梓「私…不安なんです…部長になる事…」

唯「大丈夫だよ!あずにゃんなら出来るよ…だからね?泣かないで」

梓「それだけじゃないんです……」

律「他に何か不安なのか?」

梓「怖くて……」

紬「何が怖いの?」

梓「私が三年生になって…誰も軽音部に入る事無く廃部になる事が…怖いんです」

澪「梓……」

梓「もし…誰も入ら無くて廃部になったら……みんなに申し訳無いです」

唯「あずにゃん……」

律「大丈夫だよ梓…廃部になっても誰も梓を責めるなんて事はしないよ」

紬「だから…もし廃部になっても謝らなくていいからね」

梓「…………はい」

澪「ほら、梓ハンカチ」

梓「ありがとう…ございます」

唯「でも…もし廃部になりそうだったら憂を派遣するよ!」

梓「唯先輩……」

律「よーし…だいぶ暗くなって来たし早めに歩くぞー」

澪「だな…もう8時だ」

紬「………………」

唯「ムギちゃんなんか暗いよ?」

紬「そ、そうね…外暗くなって来たわね~」

唯「違うよ~ムギちゃんが暗いんだよ!」

紬「え、あ…私が?」

唯「疲れたの?」

紬「ううん…そんな事無いわ元気よ!ありがとう唯ちゃん」

唯「どーいたしまして!」

律「そーいえばムギは女子大に行くんだよな?」

紬「えぇ…そうよ」

澪「お互い違う大学になるんだろうけど頑張ろうな!」

紬「そうね!唯ちゃんとりっちゃんは大学はもう決まったの?」

唯「まだ決まって無いよ…」

律「同じく!」

梓「威張って言う事じゃないですよ!」

澪「お前ら本当にニートになるぞ」

唯「だいじょーぶ!」

律「もう…澪と同じ学校に行くか!」

澪「わ、私と?」

律「腐れ縁って奴だよ!」

紬「流石、幼なじみね~」

唯「じゃあ私も和ちゃんと一緒の大学に…」

梓「ほ、本当にそんなんでいいんですか?」

律「先の事なんかわからないしな~」

唯「そーだよね~」

紬「二人共頑張って進路決めてね!」

律唯「おーーー!」


澪「でも…本当に明日の事何て誰も分から無いよな…」

律「明日、私が死んじゃうかもしれないしな~」

唯「え!嫌だよぉ」

律「冗談だよ冗談!」

唯「よかったぁ~」

律「でも、もし死んだら死体の中でも1番カッコイイ死体になりたいなぁ~」

紬「わぁ~りっちゃんカッコイイ!」

澪「どーしたんだいきなり?」

律「ど、どーも無いよ!」

梓「かっこよかったですよ」

唯「うん!」

律「だぁぁぁ言わなきゃよかったぁぁ!」

紬「照れてるわね~」

唯「りっちゃん女の子っぽい!」

律「失礼な!身も心も女の子だぞ!」

梓「そーいえば律先輩のカチューシャ外した姿ってあまり見た事無いですよね」

唯「外して見てよ!」

律「ど、どーしよっかな~」

唯「いーじゃん!」

紬「私も見たいわ~」

澪「そういえば私も久しく見て無いな」

梓「外して見て下さいよ!」

律「そんなに注目されると…なんか外しずらい」

律「よーし早く先に進むぞー!」

梓「あ!話しそらした!」

律「カチューシャ離さ無いからな!絶対」

澪「す、少しだけ見たいな…」

紬「ちょっとだけでいいから!」

律「ダーメ!ほら行くぞ!」

唯「ケチー!」


澪「うわっ!!」

梓「どーしたんですか?」

澪「もう9時になってる…」

律「日付が変わる前に帰りたいよな…」

唯「多分、後半分くらいだよね!」

紬「えぇ…頑張りましょう!」

唯「足が痛いよ…」

梓「頑張って下さい!」

唯「ギー太も歩かないかな…」

澪「無茶言うなよ…」

律「あ…チョコレートだ!鞄の中にチョコレートがあったぞ」

唯「食べよ!食べよ!」



段々と家までの距離が短くなって来ている。
あの時の私はもう少しみんなと歩いて喋りたいと思っていた。
それに不安だった。
私が今まで過ごして来た中で1番の友達と離れるのが不安だった。
このまま大学へ行き何も話さ無くなる会えなくなる。
こんな事になるんじゃないかって…私は本当に不安で胸が痛かった。


紬「ねぇ…みんな…」

律「どーしたんだ?」

紬「みんな違う大学へ行っても……私達一緒だよね?」

唯「当たり前だよ!」

紬「私…不安なの…みんなと離れるのが……とっても不安なの」

紬「みんなと一緒なら何でも頑張れるの…何も怖い事なんかないの」

唯「ムギちゃん…」

紬「夜になって辺りは暗くなって月明かりしか見えなくても…怖くない」

澪「ムギ……」

紬「怖くないの…みんながいてくれさえすれば…みんなが側にいてくれさえすれば怖い物なんか無いの」

紬「私が今見上げてる空が崩れ落ちて来てもね、それとも、あの山が崩れて海になっても」

梓「ムギ先輩…」

紬「私は泣かないわ…一粒だって涙なんか流さない…みんながいてくれさえすれば…怖く無いから…」

律「ムギ……」


律「あぁ…わかった」

紬「みんな私の側にいて私を支えて欲しいのダメな私を…支えて欲しいの」

唯「ダメなんかじゃないよ!」

紬「ありがとう…唯ちゃん」

紬「みんなが困ってる時はいつだって私の側にいて…側にいてほしい」

澪「約束するよ」

梓「……側にいます!」

紬「みんなありがとう…だから側にいてね…私が支えてあげるから」

律「放課後ティータイムは永遠不滅だからな…いつだって側にいてやるよ!」

紬「ありがとう…本当にありがとう…」

澪「……着いたな」

律「そうだな…じゃあみんなここで解散って事で…いいよな?」

梓「はい…何だか疲れました…けどとっても楽しい時間でしたよ!それじゃあさようなら」

唯「バイバイあずにゃん!」

梓「はい…さようなら」


唯「私も帰るよ!憂が待ってるから」

紬「さようなら唯ちゃん…」

唯「うん!バイバイ、ムギちゃん澪ちゃんりっちゃん、また遊ぼうね」

澪「あぁ…気をつけて帰れよ」

唯「わかってるよ!バイバ~イ」


紬「私も帰るわね…」

澪「じゃあなムギ」

律「気をつけてな!」

紬「ありがとう…さようなら、りっちゃん澪ちゃん」

澪「さようなら!」

律「ムギちょっと待って!」


紬「どうしたの?」

律「私達ずっーーと一緒だからな!放課後ティータイムは不滅だからな!」

紬「えぇ…」

律「だから…不安になった時は何時でも電話掛けて来いよな」

紬「ありがとう…りっちゃん」

律「それじゃあ…私達も行くからな…また会おう」

澪「じゃあなムギ」

紬「さようなら…二人共」


その後、私は高校を卒業して大学に行った。
月日が経つにつれてみんなと会わなくなり……私もみんなの事をほんの少しだけ忘れる事があった。
でも…今日はみんなと会える。
りっちゃんもきっと喜ぶだろう。
私は車のエンジンを掛ける前に、もう一度新聞を読み返した。

紬「行こう……」


葬式会場に着いた私はまず先にりっちゃんな元へと向かった。

紬「……りっちゃん」

綺麗な顔をして眠っていた。
前髪を下ろして…本当に綺麗だ。

紬「久しぶり…りっちゃん」

りっちゃんは綺麗でそれでいて…かっこよかった。
本当にこの世界で1番カッコイイ死体だ。


澪「ムギ…か?」

紬「……澪ちゃん?」

澪「久しぶりだなムギ元気か?」

紬「えぇ!元気よ」

澪「律も喜んでるよ…」

紬「……そうね」

紬「……唯ちゃんと梓ちゃんは?」

澪「あぁ…居るよ今は喫煙室にいる」

紬「二人はタバコ吸うの?」

澪「私も最初は驚いたよ…でも葬式してから10年経つしな…」

紬「そんなに……」

澪「律はコンビニ強盗に来た男に殺されたんだ…子供を庇ってな」

紬「そうなの………」

澪「最高にカッコイイよ律」

紬「私もりっちゃんに言われたから保母さんになったのよ」

澪「似合ってるな…」

唯「あ…ムギちゃん!」

梓「お久しぶりです」

紬「唯ちゃん梓ちゃん…全然変わって無いわね」

唯「ムギちゃんも変わって無いよ!あずにゃ…梓はツインテールじゃないんだけどね!」

梓「唯先輩あずにゃんでいいですよ」

唯「えーでも恥ずかしいよ!この年であずにゃんだなんて」

澪「な、なぁみんな今日はお願いがあるんだ」

唯「お願い?」

澪「五人で久々に演奏しないか…ふわふわ時間」

梓「そーですね…演奏しましょうよ!」

紬「私も賛成するわ」

澪「律も…賛成だよな?」

澪「じゃあ…葬式が終わったら…学校に来てくれ楽器は私が用意するから」

紬「私はいいわ車にキーボードあるから」

唯「私もギー太あるから大丈夫!」

梓「私も大丈夫ですよ」

澪「そうか…何で楽器なんか持って来てたんだ?」

紬「何となく予想出来たから…みんなで演奏する事」


りっちゃんの葬式が終わり私は車へと戻った。
沢山泣いたから目の回りがヒリヒリする。
澪ちゃんも唯ちゃんも梓ちゃんもみんな泣いていた。
今でも、りっちゃんがムギ久しぶりって、言ってくれるんじゃないか…そんな気がする。

紬「りっちゃん…今日は沢山演奏しようね」

澪「ムギこっちだ!」

紬「車は学校の中に止めていいの?」

澪「大丈夫大丈夫…私ここで教師やってるから」

紬「ほ、本当に!?」

澪「本当だよ、さぁ早く車中に入れて」

紬「えぇ…」

紬「唯ちゃんと梓ちゃんはもう音楽室にいるの?」

澪「あぁ…今は準備してる」

紬「そうなの…よいしょ」

澪「キーボード重いだろ?持とうか?」

紬「大丈夫よ!早く行きましょう」

澪「わかった」

唯「あ!来た来た、もう準備は終わったよ!」

梓「律先輩のドラムもほら!」

澪「ありがとうみんな…」

唯「歌詞もコードも覚えてるから心配しなくていいからね!」

紬「流石唯ちゃんね」

澪「よし…アンプも繋げたし演奏するぞみんな」



高校の時と変わらない立ち位置。
懐かしい音楽室の匂い。
全てが久しぶりだったけど何故か新鮮だ。
りっちゃんが居るような感じがする。
いや…確かに居る、姿は見えないけど…。
だって私は聞いた。
りっちゃんの声を…1234と私達に合図をする声を確かに聞いた。
唯ちゃんのギターが音楽室に鳴り響く。
続いて梓ちゃんのギターそして澪ちゃんのベース。
私は鍵盤に指を置いてキーボードを弾き始める。



紬「側にいて…」END



最終更新:2010年05月29日 23:42