律「澪~」

澪「律!」

二人のやりとりを、いつもの様に眺める

本当に仲が良い、羨ましいな
軽音部に入ったのも、こうやって二人を見て決めたんだ

女の子同士が仲良くしてるのが好きな私だから、二人をもっと見てみたい、とか、結構軽い気持ちだったのかも知れない

だけど、入部してみると本当に軽音部が楽しくなって……

みんなと音楽をやるのは凄く楽しいし、澪ちゃんとりっちゃんを見てるとすごく幸せな気分になれた

見てるだけでよかったのに……


律「どした、ムギ?」

紬「……えっ?な、なに?」

律「いや、ボーっと私の方見てたから……」

……しまった、まただ

紬「なんでもないわ、りっちゃんかわいいなぁ、って思って」

適当に誤魔化す
……本音が入っちゃったけど

律「えぇ?なんだよー、照れるなぁ」

澪「バカ、調子に乗るな!」

ポコッ、と澪ちゃんぎりっちゃんのオデコを叩く

律「いてっ、ひでぇ!ムギ~、澪がいじめるよ~」

泣きマネをしながら、りっちゃんが私に抱きついてくる

……冷静に、冷静に

紬「よしよし、今お茶を淹れてあげるね」

澪「ムギ、私のも頼むよ」

紬「うん♪」

……まったく、りっちゃんたら
いきなりあんなことして、心臓が壊れたらどうするの

律「私ミルクティー!」

紬「わかったわ」

今にも飛び出しそうな心臓を鎮めるように、ゆっくりお茶を淹れる

……あぁ、もう

紬「はい、おまたせ」

律「さんきゅー!」

そういって笑うりっちゃん
なんて可愛いのかしら
今すぐ抱きしめて、頬擦りして、〇〇〇して××××してあげたい

……でもそんな事はできないから、妄想だけに終わらせる


澪「あぁ!」

突然、澪ちゃんが声をあげる

びっくりしてカップを落としそうになったけど、なんとか落とさずすんだ

律「どした?」

紬「びっくりしちゃったわ……」

澪「唯と和と、お茶行くの忘れてた!」

真っ青になった澪ちゃんは、ごめん!帰る!と言い残し行ってしまった

……部室には、りっちゃんと私の二人だけ

律「なんだよ澪のやつ……」

紬「まぁまぁまぁ」

急に行ってしまった澪ちゃんにりっちゃんが怒ってしまった

律「最近は和、和ってさ~、わたしゃ寂しいよムギ~」

そういって私にもたれかかってくる

嬉しい、けど


やっぱりりっちゃんは、澪ちゃんがお好きみたい


律「まったく、私もムギに浮気しようかしらん」

作ったような拗ねた顔で、私の胸に指で『の』の字を書く

……そんな事言われたら、されたら

本気にしちゃうからね?


紬「いいわよ」

律「え?」



りっちゃんが頭の上に『?』マークを浮かべた一瞬で、私はりっちゃんの唇を奪った

きょとん、と何が起きたのか理解できていないりっちゃん、可愛い

律「え、ムギ、今……?え?」

少しの間があって、理解したのか
ホンの少し、頬をピンクに染めたりっちゃん


紬「キスしたわよ」

さらっと言う私に、りっちゃんは更に少しだけ頬を染める

律「き、キスっておま、そんな……」

紬「あら、りっちゃんが浮気しようって言ってきたのよ?」

律「あ、あれは!その……」

知ってる、冗談だってことくらい
だけど、りっちゃんがそれを言う前にもう一度キスをする

律「……!む、ムギ!」

紬「……私は」

紬「私はりっちゃんのことが好きよ」

言ってしまった
それも勢いまかせて……最低


あぁ、りっちゃんの顔から笑顔が消えたわ

おしまい、何もかも

律「……むぎ」

りっちゃんが何か言う前に、私は逃げ出した

怖い怖い怖い怖い
壊れる、壊してしまった

たった一言で、りっちゃんとの関係を

楽しいしティータイムを、軽音部を

急に目の前に壁が現れ、私は体を叩きつけてしまい

意識を失った


……

柔らかい、なんだろう

温かい、気持ち良い


目を開けると、目の前にりっちゃんの顔があった

律「おい!ムギ!大丈夫か!?」

なんだかよくわからないけど、りっちゃんが必死に私を呼んでる
応えないと

紬「りっちゃん……」

律「ムギ!?起きたが?」

意識がはっきりしない
何が起きたんだろう


紬「えっと……」

律「ムギ、急に走り出してドアに派手にぶつかったんだよ、ケガはないようでよかった……」
あぁ、そうか
りっちゃんに好きっていっちゃって、そして……

……あわわ

紬「……!」

逃げなきゃ、逃げなきゃ

律「ムギ!」

りっちゃんに捕まっちゃった
きっとぶたれるわ
目を瞑って、歯を食い縛らなきゃ
あぁ、でもなんだか体に力が入らない

律「……ムギ」

紬「……」


律「……あのさ」

嫌、聞きたくない
耳を塞ぎたいけど、片手を掴まれてるから片耳しか塞げない

律「あのな、ムギ」

言わなくてもわかる
ごめん、ムギの気持ちは受け取れないよ
私には好きな人が

律「浮気じゃないけど、付き合ってくれないか?」

ほらね、わかってるわ、やっぱり澪ちゃんが好きなのねってえっ

律「あの、ムギ?」

紬「……りっちゃん、好きよ」
律「え?うん、私も」

あぁなんだ、夢か
そうよね、きっと私はまだ気絶してるのよ
だから眉毛を抜いても全然痛くなんかって痛っ!


律「む、ムギ?」

紬「……夢じゃないの?」

律「現実だけど?」

現実ってことは
さっきりっちゃんが言ったことは
あれ?

律「……で、どうなんだよ」

紬「え?」

律「だから!その……付き合ってくれるかってこと……」

……どういうこと?
りっちゃんは澪ちゃんを好きで
澪ちゃんもりっちゃんが好きで
それで……

律「な、なぁムギ!」

紬「あ、あの……りっちゃんは澪ちゃんと付き合ってるんじゃないの?」


律「へ?」

やだ、りっちゃん間抜けな顔

律「な、なんでそうなるんだ!」

紬「だって……すごく仲良いし」

律「み、澪はただの幼なじみだ!」

あれ?
ってことは

紬「……じゃあ、りっちゃんが好きなのは私だったの?」

律「ま、まぁ……そういうことかな……」

顔を真っ赤にしてゴニョゴニョと呟くりっちゃん、最高に可愛い

でもなんで私を……いや、理由なんてどうでもいいわ
とにかく今日、その可愛いりっちゃんは

紬「……うふふ」

律「?」

私の恋人になった


終わり



最終更新:2010年01月11日 00:51