澪パパ「澪、よく頑張っていたな!」

澪「う、うん」

澪パパ「パパは澪は可愛いくってこれからもずっとそうだと思っていたけど」

澪パパ「今日からはその考えを改めるよ」

澪パパ「ベースを弾く澪はとてもカッコ良かったぞ!」

澪「ありがとうパパ!」

澪ママ「そうね、本当にカッコ良かったわ澪ちゃん」

澪「ママも、ありがとう」

澪ママ「でも、同時に冷々していたのよ。いつコケたりしないかって」

澪ママ「だってコケちゃったらまたあのときみたいに澪ちゃんの可愛いパン……」

澪「わー!! わー!! ママ駄目っ!!」

澪ママ(ウフフ。慌てふためく澪ちゃんったら最高に可愛い)

澪パパ「?」



律「どうだった?」

律父「いつデビューするんや?」

律「ちょ!? いきなり話が飛びすぎる!」

律母「そいだけ、とーちゃんも律ん演奏に感動したっちこつっちゃ」

律父「せやで、とーちゃんお前のドラム叩く姿に感動して涙がちょちょぎれそうやったわ」

律「だから、ドラムじゃなくて太鼓だって! ……あれ?」

律父「うわぁ~……、お約束すぎて寒ぅなってくるわ……」

律「くっ……!!」

聡「ねーちゃん」

律「なんだ~聡~、ねーちゃんのあまりのカッコ良さに友達に自慢したくなっただろ~」

聡「それはないけど……」

律「なんだよ~、お前もわかっちゃいないな~」

聡「それはないけど、ねーちゃんが部屋でドラムスティックでカチカチうるさいの……
  もうちょっと我慢してやってもいいぜ……」

律「へへへ……、この~! やっと偉大な姉の才能に気づいたのか~」

聡「やめろよ! ねーちゃん! くっつくな!」



梓「お父さんたちの出番は最後だよね?」

梓父「当たり前だろ? なんせこのイベントの主催者なんだからな」

梓母「ダーリンと一緒に愛のメロディを響きわたらせてくるわよ梓ちゃん」

梓父「ああハニー、昨晩も二人で熱い愛を紡ぎあったじゃないか~」

梓母「もう! ダーリンったら、梓ちゃんが聞いてるわよ」

梓(きめぇ……)

梓父「でも、うかうかしてるとマイスウィートハートに実力で追い抜かれるかもしれないな」

梓母「そうね、ダーリン。まだまだ梓ちゃんたちには負けるわけにはいかないわ」

梓(一応、認めてくれてるのかな……)

梓父「それじゃあ、そろそろ切り替えていくかお前」キリッ

梓母「ええ、あなた。ラストを飾るに相応しい演奏を」キリッ

梓(お父さんとお母さんの空気が変わった! 
  そうだ、私はそんな二人の演奏を聞いて音楽をしてみたいって思ったんだ!)

梓父「じゃあ、行くよ~。ついておいで~」アハハハ~

梓母「あ~ん、待って~」ウフフフ~

梓(大丈夫かな……)



紬「……」

紬父「どうしたのだ? 紬」

紬「お母様も、私の演奏を聴いてくださってるかなって思って……」

紬父「ああ、きっと聴いてくれているよ」

紬「ええ……」

紬父「それに、紬はとても母さんに似ている。母さんもピアノの類が得意だった」

紬父「きっと演奏中は紬と母さんが重なって見えるかもしれんな」

紬「私も、幼い頃にお母様と一緒にピアノを弾いた記憶があります」

紬父「きっと、今も紬と一緒に弾くために天国から下りてきて今ここにいることだろう」

紬「お父様……お母様……」






客(なんでスーパーマンの格好してるんだ……)

客(今日ってコスプレパーティーだっけ……)

客(駄目だ気になってライブに集中できない……)



律「えっと、この後は、シークレットゲストの登場か」

梓「確か、数年前にこの周辺の一世を風靡したバンドが出てくるんですよね」

澪「そのカルト的人気に一切の情報を明かさずに出演するんだよな
  もし大々的に宣伝したらこのライブハウスのキャパじゃ足りないって」

唯「私たちにも教えてくれなかったもんね~」

紬「リハーサルも非公開だったし」

唯「いったいどんな人たちなんだろうね」

律「ところで明らかにさっきから客層変わってきてるよな……」

紬「ええ、すっごくメイクが濃かったり、髪の毛をツンツンに立ててたり……」

澪「なんだか、雰囲気もおぞましい感じになってる気が……」

梓「宣伝してないにも関わらず聞きつけてくるファンも沢山いるんですね」

律「おい、なんかステージ上、大変なことになってるぞ……」

澪「なんでドクロなんて並べてるんだ……」

梓「あ、暗くなったから始まるみた……」


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


律「な、なんだこの盛り上がりようはっ!!」

唯「ちょっと、あの仮面もしかして……」

紬「軽音部にあったアルバムで見覚えが……」

澪「ま、まさか……」


さわ子『お前らが来るのを待っていた~、ひぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!!』

軽音部一同「やっぱり!?!?!?」


「ついに悠久の刻を破ってDEATH DEVILが復活だ!!」

「キャサリン様が地獄からお帰りだ!!」

「当時のオリジナルメンバーのジャニス様も復活なされたぞ!!」

「俺たちもこのときをずっと待ってたぜ!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」



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律「歌はともかく演奏自体は目を見張るものがあるな……」

梓「そ、そうですね……」



「なんだか昔と比べてキレがなくなったな……」

「ああ、やっぱり歳には勝てないのか……」

「馬鹿野郎! ついさっき地獄から舞い戻られたんだ
 鬼との戦いで体力が消耗してるんだよ!!」

「そうだ! そうだ!」

「でも、やっぱり十代のときのほうが……」

「なんだと!! キャサリン様は十万飛んで二十ン歳なんだから
 数年くらいは誤差の範囲なんだよ!!」

「そうだぜ! クレオパトラの鼻をへし折ったのもキャサリン様なんだぜ!!」

「さすがキャサリン様だせ!!」

さわ子「……」


さわ子「若さが……」

「お、おい……キャサリン様が……!!」

さわ子「妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい!!」

「で、出た!! キャサリン様の恨み節!!」

「約3秒で5回の妬ましい発言だ!!!!」

「意外と普通だな……」

「はっ!! これだから素人は困るんだよ!!」

「何も早ければ良いってもんでもないんだぜ!!」

「ああ! あのキャサリン様のデスマウスから発せられる声は
 地獄の閻魔へのホットラインなんだぜ!!」

「さすがだぜ! キャサリン様!!」



律「なんだそりゃ……」

澪「もう帰りたい……」

唯「澪ちゃん、あとちょっとの辛抱だよ!!」


紬父「紬よ」

紬「お父様……」

紬父「あれが教師とは事実なのか?」

紬「……はい」

紬父「そうか……反面教師というわけか……」

紬「きっとああやって、私たちにこうなるべきではないと教えて下さっているのです」

紬「その身を犠牲にして」

紬父「ああはなってはいかんぞ、紬」

紬「わかっております、お父様」

梓(そんな格好でいるムギ先輩のお父さんが言ってもあまり説得力がないなぁ……)




楽屋

さわ子「ふぅ……、久しぶりにやりきったわ」

さわ子「ありがとうジャニス」

川上さん「いいのよ、キャサリン。でも、私はもうこれっきりにしたいわ……」

さわ子「そうね……、もう無理があるわよね……」

さわ子「今日を持ってDEATH DEVILは永遠に封印するわ……」

川上さん「……そうしてもらえるかしら」

さわ子「さすがに教師の私がこんなことしてるなんて知られたら
    堪ったものじゃないものね……」

   コンコン

さわ子「はい?」

唯「失礼しま~す……」

さわ子「え゛っ!?」

さわ子「なんで、あなた達がここにいるの!?」

律「いや、むしろそれはこっちのセリフっていうか……」

澪「梓のお父さんがこのライブの主催者で私たちもステージに上げてもらったんです」

さわ子「ま、まさか一緒のライブハウスだったなんて……。なんで教えてくれなかったのよ!!」

唯「う~ん……なんとなく?」

梓「先生こそ私たちに黙ってライブしたじゃないですか」

さわ子「だって、こんな姿見せれるわけないじゃない!」

紬「良かったです。一応先生もその格好は恥じているんですね」

さわ子「……」

川上さん「じ、じゃあ私はこの辺で……」

唯「あれ? この声は、前のライブでお世話になった、お姉さん?」

川上さん ビクッ!?


さわ子「とにかく、このことは学校には黙っておいて頂戴よ」

律「え~っと……、あははは~。それはどうかな~……」

さわ子「何!? もしかしてあなた達、私を脅すつもり!?」

澪「いや……、そういうわけじゃないんですけど……」

梓「私たち以外の誰かが、学校に言っちゃうかも……、とか」

さわ子「どういうことよ?」

唯「ほらほら、ね! すごい格好でしょ」

唯父「こらこら引っ張るな」

紬「唯ちゃん……」

さわ子「どちら様?」

唯父「あ、あの……、娘の唯がお世話になっております……」


さわ子「……」



  お父さん、お母さん……。
  私は近々そちらに帰らなければいけないときが来るかもしれません
  そのときは、何も聞かずにぜひ優しい笑顔で出迎えて下さい……

                                        さわ子






その頃の真鍋家

和父「これはそちが作った夕食か?」

和「はい、そうでございます父上」

和父「うんうん、腕を上げたのぅ和。褒めてつかわそうぞ」

和「ありがたき幸せ」

和母「もはやこの母も和には足元にも及びませぬ」

和父「おぬしらも和を見習い精進せいよ」

和弟「はい父上」

和妹「姉上。私にもお教え下さいませ」

和「ええ、いいわよ」

和父「これで我が真鍋家も安泰よ。かっかっかっか」

和母「おほほほほ」




和(いい加減疲れるわ……、この家族……)

 おしまい



最終更新:2010年05月24日 22:03