――台所――

唯「澪ちゃんは、りっちゃんのどこが好きなの?」

澪「な、ななななななななんだよ! いきなり!」

唯「だって、さっき私に和ちゃんのこと聞いたじゃん。そのお返し」

澪「恥ずかしいから言わない」

唯「あー、ずるいんだー」

澪「ずるくて結構。恥ずかしいのはなんとしても避けたいのです」

唯「フーンだ。じゃあ、帰り際にりっちゃんにちゅーしちゃおうっと」

澪「やめろぉ!」

唯「なんでー?」

澪「そ、それは……和が嫌がるぞ」

唯「じゃありっちゃん盗っちゃおうかなー」

澪「うう……。わかった! わかったよ!」

唯「にやにやー」

澪「律は、昔から私のこと守ってくれたんだ。まるで、王子様みたいだった」

唯「高校時代は澪ちゃんがロミオだったけどね」

澪「律のジュリエット、すごい可愛かった……」

唯「それでそれで? 王子様りっちゃんの武勇伝聞かせて?」

澪「小学生のころ、かけっこでビリだった私を馬鹿にした男の子がいたんだ。
それで、その男の子に、私が突き飛ばされたのを見て律が……」

唯「やっつけてくれたんだー」

澪「うん。他にも、私が初めてブラジャー着けて学校来て、みんなに馬鹿
にされたときにもかばってくれたし、律は私にとって、王子様でヒーロー
なんだ!」

唯「うんうん。りっちゃんらしねえ。澪ちゃんらしいねえ」

澪「そうかな?」

唯「そうだよ! 澪ちゃん、私から見たらお姫様みたいだったもん!」

澪「お姫様っていうと、ムギのほうがそれに近いけどな」

唯「ムギちゃんはクラリス的なお姫様。澪ちゃんは白雪姫的なお姫様かな」

澪「あはは。その喩え、いいな」

唯「でしょう? 伊達に大卒じゃあありませんよ!」フンス



――それから暫くして――

律「それじゃあ唯、ごちそうさま」

唯「またごちそうするよ!」

律「和もありがとうな」

和「私こそありがとうね」

澪「それじゃあ、そろそろ帰るよ。また今度遊びに来るな」

唯「じゃあね、おやすみ」

澪「ああ。唯もがんばって主婦するんだぞ」

ドア「ニコ」

和「……ふぅ。今日は、楽しかったわね」

唯「うん。やっぱり、澪ちゃんとりっちゃんは楽しいよ」

和「もうこんな時間。お風呂、一緒に入っちゃう?」

唯「いいの!? もっちろん! お背中お流しするよ!」

和「お願いね。私もしてあげるから」



――浴室――

唯「ごしごしー」

和「フフ、気持ちいい」

唯「和ちゃーん」

和「なあに?」

唯「好きー」

和「私もよ。唯」

唯「これでおっけー!」

和「はい。ありがとう」

唯「……あのさ、私はお湯に浸かれないからそろそろ上がるね」

和「うん。わかった」

唯「ごめんね」

和「謝ることないわよ。女の身体でいる以上仕方のないことなんだから」

唯「うん。ありがとう。じゃあ、ベッドで待ってるね」



――夫婦の寝室――

和「お待たせ」

唯「和ー」

和「どうしたのよ。呼び捨てなんて」

唯「あのね。澪ちゃんとお話しして思ったんだ。私って、本当に子供だなって」

和「そうね」

唯「ぶー。……と。これはちょっぴり真面目な話なんだ」

和「……わかったわ。それじゃあ、聞くわ」

唯「澪ちゃんって、すごい大人でしょ。それが羨ましいの。私は憂の幸せに
直前まで気がついてあげられなかったし、強引に押し付けがましくアメリカ
に送った。それが正しいのかはわからない。ただ、私がしたかったからで、
憂の気持ちを全く考えなかったんだ」

和「でも、正しかったわよ。憂も、きっとそう思ってる」

唯「ホントは、もっとちゃんとした方法で憂とあずにゃんを一緒にしてあげ
たかったんだ。暴走行為で免許取り消しで済んだけど、もしかしたら、誰か
を巻き込んで、殺しちゃったかもしれないことを、私たちはしたんだ」

和「律も、そう言っていたわ。大変なことをしていたって」

唯「和も、そう思う?」

和「私には、なにも言えないわ。でも、唯たちがそう言うのであれば、それは
そうなのだと思う」

唯「ようするに、私は子供だったんだ。私の所為でりっちゃんたちは職を
失って、ムギちゃんも今はすごく大変で、私たちも会えないくらいに忙しい
んだよ。……それもこれも、私の所為なんだよ」

和「……」

唯「だから、私は大人になりたい。25歳になって、こんなことを思うのは変
だけど、私は――もう、間違えたくないんだよ」

和「唯……」

唯「その第一歩が、ご飯を作ること。家事も、主婦らしく全部頑張る」

和「……」

唯「憂は、すごい大変だったんだなぁ。こんな駄目駄目なお姉ちゃんのお世
話してきたんだから」

唯「憂のほうが、100倍大人だったよ。うん」

唯「ねえ、和。これからも、よろしくね?」

和「ええ。こちらこそ、よろしくね」


和「……すー」

唯「和ー」

和「くー」

唯「だーいすき」

唯「……寝ちゃった」

椅子「ギシ」

ノート「ぺら」

唯「澪ちゃんに教えてもらった。真鍋唯の主婦日記。今日から書かないと」

唯「6月9日。今日は、澪ちゃんとレバニラを作りました」

唯「生理でちょっぴりお腹が痛かったけど、和とりっちゃんが美味しいって
言ってくれたので、嬉しかったです」

唯「……大好きだよ。和」

ノート「パタン」

唯「うん。これからも、頑張ろう」


                                おしまい



最終更新:2010年06月02日 22:37