こんにちは、平沢唯です。

 突然ですが、眠くありません!

 あ、すいません状況を説明していませんでしたね。
 私今、京都へ修学旅行で来ています。
 そして今は夜の十一時。

律「かー……」

紬「すー……すー……」

澪「ん……ママァ」


 皆、大うそつきです。

 今日は朝までしゃべり通そうって約束したのに!

 私はこういう裏切りが一番嫌いなんです。

唯「復讐してやる……」

 私は今日初めて、軽音部の皆に怒りを覚えました。



唯「まずはムギちゃん……」

 ムギちゃんは絶対朝まで起きてると思いました。

 私達が朝までしゃべり通そうって言った時あんなに目をキラキラとかがやかせていたのに……。

唯「ムーギーちゃーん……」

紬「すー……すー……」

 すごい綺麗な姿勢で、すごい静かな寝息です。
 もう寝ていてもお嬢様オーラがやばいです。

唯「見れば見るほど綺麗な肌しちゃって」

 まるで白いマシュマロのようなムギちゃんのお肌。
 さわったらそのまま手がうずまってしまいそうです。


 ぷにょ~ん。 

唯「おふぅ」

 やばいです。
 予想以上の柔らかさです。

 たぶん星のカービィでもこんなに柔らかくないと思います。
 いえ、確実にムギちゃんのお腹のほうが柔らかいでしょう。

唯「ムギちゃんのお腹ぷにぷに!ちょべりば!」

 私は調子に乗って何度も、何度もムギちゃんのお腹に手をうずめていました。
 その時です

紬「……あんっ」

唯「!?」

 ムギちゃんが色っぽい声を出したのです。

唯「……」

 ぷにょ~ん。

紬「んっ……はぁ」

唯「……」

 ちょっとえっちぃです。


唯「……てい」

紬「んふっ」

唯「とぉ」

紬「ふぁ……」

唯「……」


 私の胸がめちゃくちゃドキドキしています。

 こんな感情は生まれて初めてです。

唯「ム……ムギちゃん、おやすみ」

 さすがにこれ以上やると私が何かに目覚めてしまいそうなのでやめました。 

 とりあえず超マシュマロほっぺは思う存分触れたし、ムギちゃんへの復讐はこれでおしまいです。




唯「次は……」

澪「くぅ……くぅ……」

 次の復讐のターゲットは澪ちゃんです。
 何を隠そう、皆がこんなに早く寝てしまった一番の原因は澪ちゃん。

 あ、ここから回想に入ります。

澪「さぁ、そろそろ寝るぞ」

唯「えぇ!?まだ十時だよ!?」

澪「だって消灯時間は九時だよ」

律「澪、消灯時間は電気を消す時間だぞ?」

澪「でも明日早いし……」

律「まだまだ夜はこれからよーん♪」

澪「きゃあああ!どこ触ってんだバカ律!」

律「あいたー!」

澪「寝るったら寝るんだ!電気消すぞ!」

唯「ぶー」

 回想おわり。



 そして電気が消えて三十分後。
 皆はすでに夢の中。

唯「澪ちゃん……。いや、秋山澪め……」

 これは相当ひどい復讐をしなければいけませんね。

 皆さんそう思うでしょう?

 ……はい聞こえました!皆の同意の声が聞こえました!

唯「うひひ……」

 私ギターのために鍛えたマジックフィンガーをまさか澪ちゃんに使う日がくるとは。

唯「唯、いっきまーす」


唯「……こちょこちょこちょ」

澪「ひ……うひゃ」

 澪ちゃんへの復讐は恐怖のくすぐり攻撃です。
 私は知っています。
 澪ちゃんの弱点は首だということを。

唯「苦しめー」

澪「あはっあはは……や、やめてぇ」

唯「いやだよーん」

 私がどれだけ朝までしゃべり明かすことを期待していたか。
 それがわかるか秋山澪ちゃ……澪!

唯「朝までくすぐり続けてやる!」

澪「もう……ぷははっ……いいかげんに……ひゃうっ」

唯「寝ている人に何言われてもこわくないもんねー」

 私はおろかでした。

 寝ているからといって油断をしすぎたのです。

 この時澪ちゃんを、怖がるべきでした。



澪「いいかげにしろ……律!」

 その時、私のスネに強く、鋭い衝撃がきました。

 澪ちゃんの怒りの鉄拳が私のスネにクリティカルヒットしたのです。

唯「~~~!~~~!」

 畳の上でゴロゴロ転げまわる私。
 痛すぎて声も出ません。

澪「……くぅ」

 痛みが完全にひいたのはそれから三分後のことでした。



唯「澪ちゃん……恐ろしい子」

 今まで澪ちゃんには何度もぶたれてきました。
 ぶたれたもいっても軽くポカリといった感じですが。

 りっちゃんはいつもこんな鉄拳を頭にくらってるのか……。

 その日私は澪ちゃんの恐ろしさを再認識しました。

 これからは今までよりちょっと……ほんのちょっとマジメに練習しよっと

唯「澪ちゃん、おやすみ」

 復讐という復讐はできませんでしたが、これ以上痛い目にあいたくないので澪ちゃんへの復讐はこれでおしまいです。




 さぁ、ついに最後です。

 私の復讐のターゲットのオオトリを飾るのは。

律「かー……くかー……」

 大口あけて寝てるりっちゃん!

 りっちゃんらしく布団を足で蹴散らし、浴衣は乱れまくり。
 いやんパンツ見えてる。

 ……ってくだらないことしてる場合じゃなかった。
 りっちゃんだけは……りっちゃんだけは私のことを裏切らないと思ったのに。

唯「復讐してやる!」



唯「……」

 さて、どうしようか。
 りっちゃんのことだから多少のことでは起きないはず。

 私の口からはとても言えないあんなことやこんなことしちゃおっかなぁ?

唯「……とその前にあれをやりたかったんだよねぇ」

 私が前からやりたかったこと。
 それは前髪を下ろしたりっちゃんを思う存分眺めることです。

 お風呂の時初めて前髪りっちゃんを見て私は驚きました。
 りっちゃんがあんなかわいい女の子だったなんて……。
 じっと見たら恥ずかしいって言われて私のほう向いてくれなかったから残念だったんだよねぇ。

 ということでりっちゃんの前髪を結んでるゴムを外させていただきます。

唯「おじゃましまーす……」


 そして私がゴムを外そうとりっちゃんに近づいたその時でした。
 身体に衝撃がきたのです。
 しかしその衝撃はさっきの鉄拳とは違う、とても優しい衝撃でした。

律「つかまえたー……」

 りっちゃんが私に抱きついてきたのです。

唯「り、りっちゃん!?」

律「……」

 どうやら起きているわけではなさそうです。
 ねぼけて澪ちゃんと勘違いしてるのかな?

律「離れたくないよぉ……」

唯「へ?」

律「卒業したくない……よぉ」

 りっちゃんは震えた声でそう言いながら、目から一筋の涙をこぼしました。


唯「りっちゃん……泣いてるの?」

律「澪ぉ……ムギぃ……唯ぃ……」

 どうやらりっちゃんは卒業式の夢を見ているようです。

律「行かないでよぉ……うぇぇ」

 いつもお騒がせで、ムードメーカーのりっちゃん。
 だけどそのりっちゃんは誰よりも、寂しがりやでした。

唯「りっちゃん……」

 なんだかんだ一番音楽が大好きで、私達をいつも笑わせてくれるりっちゃん。
 りっちゃんにとって私達軽音部とのお別れは、何よりもつらいのでしょう。

唯「大丈夫、私はここにいるよりっちゃん」

 私はりっちゃんの涙をぬぐってあげて、頭を優しく撫でてあげました。

律「う……」

 りっちゃんがいなければ、私達が軽音部に入ることもなかった。
 そうすればたぶん私が皆とここまで仲良くなることはなかったし、ギターもやらなかったと思う。

 私を軽音部にいれてくれてありがとう、りっちゃん。



律「……かー」

 どうやらりっちゃんはまた深い眠りについてくれたようです。
 ふと時計を見ると時刻は一時。
 まだ……寝たくないけど……ねむ……。

唯「……ぐぅ」




律「どわぁぁ!」

澪「ん……どうしたの律」

紬「りっちゃんどうしたの?いきなり大声だしてって……わぁ!」

律「なんで唯が私に抱きついて寝てるんだ!」

澪「うわぁ……律のパジャマに涎がべっとり」

律「最悪だ……ってムギもカメラで撮るなぁ!連写するなぁ!」

唯「むにゃ……軽音、大好きぃ……」

 私がずっと起きないせいで、この班は遅刻してさわちゃんにこっぴどく叱られることになりましたとさ。


 終わり。



最終更新:2010年05月08日 00:35