平沢家!

唯「ただいまー」

「おかえりー」

唯「憂~、アイス~…って、あれ?」

唯「憂?」

シーン…

唯「おーい」

シーン…

唯「…あれー? おかえりって聞こえたのになぁ」

憂「ただいまー」

唯「あ、憂ー!」

憂「夕飯のお買いもの行ってたの」

唯「そうだったんだ」

憂「うん…あれ? 珍しいね」

唯「ん?」

憂「ほら、その…あ、平沢チキン。いつも部屋に置いてるのに」

唯「え? あ、あれ!? なんでここにいるんだろっ? 気づかずに持ってきてたのかな」

憂「あ、平沢チキンといえば今日梓ちゃんが…」



秋山家!

澪「……」

澪「……」

澪「…だ、だめだ。部屋に一人だとかえって落ち着かない」

澪「これも…平沢チキンのせいだ。ううっ…」

澪「気分転換にCDでも流すかな…」カチャ

ツー…

澪「…あれ、おかしいな」

カチッ、カチッ

澪「音量も下がってないのに…あれ?」

澪「もしかして壊れちゃったかな」

澪「はぁ…このオーディオ気にいってたのに…」

ク…サワ……ン…ヨ…

澪「ん?」

澪「直ったのかな、スピーカーから少し音が…」

カチッ、カチッ

ボ…ラサ…キ…ヨ…

ボ…ヒラサ……チ…キ…ダヨ…

澪「え…」

澪「や、やだ…なっ、なんか…変だな…これ…あはは…」カチッ

…ク…ヒラ…ワ…キン…ヨ…!

澪「あ、あれ? あれ!? 電源が落ちないっ! なんで!? や、やだ…!?」

澪「こ、コンセント…コンセントを引き抜こうっ」バタバタ…

ブチッ

ボク…サ…キ…ダヨ!

澪「あ…ああああ…なんで音が止まらないの!? コンセントも抜いたのに!!?」

ボク…ヒ…サ…チキン…ヨ!

ボクヒラサ…キン…ダヨ!

ボクヒラサワチキンダヨ!

澪「―――ひっっ!!?」

ボクヒラサワチキンダヨ!

ボクヒラサワチキンダヨ!

澪「やめてぇーーーっ!! 聞こえないっ、聞こえないっ! 何にも聞こえないっ! わああああ、わあああ!」

ボクヒラサワチキンダヨ!

ミオチャン!ボクトイッショニランデブー!グリルヤキ!

グリルヤキ!グリルヤキ!グリルヤキ!

澪「   」



琴吹家!

斎藤「それではお嬢様、ごゆっくりと…」

紬「ありがとう。斎藤」

ガチャリ

紬「ふぅ…」

紬「…そういえば、梓ちゃん大丈夫かしら」

紬「一応メール送っておこっと」カチカチ

紬「送信…っと」

ジー…

紬「あら?」

紬「…誰か…いるの?」キョロキョロ…

ジー…

紬「……」

紬「…私の気のせいかしら」

ジー…

紬(ううん、やっぱり誰かから見られてる)

チラ

紬「!」

?『……』

紬「どうしてこの子がここに…?」ヒョイ

紬「平沢チキンくん」

平沢チキン『……』

唯『え、平沢チキン?』

紬「うん、今唯ちゃんのおウチにあるかしら?」

唯『ちょっと待ってねー……』

唯『あ、あれ? またいなくなってる! いないよ! ムギちゃん!』

紬「やっぱり…この子は唯ちゃんの…」

唯『え?』

紬「唯ちゃん。あのね、なぜかはわからないけど、その平沢チキンくんが今ウチにいるのよ」

唯『え~!? なんで~!』

紬「とにかく、明日学校に持っていくから安心して?」

唯『うーん…とりあえず、わかった。平沢チキン! 今日はムギちゃんと仲良く寝るんだよー?』

紬「ふふ、それじゃあね。唯ちゃん」

唯『ばいばーい』ガチャ、ツーツー…


紬「それにしても何で私のところに…」ヒョイ

平沢チキン『……』

紬「今日は唯ちゃんじゃないけど、私で我慢してね。平沢チキンくん」

平沢チキン『……』

平沢チキン『……』ピク

紬「今、頷いた…? まさかね」クス

紬「きっと私も疲れてるのね。今日は早めに寝ようかしら」

平沢チキン『……』



澪「……あ…れ」

澪「私…」

律「お、やっと起きた」

澪「わぁああっ!?」

澪「な、なんでお前がいるんだよ!?」

律「いやー、英語の宿題写させてもらおうかと思って」

律「で、勝手にあがったのはいいんだけど、お前床にぶっ倒れてたから驚いたよー」

律「貧血でもおきたの?」

澪「えっと……あ」

ギュ

律「…へ?」

澪「怖かった…怖かったよぉぉ…うえぇぇ~んっ!」ギュゥゥ…ギリギリ

律「痛い痛い痛いっ! く、苦しいって!?」

澪「ということがあって…」

律「……」

律「んなバカな…」

澪「ほんとだもん!! 嘘じゃないっ」

律「んー」

澪「そういえば…あの声…たしか…」

澪「…なんとかチキン」

律「平沢チキン?」

澪「そう! 平沢チキン! そう言ってた!」

律「またあのぬいぐるみかー」

澪「やっぱり、あのぬいぐるみ。律が言った通り何かあるんじゃないか!?」

律「だろ? ほーら、やっぱり私が正しかった~!」

律「…ところでさ」

澪「え?」

律「言い出せなかったんだけど、お前何で下着姿なのさ?」

澪「…え」

澪「!!」

澪「ふ、服は!? なんで!?」

律「知らないよ。てか、私が来た時からその格好だったしな」

澪「おかしいよ! ちゃんと部屋着着てたんだって!」

律「じゃあ平沢チキンにでも脱がされたんじゃないの~?」ニヤ

澪「笑いごとか!? 本当だったらとんでもない変態チキンだぞっ!」

律「まぁ、まずは服着なよ。見てるこっちが恥ずかしいから」


紬「うー…ん、…っあ」

モゾモゾ

紬「だ…だめ……そこはっ、ん…」

紬「や、やぁ…っ………はっ!」ムクッ

平沢チキン『……』

紬(体を触られてた気がしたんだけれども…)

紬「…気のせいよね」

平沢チキン『……』カクカク

紬「んー…まだこんな時間……おやすみなさい…」



次の日!

紬「はい、唯ちゃん」

唯「平沢チキ~ン! 寂しくなかったかいっ、おーよしよし」

紬「ふふ、とっても抱き心地よかったわ」

唯「でしょー? えへへ」スリスリ

唯「でもおかしな話だよね。ウチに置いてたはずの平沢チキンが勝手にムギちゃんちにいってたなんて」

唯「は! まさかムギちゃんに浮気!? わ、私を捨てたのねっ」グリグリ

平沢チキン『……』

澪・律「……」

律「なぁ、澪」ヒソ

澪「…言わなくてもわかってる」

澪「平沢チキンは…呪われたぬいぐるみだ!」バン

律「いや、まだそこまでは言って…」

澪「唯!」

唯・紬「澪ちゃん?」

唯「どしたの?」

澪「平沢チキンを焼却処分しよう!」

唯・紬「!?」


唯「なんで!? え!?」

澪「そのぬいぐるみは絶対に何かある!」

律「み、澪。落ち着けって」

紬「い、いきなりどうしちゃったの? 澪ちゃん…」

澪「梓も平沢チキンが何とかって言ってたろ…つまり」

澪「そういうことなんだよ」

唯「説明になってないよ!?」

律「ま、まぁ…澪はちょっと大げさに言い過ぎだけどさ」

律「たしかにそのぬいぐるみ少しあやしいよ。うん」

紬「そういえばりっちゃん、最初に視線感じたって言ってたね」

律「それもあるけどさ。梓に続いて澪、そしてムギのウチにいきなり登場…」

律「こうも続くと…なぁ?」

唯「そんな…考えすぎだよっ」

唯「それに! 平沢チキンはとってもいい子だもん! ね、ムギちゃん!」

紬「え!? え、ええ…」

澪「そういえば律には今のところ何もしてないな。平沢チキン」

紬「視線感じたっていうのは?」

律「あー…」

律「まぁ、何もされてないのならそれでいいんじゃねーの?」

唯「りっちゃんは平沢チキンの好みじゃなかったんだね」

律「何を!?」

紬「まぁまぁ…」

澪「とにかく!」

澪「焼却処分は言いすぎたから、せめてそのぬいぐるみ…どうにかして」

唯「どうにかって…」

澪「ほら…お祓いとか」

唯「ひ、ひどいよぉ…平沢チキンは何もおかしくない! 純粋無垢なチキンだもん! えぇ~ん!」タタタ…ガチャリ

澪「唯!」

紬「唯ちゃん…困ったわぁ」

澪「……」

律「ちょっといきなりすぎたからなぁ、大事にしてたぬいぐるみを悪く言われたわけだし」

澪「…なんか悪いことしちゃったかな」

律(悪いことは言ったな)

澪「うーん…私、唯にあやまってくるよ…」トコトコ

紬「いってらっしゃ~い」

律「やれやれ……ん?」

律「うおっ、ムギぃ…いやらしいな!」

紬「え?」

律「首元にキスマークついてるぞぉ~…」

紬「キスマーク?」


唯「ひ…っく…うぅ…」グスン

唯「あんまりだよぉ…平沢チキンはなにもしてないのに」

平沢チキン『……』

唯「はぁ…ぐすっ…ずずず…」

平沢チキン『……』コソコソ…ス

トコトコトコ…

唯「絶対焼却処分なんてしないからねー…って」

唯「あれ? 平沢チキン…?」

唯「ない…おかしいなぁ…」

澪「はぁ、唯はどこに行ったんだ?」

澪(…あんな不気味なぬいぐるみだけど、唯にとっては大事な物なんだよね)

澪(いきなりあんな風に言うことはなかったんだ。ごめんな唯…)

トコトコトコ…

澪(ん、誰か後ろにいる?)チラ

シーン…

澪「あれ…足音が聞こえたのに……い、いやだな…なんか」ゾクッ

澪「さ、さっさと唯を探さないと…」トコトコ

トコトコトコ…

澪「……」ピタッ

ピタッ

澪「…っ」トコトコ

トコトコトコ…

澪「…はぁ、はぁ」ピタッ

ピタッ

澪「だ、だれ…?」チラ

シーン…

澪(いない…!)

澪「はぁ、はぁ…!」タタタ…

タタタタ…

澪「っ!」ピタッ

ピタッ

澪「あ…あ…」

澪(だ、誰か…誰かいないの…!?)

澪(なんで、なんで私がこんな目に…)

澪「…い、いないの? 誰…? い、いるんでしょ?」キョロキョロ

シーン…

澪「はぁ…はぁ…はぁ…!」

『はぁ…はぁ…』

澪「はぁ…はぁ…っ!?」

『はぁ…はぁ…』

澪(やっぱり…いるっ…!?)キョロキョロ

『はぁ…はぁ…』

澪(し、下から聞こえるっ!!)

…チラ

平沢チキン『はぁ…はぁ…』

澪「あ…ああ…ああああ……」

澪「きぃぃぃゃああぁあぁああぁぁああああぁあああああぁ――――」

平沢チキン『また…縞パン…』


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最終更新:2010年06月05日 00:38