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唯「んまい!」

……


憂「え?」

 何かの聞き間違いかな?
 私の耳では、私の涎を飲みたいみたいなことが聞こえたけど。

唯「だからー!」

唯「憂の涎を飲みたいの!」

 なるほどね。
 最近ではどうやら「涎」という飲み物があるみたい。

憂「へ、へぇ。変わった名前の飲み物だね」

唯「へ?変わった名前?」

憂「そういう名前の飲み物なんでしょ?ジュースか何か?」

唯「もう憂ったら何言ってるのー?涎は涎だよ!憂の口から出る涎が飲みたいの!」

 海外のお母さん、お父さん。
 今日の天気は晴れでした。


憂「お姉ちゃん、どこでそんなセリフ覚えたの?変なドラマでも見たの?」

 お姉ちゃんのことです。
 きっと夜遅くまで起きてて、えっちぃドラマでも見たのでしょう。
 すぐ真似しちゃうお姉ちゃんかわいいなぁ。

唯「違うよ!本当に飲みたいって思ってるの!」

憂「じゃあ仮に……仮にだよ?お姉ちゃんはなんで私の涎を飲みたいの?」

唯「だって涎って美味しいんでしょ?」

 ああ、なるほど。
 そういうドラマ、あるいは漫画を見たんだねお姉ちゃん。

憂「えーと……どこでそんなこと聞いたの?」

唯「だってりっちゃんが澪ちゃんの涎美味しいって言いながら飲んでたもん!」

 私は頭の中がロケットランチャーで吹っ飛ばされた気分でした。


憂「ど、どこで……見たの?」

唯「部室だよ?なんか入りづらい雰囲気だったから窓から見てたけどねー」

 あ、雰囲気とかはわかるんだ……。

憂「飲ませるってどういう風に?」

唯「えーとねー、りっちゃんが口開けたまま上むいて、その上から澪ちゃんが涎垂らしてた!」

 一瞬で想像ができてしまう自分が恐ろしいです。
 あのお二人は仲がいいなぁとは思っていたけれど、まさか禁断の仲とは思いませんでした。

唯「それでりっちゃんが顔を赤くしながら「澪の涎、すごく美味しいよ……」って言ってねそれで」


 省略されました。
 いえ、あのお二人のためにどうか省略させてください。


唯「……って感じ!」

 まさかお姉ちゃんの口からこんな卑猥な行動を聞く日が来るとは思いませんでした。
 たぶん今の私の顔はトマトのように真っ赤だと思います。

憂「そうなんだ……。あ、そろそろご飯できるよ!」 

唯「本当?今日のご飯はなにー?」

憂「美味しい美味しい鳥のから揚げだよー」

唯「から揚げ!やったー!」

 作戦成功です。
 食べ物の話題を出せばお姉ちゃんの頭の中は頭でいっぱいになります。
 きっと涎のことなど一ミリも覚えてないことでしょう。

 ああ、両手をあげてから揚げを喜ぶお姉ちゃんかわいいなぁ。
 やっぱりお姉ちゃんはこうでなくちゃ。
 さっきまでのは神様の与えた試練だったのでしょう。


唯「げふー!美味しかったー!」

憂「もうお姉ちゃんったら行儀悪いよー」

 今日のお姉ちゃんの食欲も絶好調だったようです。
 ヒマラヤほどの……は言いすぎだけどたくさんのから揚げをペロリと平らげてしまいました。
 大食い選手権に出たら中々の成績を残せるのではないでしょうか。

唯「んー……なんだか眠くなっちゃった」

憂「もうお姉ちゃんったらお腹いっぱいになったら眠くなるなんて赤ちゃんみたいだよ」

唯「赤ちゃんでいいもーん。ばぶー!」

憂「はいはい。じゃあお風呂沸くまで寝てていいよ」

唯「ほーい。おやすみー」

 そう言ってお姉ちゃんはゴロンと絨毯の上で寝転がってしまいました。
 私はお姉ちゃんのかわいい寝息を聞きながら、食べ残しが一つもないお皿を洗いました。


 数十分後、お風呂も沸かし終えた私はリビングで寝ているお姉ちゃんを起こしにいきました。
 もう、涎なんか垂らしちゃって。
 本当に赤ちゃんみたいだね。

憂「お姉ちゃん、お姉ちゃん」

唯「んん……なぁに?」

憂「お風呂沸いたから、入って?」

唯「あ、うん。……ふぁぁ」

憂「もうお姉ちゃんたら熟睡しちゃってー」

唯「えへへ、絨毯が気持ちよくて」

憂「ほら、涎たれてるよ?」

唯「……涎」

 しまった。


唯「すっかり涎のこと忘れてた!」

憂「YO誰?もうお姉ちゃんたら何変なこと言ってるのー?あははは」

唯「涎だよ涎!憂こそ何言ってるの!?」

憂「あ、私お風呂入るね!」

唯「いつも私の後に入ってるじゃん」

憂「今日はちょっと汗くさくて!」

唯「憂はいつもいい匂いだよー」

 そう言ってお姉ちゃんは慌しい動きをしてる私の身体をぎゅっと抱きしめ、犬みたいにくんくんと胸元の匂いを嗅いできました。
 やばいです。
 抱きしめられるだけでキュンとくるのに匂いなんて嗅がれたら理性が吹っ飛びそうになります。
 がんばれ私の理性!負けるな!あきらめるな!

唯「ねぇ憂……涎飲ませてよぉ」

 今までお疲れ様でした私の理性!


 と言いながら私はほんのわずかに残っている理性で精一杯がんばります。

憂「でも……私達女の子同士だしそういうのは、ね?」

唯「りっちゃんと澪ちゃんはやってたよー」

憂「血の繋がってる人の涎は美味しくないっておばあちゃんが」

唯「飲まないとわかんないよー」

憂「ごめんね、私実は涎が出ない体質で」

唯「この間涎垂らしながらお昼寝してたくせにー」

 私の必死な抵抗はお姉ちゃんの異常な好奇心の前では無力に等しいものでした。
 海外のお父さん、お母さん。
 私は今日、人の道を踏み外してしまうかもしれません。



憂「う……」

唯「あ、そういえば」

憂「え、なに?」

唯「澪ちゃんがりっちゃんに涎あげる時もこんな体勢だったなーって」

 こんな体勢。
 つまりお姉ちゃんが仰向けで、私がそれに覆いかぶさるような体勢。
 まるで私がお姉ちゃんを押し倒したような体勢。

 さっきから顔にかかるお姉ちゃんの吐息がいやらしく感じてしまいます。


唯「ねぇ、憂」

唯「このまま、涎ちょうだい?」

 私の中で何かが弾けました。
 ネズミ花火が最後にパーンって爆発しますよね?
 あんな感じです。

 すいませんわかりづらいですね。




憂「ど、ど……」

唯「ど?」

憂「どのくらいあげれば……いいのかな」

唯「えーと……いーっぱい!」

 お姉ちゃんは笑顔でそう答えました。
 おかしいな。
 いつもは天使のような笑顔もこの時ばかりは悪魔が笑っているように思えました。
 いえ、悪魔は言いすぎですね。
 小悪魔とでも言いましょうか。

憂「うん……わかった」

唯「わーい!じゃあお願いね!」

 そう言うとお姉ちゃんは口をめいいっぱい開けて、私に口内をこれでもかと見せてきます。
 まるで歯医者さんにでもなったような気分です。


憂「じゃあ……いくよ?」

唯「うー、いいおー」

 たぶん「うん、いいよ」って言ったのでしょう。

 私はその言葉を聞くと口の中をくちゅくちゅと鳴らし、涎を溜めていきます。
 何とも言えない生暖かい液体が口の中にどんどんたまっていきました。

 姉の上で涎をためる妹。
 それをキラキラとした期待の眼差しで見ながら口を開けている姉。

 他人が見たら通報でもされるのではないでしょうか。

唯「ういー、ああー?」

 「ういー、まだー?」と言ったのでしょう。
 私は「もうちょっとだよお姉ちゃん」と言いたかったのですが、口の中が涎でいっぱいなので何も言わず液体音を鳴らします。


 そしてついに口の中いっぱいに涎が溜まりました。
 少しでも油断すれば口から漏れてしまいそうです。

 私は「いくよ、お姉ちゃん」と言う代わりに深く頷きました。
 お姉ちゃんもそれがわかったらしく、さらに大きく口をあけます。
 ……お姉ちゃんの歯並び綺麗だなぁ。

憂「あえー……」 

 ついに私はお姉ちゃんの口に向かって涎を垂らしました。
 ちゃんと全部こぼさず飲めるように少しずつ、少しずつ。

唯「ん……んっ」

 お姉ちゃんは私の口からゆっくりと垂れる滝のような涎を
 「こくん、こくん」とのどを鳴らしながら一つもこぼさず、全部飲んでいきました。


 お姉ちゃんはすべて飲み終わると、無表情のまま私の顔を見ていました。

憂「……ど、どうだった?」

唯「んー……」

憂「やっぱり涎なんて……美味しくないでしょ?」

唯「うーんとねー……」

 早くマズかったって言ってよお姉ちゃん。

 妹が姉に涎を飲ませた。

 それで済まそうよお姉ちゃん。

唯「美味しいっていうか……」

唯「憂の味がした、かな?えへへ」

 お姉ちゃんはそう言って、また笑顔になりました。



 そこから先はあまり私の口から言うことが出来ません。

 言えることといえば

 私はそのまま本当にお姉ちゃんを押し倒したということ。

 お姉ちゃんが顔を真っ赤にして喘いでいたこと。

 私がずっと「お姉ちゃん、お姉ちゃん」と連呼していたこと。



梓「憂、おはよー」 

憂「お……おはよう梓ちゃん。……ふぁぁ」

 そして私は今、ものすごく寝不足だということ。


 皆さん、もし血の繋がった人と、もっと仲良くなりたいと思うのなら色々試してみればいかかでしょうか?
 私はただ、その色々のうちの一つをやっただけです。


 大好きだよ、お姉ちゃん。



 終わり。



最終更新:2010年05月07日 22:56