梓「えっ…そ、そんなつもりじゃ…い、いただきます」

唯「あずにゃん良かったねー。たいやき食べてるあずにゃんも可愛い♪」スリスリ

梓「きゃっ…ゆ、唯先輩…餡子がついちゃいますよ!?」

紬「あらあらまあまあ」テカテカ

律「…澪」

澪「なんだよ? 半分はやらないぞ」モグモグ

律「唯って…やっぱり唯だよな?」

澪「あの話か。和も言ってたけど…私には唯にしか見えないな」モグモグ

律「だよなー。梓もなんだかんだいってたけど結局いつものだし」

澪「…案外憂ちゃんが冗談をいってるんじゃないのか?」ズズーッ

律「うーん。憂ちゃんがそんなことするのかな。良く知らないけどさ」

澪「いろいろとストレスが貯ってるのかもな。さてと。食べ終わったみたいだし、練習練習」

じゃかじゃかじゃんじゃんじゃかじゃんじゃかじゃん

梓(…唯先輩…あいかわらずコード間違ってるけど…とっさのアレンジとこのリズム感…さすがだなあ…)

澪「ちょっとストップ。唯、2回目の繰り返しのとこ、コード違うし…それに
 昨日も言ったけど少し声の伸びが足りないと思うんだ。ムギももう少し長めに響かせた方がいいと思う」


紬「わかったわ」

唯「あはは。じゃあ手前からもう一回だね」

律「じゃいくぞー、わんつーすりー」

梓(本当に…唯先輩じゃないのかな? 和さんはああいってたけど…)

和『きっと以前入れ替わりがバレたのが憂的にはショックだったのよ。あの子、少し完璧主義者的な所があるから』

梓『はあ。完璧主義者、ですか…』

和『昔ね、私がもってた漫画家のサイン色紙みて、唯もその人のサインを欲がったんだけど、結局手に入らなかったのよ』

梓『まあサイン会とか限られてますからね』

和『あの子欲しがったらそれしか考えられなくなるから、一時期少し元気がなかったのね。
 で、唯の部屋で遊んでた時に、ふと憂の部屋、ドアが開いてたから覗いてみたら…』

梓『…床一面の…ノートとか…紙!?』

和『しばらくして唯がサインを手に入れて凄くうれしがってたわ。憂が偶然サイン会をみかけて自分の名前でもらってくれたって』

梓『そんなにそっくりだったんですか』

和『絵柄も筆跡も完璧だったわ。名前を隠したら大ファンの私も唯も区別がつかなかったもの。
 細かい癖とか、味ともいえる線の狂いや歪みまでまるでその人が描いたようにしか見えなくて…
 似せるとかそういうレベルじゃなく、完全になりきって、自分がその人だって思い込むくらいじゃなきゃ、あれは無理ね』

梓(…憂…)

唯「あずにゃん、ちょっとズレてるよ」ボソッ

梓「!す、すみませんっ」



ぐつぐつぐつぐつ

憂「ふぅ…買いものと洗濯ものの片付けとお風呂のしたく…疲れたよぅ。
 ご飯はタイマー入れてくれてるけど、おかずは何をつくったらいいのかわからないし…。
 とりあえず野菜を切ってお鍋に入れてみたけど…ふぁ。だめだ…眠く…」Zzz


ドア「ばたん」

唯「ただいまー。うーいー、ごはーん」ドタバタ

憂「…ん…」ムニャ

唯「ん? なんか、焦げ臭いよ?」クンカクンカ

憂「!? わぁっ、お鍋!?」

唯「ど、どうしたの憂?」

憂「ご、ごめん。焦がしちゃったみたい。今作りなおすね」アセアセ

唯「手伝おうか?」

憂「え!? う、うん!!」パァァァ

唯「でもどうすればいいのかなぁ。今日のメニューは?」

憂「え? う、うーん…わかんない」

唯「えー。…憂、疲れてない? 今日は私がやるからいいよ。憂はそこでそのまま休んでて」

憂「いいの!? ありがとう!」

唯「まかせといて! ご飯は…タイマーいれてくれてるんだ。おかずは何をつくったらいいんだろう。
 憂…いや、いいよ、私が考えるよ! …うーん…とりあえず野菜を切ってお鍋にいれてからまた考えよう」

憂「…」

唯「ふんふーん♪ …いたっ!?」

憂「だ、大丈夫!?」

唯「指切っちゃったよー」

憂「はい絆創膏!」シュタッ

唯「ありがとー。うう…うまく貼れないよう」モタモタ

憂「…ふふっ。私が貼ってあげるよ」

唯「あっ、憂の指も絆創膏だらけだね」

憂「う、うん…あの、やっぱり私も手伝うよ」

唯「いいの!? ありがとう!」パァァァ

憂「…ねえ、やっぱり憂はわたしで、わたしが憂なのかな?」

唯「ほえ? 憂は憂だし、わたしはわたしだよ?」

憂「そ、そうだよね。なんだか…よくわからなくなってきちゃった…えへへっ」

唯「うーいー、ほんとに大丈夫? わたし一人でもやれるんだから」

憂「だ、だめだよー。それにお腹もすいてきたし、二人でやったほうがきっと早いよ!」

とんとんとんとん

唯「ほら、やっぱりこうやって猫の手にしなきゃ駄目なんだよー」

憂「そうだねー。でも包丁の角度がそれじゃ危なっかしいよ」

唯「こうかな?」

ぐつぐつぐつぐつ

憂「…まあ…あんまり美味しくはないね」

唯「…うん…でも」

憂唯「お腹減ってるから…! あははははっ」


りりりりりりり

憂「う…」

じりりりりりりりり

憂「!? いけない、ご飯のしたく!」ドタバタ

憂「…憂は…」ガチャッ

唯「ふごーっ」

憂「…寝てる、か。憂、ずっとこのままなのかな。…わたしがあんなことを言ったせいなのかな…。
 …頑張らないと。憂が…私がやらなきゃ!」

りりりりりりりりりりりりりりりりりり

憂「ふぅ。やっとお弁当と朝ごはんがおわったよー」

りりりりりりりりりりりりりりりり…

憂「目覚しとまったみたいだ。憂も起きたのかな?」

かちゃかちゃ

憂「並べ終わったけど、憂まだ起きて来ないのかなー」

がちゃ

憂「うーいー、起きてー。遅刻しちゃうよー?」

唯「うーん。あと5分…」ムニャ

憂「だめだよー、ほら!」

ぱくぱくもぐもぐ

唯「…ごちそうさま」

憂「ごめんね、すこし焦げてて」

唯「んーん。美味しかったよー。…このあいだあずにゃんが調理実習で持ってきてくれたのより全然だよー」

憂「あー、あれはちょっと酷かったね」

唯「憂も貰ったの? そっか…いいなぁ憂はいつもあずにゃんと一緒で」

憂「い、一緒って…」

唯「…私もあずにゃんと…いつも一緒がいいなあ。…ねえ憂、今日だけ、今日だけでいいから…お願い!」

憂「お願いって…まさか」

唯「リボンと髪型取り換えれば多分わからないよ。ね?」

憂「う、うん…(なんか、こんなの前にもあったような…)」

てきぱき

唯「うーん、やっぱりこの髪型がいいや。憂はどう?」

憂「…」

唯「憂?」

憂「…え? あ、ごめんね。ちょっと精神集中してたから。…あれ? なんの為にそんなことしてたんだっけ?」

唯「憂…もとに…もどったの?」

憂「元にって…お姉ちゃんなにを」

唯「うーいー!」ダキッ

憂「ひゃっ…もうっ…お姉ちゃんったら。あいかわらずよくわからないんだから。…でも…あったかい」ダキッ

ぱくぱく

唯「というわけだったんだー」

律「それで弁当がそんなにそんなだったんだな」

唯「そんなにそんなって…酷いなーりっちゃん」

和「ちょっと塩が多すぎるわね。切り方が揃ってないから火の通りがまちまちだし、というか全体的に火加減が強すぎるわ」

澪「…この胡瓜全部繋がってる」

唯「えへへへ。ご飯も柔らかすぎだし…取り換えっこしたおかずが心のオアシスだよー」



もぐもぐ

純「うう…憂のおかずと取り換えるんじゃなかった…。でも人参嫌いだし…ああ…」

梓「好嫌い言ってる罰よ。たまにお母さんが作ってくれたんなら食べてあげなきゃ駄目じゃない」

憂「ふふ。ごめんね純ちゃん。なんか今日調子が悪かったみたいで。今は頭もスッキリしてるんだけど」

梓「憂…もう、唯先輩じゃないんですよね?」ボソッ

憂「あはは。どうしたの梓ちゃん。今日はそれもう3回目だよー。私は私だし。
 そりゃ、お姉ちゃんになれたら…いいだろうなぁ」

梓「そうなの?」

憂「うん。きっとあんまり嬉しすぎて元に戻れなくなっちゃうかも。もぐもぐ…あっ…」

梓「? どうしたの?」

憂「このおかず…我ながら酷いできだけど…なんだかお姉ちゃんの味がするみたい」

唯「くしゅん」


fin.



補足

憂が唯になりきったけっかあずにゃん萌えまでトレースして入れ替わりを再要求、
なりきり能力のおかげで元にもどったとかそういう話。

唯憂がどっちがどっちか本人たちにもわからなくなる話にしようかなと思ったけど体型の問題で挫折して
唯が姉っぽさを自覚する話にしようかと思ったけど唯だから無理だよなで挫折してしまった。




最終更新:2010年05月29日 22:25