律「なんか…優しい味っていうか…」

澪「安心できる味っていうか…」

律「薄味なのに…すっごくおいしい…」

紬「これは…唯ちゃん?」

唯「うん、これはみんなが思っている通り、あずにゃんのスープだよ。」

澪「この味、何か秘密があるのか?」

唯「なーんも!」

律「えっ?」


唯「これはね、あずにゃんのお肉と野菜をじっくり煮込んだだけなの!」

唯「その代わりたっぷり3時間煮込んで、アクを丁寧に取ってね。」

唯「味付けは塩と、白こしょうを少しだけ」

唯「あずにゃんのお肉なら、これだけで最高のスープができるんだよ!」

澪「なるほど…」

ズズズ…

紬「どう?梓ちゃん」

梓「おいっしいです!私すごい!!」

律「おう!私梓のことみなおしたよ!」

梓「てへへー」 テレテレ


澪「…あっ、そういえば唯。このスープ、具は入ってないけど…」

唯「ふふふ、煮込んだ野菜も食べてみる?」 コト

律「へえ、キャベツか…」 ホロッ

パクッ

律「…あっ」

澪「…これ、朝食に食べたいなあ」

律「それ!そうそう、そんな感じする!!」

律「もうこれ野菜スープでいいじゃん、唯!!」

唯「えへへ、まあ今回は旨みの溶け出したスープを味わってほしかったからね」


澪「ふー」

律「最高のスープで口の中も洗い落とされたことだし、後半戦だー!」

唯「と、いいたいところだけど、もう折り返し地点だからね」

律「ええっ!?そんなあ!」

唯「冷静に探ってみてさ、今のお腹の具合はどんな感じ?」

律「ぺこぺこだよ!」

紬「うん…、もう少し入りそうな感じ」

澪「あんまりガツガツといける感じじゃあ、ないかな」

律「だああ、何言ってんだよ、軟弱物どもがぁ!」


梓「ぺこぺこ…です」

唯「ということで、こういう時の締めは!?」

律「カツ丼!」

澪「…お茶漬け?」

紬「おうどんとか…」

唯「お茶漬け正解!!」

律「えー!軽すぎ!」

澪「ふふん」

紬「お茶漬けね!いいんじゃない?」


唯「さて、じゃあ準備するかな」

デン

澪「肉!?」

紬「なるほど、肉茶漬けというわけね!」

律「むほっ!!」 キラキラ

唯「じゃあステーキよりも厚めに切ったブロック肉を焼いてくよー」

ジュー


ジャッ

唯「ほいできあがり」

律「えっ?あれ」

澪「早すぎ…レアすぎないか?それだと」

紬「あんまりレアだと、生臭さが…」

唯「ふふふ、まあ見てなよ」 スイー

律「あぁ…やっぱり生だよ、カツオの叩きみたい」

唯「ご飯に小口切りにした長ネギを大量にのせてー」 モサッ

唯「レアに焼いたあずにゃん肉をのせて」チョイチョイ

唯「だし汁を砂糖と塩、醤油で味を調えたものを」

唯「たーっと」 トポポポポ

唯「仕上げにおろし生姜をのっけて」 ピッ

唯「きざみ海苔をぱらぱらぱら~」

唯「わさびはお好みで取ってつけてね」 コト

唯「できあがり~!!」


4人「…ごくり」


澪「じゃあいただくよ」 スッ

律「あたしも!」 ガバッ

澪「あっ、こら!」

律「もう順番とかいいじゃん!」 シャバシャバシャバ

律「かーっ!うっめーっ!!」

紬「…へえ!これは」

澪「ショウガのおかげか、全然生臭くないな」

唯「お肉も昨日取ったやつだからねー」

律「そうか、しっかり臭み抜きしたからこんなにおいしいんだな!」

唯「それもあるけど、それだけじゃないよ!」


紬「…」 ニコニコ

澪「ん?何か知ってるって顔だな、ムギ」

紬「うーん…お肉はね、新鮮なのがいいってわけじゃないのよ」

律「ええっ?新鮮なのが良いのは当たり前だろ?」

唯「お肉はね、取ってから時間を置いたほうがおいしくなるんだよ?」

律「えー?うっそだあ」

唯「切り落とされたお肉は、時間が経つにつれてお肉の中の酵素の力でおいしくなるの!」

唯「酵素はお肉を柔らかくしたり、旨み成分のアミノ酸を作ってくれたりするんだよ!」

唯「そしてこのお肉は昨日あずにゃんから切り落としたもの…」

紬「今まさに熟成のピークを迎えているというわけね」

唯「その通り!」

澪「なるほど、だからレアでもこんなに美味しくたべられるわけかー」 ズズズ

律「よくわかんないけどうまいからいいや!」シャババ


梓「…あれ、じゃあ最初のリアリティがどうこうって……」

ズズズ…

紬「ああ、お汁に溶け出したお肉の旨みが、たまらないわ」

律「ああ…もうなぃ…もっと飲みたいのに…」 ペロペロ

澪「こら律!はしたないぞ!もう…」 ウズウズ

梓「……」

律「なあ唯!もういっぱいちょうだい!もういっぱい!」

唯「うーん、同じ料理を2回出すのは私のポリシーに反するんだよねぇ」

律「そんなあ!後生だからぁ!」

唯「仕方ないなあ」


唯「じゃあ、これでも食べてなよ」 ネト

律「え………なにこれ」

澪「ご飯の上に…」

紬「…お味噌ね。これは」

律「ちょ、唯!おまえなあ!!」

唯「まあまありっちゃん落ち着いて。こっちはさっきより薄味のおだしをかけて…」

トポポポポ…

律「うん…?」

唯「ほぐして食べてね」

律「ねこまんまじゃねえか!!」 バン

律「あたしはもっと、こうなぁ…」

ズズ…

紬「…うん、素晴らしいわね、これは」

律「む、ムギ!?」

ズッ

澪「へえ…肉味噌か」

律「に、にくみそっ!?」

ズズズッ シャバババ

律「うっ、はあぁぁぁっ!!うんまーい!!」

唯「ふふふ」 ニコニコ


唯「これは、あずにゃんのひき肉を炒めてね」

唯「お酒とみりんを加えて煮詰めて、」

唯「それに八丁味噌とコチュジャンを加えて甘辛く仕上げた特製肉味噌だよ!」

律「あぁあん、たまんなぁい!!」 ジュビドゥバー

澪「お茶漬けもいいけど、これでご飯食べたいなぁ」 シャバシャバ

律「ああん、それもいぃーん!!」 ジュルッビドゥー


律「ぷはー」

澪「さすがに満足したろ?律」

唯「肉味噌とお茶漬けは別料理ってことで、ご飯もう一杯ワシワシしたからねー」

律「わらわは満足でおぢゃりまする」

澪「どこの出だ、お前は」

紬「満足したわ。すてきな料理をありがとう、唯ちゃん」

唯「ふふふ、まだデザートが残ってるよ、ムギちゃん!!」

律澪「おおっ!!」


紬「でも梓ちゃん尽くしのフルコースで、デザートとなると…?」

澪「そうか、肉料理なんだよな。全部」

律「肉の入ったケーキとか…うへぇ」 ナエナエ

唯「こらこら、勝手な想像して食欲減退させちゃ駄目だよー」

コトッ

澪「えっ、なにこれ、えーと、カラフルようかん?」

律「…中になんか入ってる。うへ、気持ちわりぃ」

紬「へぇ、ゼリー寄せとはまた考えたわね」


澪「へえ、ゼリーなんだこれ」

律「ゼリーに肉!?正気かよ唯!!」

唯「(無視)じゃあ先にムギちゃんどうぞ」

律「ゼリーってのはな!甘いんだぞ!?それに肉とか、おまえなあ!」

澪「ちょっと黙れ」

ゴチン

律「うう…あたしは世界の平和のために…」

澪「どんなスケールだ」

律「肉入りゼリーの存在なんか許してみろ!世界の破滅だぞ!?」


紬「…じゃあいただくわ唯ちゃん」

唯「どうぞどうぞ」

パク

紬「oh」

唯「ふふ」 ニコニコ

紬「こほん。…やるわね、唯ちゃん」

唯「ふふふ」 ニコニコ

澪「ムギをうならせるゼリーか…どれどれ」

チュルン

澪「はぅ」

唯「むふふふふ」 ニコニコ


澪「これは…」

澪「……すごい。」

紬「うふふ、すごいわ唯ちゃん」

澪「なんというか、この」

唯「まあ待って、澪ちゃん」チラ

澪「……」チラ

律「…なんだよ、食べないからなあたしは」 ビクビク


律「だいたいおまえらな!おかしいんだよ肉ゼリーとか!」

律「味覚障害か!?大福にいちこ入れてミスマッチー♪とか喜んでる世代か!?」

律「だいたい」

唯「えい」

カポ

律「もがっ!?」


律「んんんんん!!」

澪「いいから、律。噛んでみ?」

律「んー!んんんー!」 ブンブン

律「……ん?甘くない…」

唯「ふふふ」 ニコニコ


クチュクチュ

律「んー!これは!」

律「うわあ!少し噛んだだけで口じゅうに広がる旨み!!」

律「まるで上等なスープを極限にまで凝縮したような…」

ンム…

律「あ、肉だ…」

ンム… ンム… コクン

律「……ほぅ」


唯「どう?りっちゃん」 ニコニコ

律「おいしぃ…」 トローン

律「……」

律「……ふぅ。」

律「んもー。唯がデザートっていうから甘いと思い込んじゃったじゃないかー」

澪「…言い訳が始まった」

唯「まあ、どちらかというと前菜に出すものだけどね、これは」


唯「でもね、フルコースで疲れた胃袋を優しいゼリーで癒して」

唯「また明日への活力を誘うには、私はぴったりの料理だと思うんだ、これ。」

律「なるほど。そういうデザートの考え方もありなんだな」

紬「豪勢なケーキもいいけど、フルコースの後の胃には少し重いものね」

澪「私は好きだな、こういう締めかた」


律「うん、今日の最高は料理だったよ!ありがとう唯!」

紬「本当に素晴らしかったわ。ありがとう唯ちゃん」

澪「唯にこんな才能があるなんて知らなかったよ。ありがとうな、唯」

唯「どういたしまして」

唯「でもそれなら私よりもお肉を提供してくれたあずにゃんに…」




梓「……」 グゥ~ キュルルルル~




4人「あっ」

                           fin



補足

あとトンカツにかけたソースも、すりおろした野菜や果物を大量のスパイスと一緒に煮込んで、
軽く煮詰まった所を布で漉して、さらに煮詰めて作った特製ソースだったのにうっかり説明し忘れたぜ!!




最終更新:2010年05月07日 22:29