1 田井中律 捕手

2 真鍋和 二塁手

3 平沢憂 遊撃手

4 琴吹紬 一塁手

5 秋山澪 投手

6 立花姫子 三塁手

7 鈴木純 左翼手

8 平沢唯 右翼手

9 中野梓 中堅手

監督 山中さわ子




さわ子「オーダーも組んでしまいました!」

和「なるほど、打順に適した練習が必要ですからね」

さわ子「そ、そうよ! 決して面倒だったわけじゃないんだから!」

純「面倒だったんだ!」

唯「憂、三番だよ! モーニングナップだよ!」

憂「クリーンナップね。お姉ちゃんもライトってことは……」

梓「唯先輩、肩が強いんですよね」

姫子「まさかフェンスからノーバウンドでキャッチャーまで投げるなんてね」

唯「えへへー」

澪(あわわわあわわ)

紬「四番って、一番いいバッターってことね! 期待に応えます!」

律「1番キャッチャーか。大変そうだなー」



――帰路――

唯「お腹減ったねー」

律「あれだけ練習したんだもんな。運動部の気持ちがわかるぜー」

姫子「なにか食べていかない?」

純「いいですね!」

憂「この辺で美味しいお店は――」

さわ子「梓ちゃん、なにか知ってる?」

梓「あー。一応は」

紬「梓ちゃん見立てのお店ね! なんかわくわくしちゃう!」

梓「あの……ちょっとややこしいお店ですけど、いいですか?」

唯「あずにゃんおすすめのお店だもん! 平気平気!」

梓「じゃあ、行きましょうか」

澪(会話に入れない……)



ドア「ニコ」

唯「うぷ……」

姫子「……」

律「なんだあれ?」

梓「ふんふーん。やっぱり運動後には二郎ですね」

憂「梓ちゃん。どうしてあんな山盛り食べきれるの……」

純「私たちなんて普通盛りで精いっぱいだったのに」

さわ子「あら、あなたたちは初二郎?」

紬「はい! 食べたことない味で美味しかったです!」

澪「うぷ……」

律「わー! 吐くなよ! 澪! 絶対吐くなよ! フリじゃねえからな!」

唯「あずにゃんには悪いけど、もうここには来たくないよ……」

梓「(´・ω・`)ショボーン」


唯(それから、私たちは一カ月。一生懸命練習しました)

澪「いくぞ律!」

律「おお!」

和「憂、私たちは桜高の荒木と井端になるのよ」

憂「グローブトスを習得します!」

紬「この辺に壁を意識して――」

姫子「ボールよく見て!」

純「梓ー。なんか必殺技でも作る?」

梓「そんなことより私たちは走るよ!」

唯「ええ~。私、走るのやだー」

梓「そんなこと言ったって、私たち下位打線は打つよりも守って仕事しなきゃ」

さわ子「けっこういい雰囲気じゃない」

唯(そうして、試合前日が今日です)


――平沢宅――

唯「ついに明日だね」

憂「うん! 頑張ろうね!」

――田井中宅――

律「やってみると野球も楽しいもんだな。ミットの手入れしよっと」

聡「……」

――秋山宅――

澪「肩の痛みもまったくなし。問題ないな!」

――琴吹宅――

紬「しゃらんらしゃらんらー」

斎藤「お嬢様、なぜバットを……まさか! この爺を殺す気では!」

――中野宅――

梓「明日はお父さんたちが観に来るんだー。いいとこ見せなきゃ!」


――真鍋宅――

和「高校生活最後の、仲間とはしゃげる機会。楽しまなきゃ損よね」

――鈴木宅――

純「憂とのラブラブチュッチュが目的だったけど、今はそんなことどうでも
いいや」

――立花宅――

姫子「なんか、この一カ月で色んな人と仲良くなれたなぁ。明日は勝つぞ! 
頑張れ姫子!」

――山中宅――

さわ子「今のチームなら勝てる! 勝てたら……うへへへへー」


唯(それぞれの思いを胸に秘め、試合当日の朝になりました)



――バスの中――

澪「……」

紬「……」

律「あのさ、さわちゃん」

さわ子「なあに?」

律「このバス、どこに向かってるわけ?」

さわ子「もちろん、野球場よ?」

律「野球場って、どこ?」

さわ子「野球場といったら、あそこしかないじゃない。ほら見えた」

唯「あれって……」

澪「やっぱり……」

律「おいおい。なんの冗談だよ」

和「まさか、素人と甲子園常連校の試合が――」

憂「甲子園で行われるなんて……」

澪「……あわわ」

観客「ワーワー!!」

梓「球場が揺れてる……!」

姫子「なにこれ……プロ野球だってここまで満員にはならないわよ……」

和「それもこれも、あれも。私たちの対戦相手のお陰ね」

純「明訓高校、ですね」

律「そして、あの男だ」

憂「あれが……」

唯「山田太郎……」

澪「こ、この人の前で投げるの……?」



――1塁側ベンチ――

岩鬼「あれが対戦相手かいな」

微笑「みたいだな。桜ケ丘高校。女子高らしい」

里中「なんだって女子高と試合するんだ?」

山田「大平監督の昔の生徒が先生をやってるって聞いたけど」

岩鬼「ガーハッハッハ!! おなごがこの男・岩鬼と試合なんぞ笑いすぎて
へそで茶が湧くわい!」

殿馬「づら」

岩鬼「よお見てみいトンマ! おんどれ、あのおなごよりもちんまいのお!」

殿馬「そんなことねえづら。身長の数値なら俺のほうが上づら」

岩鬼「そうするとなんや! 水島新司とかきふらいの絵の違いか!」

山田「なにをわけのわからないことを言ってるんだよ」

岩鬼「やァーまだ! おんどれは黙っとれ!」

里中「ハハ……」

微笑「まあなんにせよ。俺たち三年生にとっては最後の試合だ。楽しもうぜ」




先攻 私立明訓高等学校

1 三 岩鬼正美

2 ニ 殿馬一人

3 投 里中智

4 捕 山田太郎

5 左 微笑三太郎

6 一 上下左右太

7 右 蛸田蛸

8 遊 高代智秋

9 中 香車一直

監督 大平太平




後攻 私立桜ケ丘女子高等学校

1 捕 田井中律

2 ニ 真鍋和

3 遊 平沢憂

4 一 琴吹紬

5 投 秋山澪

6 三 立花姫子

7 左 鈴木純

8 右 平沢唯

9 中 中野梓

監督 山中さわ子





審判「礼!」

全員「お願いしま―す!!!」

サイレン「ううううううううううううううううううう!!!!!!」

実況「さあ始りました。本日はエキシビジョン。桜校対明訓の試合を
お届けいたします」

解説「明訓高校の山田。今日が高校生活で正真正銘最後の試合となり
ますからね。日本全国が注目しています」

実況「はい。夏の甲子園は二度。春の甲子園も2度制したドカベンが、
甲子園球場での最後の試合に挑みます。相手は――桜ケ丘というのは
どういった学校なのでしょうか」

解説「えー。まずは女子高です。もちろん野球部なんていうものもありませ
んね」

実況「ということはつまり、彼女たちは……」

解説「野球を始めて一カ月です。相手が明訓ではないにしても、かなり厳し
いですね」

実況「そうですか。ありがとうございます。桜ケ丘は完全に未経験者という
ことですね」

解説「なんにせよ、勝負はやってみなくてはわかりませんからね。注目です」



ウグイス「先攻の明訓高校。一番、サード。岩鬼くん」

岩鬼「いくでええええええええええええ!!!!!!」カラーンカラーン!

律「ま、まじかよ……」

澪「何本振ってるんだ……」

岩鬼「花は桜木男は岩鬼! おなごが心臓止めるでないで!!」

実況「岩鬼のバットが桜吹雪の如く舞う! それを――」

殿馬「づら」

実況「殿馬くんの華麗な動きで、バットは規則正しく捌かれました」

解説「これも、今日で最後なんですねぇ」

澪(こわい、こわい、こわいよぉ……)

律「……タイム!」


律「澪、怖いだろ?」

澪「う、うん」

律「……」

和「……」

姫子「……」

梓「……」

唯「ひゃっほーい」

律「……全員来い!! マウンドだ!」

憂「え?」

紬「……どうしたの?」

律「みんな、緊張しすぎ。見るからにガチガチじゃないか」

澪「当たり前だろ。ここは――」

律「私たちが目指しているのは武道館。軽音部以外のみんなも、ここで
ガチガチじゃあ、これから先、色々大変だぜ?」

純「そうですけど……」


律「……澪ちゅわん!」ぴとっ

澪「胸を触るな!」ガチン

律「あいててててえ……」

姫子「フフっ。あっははははは! 律ってば、痛くないの!?」

梓「澪先輩も本気で殴り過ぎですよ! ハハハハ!!!!」

憂「なんか、緊張も解けました!」

唯「どっか吹っ飛んでいったよ!」

律「そう? ならよかった! あと、唯はハナから緊張してないだろ?」

澪「……ありがと。りっちゃん」

律「なんていっても、私は澪の女房役だからな。二つの意味で!」

澪「……ああ!」


岩鬼「ずいぶん長かったの!」

律「旦那さんがチキンハートでさ。ちょっくら喝を」

岩鬼「無駄や無駄や! この男・岩鬼の前に気合いなんぞ!」

律(大丈夫だって、私の澪だぜ?)

澪(……うん。もう大丈夫。平気だ)

審判「プレイボール!」

サイレン「うううううううううううううううううううう!!!!!」

律(澪、こいつはド真ん中を打てない悪球打ちだっていう。まずはド真ん中だ)

澪(いいや。私の球はもう甲子園球児にだって打てない筈だ。それを試した
い)

律(……オーケーだ。信じるぜ。お前の球)

実況「さあ、第一球、投げた」

山田「初球悪球!?」

岩鬼「ごっそうさん!!!」グワラゴアガキーン!!

澪「!?」

純「駄目だ! 届かない!!」

実況「入った入った! 先頭打者ホームラン! 甲子園球場最上段に突き
刺さる!!!」

律「ば、バケモンだ……」

岩鬼「それは違うで。ワイは男・岩鬼や!!!」

律「……くっそおおおお!! あの葉っぱ!!」

澪「ごめんな律。正直、自分を信じ込み過ぎた」

律「いいって。これでこれからはド真ん中だけでいいんだからさ。それよ
り――」

澪「あの二番バッターが大変だな……」

律「ああ。明訓の打線はここからだ。しまっていこうぜ」

澪「うん」


ウグイス「二番、セカンド、殿馬くん」

観客席「ワアアアアアアアアアアア!!!!」

実況「やはり殿馬くんに対しての歓声はものすごいですね」

解説「岩鬼くんの時には殆ど無音だった甲子園も、ひっくりかえるくらいの
歓声ですよ。やはりものが違いますね」

岩鬼「まーた放送席がいらんこと言っとるな」

里中「?」

殿馬「づら」

澪「律、もう目が覚めたぞ」

律(上等だ。まずはスライダーから入るぞ)

殿馬「づら」

律(確かこの人はリズム打法だってな。じゃあ、リズムがとりにくい変化球
で攻めるぞ)

澪(おーけー)


3
最終更新:2010年05月15日 02:59