――桜高――

セイバー「前にも来ましたが、いい学校ですね」

唯「セイバーちゃんの制服ー」がばっ!

憂「お姉ちゃん、しわになっちゃうよー」

澪「でも、すごく似合ってるよ。セイバー」

セイバー「あ、ありがとうございます。私は、男として生きてきましたから、
このような少女の衣服を纏った経験が極端に少ないのです……。本当
に、似合っているのでしょうか?」

唯「似合ってるなんていうレベルじゃないよ。学校のマドンナ確実だね!」

澪「ファンクラブもすぐに出来るだろうな」

唯「澪ちゃんにはファンクラブがあるんだよー」

セイバー「ファンクラブ!? つまり親衛隊ですか! それは素晴らしいで
す!」

澪「セイバー、意味曲解してないか!?」

憂「音楽準備室に到着です。ささ、セイバーさん」

セイバー「?」

ドア「ギギギ」

梓「セイバーさん!! いらっしゃい!!」

紬「さぁさ、ここに座ってください!」

セイバー「アズサ! ツムギ!!」

唯「えへへー。それに――」

律「セイバー、久しぶり……かな?」

セイバー「リツ!」

律「……私を見て、笑ってくれてありがと。私、あんなにひどいことしたのにさ」

セイバー「マスターである貴女に罪は在りません。貴女のような優しい女性
が修羅の道を往ったのにも、理由があってのことでしょう?」

律「――セイバー」

唯「さあ! りっちゃん、ムギちゃん、あずにゃん、澪ちゃん! 準備して!」

澪「おう!!」がさごそ


憂「セイバーさん、見ていてくださいね。お姉ちゃんたちが、普段学校で
なにをしているのかを」

セイバー「はい……」

憂「どうしました?」

セイバー「いえ、少しスカートが短いのが気になりまして……」

憂「セイバーさんの脚、キレーですね」

セイバー「からかわないでください。このように短いスカートでは、その……
見えてしまうのではないですか?」

憂「うーん。気を使ってれば見えませんよ。階段上がるときは抑えてます
しね」

セイバー「むむ。現代の女子高生も、戦っているのですね」

憂「そうですよー。規則ギリギリの短さにするのは大変なんですから」

セイバー「意外ですね。ウイが規則に反しようとするなんて。てっきり、優等生
だと思ってました」

憂「反してるわけじゃないですよ。それに、優等生って自分では言いにくいの
であとで梓ちゃんにでも訊いてください」

セイバー「そうします」

唯「レディースエーンドレディース! 今日はHTTのライブに来てくれてありがとー!!」


憂「わーい!」

セイバー「……」

唯「セイバーちゃんに、一度も私がギター弾いてるところ見せられなかった
からね! 今日はいっくぜー!!」ギュインギュイン!!

澪「セイバー、聞いてほしいんだ。私たちの演奏を」

セイバー「――ええ。是非、聞かせてほしい」

唯「初めてセイバーちゃんと会った日にお風呂で、一発で見抜いてくれた
んだよね。私が、毎日練習してることを――」

梓「この教室では、あまり練習してませんけど、唯先輩は毎日家で練習
してるんです」

紬「私たちだってそう。今の、この時間を無駄にしないために――」

律「毎日頑張ってるんだ!!」

唯「それじゃあいっくよー!! ふわふわ時間!」

律「1・2・3・4!!」カンカンカンカン!!


セイバー(――ああ。そうか)

セイバー(この顔だ)

セイバー(楽しそうで、真剣で、まっすぐで)

セイバー(そんな表情を、貴女はしている)

セイバー(それが、どうしようもなく綺麗だ)

セイバー(まるで、朝日のように)

セイバー(まるで、美しい花のように)

セイバー(だから――私は貴女を信頼しているのだ)

セイバー(その顔は、嘘という淀みを見せない)

セイバー(いつも正直で、いつも清らかで)

セイバー(いつまでも――私は貴女にそうあってほしい)

セイバー(その笑顔を守るために、私はこの街を守る――!)

唯「せんきゅーせんきゅー!!」

憂「お姉ちゃあああああああああああああん!!!」パチパチパチ!!

セイバー「素晴らしい。実にすばらしい演奏でした」パチパチ

セイバー(――ああ。そうか)

セイバー(この顔だ)

セイバー(楽しそうで、真剣で、まっすぐで)

セイバー(そんな表情を、貴女はしている)

セイバー(それが、どうしようもなく綺麗だ)

セイバー(まるで、朝日のように)

セイバー(まるで、美しい花のように)

セイバー(だから――私は貴女を信頼しているのだ)

セイバー(その顔は、嘘という淀みを見せない)

セイバー(いつも正直で、いつも清らかで)

セイバー(いつまでも――私は貴女にそうあってほしい)

セイバー(その笑顔を守るために、私はこの街を守る――!)

唯「せんきゅーせんきゅー!!」

憂「お姉ちゃあああああああああああああん!!!」パチパチパチ!!

セイバー「素晴らしい。実にすばらしい演奏でした」パチパチ


唯「どうだった? 私たちの演奏」

セイバー「その質問はすでに8回目ですよ。何度聞いても、素晴らしかったで
す」

唯「えへへー。やったね澪ちゃん!」

澪「うん。セイバーに褒められると、すごく自信になるよ」

憂「このままプロになっちゃいますか?」

セイバー「十分可能だと思いますよ。唯たちの音楽には、なによりも楽しさ
が感じられました」

唯「ありがとー」ぎゅっ

セイバー「ですから! いちいち抱きつかないでください!」

憂「私もー」ぎゅっ

澪「わ、私もっ」ぎゅっ

セイバー「……まったく、仕方ないですね」



――そして、夜――

セイバー「……」

唯「憂、いってくるね」

澪「今日は、このまま帰るからね。お世話になったよ」

憂「はい……」

セイバー「ウイ、貴女は強い女性だ。しかし、時には甘えなさい。ユイに、
ミオに、誰でもいいです。弱さを見せられる相手を、見つけてください」

憂「……はい!」

セイバー「それでは、今までありがとうございました。料理、とても美味しか
ったですよ」

唯「――」

澪「――憂ちゃん、泣いてもいいんだよ?」

憂「……いいえ。私は、セイバーさんを笑った顔でお見送りしたいです」ニコっ

セイバー「――ウイ。いってきます」

憂「いってらっしゃい」


セイバー「――」とことこ

唯「――」すたすた

澪「――」とてとて

セイバー(言葉なんていらない)

唯(作戦もない)

澪(ただただ、セイバーの力をぶつけるだけ)

セイバー(私が及ばないのなら敗北する)

唯(それでも、私たちは信じてる)

澪(セイバーの強さを)

セイバー(故に――)

唯(だから――)

澪(そういうことだから――)



セイバー唯澪(私たちは、なにも話さない――)




――桜の丘――

ギルガメッシュ「時間ちょうどの到着とは、この我を待たせるなよ」

セイバー「ギルガメッシュ――!」

ギルガメッシュ「フフ、聖杯はこうして降臨した。故に、これから我たちは
殺し合うわけだ。我はいいのだぞ? お前を殺すことでしか屈服できない
のであれば、構わんのだ」

唯「セイバーちゃんは死なないよ。私たちがいるもの」

澪「そうだぞ。私たちが、セイバーを見守る」

セイバー「――ありがとうございます」

ギルガメッシュ「美しい友情だなセイバーよ。今、どのような気持ちなのだ?」

セイバー「心の奥から、充実感がある。――今だかつてないほどの、安心感
までもある。国を滅ぼした貴様では、一生、永遠をかけても得られないもの
だ!」

ギルガメッシュ「この我に、手に入らないものなどない。それが聖杯であっても
だ」

セイバー「聖杯――。――――!!」

セイバー「サクラ――?」

桜「――」

セイバー「なぜだ!? なぜサクラが聖杯に――」

ギルガメッシュ「知れたことよ。これこそ聖杯なのだ」

唯「あの人、知り合いなの?」

セイバー「シロウの、大切な人です。まさか、あのサクラが聖杯だった
なんて――」

澪「人間が、聖杯?」

ギルガメッシュ「我にも深淵は知りかねるが、人間の中に聖杯が隠されて
いたらしいのだ。聖杯の欠片が埋め込まれた娘が、サーヴァントの魂を
吸って降臨した」

セイバー「サクラ――」

桜「――」

ギルガメッシュ「さあ、この聖杯を知っているのならば尚更取り返すしか
あるまい。――全力で来いよセイバー。死にたくなければ、聖剣を抜け」

セイバー「――言われずともそうする。いくぞ! 英雄王!!」

ギルガメッシュ「来い! 騎士王!!」


――?――

凛「まったく、ホントにデタラメね。アンタ」

桜「姉さんだって。本当だったら、その変な剣を振る前に死んじゃうのに」

凛「お生憎様。これはシロウとイリヤで作った宝石剣。アンタも名前くらいは
知ってるでしょ?」

桜「……また、姉さんは先輩をとっちゃうんだ」

凛「被害妄想もいい加減にしなさいよ」

桜「うるさいうるさい!! 姉さんなんか! 私をひとりぼっちにしちゃう姉さん
なんか――死んじゃえ!!!」ズオオオオ

凛「――だから、効かないの!!」パアアア

桜「死んじゃえ! 死んじゃえ!! 死ね! 死ね!!」

凛「トンデモない恨みと憎しみね。これはちょっとやばいかも……」

士郎「遠……坂……」

ライダー「リン!!」

凛「は?」

士郎「加勢に来たぞ。桜は――」

凛「馬鹿!」

士郎「……?」

凛「ライダーも止めなさいよ! 士郎ったら、もうとっくに身体なんて――」

士郎「――ああ。もう、心臓なんて止まっちまってるだろう」

ライダー「私は、サクラを助けたい」

凛「――!」

士郎「俺もライダーと同じだ……。だから、たとえこの身体が消えちまって
も、サクラは助ける」

凛「あなた達、馬鹿を超えてるわ!」

桜「先――輩――?」

士郎「久しぶりだな桜。随分と変わっちまったな。お互いにさ」

桜「――その身体!」

士郎「こんなのはどうだっていい。重要なのは、お前を助けることだけだ」

桜「――先輩は、どうしてっ!?」

士郎「だから、お前を助けるためだって言ってるじゃないか。肺だって、もう
動いてないんだから、あまりしゃべらせないでくれ」

凛「……」

桜「馬鹿です。先輩は――」

士郎「何度も言われたし、これから先も言われるだろうな」

桜「もう、私は戻れないのに……」

士郎「――」

桜「憎しみでしか動けない。もう、誰も信じてあげられないんです……。そん
な私が、先輩に愛してもらえる筈が、ないです」

士郎「――」

桜「私なんて、誰にも愛されないんです!」ズオオオオオオオオオ

凛「多っ! 士郎は下がってなさい! ライダーもよ! あれはサーヴァント
には天敵中の天敵なんだから!」

士郎「――」すたすた

凛「馬鹿!」

士郎「――ああ。俺は、お前なんて愛してないよ」

桜「――!」

士郎「だってそうだろう? いつまでもウジウジしてる女なんか、俺は好きに
なんてなれない」

桜「……」

士郎「いつまでも、自分が可哀想可哀想って、世界で一番自分が不幸だっ
て言ってないで、さっさと前を向け。上の見ろ」

士郎「だから、今の桜は嫌いだ」

桜「―――――――――――!!!!!!」

士郎「大嫌いだ」

桜「―――――――――――――――――!!!」

士郎「……」

桜「……じゃえ」

ライダー「――!」

桜「みんな! みんな死んでしまええええええええええええええええええ
ええええええええええええええ!!!!!!!!!!」

凛「ちょっと待ってよ! 洞窟が崩れ出した! 士郎!」

士郎「――よし、これでオーケーだ。遠坂、あとは頼む」


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最終更新:2010年06月25日 21:35