唯「和ちゃん!?」

憂「和ちゃんにも、お姉ちゃんが見えるの?」

唯「憂は本当にいるんだよねっ?」

和「心配しなくていいわ」

和「二人とも、やっと会えたのよ」

唯「よかった、夢だったらどうしようかと思ったよ」

憂「大丈夫だよお姉ちゃん、私は本当にいるよっ!」

唯「そうだね、もう疑わないよっ!」

和「ごめんなさいね、二人とも」

和「二人が離れ離れだったのは、私の責任なの」

和「私の心が弱かったから…」

唯「和ちゃん?」


憂「それって…」

和「幼稚園の頃、三人で遊んだよね」

唯「三人で?」

憂「そういえば、記憶がある」

憂「でもそれは、小さい頃だから」

憂「想像と現実がごちゃ混ぜになってるんだと思ってた」

唯「そうだっ!私もっ!」

和「二人があまりにも仲のいい姉妹だったから」

和「私、酷い事を…ごめんなさい」

憂「どういう事ですか?」

和「……」

和「ごめんなさい、だから、せめてこれからは姉妹仲良く暮らしてね」

和『私にはこんな事しか出来なくてごめんなさい』

唯「あれ?和ちゃん?」

和『さよなら、二人とも、どうか、ずっと元気でね…』


憂「和ちゃん、さよならってどういうこと!?」

唯「嫌だよ和ちゃんっ!せっかく憂と会えたのにっ!」

唯「なんで和ちゃんとお別れしなきゃならないのっ!?」

和『唯…憂…』

和『二人といれた時間、とっても楽しかった』

和『私達、親友だった…』

唯「行かないでっ!和ちゃん!」

憂「私達と一緒にいようよっ!!!」

和『ありがとう、でも…もうそれは出来ないの』

和『さよならっ!』




学校!

澪「和、どうしたんだ?ぼーっとして?」

和「んっ、いや、何でもない…」

澪「たまに和ってそういう時あるよな?」

和「そうかな?」

澪「そうだよ」

和「でも、もう二度とそんなこと無いわよ」

澪「どういうことだ?」

和「……」

和「例えばね、例えばの話だけどね」

澪「うん」

和「私には、幼稚園からの付き合いの年子の姉妹がいるの」

和「お姉ちゃんの方は私達と同じ学年で」

和「妹は一つ下、同じ学校なの!」

澪「へー、それで?」


和「お姉ちゃんの方は軽音部なのよっ!」

澪「そうなのかっ?それでどんな子なんだ?」

和「うーん、天然って言うか、抜けてるというか」

和「でも、とっても可愛くて、憎めない子」

和「だけど妹の方は、しっかりしてて礼儀正しくて」

和「お姉ちゃんを支えてるの」

澪「なんか面白い姉妹だなっ」

和「澪…」

澪「どうした?」

和「こんな話したら、引かれるんじゃないかと心配してた…」

澪「バカだな」

澪「逆に、私はそういう話、大好物だぞっ」

澪「律の前じゃ、馬鹿にされるから出来ないけどなっ」

和「あははっ、確かにね」

和「でもね、話はそれだけじゃないの…」


和「私はね、その仲のいい姉妹を離れ離れにしたの」

澪「えっ?なんで?」

和「私が妄想の友達を持ってるんだから」

和「それを共有できる人が欲しかった…」

和「でも、そんな友達いないから…」

澪「その姉妹が、お互いに妄想だということにした?」

和「その通り」

和「だから、二人には永い間寂しい思いをさせたわ」

和「だから、最後には二人を一緒にしてあげたの」

澪「そうか…」

澪「もう、その空想はしないのか?」

和「ええ、もう流石に幼稚だからね」

和「でも、もっと早く澪に出会っていれば」

和「二人を離れ離れにしなくてよかったのに…」

澪「和…」


律「おーい澪っ、部活だぞーっ」

澪「じゃあね、和、また後で」

和『そうね、私も生徒会に行かなくちゃ』

律「澪ってばっ」バッ

澪「わっ、飛び掛ってくるなよー」

律「何してたんだ?誰かと話してると思ったけど?」

澪「何でもないっ、さっ、一緒に行くぞっ」

律「なんだよもー」


二年生の時、知ってる人のいない一人きりのクラスになった

お昼休みと放課後は、みんなの所で過ごせてたけど

それ以外は最悪だった

私はいつも一人

ペアを組んだりグループ分けで

私はいつも余っていた

だから私は、頭の中に友達をつくった


頼りがいがあって

しっかりしてて

それでいて、私と気の会う

普段は見せない顔だけど

さっきみたいな話もしてくれて

深いところでも結びついてる

そんな友達…



部室!

紬「お茶がはいったわよーっ」

律「おっ、チーズケーキかっ!」

澪「美味そうだな」

梓「でもみなさん、ちょっと待ちましょうよー」

紬「そうね、まだ一人来てないから…」

律「あー、そうだな、何やってるんだあいつは」

澪「おかしいな?私達より先に教室から出たと思ったんだけど…」

ガチャ

?「お待たせみんなっ」



唯「ごめんねー、憂と話込んじゃってー」

澪「お前達、仲がいいもんな」

律「それじゃ、いつものティータイムにしようっ!」

澪「その後はちゃんと練習だからなっ」

律「わかってるよーだ」

唯「あっ、おいしいよこのケーキ!」

律「わっ、こいつ待ってやってたのに先に食べやがってぇー」

梓「ちょっとは落ち着いて、食べましょうよー」

紬「うふふっ」


紬(楽しいな、軽音部のみんな大好きっ)

澪『本当においしいなこれっ』

紬「ほんと?よかったぁ!」

律『いつもありがとうなムギっ!』

唯『ムギちゃんの淹れるお茶は最高だよっ!』

紬「えへへっ」

梓『先輩たちはお茶とお菓子ばっかり』

梓『ムギ先輩は楽曲面やその他の気配りでも』

梓『軽音部には必要な人ですっ!』

紬「梓ちゃん…」

律『そん事言って、梓が一番早くケーキ食べ終わってるぞっ』

唯『あずにゃんったら、食いしん坊さんなんだからー』

梓『そ、それは、ケーキがおいしかったからぁー///』


私は寂しかった

お金はあっても

広い家に住んでいても

私には本当のお友達がいなかった

使いたいものが無ければお金の意味は無い

お茶を淹れてあげたい人がいなければ

どれだけお茶いれが上手くなっても

その意味は無い

生きていたいと思える時間が無ければ

生きている意味が無い

だから私は

お友達を、軽音部を自分の頭の中につくった


紬「そう、全ては私の妄想、空想、絵空事」

紬「でもね、私だってイメージ」

紬「あなたがこれを読んで」

紬「私という人格をイメージしているに過ぎない」

紬「でもね、それはみんな同じでしょ?」

紬「あなたの知っている人で」

紬「あなたが今一緒にいない人は」

紬「本当に存在しているのかしら?」

紬「実在と空想の違いって何?」

紬「私達は現実じゃない絵空事?」

紬「でも、あなた達とどこが違うって言うのかしら?」

紬「じゃあね、そろそろ私は消えるわ」

紬「あなたがこの文章を読み終えたとき」

紬「私は消える」

紬「ほら…消えた」


……

憂「おねーちゃん、朝だよーっ」

唯「うーん、お早う憂ー」

憂「朝ごはんできてるよ」

唯「うん、今行くよー」

唯「でもちょっと待っててね、憂」




唯「あのさ、ちょっと気になってたんだけど」

唯「さっきからずっと私達を見てる君っ!」

唯「そうだよっ、君のことだよっ」

唯「あのさ、きみはー」



終わりです



最終更新:2010年07月01日 21:19