「ふん」
唯「そしたら何て言ったと思う?
『昼休みのことはもうお互いに誤解は解いた』とか言うの!
こっちは謝られも説明されてもいないのに!」
紬「澪ちゃん、どこまで頑固なのかしら」
梓「頑固にもほどがあるでしょう」
唯「そして、挙句にこれだよこれ!」ばんっ
律「なんだこの本」
梓「汁まみれ姉妹、近親レ……ぶ――――っ!!」
紬「まあまあまあまあまあまあまあまあまあまあ」
唯「澪ちゃんったら、私にこんな本を押し付けてきたんだよ!
ほんとにありえないよ!」
梓「ま、まさか澪先輩がこんなアレな……」
律「いやーでも、澪がこんな本を持ち歩くかあ?
表紙見ただけで卒倒しそうだが」
唯「でも実際に持ってきたんだから!」
梓「うーん……」
唯「どう思う? あずにゃん」
梓「えー……うーん、
にわかには信じがたい話ではありますね」
唯「信じてくれないの?」
梓「はあ、まあ……
あの澪先輩が、そんな子供じみた悪戯を
するとは思えません」
唯「でもホントにされたんだよ!」
梓「あ、そうだ……憂から聞いたんですけど、
澪先輩のソックリさんがいるらしいですね」
律「なんだそりゃ」
梓「ホントに澪先輩と瓜二つらしくて……」
ガチャ
澪「……」
紬「あ、噂をすれば」
唯「……澪ちゃん」
澪「ゆ、唯……
ちゃんと私の話を聞いてくれ」
唯「やだよ」
梓「聞いてあげましょうよ、唯先輩」
唯「…………あずにゃんがいうなら……」
最終更新:2010年05月03日 22:06