律「いつごろから喋れるようになったの?」
唯「……イマダヨ」
律「へぇ、そんなことあるんだなぁ」
もしかしたらりっちゃんは私以上に天然なのではないでしょうか。
律「ねぇ!くまきちってなにが好きなの?」
唯「……ゴロゴロ、カナ」
律「ふーん、なんだか唯みたいなやつだなぁ」
りっちゃんはその後も夕方になるまでずっと私、もといくまきちにしょうもない質問や話をしてきてました。
律「あ、もうこんな時間だ」
律「……そうだ!くまきちにさとしを紹介してあげる!」
唯「エ゛」
律「ちょっとまっててな!」
りっちゃんはそう言って部屋の外へいってしまいました。
私は面倒なことにならないうちに、りっちゃんの部屋から逃げるように去りました。
ごめんねりっちゃん、くまきちを大事にしてね。
聡「姉ちゃん、何だよくまきちって」
律「いいからいいから!ほらくまきち!これが弟の聡だよ!」
聡「は?」
律「……くまきち?」
聡「気がくるっとる」
さてさて、次に私が来たのはりっちゃんの家から歩いて何分もかからない澪ちゃんの家です。
例によって静かにドアをあけ、澪ちゃんの部屋へ向かいます。
澪「……!……!」
どうやら澪ちゃんは誰かと電話をしているようです。
おじゃましまーす。
澪「だからくまきちって何!?……はぁ?ぬいぐるみ!?」
電話の相手はりっちゃんのようです。
りっちゃんの声は聞こえませんが、会話の内容は大体察することが出来ます。
澪「喋らなくなったって……泣いてちゃわかんないだろ!」
澪「……わかったわかった。とにかくその話はまた今度な」
澪「うん、じゃあね。うん」
澪「……」
どうやら電話は終わったようです。
さて、澪ちゃんにはどんなイタズラをしましょうか。
澪「律、かわいいぃぃぃ!」
澪「ぬいぐるみが喋ったとか発想がかわいすぎ!」
澪「あーもうまじやばい、鼻血でそう」
澪「それにしても、泣いた律もかわいいなぁ。涙と鼻水すべて舐め取ってあげたいよ」
澪「次あった時はナデナデしてあげようかな。ふふふ」
澪「……よし、この気持ちを忘れないうちに律の詩を書こう!」
私は何もせず、そっと澪ちゃんの家をあとにしました。
さてさて、くまきち騒動と澪ちゃんの知りたくない一面を見た次の日。
私は憂から外出許可をもらい、ある人の家へ来ていました。
唯「ふふふ、どんなイタズラをしてあげようかなぁ」
私は透明になってその人の家に入り、二階へ向かい目的の部屋を見つけました。
そのドアには、「あずさ」という札がかけられています。
そう、次のターゲットは愛する後輩のあずにゃんです。
おじゃましまーす。
梓「……」
あずにゃんはベッドの上で暇そうにしていました。
まさか透明になった先輩が部屋に不法侵入してるとも知らずに無防備なあずにゃん。
くすぐってあげましょうか。
ちゅーしちゃいましょうか。
それよりもっとすごいことをしちゃいましょうか?
私は卑猥なことを考えながら、あずにゃんに近づいていきます。
梓「……いるんでしょ?」
え?
もしかしてばれました?
梓「いるのはわかってるんだよ……ルシファー」
ルシファーって誰でしょうか。
梓「さあ私に力を……」
あずにゃんはそういって右手を上にあげました。
梓「……う!痛い……!くぅ……」
あずにゃんはそういって上げた右腕を震わせています。
この子は一体なにがしたいんでしょうか。
梓「もっと……もっと力を……!」
よくわかりませんが、私はあずにゃんの右腕を握りました。
ぎゅっ。
梓「うひぃ!?」
梓「なに!?今何か触られたような!?」
そういってあずにゃんは周りをキョロキョロと見回しています。
憂のときのように怖がらせるつもりはなかったのですが。
梓「……ルシファー?」
梓「ルシファー!ルシファーなんだね!」
どうやら、あずにゃんは私の思ったよりおめでたい子のようです。
唯「……ソウダヨ」
なんだかすごいデジャヴです。
梓「そっか……私、やっとメシアになれたんだ」
梓「ルシファー、これからは力を合わせてこの荒んだ世界を粛清していこうね!」
唯「エッ……ア、ウン」
この子は世界にどんな恨みがあるのでしょうか。
梓「でもその前にいつものように技の練習をしないとね」
そういってあずにゃんは、手のひらを机の方に向けました。
この子は自分の部屋でいつもこんなことをしているのでしょうか。
梓「いくよ、ルシファー」
ダーク・ブレス
梓「暗黒の咆哮!」
はい?
あずにゃんがよくわからない呪文のようなことを叫びますが、何も起こりません。
当たり前といえば当たり前なのですが。
梓「……ルシファー!」
唯「エ、ナニ」
梓「どうしたの!ルシファーも一緒にやらなきゃ技がでないでしょ!」
唯「ン?ウン?」
ダーク・ブレス
梓「もう一回いくよ!暗黒の咆哮!」
あずにゃんはそう言ってさっきと同じように机に手を向けました。
もしかしてかめはめ波的なのを出したいのでしょうか?
そう思い、私はそっと机の上にある貯金箱を倒しました。
がしゃん。
梓「あれぇ……もっとビーム的なのでると思ったんだけど……」
唯「モ、モットレンシュウガヒツヨウナンジャナイカナ」
梓「そっか……まだ波動が足りないんだね」
もうこんな後輩いやです。
梓「じゃあ次はこうして……」
唯「……」
私は一人でブツブツ何か言っているあずにゃんそのままにして、部屋を出ました。
もう二度とあずにゃんをかわいい後輩として見れる自信がありません。
唯「……ほぇー」
そしてついにわたしはオオトリであるムギちゃんの家に着きました。
なんで場所を知ってるのとかいう細かいことは気にしちゃだめですよ。
ムギちゃんの家はとても大きく、門もとても人がはいれる高さではありませんでした。
唯「どうしようかなぁ……」
困り果てていると、後ろからいかにも高級そうな車がこちらに近づいてきました。
私は急いで透明になり、様子をうかがいます。
その車が門の前までくると、門が自動で開き始めました。
そして私はその開いている隙に門へ向かって走り、まんまとムギちゃんの敷地内へ入ることが出来たのです。
唯「家まで遠いなぁ……」
敷地内へ入ることはできたものの、そこから家まではすこし距離がありました。
私は力ない足取りで家まで歩いていきます。
というか私なんでこうまでしてムギちゃんにイタズラをしようとしているのでしょうか。
そんな考えてはいけないことを考えながら、門と家のちょうど中間地点まで来たその時です。
ビービービー!
いきなり辺りにサイレンのようなものが鳴り響きました。
『謎の熱反応発見、謎の熱反応発見。ただちに迎撃せよ』
唯「え!?え!?え!?」
するとたちまち周りからゴーグルのようなものをつけた人が、銃を持って集まってきました。
「くそ、やつらついに光学迷彩までつかってきやがったか!」
「撃てー!撃てー!」
唯「ひぃぃぃぃ!?」
その人たちは問答無用で私に向かって銃を乱射してきました。
これではもうイタズラどころではありません。
姿を晒すのはいやでしたが、命が何よりも大事です。
私は透明をとき、手をあげました。
唯「違う!違うの!私ムギちゃんの友達です!平沢唯です!」
「紬お嬢様の……?……おい」
「はっ」
なにやら無線のようなもので連絡をとっています。
私は生きて帰れるのでしょうか。
すると数分後、ムギちゃんが走って私のところへやってきました。
紬「唯ちゃん!大丈夫!?」
唯「ムギちゃぁぁぁぁん!」
私はその見なれた姿に安心し、涙を流しながらムギちゃんの胸に飛びつきました。
紬「本当にごめんね」
唯「私も勝手にはいってごめんなーい!」
紬「いいのよ。それより、透明になってたらしいけど……どういうこと?」
唯「うん……実は」
私は素直に自分が透明人間だったことを話しました。
紬「そうだったの……」
唯「うん……」
紬「それで?」
唯「え?」
紬「エッチなことはしたの?」
唯「え?」
波乱の日曜日が終わり、ついに月曜日がやってきました。
そして私はいつものように半分寝ながら授業をうけ、今部室にいます。
律「くまきちがぁ……くまきちがぁ……」
何でも信じちゃうりっちゃん。
澪「まだ言ってるのか……よしよし」
危ないほどりっちゃんが好きな澪ちゃん。
梓「はやく練習しましょうよぉ」
メシアの梓ちゃん。
紬「お二人とも仲がいいのねぇ」
裏で何をしているかわからないムギちゃん。
唯「ムギちゃん、今日のお菓子なにー?」
そして透明人間の私。
こんな放課後ティータイムを、これからもよろしくお願いします。
おわり
最終更新:2010年06月28日 20:45