あの日ほど悲しい日は無かっただろう。唯先輩がドアを閉めた後、私はずっと泣いていた。
次の日先輩たちにこのことを話して、またみんなで泣いた。
先輩たちと共に唯先輩の家に再び来ると、そこは空き地になっていた。
あれから半年近く経ち、私たちは学園祭に向け練習に励んだ。唯先輩と憂に聴いてもらうという想いで。
ある休日。久々に両親が帰って来たので、家族で大晦日に出来なかった大掃除をすることになった。
私の担当は家の古い物置だ。
梓「うわ・・・酷い埃」
私にはこの物置を使った記憶はほとんどない。
でも、奥に見えた埃を被ったアンプに何かを感じた。
梓「よいしょっと・・・」
アンプを持ってきてみる。掃除のあてもないのでとりあえずこれからでいいか。
そう思って私はアンプを拭いた。すると・・・
唯「やっほー!私はアンプの魔人だよ!初仕事がんばっちゃうぞ!」
ギュオンという音と共に、見慣れた顔が現れた。
梓「何やってるんですか・・・唯先輩」
唯「さて願いを3つ・・・え」
唯「ああああああずにゃん!?」
唯先輩によると、願いの効力が切れた後、2人は魔人として魔界で生きているそうだ。
私たちはてっきり2人とも消滅してしまったと思っていたのだが・・・
唯「1度生み出した命を消しちゃうほど魔人は非道じゃないよ~」
とのことだ。
今は唯先輩と憂は2人暮らしで、相変わらず家事はほとんど憂にまかせっきりらしい。
そこで唯先輩は、憂を養うために仕事に就くことにした。
それが、アンプの魔人というわけだ。
唯「あずにゃん、どこ行くの?」
今私は先輩たちに、大変な事が起きたからすぐに集まってくれと連絡した。
集合場所はもちろん部室だ。
梓「ふふ、言わなくてもわかってますよね?」
唯「みんなに会わせてくれるんだね!」
唯先輩はふわふわ浮きながら私に付いてくる。
前からふわふわしている人だと思っていたが今は本当に浮いてるのだからどうしようもない。
唯「そうだ、まだこれしてなかったね。あーずにゃん♪」ギュ
梓「あ・・・」
抱きつかれた感触は、依然と変わらなかった。
唯「お金がたまって生活に余裕ができたら、憂と一緒に人間界に旅行に来ようと思ってるんだ!」
梓「そんなこともできるんですか。意外と魔界って柔軟なんですね」
唯「憂より一足先にみんなに会うのはちょっと悪いかな」
梓「帰って話してあげれば、憂も喜びますよ」
唯「そうだね!ところで、私が願いを叶えに来たって覚えてる?」
梓「それなんですが・・・願いを言わなければ、ずっと一緒にいてくれるんですか?」
唯「えぇ?うれしいけどそれは困るよお」
梓「ふふ、冗談です」
唯先輩とくだらないおしゃべりをしてるうちに、部室の前まで来た。
中からにぎやかな話し声が聞こえてきて、全員揃ってるとわかった。
唯「この中にみんながいるんだね。ちょっと緊張するよお」
梓「唯先輩はこんなことで緊張するようなキャラじゃないでしょ?」
唯「むー!私だって緊張ぐらいするもん!」
梓「はいはい、じゃあ入りますよ」
唯「う、うん!」
先輩たちはどんな顔をして驚くだろうか・・・楽しみにしながら、私はドアを開けた。
おわり
最終更新:2010年05月27日 23:50