音楽室!
「あなたが田井中さんね?」
律「お、おう。っていうかなんだよ。誰だよ。」
「私は吹(すい)。吹奏楽部の部長よ。」
律「あ、っていうことは先輩っすか。それで、吹奏楽部の部長さんがなんの用ですか?」
吹「軽音部、目障りなのよ。」
律「はい?」
吹「あなた達が音楽室を占領するようになってからというもの・・・
私達吹奏楽部は空き教室で練習をする毎日なのよ!」
律「ふーん、で?」
吹「で?じゃないわよ!合奏もまともに出来ない状況なのよ!?
あなた、吹奏楽部が現在何人いるかわかってるの!?」
律「えー?ww10人くらいっすか?」
吹「×6よ!60人よ、60人!」
律「うひゃー、そりゃ大所帯っすね。」
吹「私達、夏にコンクールを控えてるの。音楽室を使えないなんて、痛すぎるわ。」
律「でも音楽室は私ら軽音部が使ってるんで。それじゃ。」
吹「ちょっと!・・・知ってるのよ?」
律「何を?」
吹「あなた達が毎日音楽室でろくに練習もしないで遊んでばっかりいることよ!」
律「(う、痛いとこ突かれたな)そんなこと言ったって・・・。 ただ遊んでるだけじゃないっすよ?練習もちゃんとしてます。」
吹「その割に練習の音は全く聞こえてこないけど?」
律「(やべ・・・。)そうっすか?タイミングが悪いだけですよ。」
吹「いい加減にして!とにかく、部員数や実績で勝っている吹奏楽部こそが音楽室を使うべきよ!それに、ただ目標もなくダラダラやってるあなた達とは違うの。わたし達にはコンクールという、明確な目標があるの。」
律「今のは聞き捨てならないですね。私達だって学園祭のライブに向けて頑張ってますよ。」
吹「学園祭のライブとコンクールを一緒にしないで。」
律「そっちこそ。次のコンクール?とやらに出ればいいじゃないですか。」
吹「馬鹿にしてるの!?吹奏楽のコンクールといえば、野球部で言うところの甲子園よ?」
律「だからなんですか?」
吹「年に一度しかないの。私達にとっては本当に特別なものなの!」
律「学園祭だって年に一度です。」
吹「それこそ、それがどうしたっていうのよ。そこら辺のライブハウスで演奏するのと何が違うのよ。」
律「桜高のみんなの前で演奏できるのは私達だって年に一度ですよ。」
吹「どうしてわかってくれないの?そんなものと一緒にしないでよ・・・!」
律「・・・。」
…
澪「ごめん、遅れたっ!」
律「あー澪か。大丈夫だ。まだ私しか来てないからさ。」
澪「えーと、どちら様?」
吹「吹奏楽部部長の吹よ。あなたね、副部長の秋山さんっていうのは。」
澪「え?私、副部長なんですか?」
吹「呆れた・・・。」
律「えーと、ごめん。申請書に勝手に澪の名前書いといたんだ。」
澪「初耳だぞ!?」
律「うん、初めて言ったからな!」
ゴチンッ
律「いっつ~・・・!!!」
澪「そういうことは予め相談しろよ!」
吹「ねぇ、私にはあなた達の漫才を見てる暇はないの。」
澪「あ、はい。すみません・・・(なんだ、この人。怖いな)」
吹「はぁ・・・。とりあえず、そういうことだから。猶予を3日あげる。 それまでに私物を撤去しておいてね。」
律「・・・。」
澪「え、何?何の話してたんだ?」
吹「さわ子先生への報告は私がしておくわ。」
律「私達だってさわちゃんに」
吹「あなた達がするのは『報告』じゃなくて、これからどうしようっていう『相談』でしょ。」
律「なんだ、あんた。いちいちつっかかるな。」
吹「あと。さっきから気になってたんだけど・・・。 口の利き方、誰かに教えてもらった方がいいんじゃない?」
律「あぁ?」
吹「先輩に対してそんな口の利き方してると社会に出てから大変よ?」クスクス
律「てm」
澪「律!」
澪「事情は大体わかりました。部内で話し合っておきます。」
吹「あそ。それじゃあね。」
バタンッ!
……
律「・・・というわけなんだ。」
唯「そんなことがあったんだね・・・。」
紬「確かに、吹奏楽部にとってコンクールは最大のイベントと言っても過言ではないわ・・・。」
唯「えっと、だからみんなちょっとピリピリしてるだけだよね?軽音部、なくなったりしないよね?」
澪「なくならない!」
一同「!?」
澪「えっと、あの、大きい声出してごめん・・・。」
律「澪・・・。」
澪「なくならない、なくならないよ。でも、どうしたらいいかわからない・・・。」
律「スタジオって手もあるけど、部費で落ちるかな。」
紬「それは、どうかしら・・・。5人しかいない部活だし、難しいかも。」
梓「でも、アンプやドラムセットがある場所と言ったら音楽室かスタジオくらいしか思いつきませんね。」
唯「ムギちゃ~ん、お家にスタジオなんて・・・ない、よね・・・?」
紬「あるわよ♪」
律「マジか!」
澪「それだ!」
紬「屋敷の方は一ヶ月前に予約を入れないとだけど、スタジオは離れにあるから多分今日からでも使えるわよ♪」
梓「もうなんでもありですね・・・wwwっていうか屋敷って言い方がwwww」
紬「梓ちゃん。金に物言わせるって、素晴らしいと思わない?」
梓「今回に限り、同意させていただきます。」
唯「ムギちゃんすごい!ダメ元でも言ってみるもんだね!」
梓「ははwその意見には全面的に同意ですwww」
律「・・・。」
澪「どうしたんだよ、律。」
律「いや、練習場所が確保できたのはいいけど、やっぱなんか納得いかねー!」
澪「おい、練習場所があるだけでいいだろ?それに吹奏楽部の吹さん?が言ってるのは、悔しいけど正論だよ。」
律「だけどよー。」
澪「なんだよ。」
律「『そんなものと一緒にしないでよ』って・・・。言われたんだ・・・。」
澪「律?」
律「そりゃ、吹奏楽のコンクールなんかよりも、ずっとささやかなものかも知れないけど・・・それでも。」
律「私達だって・・・!」
澪「なるほど。音楽室が使えないことよりもそっちを気にしてるのか。」
律「・・・あぁ。部室の使用権に関しては、あいつの言うことが正論だと思う。」
唯「そうだよね・・・音楽室でみんなとお茶できなくなると思うと寂しいけど、仕方ないことなんだよね・・・。」
梓「寧ろ今までずっと吹奏楽の人達は我慢してきたんですもんね・・・。」
紬「とりあえず、明日からスタジオを使えるように斉藤に指示を出しておくわね。」
律「・・・みんな。」
一同「?」
律「学園祭のライブのことなんだけど。・・・すっげぇいい演奏して、吹のヤツを見返してやろうぜ!」
梓「いいですね!乗りました!」
澪「見返すってことばっか考えてちゃいい演奏できないのかもしれないけど。
確かに、ずっと音楽室占領してたのにみっともない演奏してたら、それこそ吹奏楽部の人達に失礼だよな。」
唯「うん!頑張ろうね!」
紬「うふふ、やりましょう!」
バタンッ!
さわこ「みんな!聞いたわよ!吹奏楽n」
律「あ、それもう解決したよ。」
さわこ「」
律「先生、いままですみませんでした。私、吹奏楽部のことなんて何も考えてなかった・・・。」
さわこ「りっちゃん・・・。」
律「きっと、板ばさみになって先生も辛かったよね・・・。」
さわこ「そんなこと気にしなくていいのよ。でも、ごめんね。
せめて、コンクールまでは吹奏楽部に音楽室を使わせてあげてもらえないかしら。」
律「うん。私達はそれまでムギの家のスタジオ使わせてもらえることになったから、大丈夫。」
さわこ「コンクールが終われば交代に使ったりもできると思うから。」
律「うん、わかったよ。」
律「みんなもそれでいいよな!?」
一同「うん!」
一週間後
律「っていうかムギのスタジオ反則だぜ、こりゃ。」
唯「すごいよねー!アンプもドラムセットも新品だし、全然音漏れしないもんね!」
澪「あぁ!でも、早くもこの環境の良さに慣れてしまっている自分が怖い・・・。」
梓「ここ使っちゃったら、他のスタジオなんて使えないですよねww」
紬「あらあらまぁまぁ、そんなに喜んでいただけるなんて光栄だわ♪」
律「なにがすごいって、設備や環境もそうなんだけど・・・。」チラッ
律「このスタジオの広さがまた凄いよな。」
澪「あぁ、まさかスタジオの中でティータイムを過ごせるとは、夢にも思わなかったよ。」
紬「うふふ♪ちょうど切りのいいところだったし、お茶にしない?」
唯「さんせー!」
梓「あ!先輩、抜け駆けは許しませんよ!?」
…
律「ふぃー、やっぱこの時間は私達にとって必要なんだよなー、うんうん。」
澪「ったく、調子いいんだからw」
律「なんだよー、いいじゃんかー!」
紬「学園祭まで、1週間切ったわねぇ。」
律「あぁ・・・!でもみんな、今まで以上の出来だよな!?」
唯「そりゃあもちろん!ばっちぐーです!」
律「うんうん!」
梓「私もです。この間ギターの点検も済ませましたし、まさに万全の体制ですよ!」
律「うんうん!」
澪「私は・・・やっぱり・・・歌いたくないかなぁ、なんて・・・。」
律「このどヘタレ!」
澪「あぅ。律に怒られるなんて・・・。」
紬「うふふふ♪」
次の日の放課後!
律「(やべぇ、音楽室に忘れ物だ・・・。)ごめん、みんなケータイ忘れたから取って来る!」
唯「じゃあ私達もいくよ!」
律「なんでwwwwwww」
唯「なんでwwwいいじゃんwww」
律「うんwwwww」
音楽室!
きぃぃぃ・・・
律「失礼しまーす」
さわこ「あら、どうしたの?」
律「あの、さっきの授業でケータイ忘れちゃって・・・ww」
吹奏楽部「・・・。」
律「(吹奏楽のミーティング中だったか?タイミング悪いときに来ちゃったな・・・。)」
さわこ「それなら私が預かってるわ。はい、どうぞ。」
律「おぉ!ありがとう、さわちゃん!」
律「(それにしても、重い空気だな・・・)」
「グスッ・・・グスン・・・。」
律「(あの子、泣いてる・・・?)」
唯「りっちゃんどうしたのー?早く行こうよー?」
律「あ、あぁ。」
律「(よく見たら、みんな暗い表情をしてる・・・さわちゃんまで深刻そうな顔しちゃって)」
澪「おい、律?」
律「え?あぁ!わりぃわりぃ!行こうぜ?」
「グズッ・・・待って、ください・・・。」
律「へ?私?(泣いてた子だ)」
「はい、グスッ。」
律「えーと、何?」
律「え、あぁ、うん。」
「田井中さん、ドラム叩けますよね?」
律「え?あぁ、そうだね。」
?「ちょっと!楽(がく)!やめなさい!」
律「!?」
吹「お久しぶり、田井中さん。」
律「どうも。」
吹「今この子が言ったことは気にしないで。」
律「(なんだよ、意味わかんねぇ)わかりました。んじゃ、お言葉に甘えて。それじゃ」
楽「待ってください!田井中さん!吹さんも!このままでいいんですか?」
吹「いいのよ、しかたがないわy」
楽「意地張らないでください・・・!奏(そう)ちゃんの代わりは吹奏楽部の中にはいないんですよ!?」
吹「楽!黙ってて!」
楽「イヤです!」
律「(なんだなんだ?内輪もめか?)」
吹「部内に代わりがいないかどうかなんて、まだわからないじゃない!」
楽「本当にそう思ってるんですか?」
吹「・・・!」
唯「ねぇねぇ、何の話をしてるの?何か困ってるの?」
律「(ある意味バッサリだー!)唯、お前、よくこの空気の中でそれが聞けたな。」(小声)
梓「天然って怖い・・・。」
紬「あらあらうふふ♪・・・でも、なんだか深刻そうね。」
楽「実は・・・。」
律「つまり、だ。コンクールメンバーの一人が左手を怪我して出れなくなった、と。」
楽「そうなんです。」
律「それで、運の悪いことに、その子にはソロがある、と。」
唯「大変だぁ。」
最終更新:2010年01月22日 21:28