憂「お昼はソーメンだよー」ごとっ
澪「涼しげでいいな!」
唯「私、このミカンが好きなんだよねー」ひょいぱく
セイバー「ユイ、お行儀が悪いですよ。食事とは、自身と他者を見直す時間
でもあるのですから」
憂「そうだよ、お姉ちゃん」
唯「うう……」
澪「はは。ホント、どっちが姉かわからないな」
唯「私がお姉さんだもん。いただきまーす」
憂「はいはい。セイバーさんも、たくさん食べてくださいね」
セイバー「はい。話には聞いていましたけれど、このソーメンという食べ物
は非常に涼をとるのに向いている。これがあれば、我が軍はもっと長く
戦えたことでしょう」
澪「アーサー王の時代って、食べ物はどんな感じだったの?」
セイバー「…………………………………」」
憂「?」
セイバー「……………………………雑でした」
唯「澪ちゃーん」ごろごろー
澪「ん? どうしたんだ。唯」
唯「今日はパトロール行かないの?」
澪「セイバーに聞いてみなよ。なんだかんだで、リーダーはセイバーなんだ
から」
唯「だってー、セイバーちゃん憂とゲームしてるんだもん」
澪「そうだったのか。意外だな、セイバーがゲームだなんて」
唯「私も意外だなって思ってたんだよ。しかも、けっこうハマってるんだよ」
澪「さらに意外だ。なんのゲームやってるんだ?」
唯「ぷよぷよとかマリオカートとか、結構色んなジャンルのゲームしてるよ」
澪「……よし、うちにコントローラーが二つあるから取ってくるよ」
唯「4人でやるの?」
澪「うん。もう私はマスターじゃないから、他のサーヴァントに狙われること
もないしな。すぐ行ってすぐ帰ってくるよ」
唯「いってらっしゃーい」
唯「澪ちゃん、コントローラー取りに行ったよー」
セイバー「……」
憂「……」
唯「な、なにしてるの?」
憂「……」タタン
セイバー「……」タタタタン
ゲーム「KO!!」
憂「ふぅ」
セイバー「目押し失敗しました。ウイ、もう一度」
憂「おっけーです」
唯「あ、スパ4してるんだ。セイバーちゃんって、なんでもできるんだねー」
セイバー「……」タタン
唯「……澪ちゃん、まだかなー」ごろごろー
セイバー「……もう、こんな時間ですか」
憂「6時になっちゃいましたね」
唯「ごろごろー」
憂「そろそろ晩御飯の準備しないと――」
唯「今日のご飯はなぁに?」
憂「セイバーさん、何がいいですか?」
セイバー「カレーライスというものを食べてみたいです」
憂「りょーかーい」
唯「わーい! カレーだー!」
セイバー「ユイも、カレーライスが好きなのですか?」
唯「憂のカレー美味しいんだからね!」
セイバー「そうですか……。ミオ、遅いですね」
唯「そうだね。電話してみるね」
ケータイ「プルルルプルルルルル」
?『随分遅かったじゃない。この子なんてどうでもいいのかと、ほんの少し
ばかり心配しちゃったわよ』
唯「……誰?」
?『ランサーのマスターって言えばどうかしら。……尤も。貴女は私の
ことは知らないのかもしれないけれど、ね』
セイバー「……」
?『セイバーもいるのでしょう? だったら伝えておきなさい』
?『12時に桜の丘に来なさい。一秒でも遅れたら、この娘は殺す』
唯「――わかった。だから、それまで澪ちゃんにはなにもしないで」
?『当然よ。人質は生きているからこその人質なんだから。――それに、
令呪もなにもない、ただの小娘殺したって、意味なんてない』
?『とにかく、セイバーを連れて来なさいね。これで、聖杯戦争は
おしまいになるんだから――』
ケータイ「ツーツーツー」
唯「……セイバーちゃん。12時に桜の丘に行くよ。そうじゃなきゃ、澪ちゃん
が危ない」
セイバー「わかりましたマスター。ミオは、必ず私が助けます」
――23時――
唯「それじゃあ、行ってくるね」
セイバー「ウイは安心して眠っていてください。朝までには、必ずミオを
取り返します」
憂「……いってらっしゃい。絶対に、帰ってきてね?」
唯「当たり前だよ。セイバーちゃんと私のコンビは最強なんだから」
セイバー「最強、ですか。フフ、良い響きですね」
唯「ここから桜の丘までは30分くらいだよ。セイバーちゃんは力を抑えて、
普通に歩いて行くからね」
セイバー「相手は三騎士のうちのランサーです。力は出来るだけセーブ
しておいたほうがいいですね」
ドア「ニコ」
唯「……澪ちゃん、待っててね」
セイバー「ユイ」
唯「どうしたの? 神妙な顔しちゃってさ」
セイバー「……おかしいです」
唯「なにが? もしかして、髪寝ぐせってる?」
セイバー「いえ、そういう意味ではなくて。――聖杯戦争が、おかしいとは
思いませんか?」
唯「おかしいもなにも、私は聖杯戦争なんてのも初めてだし、二回目も
きっとないよ。だから、おかしいかどうかもわからない」
セイバー「――そうでしたね。でも、思い出してください。ランサーのマス
ターは、電話で最後なんと言いましたか?」
唯「――これで、聖杯戦争は終わりって」
セイバー「それがオカシイのです」
唯「え?」
セイバー「いいですか? サーヴァントは本来7体。セイバー、ランサー、
アーチャー、ライダー、バーサーカー、アサシン、キャスターが基本的
なサーヴァントのクラスです」
唯「そう話してくれてたね」
セイバー「ええ。……では、私たちがライダーのサーヴァントと出会ってい
ないのは、一体なぜですか?」
唯「……あ」
セイバー「そうです。私たちはライダー以外のサーヴァント全員と出会った。
その中で、キャスター、アサシン、アーチャーはバーサーカーによって倒され
ました。そのバーサーカーも、おそらく魔力の消え方からして、アーチャー
と同士討ちになったのでしょう。ただ、それでも説明がいかないのです」
唯「そうだよね。ライダーの情報が、まったく入ってこなかったんだもん」
セイバー「つまり、この聖杯戦争は――」
唯「普通じゃない、ってこと?」
セイバー「少なくとも、私にはそう感じられます」
唯「きっと、ランサーが倒したんだよ」
セイバー「それならいいのですが……杞憂とは、どうしても思えません」
唯「例えば、セイバーちゃんはどれくらい魔力を感じ取れるの?」
セイバー「人間の魔力は不可能です。ただ、サーヴァントの尋常ならざる
ほどの魔力ならば、ある程度は感じ取れます」
唯「ライダーが、魔力を消してるっていう可能性は?」
セイバー「おそらく0でしょう。ライダーのクラスには、気配遮断も魔力遮断
のスキルもありませんから」
唯「……とにかく、澪ちゃんが先決だよ。ランサーとの戦いに集中しよう」
セイバー「ええ。了解しましたマスター」
唯「あそこが桜の丘だよ。桜の木がずらーっと並んでて、春はすごい
綺麗なんだよー」
セイバー「そうなのですか……。一度は、この国の桜を見てみたいもの
ですね」
唯「……」
――桜の丘――
ランサー「おいおい、随分と早いじゃねえか」
セイバー「一秒も遅れるな、とのことだ。故に、文句のない時間に参上した」
ランサー「俺のところのマスターは面倒な女だねえ。こんな人質なんざ、
取るまでもねえのに」
唯「澪ちゃんを返して!」
ランサー「返すさ返すさ。もともと、俺はこの嬢ちゃんに用事も何もなかった
んだ。マスターの命令でね」
澪「唯! セイバー!!」
セイバー「ミオ、早くこちらへ!」
唯「ミオちゃん、少し下がるよ。セイバーちゃんが、今からランサーを倒す
からね」
澪「うん……」
ランサー「――ああ。そうだ。ちなみにこの一戦に関しては、俺に令呪が
かかっている」
セイバー「――」
ランサー「わざわざ令呪を使うなんて、信頼されてないと思うだろうが。ど
うやら、俺はセイバーを必ず殺せと命じられているらしい――」
セイバー「ランサー、我が誇りにかけて、私は貴様を倒す!」バシュン!
ランサー「全く同じだ! 別に恨みもねえし怒りもねえ! ただ、俺はてめえ
を突き殺す!!」
唯「セイバーちゃん! 頑張って!」
セイバー「当然です!」ギン
ランサー「ほう、剣はもう隠さねえのか!」
セイバー「私の真名は、すでに知っているのでしょう?」
ランサー「無論だ。アーサー・ペンドラゴンだろ?」
セイバー「その通りだ。アイルランドの光の皇子。クーフーリンよ!」
ランサー「その名で呼んでくれるたぁ――嬉しいじゃねえか!」キン!!
セイバー「……そなたの槍技に肩を並べる英雄を、私は二人……否、
一人ほどしか知らない。右に出る者といえば、誰もいないだろう」
ランサー「そんなに褒めるなよ」
セイバー「だが、その槍を超えてこそ、無敗のアーサー王なのだ!」ダッ
ランサー「ヘヘッ! こうも清々しく武術の比べあいをしたのは久しぶりだ
ぜ!」
セイバー「私もだ!」
ランサー「考えてもみれば、てめえと死合ったのは三回目だな」
セイバー「……二回目では、ないのか?」
ランサー「――ああ」
ランサー「そういうことなんだよな。納得というか、これで完全に帳じりが
あった感じだぜ」
セイバー「なにを言っているのかが、私にはわからない」
ランサー「……話してやりてえって気持ちもあるが。死合っている最中に
無駄話は無用だ」
セイバー「意見が合うなランサー。私も知りたいが、今はこの戦いが、な
によりも優先される」
ランサー「そうなんだよな。過去二回も、俺は自慢のゲイ・ボルグを避けられ
ちまってるんだよな」
セイバー「……」
ランサー「ならば、これしかあるまい」タンッ!!
セイバー「……宝具、ですか」
ランサー「俺たちの戦いは、つまるところ宝具の競い合いだ! 最大火力
のぶつかり合いなんだよ!!」
セイバー「おっしゃる通りだ」
ランサー「いくぞセイバー!!!」
セイバー「ユイ、こちらも宝具を使います! ミオと一緒に頭を下げて!」
唯「りょーかい!!」
セイバー「――」シュウウウウウウウウン
セイバー「――――!!」パアアアアアアアアアアアア!!!
ランサー「突き穿つ(ゲイ)――――死棘の槍(ボルグ)――――――!!」
セイバー「約束された(エクス)―――勝利の剣(カリバー)―――――!!!」
澪「うわああああああああああああ!!!!!」
ランサー「――」にやり
セイバー「――」にやり
ランサー「てめえの、勝ちだ。諦めは悪い方なんだが、これはさすがに駄目だ」
セイバー「……宝具、ですか」
ランサー「俺たちの戦いは、つまるところ宝具の競い合いだ! 最大火力
のぶつかり合いなんだよ!!」
セイバー「おっしゃる通りだ」
ランサー「いくぞセイバー!!!」
セイバー「ユイ、こちらも宝具を使います! ミオと一緒に頭を下げて!」
唯「りょーかい!!」
セイバー「――」シュウウウウウウウウン
セイバー「――――!!」パアアアアアアアアアアアア!!!
ランサー「突き穿つ(ゲイ)――――死翔の槍(ボルグ)――――――!!」
セイバー「約束された(エクス)―――勝利の剣(カリバー)―――――!!!」
澪「うわああああああああああああ!!!!!」
ランサー「――」にやり
セイバー「――」にやり
ランサー「てめえの、勝ちだ。諦めは悪い方なんだが、これはさすがに駄目だ」
セイバー「――ハァ、ハァ!」ガクッ
唯「セイバーちゃん!」
セイバー「一度宝具を使っただけだというのに、この消耗ですからね。私も、
少しは戦術を考える必要があるようだ」
澪「ごめんね、セイバー。私が誘拐された所為で……」
セイバー「ミオの所為ではありませんよ。ランサーとは、必ず戦わなければ
ならない運命でしたから」
唯「そうだよ。澪ちゃんは悪くないよ」
澪「――ありがとう」
セイバー「すいませんが、肩を貸してください。さすがに、歩いて帰るのは
厳しい」
?「その必要はないぞ。セイバー」
唯「!?」
セイバー「……その、声は――」
?「久しいな。我が花嫁となる、唯一の女よ」
唯「セイバーちゃん、だれ?」
セイバー「……出来れば、いいや。絶対に会いたくない男です」
?「それは随分ではないか。我は、こんなにもお前を欲しているというのに」
澪「……この雰囲気」
セイバー「――アーチャー」
澪「!?」
黄金のアーチャー「どうした? セイバー」
セイバー「なにを、しにきた」
黄金のアーチャー「決まっているだろう。サーヴァントは全滅した。つまり、
聖杯は我が手に落ちるということだ」
セイバー「ライダーが残っている筈だが?」フラッ
黄金のアーチャー「アレは初めから存在もしていない。もとより、この聖杯
戦争は6体のサーヴァントでのみ始まっていたのだからな」
セイバー「……ならば、聖杯は私のものだ!」
黄金のアーチャー「そのお前は、我のものなのだよ。セイバー」
セイバー「相も変わらず、癇に障る――!」
黄金のアーチャー「癇に障ろうとも、お前は我のものなのだから仕方がない」
澪「……アーチャー?」
黄金のアーチャー「どうした娘」
澪「お前は、だれだ……」
黄金のアーチャー「……フム」
唯「――」
黄金のアーチャー「本来ならば、人間如きに名を訊かれることすら逆鱗に
触れるのだが――今宵は満月、そのうえ、セイバーに再会できたことを
祝って、高々と名乗ろう! 聞き逃すなよ!」
セイバー「……」
黄金のアーチャー「我が名は『ギルガメッシュ』!! 人類最古の英雄王
よ!!」
セイバー「!?」
ギルガメッシュ「どうだ。この世全てを手に入れる男としては十分すぎる
器だろう」
唯「――」ギリッ
セイバー「ユイ?」
唯「……なんなの。英雄王なんて言ってるけど、セイバーちゃんとランサーの
戦いが終わるまで、隠れてた臆病者じゃん」
ギルガメッシュ「!?」
唯「アーチャーも、バーサーカーもキャスターもアサシンも、ランサーも、皆
戦って消えていったのに――この人だけは――!」
ギルガメッシュ「口が過ぎるぞ。女」
唯「うるさい! 臆病者くせに、セイバーちゃんはお前のものなんかじゃな
い!」
セイバー「――ユイ」
ギルガメッシュ「――」ギリッ
澪「唯!」
唯「おまえなんかよりも、ランサーたちの方が一億倍カッコいいよ!」
ギルガメッシュ「――死にたいようだな。女」ズオオオオ
セイバー「ユイ!」ガバァ!
ギルガメッシュ「――」
セイバー「……ッ」
唯「セイバーちゃん!」
セイバー「平気です。……ギルガメッシュの宝具は、あの幾本もの宝具で
す。武器庫から時空を超えて、この世全ての武器を召喚します」
澪「それって……」
最終更新:2010年06月25日 21:30