池上「さて、けいおん!の人気が出るにつれて、ファンの間である紛争が起きてしまったんです。それがこの…」

(フリップをめくる)

池上「百合カップリング論争と呼ばれる紛争です」

土田「百合カップリング論争?」

池上「はい。土田さん、カップリングと聞いて、どんなものを思い浮かべますか?」

土田「ちょっと古いですけど、フィーリングカップルとか、ああいうものですよね」

池上「そうですね。元々カップリングというのは、男女が複数いる場合に、誰と誰がくっついてカップルになるか、という意味の言葉です」

ひとり(うなずく)

池上「ところが近年、その意味合いにある変化が起こったんですね」

池上「その変化というのが実は、カップルの組み合わせが男女じゃなくてもよくなった、という事なんです」

有吉「えっ、どういう事ですか」

池上「はい。こちらのフリップを見てください。複数の男女がいる中から、一組の男女をカップルにする。これが先ほど言った、カップリングという言葉の元々の意味です」

(フリップをめくる)

池上「ところが最近になって、男と男がカップルになってもいいじゃないか、むしろそっちの方がいいじゃないか、という動きが出て来たんですね」

有吉「えーっ、男同士ですか!」

池上「はい。こうした動きは実は、1970年代から存在していたのではないかと言われていますが、ここ数年急速に勢力を拡大してきました」

池上「この、男と男のカップリングを好む人というのが、主にオタクの女性でした。そのため、こういう人たちの事を腐った女子と書いて『腐女子』と呼びます」

土田「ちょっと、腐った、って酷くないですかw」

池上「そうですね。ただ、この呼び方を始めたのは他ならぬ彼女たち自身なんです。オタクの女性たちが自虐的な意味合いを込めた呼び名だという事ですね」

土田「ふーん」

池上「しかし、この腐女子という勢力も、皆が皆同じカップリングを好む訳ではないんですね」

(フリップをめくる)

池上「例えば、この国家を擬人化した作品では、ドイツの領土(菊穴)をめぐって、ロシア派とフランス派の間で激しい争いが起こりました」

土田「へえー」

池上「ちなみに上原さんはどちらを支持しますか?」

上原「私は日×独なので……」


池上「こうした紛争を、一般的にカップリング論争と呼びます」

ひとり「あっ、最初に出て来た」

池上「そう。このカップリング論争が、けいおん!ファンの間でも巻き起こったんです」

有吉(怪訝そうな顔)

池上「けいおん!はすごく人気のあるアニメなので、それだけファンも多い。そのためカップリング論争も、過去に類を見ない規模の紛争が起こってしまったんです」

ひとり「うわぁ……」

土田「あれ、でもさっきの説明だと、カップリング論争っていうのは男と男のカップルについての紛争ですよね。けいおん!には女の子しか出て来ないんじゃないですか?」

池上「土田さん、いい質問ですねぇ」


池上「けいおん!ファンの間で起こった紛争は、これまでのカップリング論争と非常によく似たものですが、たった一つ、決定的な違いがあるんです」

(フリップをめくる)

池上「それが、男と男のカップルについての紛争ではなくて、女と女のカップルについての紛争だという事なんです」

ひとり「へぇー」

池上「上原さん、女同士のカップルを何というかご存知ですか?」

上原「えーと、レズ、ですか」

池上「はい、確かにレズとも言います。しかし、もっとファンタジーを喚起させる呼び名として、百合という言葉があるんですね」

有吉「あぁ、百合はいいですよね」


池上「だから、けいおん!に出て来る女同士のカップルについて起こった紛争の事を、百合カップリング論争というんですね」

ひとり「あぁ、そういう事か!」

池上「この紛争で、何が起こったのか、詳しく見てみましょう。実はけいおん!に関して言えば、一期放送の時点では、それほど激しい紛争は起きなかったんです」

土田「えっ、そうなんですか?」

池上「はい。というのも、主要メンバーのうち律澪が鉄板と言われ、わずかに唯梓派と唯憂派の間で小競り合いがあったくらいで、あまり大きな争いにはならなかったんですね」


池上「二期の放送が始まっても、しばらくの間はこの状態が続いていました。しかし先月、ある事件が起きたんですね」

ひとり(神妙な顔)

池上「その事件をきっかけにして、けいおん!百合カップリング論争は、大きな紛争へと発展してしまったんです」

土田「その事件というのは?」

池上「はい。元々、百合カップリング論争は、ファンとファンの間の二次的な紛争です。そこになんと、公式である京都アニメーションが介入してしまったんですね」


池上「ここで、問題の場面のVTRを見てみましょう」

唯「あずにゃーん!」

有吉「あぁ、可愛いなぁ」

池上「この回は、唯と梓の二人で『ゆいあず』というユニットを組む、という話でした」

土田「えっ、公式で唯梓を認めたって事ですか?」

池上「そう思うでしょう?ところが、この回のラストで、衝撃的な映像が流れたんです。それがこちら」

唯「次は『ゆいムギ』」

律「私たちは『りつみお』」

澪「『ゆいムギ』『みおあず』だな」


池上「わかりましたか?」

ひとり「うわぁ……」

池上「このアナウンスによって、唯をめぐる争いに唯紬派という第3勢力が生まれたばかりでなく、揺らぐ事のないと思われていた律澪にまで対抗勢力が現れてしまったんですよ」

有吉「もうグチャグチャじゃないですか」

池上「そうなんです。この放送をきっかけとして紛争は激化。今では収拾がつかない情勢になっています」

土田「へぇー」

上原「あの、池上さん」

池上「はい何でしょうか」

上原「唯の総受けにすれば、みんな平和になるんじゃないですか?」

池上「上原さん、鋭いですねぇ」

土田「総受けっていうのは?」

池上「はい、ちょっと説明しましょう。男女のカップルの場合、基本的に主導権を握って攻めていくのは男性ですよね」

土田「いやー、そうとは限らないんじゃないですか?劇団ひとりなんか、メッチャ嫁さんの尻に敷かれてますよ」

ひとり「ちょっとちょっと!……まぁ、それは否定できませんけど」

池上「ハハハッ……。そういうのは、あるかもしれませんね。ただし、ここでいう主導権とは、主に性行為の場面での主導権を指すんですよ」


土田「えーっ、ちょっと待ってくださいよ!性行為ですか?」

池上「はい、そうなんです。性行為の主導権ですね」

土田「繰り返さないでいいですって、そんな!」

有吉「でも劇団ひとりさん、夜の営みも嫁さんが主導権を握ってますよね」

ひとり「こら、こらっ!ゴールデンで、なんて事を!」

有吉「だって楽屋ですげぇニヤニヤしながら言ってたじゃないですか」

ひとり「言ってない!言ってません!」

池上「ハハハッ……。さて本題に戻りますと、男女のカップルと違って、男同士、女同士のカップルの場合、その組み合わせだけでは主導権がどちらにあるのか分からないんですね」

土田「あっ、確かに」

池上「そこで見分ける方法として、主導権を持つ側を『攻め』、持たない側を『受け』と呼ぶルールがあるんです」

土田「あぁ、そうなんだ」

池上「さっき上原さんの言った『総受け』というのは、すべてのメンバーに対して唯が受けにまわる、という意味です。みんなに愛されるハーレム状態と言ってもいいでしょう」

有吉「最高ですね」

池上「はい。特定のカップルを正しいと主張して争うのではなく、このハーレム状態を受け入れれば、みんな平和で幸せな暮らしができるじゃないか、という声が実際にあります」


土田「じゃあそれで、紛争は収まりそうなんですか?」

池上「うーん。この紛争は非常に複雑で、色々な勢力が存在するので、なかなかそう簡単にいかない部分もあるんですよ」

土田「あっ、そうなんですか?」

池上「仮に唯の総受けという和平案が出されても、納得しない人たちがいるんです。例えば、唯は攻めであるべきだ、という勢力はこれを認めません」

ひとり「同じ組み合わせでも、攻めと受けが逆転したら認められないんですか」

上原「それは絶対に認められませんよ」

土田「ちょっと、いきなり割り込んできたな!」


池上「上原さんが言うように、逆転したカップルを認められない勢力がいるのは事実です。しかし、この紛争が決着するとしたら、誰かの総受けしかないだろう、とも言われています」

土田「あっ、わかった。特定のカップルを結論にしちゃうと、どうしても反対勢力の不満を抑えきれないんだ」

池上「土田さん、素晴らしい。まさにその通りなんです」

土田(ニヤニヤする)

池上「けいおん!百合カップリング論争を終息させるためには、特定の勢力を正当とするのではなく、みんなが妥協できる、納得できる仕組みを作っていかなければならないんですよ」

ひとり「でも、それって簡単じゃないですよね」

池上「そうですね。ギリギリの調整が、これからも続くと思われます。今後の情勢を見守っていきましょう」

有吉「いやー、すごくよく分かりました」

池上「はい。ありがとうございました」

パチパチパチ...


終わり



最終更新:2010年06月27日 01:11