ぴゅーっと高橋の腹から血が吹き出ていた。悪い予感は的中した。
和「高橋さんっ!!!」
高橋「北村さん……なん…で…」
高橋はうつぶせに倒れた。律たちは高橋に気を取られていた。ここでまた間髪いれずにもう1発。
パンッ!!
澪「ヒイイイイッッ!!」
弾は幸いにも誰にも当たることはなかった。
紬「ちょっと待って北村さんっ!」
律「馬鹿!逃げるぞむぎ!!」
4人は走った。全力で身をかがめながら走った。しかし―。
パンッ!
もう1発北村から放たれた銃弾は和の右腕に当たった。
和はその場で転んだ。
和「ぐうっ!!」
澪「和!!」
紬「和ちゃん!!」
律「和!!くっそぉ」
パン!!
律はこのゲーム始まって、初めて銃を発砲した。
片手で発砲したため、あまりの反動に驚いて体制を崩した。
澪「律!!やめろ!!」
律の放った弾は、はるか向こう、大空へと飛んで行った。
和「早く逃げて!!3人とも!!行って!!」
律「和!!」
そう言うと和は立ち上がり律たちとは違う方向へ走りだした。
紬「和ちゃん!!だめっ!!」
和「私は必ずあなたたちを見つけるわ!!これで!!あとで会いましょう!!」
和は探知機を振りかざしながら姿を消した。
澪「和ああぁ!!」
澪が和の走って行った方向に向かおうとした。
が、そこには北村静香が拳銃を構えて待っていた。
そしてゆっくりと拳銃を澪に向けた。
紬「澪ちゃんっ!!」
律「なにやってんだ馬鹿!澪っ!!行くぞ!!走れっ!!!」
律は澪の手を引っ張り、3人は全力疾走で山を駆け下りた。
パンッ!
最後に銃声が1発聞こえたが、誰にも当たらなかった。
その後、北村が追ってくる様子はなかった。
【21番 高橋 風子 死亡 残り18人】
佐々木恵美は診療所を出て走り、島の中心に位置する山を登っていた。
もうすぐ頂上だ。
澪を探してだいぶ島内を歩いたが、澪どころか誰とも遭遇しなかった。
佐々木「さっきのは銃声だよね…」
ついさっき山を登っている途中に聞こえたのは間違いなく銃声だった。
もしかしたら自分も狙われるかもしれない。
佐々木は怖かったが、万が一その銃声が澪に向かって放たれたものだったとしたら…
そう考えるとついつい早足になった。
もしかしたら澪が撃たれたかもしれない。
死んでしまったかもしれない。
澪の生死は次の18時の放送まで確認できない。
佐々木は銃声のした方、頂上へ向けて足を急いだ。
佐々木「はぁ…はぁ…」
佐々木は山を登り始めてから数十分、ようやく山の頂上に着いた。
あたりを見回してみると、なんと1人の女子が倒れていた。
佐々木「…っ!!」
悪い予感は的中した。さっきの銃声はこの子に放たれたものだった。
しかし、よく見てみると、うつぶせに倒れていたのは黒髪ロングヘアーの女子だった。
佐々木「澪ちゃん…っ!?」
黒髪ロングストレート。綺麗な髪。
うつぶせに倒れたその体の上の綺麗な黒髪は風に少し揺れていた。
佐々木「澪ちゃんっ!!澪ちゃん!!!」
佐々木はその風になびく黒髪ロングヘアーに向かって走り出す。
彼女は確信した。澪が何者かに撃たれた。辺りには大量の血。
佐々木「澪ちゃん!!無事でいて!!お願いっ!!」
ようやくそこに駆け寄ると、倒れていた体をすぐさま起こす。
佐々木「澪ちゃんっ!!大丈夫…!?………え?」
体を起してみると、そこに倒れていたのは澪ではなかった。
澪と同じ、黒髪のロングヘアー。同じクラスの…澪の隣の席の…
高橋風子だった。
佐々木「あ……え…?高橋さん……?」
パァン―!!
佐々木はその倒れたいた女子が澪ではない。高橋風子だと確認した。その瞬間、佐々木の思考回路は停止した。
先ほど、その澪たちを襲撃した北村静香。高橋を撃った場所まで戻ってきた彼女に、佐々木は後頭部に1発、
拳銃の弾をぶち込まれた。
【14番 佐々木 恵美 死亡 残り17人】
どこの学校のクラスにも、ギャルっぽい子が必ずしもいるもので、この3年2組にもそのグループはあった。
瀧エリ、土屋愛、斉藤あかね、関口清香、―そして、
立花姫子。
関口は特に外見はギャルっぽいわけでもないが、立花と小学生からの幼馴染で仲がいい。
よくこの5人で一緒に遊ぶことが多かった。
ギャルといっても、典型的なギャル系ではない。
3年2組のこのグループは、少し化粧をしたり、ルーズソックスを履いてみたり、髪を染めてみたり、そういった類のものだ。
特に悪さをするわけではない。授業態度もまじめだし、校則違反も特にしない。
このグループの中で1番性格が明るく、リーダーシップをとっているのが瀧だ。
最初、立花としかあまり話さない関口に積極的に話しかけて仲良くなろうとしたのもこの瀧だった。
そして土屋愛。彼女は一応このグループに属してはいたが、特に仲がいいというわけでもなかった。
5人で食事をしていても彼女は携帯ばかりいじっていて他の4人からはどちらかというと嫌われる節があった。
グループの中でも一番大人っぽく、お姉さん的存在だったのが斉藤あかね。
5人皆と仲が良く、皆この斉藤を慕っていた。
しかし、このゲームは、その人の性格を狂わせる…っ!
斉藤「怖い怖い……帰りたい帰りたい………家に帰りたい」
当然、このゲーム、始まった瞬間、反則なしの殺し合い。
格闘技のようにリング上で戦っているわけではない。敵は左右前後、はたまた上下から攻めてくる場合もある。
前はともかく後ろが怖い。斉藤は島を歩いていられなかった。
島の東にある廃工場にこのゲームが始まってからずっと潜んでいた斉藤は久しぶりに少し外に出てみることにした。
時間はまだ昼の14時過ぎだったが外は少し暗かった。雨でも降りそうな天気だった。
斉藤に支給された武器は、グロック19。9㎜口径の自動拳銃だった。
いつ使う時が来てもいいようにと利き手の右手に持ち、その人差し指は常にトリガーにかかったままだった。
それはもちろん外に出ても変わらない。
土屋「あかね…?」
斉藤「!!」
いきなり後ろから声をかけられた斉藤は心臓が止まるほどびっくりした。
その声のした方を振り返り手に持っていたグロックを向けた。
土屋「ちょ……ちょっと待ってあかね!私はそんなつもりないの…ねっ」
斉藤「愛……」
斉藤は同じグループで仲のいい土屋愛だと確認した。
しかし銃は下ろさなかった。
土屋「よかった…あかね…私、ずっと1人で怖くて…あかねと会えて…」
斉藤「……」
土屋「ねぇ、その…銃……おろしてくれる…?怖いよ…」
斉藤「…だめっ!!あんたは信用できないっ!!」
土屋「えっ…?」
斉藤「どっか行って!!今すぐどっか行って!!私は人殺しなんかしたくないっ!」
普段の斉藤からは考えられない発言だった。
あの大人っぽくて、いつも冷静沈着な斉藤が、ここまで狂ってしまうのだ。それがこのゲーム。
土屋「待ってよっ!なんで!?なんで私は信用できないって言うの!?清香やエリや姫子なら信用できるっていうの!?」
斉藤「そうよ…あんただけ信用できないわっ!」
土屋「なんで…っ!」
斉藤「あんた、こないだ武藤さんからカツアゲしてたでしょ…」
土屋「えっ…そんなっ」
斉藤「嘘つくなっ!!見たんだよ!金受け取ってるところ!!武藤さん嫌々お金渡してたっ!!」
土屋「ちがっ…あれは―」
斉藤「言い訳なんて聞きたくないっ!!」
土屋「あかね…」
斉藤「それにあんたっ!清香の金盗んだでしょ!清香の家行ったときにっ!」
土屋「私じゃないっ!」
斉藤「嘘つくなっつってんだろォ!!」
パンッ!!
土屋「いやぁっ!!」
斉藤「私は殺したくない…だから向こう行って!!私の前に姿を現さないでっ!!」
土屋「そ…そんな…」
土屋はその場にぺたんと座りこみ、失禁してしまった。
斉藤「早く行けって言ってんだろっ!!」
その時―っ!!
関口「あかねちゃん…?」
斉藤「ヒィッ!」
パンッ!!
関口「あ…」
いきなり後ろから声をかけられてびっくりした斉藤は反射的に後ろにいる誰かもわからない人物に発砲してしまった。
その人物は不運にも、関口清香だった…
その9㎜口径の弾丸は関口のみぞおちに当たってしまった。
斉藤「え…私…」
土屋「清香っ!!」
斉藤「私じゃないもん…私…撃ってないもん…私じゃまいづおひflんk」
土屋「この人殺しっ!!さやっ!!さやかっ!!」
斉藤「私じゃない…えstrdyふぃふおjpk@l;」ブツブツ
土屋「わああああああああああああああん清香あああああ」
斉藤「私は撃ってない私は撃ってない私じゃない私じゃない…」
土屋「最低っ!!本当に最っ低!!いつも偉そうにしやがって!!リーダーぶって!!」
斉藤「うるさい…」
土屋「清香のこと躊躇なく殺してっ!!他のみんな殺したのお前なんじゃねえかよお!!」
斉藤「ううううううるさいっっっ!!!!!」
パンパンパンッ!!
土屋「ぐううううううっ」
3発全て、土屋の胸の中に入った。
斉藤「うるさいんだよ…泥棒のくせに…この盗人がっ!!偉そうに…ションベンたれ娘っ!!」
【19番 関口 清香 24番 土屋 愛 死亡 残り15人】
「あかねが殺したのね?」
斉藤「へっ!?」
立花「あんたが殺したんでしょ?この2人」
斉藤「姫子っ!」
立花「死ね…」
ぱらららららららららららっ!
マシンガンから放たれた約10発以上の弾はほぼ全部、斉藤の体内に吸い込まれた。
うちの何発かは心臓を直撃。即死だった。
立花「清香……」
立花は関口の死体に目をやると、彼女の名前を呼んだ。
立花「もうちょっと早く私が来れば助かったかもしれないね…ごめんね…」
立花「でも…最終的には、清香にも死んでもらうことになってたかも」
立花「私はこれから平沢さんに会いに行かなきゃいけないの…応援してね、清香」
最後に関口の頬を撫で、立花は廃工場を後にした。
【12番 斉藤 あかね 死亡 残り14人】
律「はあっ…はぁ…っ」
紬「大丈夫?澪ちゃん…」
澪「ううっ…ううう」
北村の襲撃から逃げた3人は山を下って、島の中心にある運動場へ駆け込んだ。
その運動場のグラウンドの横に小さな小屋があった。体育倉庫みたいなものだ。
3人はその小屋の中に入ると一息ついた。
律「澪…」
澪「和が…和がっ…」
律「落ち着け澪、和はきっと大丈夫だ」
澪「でもっ撃たれてっ!!」
律「腕をかすめただけだって!大丈夫、和には探知機がある!また会えるよ」
紬「そうよ、澪ちゃん…少し、傷が心配だけど…またきっと会えるわ!」
澪「うぅ…うん…」
律「しっかし…北村さんも…このゲームに乗ってる…」
紬「信じられないわ…。たしか和ちゃんと一緒…生徒会の役員だったはずだわ…」
律「つまり、誰がゲームに乗ってようとおかしくないってわけだ…っ」
……
飯田と太田は校舎に手榴弾を投げ入れるべく、最初の禁止エリアギリギリ、校舎付近に来ていた。
飯田「やっぱり…無理かも…届かないよ…」
太田「私たちがおもいっきり投げても無理そうだね…」
太田「もし、届かなくて手前で爆発しちゃったら私らって気付かれて首輪爆発させられちゃうかもしれないよっ」
飯田「うん…」
太田「やっぱりやめようよ…」
飯田「でもっ!でも…うちらで殺し合いなんてっ」
太田「…うん…」
飯田「やれるだけやろうよ!殺し合いするよりは全然いいっ!!」
太田「…わかった。慶子が言うなら…」
飯田「行くよっ」
太田「…うん」
今、2人がいる場所は校舎から約100m以上は離れている。
女の子の力ではまず届かない。ソフトボール等の経験があっても遠投100mは厳しい。
プロ野球選手ですら硬式の野球ボールを100m遠投するのがやっとだ。
もちろん、2人はそんなことは知らない。奇跡に賭けて、
飯田は振りかぶった!
ビュッ―
飯田が手榴弾を投げた瞬間、2人は後ろを向き、耳をふさぎながら走った。
3、40mくらい走った後、しばらく耳をふさぎうずくまっていた。2人の心臓は今までにないくらい激しく動いていた。
手榴弾は綺麗な放物線を描き、校舎から、約5、60m手前に落下した。やはり。届かなかったのだ。
飯田「あれ…」
太田「うううううううう」
飯田「潮…潮っ!」
太田「えっ?」
飯田「爆発した?」
太田「えっ?わかんない…」
飯田「見に行ってみよう…」
見に行くと、そこには。
飯田「えっ?あれっ!?爆発してない…ホラ、あそこにある…」
太田「あ…本当だ…」
そう、手榴弾は安全ピンというものがあって、それを抜かないと爆発しないのだ。
ただ投げただけでは爆発しない。投げたときの衝撃で安全ピンが外れれば話は別だが。そんなことは稀。
手榴弾は、安全ピンを外すと撃鉄が雷管を叩き延期薬に点火される。
大体、安全ピンを抜いてから5、6秒後に爆発するのが一般的だ。
ごく普通の女子高生が、そんなこと知るわけもない。
飯田「なんでっ!?」
太田「もしかして…使い方を間違えた…?」
飯田「そんなっ!あれはもう取りに行けないよ…あと1個しかない…」
太田「見せて」
太田は支給された手榴弾2つのうちの残り1個の手榴弾を手に取り眺めた。
太田「この…ピン…?消火器みたいなやつ…」
飯田「あっ!そう言えば…映画とかでも…」
太田「失態だったね…」
飯田「もう1回っ!ラストチャンス!」
太田「でも…これ取ったらいきなり爆発するってことないかな…」
飯田「そしたら投げられないじゃん。どうやって使うのさ」
太田「そっ…そうだけど」
飯田「これ取ってから、数秒ってところでしょ…このピン取ったらすぐ投げるよ」
太田「…わかったっ!頑張って…慶子」
飯田「それじゃあっ……行くよっ」
そう言うと、安全ピンの輪に人差し指を入れて引っ張った。
しかし。
外れない。
飯田「固いっ!!外れないよコレ!!」
太田「えっ!?」
飯田「ぐうっ!!」
飯田はさらに力を込めて引っ張った。
その時。
ジュキンッ!という音とともに、安全ピンは外れた―
が、しかし―
飯田「ああっ!!!」
太田「ひっ!!」
勢い余って、左手に持っていた手榴弾を足元に落としてしまったのだ。
飯田は急いで手榴弾を拾い上げた。
そしてまた、校舎に向かって大きく振りかぶった。
太田には飯田の姿がスローモーションに見えた。
ゆっくりと、振りかぶっているように見えた。
大きく振りかぶっている余裕は…なかったのだ。
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´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙i|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´゚゙´
飯田の手に、まだ手榴弾は残っていたのだ。
近くにいた太田は爆発に巻き込まれ、吹っ飛ばされた。
ものすごい爆音とともに…。
【2番 飯田 慶子 4番 太田 潮 死亡 残り12人】
最終更新:2010年06月06日 02:23