憂「ねぇねぇ」

梓「ん?」

憂「あずにゃん♪」

梓「なっ…!?」

憂「私も一回言ってみたかったんだぁ、ふふ」

梓「も、もぉ…憂までやめてよね…」

憂「可愛いあだ名だよねー。梓ちゃんのイメージにもすっごくあってるし」

梓「…そ、そうかな///」

梓「でもね。外歩いてるときにそう呼ばれると結構恥ずかしいんだよ?」

梓「前に外で呼ばれた時になんか、通りかかった人に『あずにゃんにゃんwww』ってボソリと笑われちゃったし…」

梓「…あー、思い出しただけで恥ずかしいっ」

憂「あははは」

憂「そういえばあずにゃんって呼ぶの、お姉ちゃんだけだよね」

梓「唯先輩だからこそ言えるあだ名だしね」

憂「そうなの?」

梓「だって考えてもみてよ」

梓「律先輩がそんなこと言っても気持ち悪いでしょ」

憂「そうかなぁ」

梓「そうだよ。ムギ先輩は…うーん……」

梓「…やっぱり違う」

憂「そう?」

梓「うん」

梓「やっぱり唯先輩にしかこんなあだ名を自然に呼べる人はいないと思う」

憂(なんだかんだ言って気にいってるんだなぁ…ふふ)

憂「あれ、そういえば澪さんの場合はどうなの?」

梓「あはは、考えるまでもないでしょ」

梓「あのまじめな澪先輩がこんなふざけたあだ名で私を呼ぶイメージなんて絶対浮かばないし」

憂「そう? でも澪さん可愛いものとか好きそうだし、案外そう呼びたがってたりして」

梓「まさかぁ」


澪(あずにゃん、あずにゃん、あずにゃん…)

澪「よし、イメージトレーニングもバッチリだぞ! 律っ」

律「お前ってほんといいキャラしてるよな」



唯「私も澪ちゃんを見習って今日の部活はまじめにギター弾こうかな」

紬「そうね。早くみんなで綺麗に演奏あわせたいものね」

澪「か、感心! 感心! 偉いぞ二人とも!」

律「はははは」

澪「な、何だよっ、その乾いた笑いは」

律「いやぁ、はははは」

澪「うっ……それより、律」

澪「例の件…任せたからね」

律「それは任しときなさい!」

澪(よーし、頑張るぞー!)



放課後!

唯「よいしょ…っと」

唯「準備OKだよ~」

紬「頑張りましょうねー」

梓「ううっ、ついにやる気になっていただけましたか…! 口がすっぱくなるほど練習、練習と言ってきた甲斐がありますよっ」

唯「あ! あずにゃん聞いて、聞いて! 澪ちゃんってば昨日ベースがイマイチだったこと気にして寝るのを惜しんでまで特訓してきたらしいよ!」

澪「うぐっ!」

梓「さ、さすがは澪先輩っ!! ほんとに尊敬しちゃうなぁ…素敵です! 澪先輩!」

律「…っく……くくく…ぷっ…ぐwww」

澪(尊敬の眼差しが…痛い…)

紬「澪ちゃんの頑張りに負けないぐらい今日は私も張り切っちゃおうかしら!」

唯「あ、私も負けないぞー!」

梓「精一杯頑張りましょうね!」

律(一気に火が着いちゃったな…こんな状況じゃ゛あずにゃん呼び作戦゛が切り出しにくいぞ…)

澪「律っ…」ヒソヒソ

澪「私は…いつでもいけるからな!」ヒソヒソ

律「お、おお。ま、任せといてよ」

律(こっちもワケ分からん火がメラメラと…)

唯「いつでもいいよー!」

律「よし、それじゃあ…1、2,3、4!」

ジャカジャカジャンジャン、ジャカジャンジャカジャン

唯「君を見てるとーいつもハートどきどき~」

紬(……?)

梓(ベースの音が聞こえない…?)

梓(澪先輩?)チラ

澪「……」フラ…フラ…

澪「エンッ!!!」

バタリ

唯・律・紬・梓「!?」

唯「み、澪ちゃんっ!?」

紬「大変だわっ!!」

梓「澪先輩! 澪先輩! しっかり!!」

律「す、すぐに保健室に運ぶぞ!!」


梓「澪せんぱーい」

澪「ん? ああ…」

澪「なんだ、あずにゃん?」

梓「えへへ…ちょっと澪先輩にあずにゃんって呼んでもらいたくて」

澪「ふふ、あずにゃんはほんとに可愛い後輩だなぁ」ナデナデ

梓「えへへ♪ にゃあ、にゃあ~♪」スリスリ

?「ずるいよ!」

澪「?」

唯「あずにゃんばっかりずるいよ!」

澪「唯。どうしたの?」

唯「…ち、ちがうよ澪ちゃん! 唯じゃなくてっ」

澪「ははは、わかってるよ。ゆいにゃん」

唯「わはぁ~…にゃんっ♪」スリスリ

澪「ゆいにゃんも甘えん坊だなぁ」

紬「澪ちゃん…」

律「澪ぉ…」

澪「わかってるって! 二人も…むぎにゃんもりつにゃんもこっちにおいでー!」

律・紬「にゃあ~ん♪」スリスリ

澪「まったく…みんなしてほんとに仕方がないんだから」

澪「ふふふ、でもこんなのも案外悪くないかも」

澪「はぁ、にゃんにゃんにゃん……ふふっ」


律「ったく、心配かけさせやがって」

澪「んー…むにゃむにゃ……ふふ」

紬「ふふ、ただの睡眠不足でよかったわねぇ」

梓「そこまで熱心に練習していただなんて…澪先輩のこと本当に尊敬しちゃいます」

澪「…ふふっ、あはは…くすぐったいってばぁ…ふふふ…」

唯「楽しい夢でも見てるのかなぁ」

紬「なんだか幸せそうねぇ」

唯「どんな夢なのかなぁ? 起きて覚えてたら教えてもらおうよ~」

紬「ふふ、そうね♪」

律「なんかムカつくから顔に落書きしちゃうか」

梓「それ、私が許しませんよ」

律「ぶー、ぶー」



澪「………ん…」

澪「…あれ? …保健室……?」

唯「おはよぉ、澪ちゃん」

紬「気分はどう?」

澪「え…?」

律「お前練習中にぶっ倒れちゃったんだよ。夜更かしが響いたみたいだな」

澪(そ、その程度のことで倒れたの!?)

澪「うう…みっともないよぉ」

梓「でも何ともなくてほんとに良かったです。すごく心配しちゃいましたよ」

澪「そっか…ごめんな。あずにゃん」

梓「いえいえ、気にしないでください」

梓「……」

梓「……ん?」

澪「え?」

律「……」ポカーン

紬「…み、澪ちゃん?」

唯「え、どうかしたの?」

澪「え? え?」

律「澪、お前いま…」

紬「梓ちゃんのことを」

唯「え、あずにゃん?」

律「そう、あずにゃんを……じゃなくて、梓を」

澪「…は?」

梓「き、きっと寝ぼけてたから間違ってそう言っちゃっただけですよ!」

紬「そ、そうよね。あー、びっくりした。てっきり頭がおかしくなっちゃったのかと…」

澪「あ、あの…ちょっと意味が…」

律(この様子だとマジで寝ぼけて言ったっぽいぞ)

律「よかったな、澪」グッ

澪「ちょ、ちょっと…せ、説明してよっ」

唯「そうだよ! 仲間はずれはよくないよっ」

梓「すみません。さっきのは私たちの勘違いでした」

澪・唯「??」

澪「……」

澪「……ほ」

澪「…ほんと?」

律「ん」

律「しっかり言ってました」

澪「……な、なんだよそれぇ…」

律「良かったな。夢叶ったじゃん」

澪「なっ、納得できるかぁぁっ!!」

律「経緯はどうあれ言うことはできたんだからそれでいいだろ!」

澪「や、やだ! やだやだやだー!」

律「ええいっ、駄々をこねるな!」

澪「やだーっ!」

澪「やだもんっ」

律「面倒くさいなぁ…」

澪「ちゃんとしたシチュエーションがある中で言いたかったの!」

澪「それが…寝ぼけてとか……ううっ」

律「面倒くせぇ…」

澪「お願いだよ律! 手伝って!」

律「むー…」

律「…これっきりだからな?」

澪「さすがりつにゃん!!」

律「 」

律「 」ゾワァ…


澪「…あ…あ…///」

律「お、おい…」

澪「ああああああ!!!」

澪「もう今、頭の中であずにゃんとかにゃんとかって言葉でぎっしりなんだよっ///」

澪「このまま梓にあずにゃんって言えなきゃ、私おかしくなっちゃう!!」

律「な、なんだそれ…」

律(……りつにゃん…)

律(……)

律(……///)



次の日!

梓「……」

憂「どうしたの? ぼーっとして」

梓「…あのね」

梓「昨日、澪先輩からあずにゃんって呼ばれたの」

憂「え? と、突然だね。何かあったの?」

梓「ううん! 何も!」

梓「たぶん言う直前まで寝てたから寝ぼけて言っちゃっただけだとは思うんだけど…」

憂「そうなんだー。で、言われてどうだったの? 昨日はそんなこと想像もつかないって言ってたぐらいだもんね」

梓「あ、えっと………」

梓「…ちょ、ちょっぴり…嬉しかった…かも…///」ボソ

憂「ん? ごめん、ちょっと聞こえなかったからもう一回言って?」クスッ

梓「や、やだっ///」

憂「えー、なんで?」クスクスッ

梓「な、なんでもっ!」


……

律「…という作戦を考えてみた」

澪「…おぉ」

律「後はその場の勢いに任せるだけだ!」

律「いけるぞ! 澪!」

澪「おぉ…おぉ…!」

澪(今度こそ、今度こそは!)

唯「なんの作戦?」

紬「なんだか楽しそうねぇ」

澪・律「!」


律「澪」ヒソヒソ

澪「え?」

律「この際、二人にも話して協力してもらった方がいいんじゃないか?」

澪「え!?」

澪「そ、そんな…恥ずかしいよっ」

律「こんなこと真剣にやろうとしてるお前の方が恥ずかしいから安心しろって」

澪「なっ!!」

律「二人ともちょっといい?」

唯・紬「?」

澪「わー! わーっ!」


澪「…///」

紬「ふふふ」

紬「澪ちゃんってば、ほんとに可愛いわね」

唯「そうだねぇ♪」

澪「ううっ…」

律「というわけだから、協力してやってよ」

紬「お安い!」

唯「ごようですっ!」

律「ほーら、言ってよかったろ」

澪「うー…」

唯「よし、澪ちゃん! 特訓だ! さんはいっ」

澪「あずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃん…」ブツブツ

律(怖っ!)

ガチャリ

梓「ふぅ……って、あれ! 皆さん早いですね!」

唯「あずにゃん! 待ってたよ!」

紬「さぁ、さぁ、早くこっちにいらっしゃい♪」

梓「え、ど、どうしたんですか?」

律「梓くん!」バンッ

梓「ひっ!?」

律「遅刻は…遅刻はいかんよぉぉ!」

唯「たしかに遅刻は許せないね!」

紬「あら! でもまだ澪ちゃんが来てないわ!」

律「おおっ! なんということだ! これは許せんぞ! 唯隊員!」

唯「そのとおりですね! りっちゃん隊長!」

梓(…な、なにこれ…)


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最終更新:2010年05月15日 22:37