梓「どうすればいいと思います?」
律「……」
梓「律先輩、聞いてます?」
律「……」
梓「唯先輩の~!パ・ン・ツが欲しいのですが~!どうすれば!」
律「うるせー!聞こえてるよ!」
梓「じゃあ反応して下さいよ。私の声が小さいのかと勘違いしちゃったじゃないですか」
律「この世の中にはな、どう反応すればいいか分からない問い掛けってもんがあるんだよ」
梓「はあ、そうなんですか」
律「まあ私も今初めて体験してるんだけどな」
梓「大変ですね」
律「大変な思いをさせているのは自分だと自覚してくれ」
梓「で、どうすればいいと思います?」
律「色々と言いたいことはあるが、どうして突然そんなことを言い出したのか……その理由から聞こうか」
梓「そんなことから話さないといけないんですか?」ハアー
律「もうヤダこの子」
梓「修学旅行があったじゃないですか」
律「あったなあ」
梓「その間私は唯先輩と離れ離れだったわけです」
律「まあ学年違うし」
梓「寂しかったです」
律「いつもべったりだもんな、お前ら」
梓「これからもそういう機会が訪れるかもしれません」
律「三年は受験とかもあるし、そうかもしれないな」
梓「だからです」
律「え?」
梓「だから、少しでも寂しさを軽減させるために唯先輩を感じられるものが欲しいんです」
律「ああなるほど、いじらしい乙女心だな」
梓「律先輩に乙女心を解することが出来たのは驚きですが、分かって貰えて何よりです」
律「さっきから微妙にひどいよ?」
梓「気のせいです」
律「そうか。……で?」
梓「?」
律「何でそこでパンツなの?」
梓「え?」
律「え?」
梓「やっぱり律先輩には、私の乙女心は理解出来なかったみたいですね」
律「一応確認しとくけど、梓の乙女心が唯のパンツを求めてるのか?」
梓「その通りです」
律「ゴメン勘違いしてた。この子乙女じゃなくてただの変態だった」
梓「ちょっ、失礼なこと言わないで下さいよ!」
律「失礼も何も、混じりっ気なしの事実だろ。乙女は恋しい相手のパンツを欲しがったりはしない」
梓「いや、何を言ってるんですか……。好きな人のパンツが欲しいなんて当たり前のことですし、珍しくもないでしょう」ヤレヤレ
律「珍しすぎるわ!」
梓「じゃあ普通なら、どういったものを欲しがるんです?」
律「えっ、そりゃお前アレだろ……」
梓「アレ?」
律「え~と……し、写真とか」
梓「唯先輩の写真なら、携帯とパソコンそれぞれの『唯先輩フォルダ』に収まりきらないくらい持ってますが」
律「どうやって集めたんだよ……」
梓「それに私は、出来るだけ直接的に唯先輩を感じられるものが欲しいんです」
律「それなら唯が使ってるピックとか、ヘアピンとかはどうだ?唯なら頼めばくれそうじゃないか?」
梓「以前すでにいただきました」
律「あ、そう……」
梓「でもそれらはペロペロしたりクンカクンカしたりする楽しみがイマイチ薄いので、次のターゲットをパンツにしたわけです」エヘン
律「本性を現したな変態め」
梓「ちょっ、失礼なこと言わないで下さいよ!」
律「あ~、会話がループしそうだからやめよう」
梓「それもそうですね。それで、どうすれば唯先輩のパンツをゲット出来ると思いますか?」
律「頼めばくれるんじゃね~の~?」
梓「ずいぶん投げやりですね」
律「後輩が変態だと思い知らされた上、変態行為の相談を持ちかけられて真剣に考えろというほうが無理だろ」
梓「変態行為じゃないです、愛の形です」
律「梓の愛は歪みまくってんのな……」
梓「それで律先輩の意見についてですが」
律「うん」
梓「そんなことをしたら唯先輩に私が変態だと勘違いされそうなので、却下です」
律「いいじゃん、事実なんだし」
梓「それに、パンツをくれと言われてくれる人はいないでしょう」
律「大丈夫だって」
梓「じゃあ律先輩は、突然誰かに『パンツをくれ』と言われてオーケーしますか?」
律「断言しよう、絶対にしない」
梓「でしょう?」
律「でも唯なら、『うん、いいよ~♪』とか言ってくれそうじゃね?」
梓「まあ唯先輩ほどの天使ならありえなくもないですが、危険すぎるのでやはりこの案は却下です」
律「でも他に方法はないだろ」
梓「もっと考えて下さいよ……律先輩を見込んで相談してるんですから」
律「頼られるのは嬉しいはずなのに、相談内容が変態行為の手助けだと全然嬉しくないな」
梓「他の案はないんですか?」
律「他って言っても、頼むのがダメなら盗むくらいしかないんじゃね?」
梓「!!!」ガタッ
律「えっ、何その過剰反応!?」
梓「そ、そこに気がつくなんて……やはり天才ですか」
律「いや、わけ分からん」
梓「さっそく行って来ます!」ダッ
律「お、おい!部活はどうするんだよ!?」
梓「今日は休みます!澪先輩たちには謝っておいて下さい!」
ガチャ、バタン!
律「お~い……」
律「……」
律「適当に言っただけなのに……大体どこから盗む気なんだ?」
ガチャ
唯「りっちゃんおい~っす!」
澪「あれ、梓はまだか?」
紬「遅れてゴメンね?すぐにお茶の用意をするわね」
律「お~、遅かったな三人とも!梓はまああれだ、今日は体調不良で部活は休むそうだ」
唯「え~、あずにゃんいないの~?」ブー
律(お前のパンツを盗むためにな)
唯「あずにゃんに抱きつかないと力が出ないよ~」ヘナヘナ
澪「ほら唯、ちゃんと椅子に座れって。体調不良なら仕方ないだろ?」
唯「あうう~」
紬「ふふ、本当に唯ちゃんは梓ちゃんのことが好きなのね♪」
唯「うん、あずにゃん大好き!」
律(やれやれ……)
澪「ん?律、どうかしたのか?」
律「いんや、何も~?」
澪「そうか……」
律「ムギ~、今日のお菓子は何~?」
紬「今日はチョコレ-トを持ってきたの~♪」
唯「わ~い!チョコチョコ~♪」
キャイキャイ……
翌日!
梓「失敗しました」ボロ…
律「ああ、うん……残念だったな」
梓「あと一歩だったのですが……」
律「なあ、梓」
梓「はい?」
律「何でそんなにボロボロなんだ?」
梓「ああ、これは昨日……」
~回想~
唯の家!
梓「……」
梓「こちらスネーク、今から目標の家に潜入する」
梓「……」ダッ
梓「……潜入成功」
梓(唯先輩の部屋は……ここか)
梓「!クローゼットの中からパターンピンク、下着です!」
ガチャ
梓「こ、この中に唯先輩の下着が……」ハアハア
憂「何をやってるのかな?」
梓「!?」バッ
憂「梓ちゃん……その中にはお姉ちゃんの下着が入ってるんだけど?」ニコッ
梓(そんな馬鹿な、気付かれた!?しかもこの私が、背後を取られるまで接近に気付けなかったなんて……!)
憂「梓ちゃん?」
梓「う、憂……こ、これには訳が」
憂「言い訳はしなくていいよ?梓ちゃんの邪な思いは見抜いてるから♪」ニコニコ
梓「よ、邪だなんてそんな……。私はただ、唯先輩のパンツが欲しいだけで……」ガタガタ
憂「ギルティー♪」ヒュンッ
梓「ま、待って……に゛ゃっ!?」ドサッ
憂「うふふふふふふ、これに懲りたらもう妙な考えは起こさないようにしてね、梓ちゃん♪」
梓「……」ピクピク
~回想終わり~
梓「……と、いうわけです」
律「そ、そうか……」
梓「唯先輩のパンツに気を取られすぎて、憂の存在を失念していたのが失敗の原因ですね」
律(てかコイツ、唯の家に直接乗り込んだのかよ……。どんだけパンツが欲しいんだ……?)
梓「律先輩?聞いてます?」
律「あ、ああ聞いてるよ。で、どうするんだ?」
梓「どうするって……何がです?」
律「いや、だからパンツだよパンツ。やっぱ諦めんの?」
梓「何言ってるんですか、諦めるわけないでしょう!」ガタッ
律「わっ、落ち着けよ!」
梓「唯先輩のパンツまで、あと一歩なんですよ?ここでやらなきゃ女が廃るってもんです!」フンス!
律(廃れ)
律「でも憂ちゃんが守ってるんだろ?」
梓「ええ、それが問題なんです。裏を返せば、憂さえ突破すれば大丈夫ってことなんですが」
律「あれ?ていうか昨日唯の家に乗り込んだんだよな?」
梓「はい」
律「……今日の憂ちゃんはどんな感じだったの?」
梓「……」
律「……」ゴクッ
梓「……授業中、ずっと」
律「ずっと……?」
梓「私のことを、ニコニコしながら見つめていました」
律「怖っ!憂ちゃん怖っ!!」
梓「……近くに座っていた純は、二時間目の途中で保健室に行ってそのまま早退しました」
律「どれだけプレッシャー放ってんの!?」
梓「授業が終わって帰る時には、『もし今日も来たら、手加減できないかもよ……』と」
律「い、行くのやめたほうがいいんじゃないか?」ガクブル
梓「そうはいきません。唯先輩のパンツが、私を待ってますから……」
律(待ってはいないと思うが)
梓「それで律先輩、私が今日ここに寄ったのは先輩に一つお願いがあるからです」
律「一緒には行かないぞ?」
梓「それは期待してません。律先輩が来ても足手まといですし」
律「そか、相変わらず微妙にひどいけどよかった……」ホッ
律「で、お願いって?」
梓「もし私が帰って来れなかったら……唯先輩のこと、よろしくお願いしますね……?」
律「あ、ああ……」
梓「よかった……」
律(なんでパンツ如きでこんなことになってるんだろう)
梓「では、行ってきます!」ダッ
律「が、頑張れよ~」
唯の家!
梓「……」ザッ
憂「梓ちゃん、やっぱり来たんだね……」
梓「……憂」
憂「忠告はしたよ?今日来たら、手加減はしないって……」
梓「……」
憂「今引き返したら、見逃してあげるよ?昨日分かったでしょ、私には勝てないって」
梓「……」
憂「梓ちゃんは大事な友達だし、出来れば傷つけたくは……」
梓「もういいよ、憂」
憂「?」
梓「ここから先は、言葉なんて必要ない……!」ゴウッ
憂「そ、その気は!?」
梓「昨日は完全に油断していたけど、今日はそうはいかない……全力で、倒す!」
憂「ふ、ふふ、ふふふふ……どうやら梓ちゃんを甘く見ていたみたいだね……」ゴゴゴ…
梓(憂、相変わらず強大なオーラだね……!でも、負けられない!)ビリビリ
憂「それにしても」
梓「?」
憂「いくらお姉ちゃんの下着が魅力的とはいえ、こんなことになるなんてね……」
梓「その魅力は憂もよく知ってるでしょ?」
憂「まあね。最後に梓ちゃんに一つ言っておくよ」
梓「何?」
憂「……お姉ちゃんの下着をクンカクンカしていいのは、私だけだから」ニコッ
梓「……残念、今日から私もその仲間入りだよ。クンカクンカした後、ペロペロするんだ」ニコッ
憂「ペロペロか、それもいいね。……それにしても、これが生き物のサガってやつかな」
梓「私この戦いが終わったら、唯先輩と結婚するんだ……」
憂「……」
梓「……」
憂「行くよ、梓ちゃん……もとい、梓ああああァァァ!」
梓「返り討ちにしてあげるよ、憂いいいいィィィ!」
憂・梓「決闘(デュエル)!!!」
~以下略~
再び音楽室!
律「……」
律「梓のやつ、大丈夫かな……」
ガチャッ
唯「おいっす~♪……あれ、またりっちゃんだけ?」
律「お~唯か。残念ながら愛しの梓は今日も部活は欠席だ」
唯「え~また~!?」
律「体の調子が悪いってんだから仕方ないだろ」
唯「そんなに悪いの!?お、お見舞いに行ったほうがいいかなあ?」アセアセ
律「いや、授業には出てるらしいから大丈夫。運が良ければ明日から部活も来れるさ」
唯「そっか、よかった~!……え、運が良ければ?」
律「気にするな」
唯「あ、でもりっちゃんと二人っきりなら都合いいかも……」
律「ん?どうかしたのか?」
唯「ええっと、その~……」モジモジ
律「どうした?言いよどむなんて、唯らしくないぞ~!」
唯「じ、実はりっちゃんに相談したいことがあって……」
律「相談?」
唯「うん、最近ちょっと悩んでるの……」
律「はは、唯が悩むなんて珍しいな~。どれどれ、りっちゃんに話してごらん?」
唯「う、うん……その……」
律(唯の悩みか~、どんなんだろ?)ワクワク
唯「あずにゃんのパンツが欲しいんだけど、どうすればいいかな?」
律「……は?」
唯「あずにゃんのパンツが欲しいんだけど、どうすればいいかな?」
律「いや、聞き返したわけじゃないんだけど……」
律「え?」
終わり♪
最終更新:2010年05月14日 00:05