ゴキロー「みお…せんぱい?」

梓「それにその格好…」

ゴキロー「ああ、この黒マントはゴキブリの妖精の正装なんだ」

梓「じゃなくって…えーと……なんで澪先輩がここに…」

ゴキロー「みお?もしかして誰かと勘違いしてる?」

梓「本当にゴキローなの?」

ゴキロー「梓のくれた生ゴミ、とても美味しかったよ」

梓「!!」

ゴキロー「それに梓の用意してくれた家はとても心地良いし」

梓「ゴキローが居ない!本当にゴキローなんだ!」

ゴキロー「今日は梓ちゃんに恩返しがしたくって……」

梓「恩返しって…そんな…」

ゴキロー「私たちは人間に虐げられてきたんだ」

ゴキロー「気味悪がられて見つかったら殺されてしまう…」

梓「…………」

ゴキロー「でも梓ちゃんは違った」

ゴキロー「ゴミ箱に落ちちゃった時にもうだめだと思ったんだ」

ゴキロー「でも梓ちゃんが助けてくれて、そして友達として接してくれて…」

ゴキロー「本当に、本当に嬉しかった」

梓「そんな…私は…」

ゴキロー「それに唯ちゃん、律ちゃん、紬ちゃんというお友達とも知り合えたのも梓ちゃんのおかげだし」

梓「気にしないでよ、そんな事」

ゴキロー「ふふ…」

梓「それよりゴキローってメスだったんだね…変な名前つけてごめん…」



音楽室

唯「そういえば今日は澪ちゃん休み?」

律「うん?そういえば来るの遅いな~」

紬「昼にはいたんだけど…」

唯「あずにゃんも風邪引いてるって言うし…」

律「そっかぁ…3人じゃ練習できないよなぁ」

紬「そうねぇ」

律「今日は部活休みにするかな」

唯「あ、じゃあ私あずにゃんのお見舞いに行ってくるよ」

律「そっか、よろしく伝えてて」

唯「うん」

紬「このケーキも持って行ってあげて」

唯「ありがと、ムギちゃん!」

唯「一応あずにゃんにメールしとこう」

唯「今、から、お見舞い、行くけど、大丈夫?っと…」

唯「送信…」




────中野家

梓「ありがとう、ゴキロー」

ゴキロー「こんなの梓ちゃんにして貰ったことに比べればなんとも無いよ」

梓「だいぶ良くなったよ」

ブー…ブー…

梓「携帯…唯先輩からメールだ」

梓「お見舞い来てくれるんだ…」

ゴキロー「良かったね梓ちゃん」

梓「でも悪いなぁ…」

ゴキロー「私は唯ちゃんにまた会いたいな…」

梓「そっか、じゃあ来て貰おっか」

梓「ありがとうございます、わざわざすみません…送信っと」



────ピンポーン

梓「来た」

ゴキロー「私が鍵を明けてくるよ」

梓「唯先輩びっくりしないかな?」

ゴキロー「大丈夫だよ、行ってくるね」


────ガチャ…

唯「ありゃ、開いた?」

唯「こんにちは~、あずにゃーん?」

ゴキロー「カサカサ」

唯「うわあ!ゴゴゴゴキブブブ…」

ゴキロー「カサカサ」

唯「ん?もしかしてゴキロー?お迎えにきてくれたの?」

ゴキロー「カサカサ」

唯「お前は本当に良く出来たゴキブリだよ…」

唯「呼んでるのかな?お邪魔しま~す…」

ゴキロー「梓ちゃん、連れてきたよ~」

梓「あ、ありがとうゴキロー」

唯「やっほー、あずにゃん」

梓「わざわざありがとうございます」

唯「いーのいーの!」

唯「ムギちゃんのお土産だよ~」

梓「すみません、そんなものまで頂いて…」

唯「病人なんだから細かい事は気にしないの!」

唯「ゴキローにもあげよう」

梓「ありがとうございます、よかったねゴキロー!」

唯「あはは、さすがにゴキローにケーキ一個は無理でしょ」

梓「え?でも…」

唯「?」

唯「でも思ったより元気そうで良かったよ」

梓「ゴキローが看病してくれたからですね」

唯「え?ゴキローが?」

梓「はい」

梓「今そこに」

唯「うん、ここにいるよね」

唯「でもいくらゴキローでも看病は無理だよ」

梓「え?え?」

唯「こんなに小さいんだよ?」

梓「あれ?唯先輩玄関で会いましたよね?」

唯「うん…?」

ゴキロー「梓ちゃん、梓ちゃん」

梓「なに?」


ゴキロー「妖精としての私の姿は一般人には見えないし、声も聞こえないんだ」

ゴキロー「梓ちゃんみたいにゴキブリとして徳を積んだ人間じゃないと」

梓(徳って…)

梓「そうなの?じゃあ今唯先輩に見えてるのって…」

ゴキロー「普通のゴキブリにしか見えないだろうね」

梓「そうなんだ…残念…」

唯「あずにゃん、さっきから誰と話してるの?」

梓「あ、なんでもないです…」

唯「もしかしてゴキロー!?」

梓「え?ま、まあ…」

唯「すごーい!ついに会話できるようになったんだ!」

梓「あはは…そうみたいですね…」

唯「今ゴキローは何か言ってる!?」

梓「え?あ、仲良くしてくれてありがとうって言ってます」

唯「ごきろ~」(うるうる

唯「こんななりのくせに可愛いやつめ!」

ゴキロー「カサカサ」

梓「律先輩と紬先輩にもありがとうって言ってます」

ゴキロー「カサカサ」

唯「ゴキロー…お前ってやつは」(ジーン

唯「澪ちゃんも怖がらずに会いに来たらいいのに!」

ゴキロー「…………」

梓「どうしたの?ゴキロー」

梓(そういえばなんで澪先輩と瓜二つなんだろう…)

ゴキロー「いずれ分かるよ」

梓「え?」

梓「────唯先輩帰っちゃったね」

ゴキロー「うん」

ゴキロー「今日は唯ちゃんに会えてよかったよ!」

梓「私もすっかり良くなったよ、あしがとうゴキロー」

ゴキロー「こんなこと梓ちゃんにしてもらった事に比べたら全然」

ゴキロー「それじゃ私も元の姿に戻ろうかな」

梓「またその姿で会いに来てくれる?」

ゴキロー「……………」

梓「ゴキロー?」

ゴキロー「あ、う、うん……そうだね……」

梓「?」

ゴキロー「……ねぇ梓ちゃん」

梓「なに?」

ゴキロー「もし……もしもだけど…私が死んでも悲しまないでね……」

梓「え?どういうこと?ゴキロー死んじゃうの?」

ゴキロー「まだ大丈夫だよ……」

梓「そんな冗談言わないでよ!」

ゴキロー「あはは、ごめんね」

ゴキロー「じゃあまた」

梓「うん…」

梓(ゴキロー…?)



次の日

梓母「もう大丈夫なの?」

梓「うん、大丈夫!」

梓「じゃあ行ってきます」

梓母「気をつけてね」

梓「は~い」


梓母「────さて…と、ひゃあ!?」

梓母「またゴキブリが…」

梓母「もう!最近多いわね…」

梓母「梓が学校行ってる間にバルサンでもしとこうかしらね」

梓母「梓の部屋にも出たらかわいそうよね、ついでにやっといてあげるか……」



放課後

唯「あ!あずにゃ~ん!良くなったんだ!!」だきっ

梓「ちょ!唯先輩!////」

律「おー、良かったよ」

梓「ムギ先輩、ケーキありがとうございました」

紬「気にしないで、元気になってよかった!」

唯「ゴキローも喜んでたよ」

紬「それは良かったわ♪」

律「グルメなやつだなー」

梓「あ、澪先輩……」

澪「…………ん?」

梓「な、なんでもないです…」

律「そういえばなんで澪は昨日来なかったんだ?」

梓「え?」

澪「あー、気分悪くなっちゃってさ」

梓「澪先輩昨日休んだんですか?」

澪「う、うん、そうだね」

梓(まさか…でもそんなはず…)

梓(ゴキローのいずれ分かるって…一体…)

澪「…………」

梓「あの、澪先ぱ」

澪「よーし、練習するぞ!」

律「おい早速かよ!」

澪「梓も昨日休んだんだろ?その分取り返さないと!」

梓「あの」

澪「ほら、梓も!」

梓「うう…」



────その頃…梓宅

ガチャ…

梓母「バルサンって煙凄いわよね」

ゴキロー(梓ちゃんのお母さん?)

梓母「ふんふん♪」

バタン…

ゴキロー(この煙……毒ガス!)

ブシュー…

ゴキロー(…くッ……意識が………)

ゴキロー(…どうせ一度死ぬ所を助けられた命………)

ゴキロー(それにもう寿命だったんだ……惜しくは無いさ……)

ゴキロー(でも……まだ…)

ゴキロー(まだ…まだ梓ちゃんに伝えたい事が………!)



……

梓「────結局澪先輩にははぐらかされるし…」

梓「ゴキローと澪先輩…一体どういう事なんだろ…」

梓「ただいまー」

梓母「あら、お帰りなさい」

梓母「あ、部屋上がるならバルサンしといたから…」

梓「!!???」

梓母「口に入れそうなものがあったら気をつけてって…何あの慌て様…」

ガチャ!!バターン!!

梓「ゴキロー!!?!」

梓「ゴキロー!?大丈夫!?」

ガサゴソ…

梓「……………そんな……」

梓「ゴキロー…………」

梓「あ……あ………」ポロポロ…

梓「私が…ぐす……こんな籠に閉じ込めちゃったから………」ポロポロ…

梓「閉じ込めちゃったから…逃げれなくて……ゴキロー…それで…うぅ…」

梓「…うううう……うえええ………ゴキロ……うぅ………ひぐ…」

梓「あああああ…ゴキロー………うあああああん…」

梓「ごきろぉぉぉ…」

梓「────…………」

梓「ゴキロー………」

梓「…………」

梓(私のせいだ…)

梓「………………」

ゴキロー『もし……もしもだけど…私が死んでも悲しまないでね……』

梓(そんなの無理だよ…)

梓「…………ごめん…」

梓「こんな所で窮屈だったよね……」

梓「……え?」

梓「これ……餌並べてあるの………?」

梓「あ…」

梓「り」

梓「………が…ッ」ボロボロ…

梓「と…うぅ……ううううう…」

梓(ゴキロー…)

梓「それと……卵………?」



次の日、放課後

梓「……………」

唯「あずにゃん今日元気ないね…」

律「ああ…」

紬「何かあったのかしら…」

唯「あずにゃん…」

澪「梓…」

梓(ゴキロー…)

梓(ゴキローは悲しまないでって…言ってた…)

梓(ゴキローの新しい命…大切に育んで…)

梓「………………ふぅ~…」

梓「よし!じゃあ練習しましょう!」

唯「え?」

律「あ、ああ…?」


澪「梓、ちょっといい?」

梓「はい?」

澪「一匹見たら30匹って言うだろ」

梓「?」

澪「まぁ実際は100匹とかいたりするんだけどね」

梓「??」

澪「だからさ、ゴキローのことは残念だったけどさ…たくさんいるから心配しなくて良いよ」

梓「え!?」

澪「あれだけゴキブリを愛せる心があればきっと…」

澪「いや、絶対に梓もなれるよ!立派なゴキブリの妖精に!」

澪「よーし、じゃあ練習だー!」

梓「ど、どういうことですか!?」

澪「あはは♪」




おわり!



最終更新:2010年06月19日 22:22