唯(浪人、やめようかな………
そうだよ!まだ4月1日だし!まだ……………
でも……………この気持ちは……?)
唯「あ゙きらめ゙だぐ、ないっ!!」
コンコン ドウカシマシタカー?
唯「ふぇ!?」
玄関だ。人がきてるみたい。
意外に大きな泣き声だったんだろうな。………すごい恥ずかしいよぉ///
唯「ガチャ ふぁい?」
女の子「大丈……うわっ!」
しまった、目拭ってない。
女の子「あの~……失礼しましたっ」トタッ
唯「まっひぇ!!」グッ
女の子「はいッッッ!?」ビクッ
うわぁ、第一印象最悪。やっちゃったなぁ…………
―――――――――
女の子「あの、凄くびっくりしました」ドキドキ
唯「ご、ごめんねぇ!アセ
普通に引き止めようとしたんだよぉ」
私の部屋。
私は無理いって女の子にあがってもらった。
女の子のほうも嫌がってはないみたいだったし。
その子の第一印象は、えっ?浪人生なの?って感じだった。
身長は私よりちょい低めくらい。スッととおった鼻に愛らしい、でもどこか控えめな目。
出会ってから、連れてくるまでの挙動で分かる。よーするにりっちゃんとは対極の性格だろうなぁ。
女の子「はじめまして。寮生の松本奈緒(なお)です」
唯「松本さんかぁ。こちらこそはじめまして!
私
平沢唯!唯ってよんでもらって構わないから!」ニコッ
奈緒「え、あ、その…………
私も奈緒ってよんでくださ……」
最後の方は聞き取れないほど小さな声だった。
澪ちゃんともむぎちゃんととも違う、かわいいけど、控えめな子。新しい出会いってやっぱいいものだよぉ。
唯「奈緒ちゃんは、どこ出身なの?近畿かなぁ、いんとねーしょんそんなに変わんないし」
奈緒「(奈緒ちゃん……初めてだ下の名前……)
あ、はい兵庫県出身です。」
唯「わぁ、お隣だぁ。私京都府出身だよぉ。
浪人生ってもっとカリカリやってそうな人ばかりだって思ってたけど、奈緒ちゃんみたいな人と一緒に寮に入れてよかったぁ」
本音だった。
私にとっての浪人生のイメージ。それは、おそらく、世間の大半が持っているものと同じだったのだろう。
奈緒「あ、はい、恐縮ですっ!アタフタ」
それから私は奈緒ちゃんとたくさん情報交換した。
浪人を決めた理由、駿台を選んだわけ、寮に来た経緯などなど……
初めて出会うのに、同じ浪人生、つまり去年失敗した者同士だと思うと、不思議と親近感が湧いた。
奈緒「唯……さんは志望校はどこなんですか?」
まだぎこちない。可愛らしいな、奈緒ちゃんは。
唯「もぉっ。同学年なんだから敬語はやめよーよぉ。
……………志望校かぁ」
私の顔つきがちょっと変わったのを彼女は見ていたのか
奈緒「もしかして、さっきの…………その、悲しんでたのと関係ありま、……あるの?」
こんな自分事で恥ずかしい話をさっき知り合ったばかりの子に言えるわけがない。
……はずなのだが、つい警戒を解いて相談してしまう。奈緒ちゃんは不思議なオーラを持ってる子だった。
唯「実は、ね…………」
―――――――――
奈緒「そうなんだ、ふふ」
唯「笑われたあ!?」
奈緒「あ、いや、そんな、悪気はないですよ!!」
奈緒「ただ…………ふふ、唯さんが、その、可愛……健気な人なんだなって」
唯「んん?」
奈緒「あっ?もちろん今も凄くしっかりした人に見えますよ!」
唯(私がしっかりしたひとー!?)
奈緒「ただ……初対面でも堂々と話せて、明るい人だなぁって思ってたけど、こういう一面もあるんだぁって」
奈緒「不安だったのは私だけじゃないって分かってホッとしました!」
奈緒「どうぞこれからも仲良くしてくださいっ」ペコッ
唯「わぁっ、そんな深々とっ!こちらこそよろしくだよ、奈緒ちゃん!
講習始まるまでまだ日はあるし、もっといろんなこと話そっ!」
奈緒「うんっ」
こうして4月1日、一人お友達ができました!!
なんというか……挫折を経験したのが自分だけじゃないって思うと、仲間意識ができるよね。
それが負の意識だっていう人もいるけど、人ってやっぱそういう感情避けられないと思う。
肯定しちゃえば、後は………その子たちと前に進んでいくだけなんだよ。
4月1日はまだ終わらない。その日、初!夕食でまた一人友達ができましたっ!
柚希「はじめましてっ、峰柚希(ゆずき)です。
いやーまさか、ウチの寮生のレベルがこんなに高いとはねぇ!!」
…………顔のことをいってるんだったら、柚希ちゃんも相当かわいい。
どこか、というかまんまりっちゃんを思い出させるそのノリに、私たちはすぐ意気投合した。
柚希「唯は普段何してんの?」
唯「んー、ゴロゴロかなぁ」
奈緒「クスッ」
柚希「テイッ ビシッ
受験生にあるまじき発言だなぁ、おい。奈緒に笑われてるぞ。
まぁ普段から一日25時間勉強する私のほうが人にあるまじいけどなっ!!」
唯「柚希ちゃんやっぱり人じゃなかったんだぁ。キラキラ
初めて会った時からそんな気がしてたんだよぉ!」
柚希「おいっ」ビシッ
キャラポジが決まってくのって、新学期特有の楽しみだよね。
柚希「うん、思ってたより食事はうまかったな!
料理長やるじゃん」ブイ
奈緒「思ってたより?」
柚希「あぁ、寮のメシなんて大抵冷凍もんだからさ。
メシってやっぱ勉強の集中力に直結するしな、大事なんだよ」
唯「ゆ、柚希ちゃん………おなかイタイ…………」
柚希「こいつは食い過ぎだけどな」
アハハ、モー、ユズキチャンゲヒンダヨー!!
ガチャ
唯「あ…………」
女の子「……………」
唯「あ、はじめまして!寮生の平沢唯です!君名前は何てゆーの?」
女の子「…………」プイ
唯「え」
バタン!!
奈緒「私たちなんか悪いことしましたっけ?」
柚希「さぁて?まぁ十人もいればいろんな住人がいるだろ」
唯「柚希ちゃん、寒い」
奈緒「クスッ良い機転です」
柚希「」
寮母「そこの子たちー!
たまっててもいいけど、勉強もしなさいねー!
9時以降は出入り禁止だからねー!」
一同「はぁーい」スタスタ
な~んてこと守るわけないじゃん!
今日は柚希ちゃんの部屋で朝まで雑談だよぉ!
柚希「初日から規則破りとは………母さんはあなたたちをそんな子(ry
唯「はぁなそっ、はぁなそっ!」
奈緒「唯さん、階下に響きます!」ヒソヒソ
唯・奈緒「…………」
唯「ニコッ」
唯・奈緒「しー………」
普段の私なら、もしかしたら退寮になるかもしれないのに、こんなことは親のためにも絶対しない。
でもこの日は、まるで熱に浮かされたように、大胆な行動をとってしまってた。
とても、とっても楽しかった。
奈緒ちゃん、柚希ちゃんと勉強のことに限らずたわいもない話で盛り上がった。
馬の耳に念仏である哲学論議さえも、全く別の、興をそそる話題になりえるから不思議である。
柚希「人はさ、死んだらどうなるんだろ」
…………
奈緒「唯さんは、神さまっていると思います?」
…………
…………えっちな話もした。
奈緒「柚希さんは、その、女子校出身ですよね?」
柚希「おろ?やっぱわかっちゃうんだ。奈緒は……共学だなニヤリ」
奈緒「そのっ……そーですシュン」
柚希「なんでシュン、なんだよ!男といろんな経験できてうらやましい限りだ!!」
奈緒「共学なんてっ………そんないいものでもないです。
私みたいに……その、疎いと、3年間ほとんど異性としゃべらないなんてことに………」
柚希「奈緒、大丈夫!
そーゆー子のほうが悦び知っちゃってはまっちゃうんだから!」ニヤニヤ
奈緒「そ、そんなことないですよ!私貞操観念堅いですよっ!?
そーいえば、唯さんも女子校でしたよ
柚希「えぇっ!?唯も女子こうなのか!?見えねー!」
唯「見えないって柚希ちゃん、そんなのどうして判断するの?」
柚希「だってお前エロトークの時絡んでこねぇじゃんかよ!!」
唯「えろ?………あぁえろかぁ!知ってるよぉギリシアの愛の神様でしょ?
哲学ネタ好きだね、柚希ちゃんは」
柚希(信じられない!エロも知らない女子校生がいる女子校があるとは!!)
奈緒(私のほうがよく知ってるの!?私がおかしいの!?)カァァ
―――――――――
唯「柚希ちゃんは志望校どこなの?」
柚希「ん?私か?
…………去年は中央挑戦したんだけどなぁ……失敗したよ。
今年は確実に中央取って、あわよくば早慶、って考えてる」
唯「私立文系クラスだね!
一緒に合格勝ち取ろー!!」
柚希「そういや、唯のクラスはどこなんだ?」
唯「私?ええっと……………忘れた!!ビシッ
なんか覚えにくかったよぉ、EX?とかあるふぁべっと入ってるんだもん」
奈緒「!!」
柚希「それってスーパー文系EXコースじゃね?
なんだよ、自分クソ頭いいじゃん!師匠と呼ばせてくだせぇ!!」
唯「え?え?、そんなに凄い所なの!?」
奈緒「…………駿台の東大・京大合格者はそこから出る人がほとんどです」
奈緒「…………私はそのひとつ下のAクラスですよ」
唯「な、奈緒ちゃん……
奈緒ちゃん、昼間言った話はホントだよっ!!私びっくりするくらい馬鹿で………」
奈緒「……うん、その話は信じてるよ。ニコ
あ、あの………別に隠してた訳じゃないんですけど……この際だし言っておきますね?」
奈緒「私も志望校京都大学なんです」
未完
※(09/10/25)
保守、支援してくださった方にはすごく申し訳ないです。
中には京大生?もいて参考になりました。
ホントすみません。合格したら続き書きたいです。
未練がましいですが………最後に唯に言わせようと思ってた言葉だけ書かせてください
浪人って本当につらい。
浪人の3:4:3の法則を知ってる?最初の3は自分の志望校に合格出来る人。4は去年受けたとこ以下に終わる人。
そして最後の3は遊んじゃってどうにもならない人のことをいうんだって。
世間の多くの人はこう思ってるんじゃないかな?
「一年あれば、一年も勉強できれば、どこでもいけるだろ」
でも、彼等は浪人してない。
周りに流され、努力もろくにしないまま浪人生活を終える人がどれほどいるかなんて彼等は知らないんだよ。
途中経過なんて誰も見てくれない。彼等がみるのは結果だけ。
じゃあどうしたら自分のその一年を、正当化できるんだろう。
それは自分が「自分はこの一年で手に入れた」って思えるものを見つけるしかなくない?
それは、もちろん合格通知だっていい。同じ寮の子と語り合った中で吸収した、ささいな知識だっていいと思う。エロでも(笑)
唯「私はこの一年でそれらを手に入れたって自信をもって言えるもん!!」
唯「私、浪人してよかった!!」
最終更新:2010年05月31日 23:22