―準備室

梓「ここはこうして…」グモモモモ

憂「あっこうした方がいいんじゃないかな!」デュルルルルルル

梓「それだ!憂、さすがじゃん」

憂「えへへ//」

―平沢家

唯「憂がいないーあいすうー」

ピロロロロ

唯「むぎちゃんからメールだーなになに…」



―準備室

梓「憂ー?いないのー?」

梓「床も窓もピカピカになってる」

梓「ティーカップも準備してある」

梓「誰が一体」

憂「わたしだよっ」

梓「ひゃっ」

憂「今日はお姉ちゃんたちが来てくれるらしいから、綺麗にしておいたんだっ//」

唯「やっほー!」

梓「先輩!」


紬「またきちゃったー」

梓「むぎせんぱい!」


紬「それにしても、憂ちゃんが軽音部に入ってくれたのね」

憂「えへへ//」

唯「憂がおうちにいないから寂しいよお」

憂「お姉ちゃんったら//」

唯「うーいっ//」

梓「…それで、今日はいきなりなんの用事ですか?お茶会しにきたんですか?」

梓「まぁ、それでも、嬉しいですが」ボソッ

紬「うふふ」


紬「連絡する時間がなくてごめんね」

紬「みんなのお金が貯まったらすぐにでも買ってプレゼントしたかったから」

梓「プレゼント…?」

唯「それではプレゼントの発表でーす!ドドドドドドド」

紬「じゃーん♪」

唯「エレクトライブです!」

梓「」

憂「わぁー!」


梓「そんな…エレクトライブ…先輩!これ!」

紬「梓ちゃんと唯ちゃんのためにみんなでバイトして、それはプレゼント!」

唯「澪ちゃんとりっちゃんは今日用事あって来れなかったんだけど」

紬「買ったらすぐにプレゼントしたいねって話してたから」

憂「お姉ちゃんが…バイトなんて」

唯「だってぇーおうち帰ってもーういいないしー」

憂「お姉ちゃんごめん…これからはすぐにおうちかえるよお」

梓「ちょ」

紬「うふふ」

紬「いっぱい使ってあげてね」

梓「はいです!」


憂「それでねーあずさちゃんたらねー」

梓「それはっ憂があんなことするからっ」

唯「えーあずにゃんばっかりずーるーいいい」

紬「唯ちゃんったらー♪」

キャッキャウフフ

紬「そろそろ帰ろっか」

憂「そうですねーじゃあ片付けします、お姉ちゃんちょっと待っててね」

唯「ういーはやくーう」

ガチャ

梓「(しっかり鍵かけなきゃ)」



―教室

純「…さみしい」

憂「あずさちゃーん!」

純「さみしいよぉ!」


梓「なにー?」

憂「駅前のライブハウスでライブ出演バンド募集してたよ!ほら!」ペラッ

憂「ライブ未経験者も全然おっけーなんだって!梓ちゃん!」

憂「出てみようよ!」

梓「でも…」

憂「?」

梓「私達今は軽音部的な活動してないし…ライブハウス行っても盛り上がらないかも…」

憂「梓ちゃん…」

純「なにー梓がライブ出るの渋ってるのー?どーゆー風の吹き回しよ!」

純「初めは私達に聞いてよ!とか言ってたのにさー」

純「文化祭もまだ先だし、高校最後の年だよ?」

純「外でやらないと意味ないっつーの!」

梓「純…」

梓「私…やりたい!」

梓「不安はもちろんあるけれど、憂と作った曲でライブしたい!」

梓「先輩たちにも見てもらいたいし!色んなひとたちに私の曲聴いてもらいたい!」

憂「その意気だよ、梓ちゃん!」

純「ほーらね、あ、私のディスカウントはもちろんよろしく」

憂「純ちゃんったらっ♪」



―準備室

梓「憂、話ってなに?」

憂「あのね梓ちゃん…ライブのことなんだけど」

憂「私はライブには出ないでいいかなって、思ってるの」

梓「へっ?私ひとりでやるの?」

憂「うん、まず私達の曲、ギターいくつも重ねてるから二人でもひとりでも変わらないかなってゆーのと」

梓「」

憂「それにこれは、梓ちゃんが始めたことだよ!」

憂「私は、お手伝いさん」

憂「梓ちゃんひとりでやりきらなきゃ意味がないと思うの」

梓「そんな、私ひとりでなんてやだよ!今まで一緒にやってきたじゃん!憂!」

憂「もちろん、辞めるなんて言ってないよ!これからも精一杯いい曲作れるようにお手伝いするよ」

憂「でも、ライブは梓ちゃんひとりでやるべきなんだよ」

梓「憂…」

憂「だってそっちのほうが絶対かっこいいよ!」

梓「憂!」

憂「当日はもちろん私も行くよ!ステージに立つのは梓ちゃんだけでも、私はちゃんとついてるから」

憂「頑張ろう!」

梓「…」

梓「わかった!ひとりでやり切る!」



―ライブ当日

梓「憂はいきなりご両親が帰国するからって、空港まで迎えに行ってしまった」

梓「周りのバンド、絶対経験者ばっかりだよ…なんか見た目怖いし…隅っこいよっと」

梓「はーぁ、憂早く来ないかなー」

梓「…グスッ」

「おい、あいつひとりでギター抱えてブツブツ言ってるぜ」
「こえー…近寄らないでおこう」


むったん「(あずにゃん!あずにゃん!)」

梓「むったん…」

むったん「(あずにゃんにはむったんがいるから、元気だしてよ!)」

むったん「(これからライブだってのに、そんな顔してるバンドマンがどこにいるのさ!)」

梓「むったん…そうだ、私にはむったんがついてる!」

梓「今はいないけれど憂もいるし、純も先輩たちも見にきてくれる!先生も!」

梓「元気ださなきゃです」

梓「むったん、今チューニングしてあげるからねっ」

むったん「(やった!あずにゃんの元気がでた!がんばろーね!)」


梓「なんかチューニング上手く行かないな」

ポーン ギリギリ ポーンギリギリ
ポーン ギリギリ ビーン!

むったん「(ギャッ)」

梓「弦が…切れちゃった…」

梓「換えの弦、換えの弦、」

梓「ない」

梓「ええええ弦がないよおおおお憂いいいいい!!」

「うわっなんか叫びだした」
「マジあいつヤベーよ…」


梓「憂にはつながらないし、先輩たちにもメールしてみたけれど出番までに間に合うか…」



梓「私…一生懸命やったのに……」

梓「先輩たちが卒業して…ひとりでやってきたのに…それなのに…」

梓「…こんなのってないよ…グスッ」

むったん「(あずにゃん…あずにゃん…!)」

梓「…むったん…ごめんね…せっかくの晴れ舞台なのに、私の不注意でこんなことになっちゃって…」

梓「ライブに穴あけるなんてしちゃったら、もう桜高の軽音部、どこのライブハウスにも出れないよ…」

梓「…先輩…」

むったん「(あずにゃん違うよ!違うんだ!リチャードを、リチャードを思い出すんだ!)」

梓「え…?」

むったん「(ねえあずにゃん、リチャードはどんなライブをしてた?)」

梓「…犬小屋作ってその中でライブしてた…」

むったん「(それじゃないよ!別の話!)」

梓「……あっ!」

むったん「(思い出した?それをすればこのライブハウスはあずにゃんの話題でもちきりになるよ!)」

梓「………」

梓「…ひとりでも、やってやるです!」



……

澪「梓の一人舞台かー成長した梓、楽しみだな」

律「どうせそんなこといって演奏始まったらウエーンドリルコワイヨーってぶへっ」ボカッ

澪「お前は黙ってろ」

律「ちぇー」

唯「なんか憂が急いで楽屋の方に向かってたけれど、大丈夫かなぁ?」

唯「あずにゃんギター忘れてたりして!」

律「それはお前だろっ」

紬「うふふ」

和「それにしてもさっきから出てくるバンド、みんな上手ね」

和「音楽の善し悪しは分からないけれども、高校の軽音部ってレベルじゃない雰囲気がしちゃうわ」

紬「でも、梓ちゃんと憂ちゃんの曲、とぉーってもかっこよかったから、多分、大丈夫よ」

紬「応援しましょっ」


憂「関係者以外楽屋には入れないって、これじゃあ弦渡せないよー」

憂「電波もあんまり通らないみたいだし…」

憂「梓ちゃん、私のせいでこんなことになっちゃって…ごめんね…ごめんね…」ポロポロ

スタッフ「君、あの一人の子の友達?」

憂「あっはい!あのこr」

スタッフ「もう出番始まっちゃうし、フロアで待ってたほうがいいんじゃないかな?」

憂「えっ もう、始まっちゃうんですか!?」

スタッフ「ああ、今の曲が終わったら転換だから、もうスタンバイしてると思うよ」

憂「そんな…」

スタッフ「ほら、ここ関係者以外は入っちゃだめだから、じゃあね」

憂「梓ちゃん…」

唯「ういー!もうー、遅いよー!前のバンド終わっちゃうよ!」

憂「あのね!お姉ちゃん!私…私あずさちゃ」

唯「えーなにー?きこえないー」

憂「…」

ジャッジャーン!
ワーパチパチキャーーキャー!

憂「梓ちゃん…」

律「おっはっじまっるぞー!前で見ようぜ!」

憂「(梓ちゃん…頑張って…!)」



『みなさん今日はお越しくださりありがとうです』

『HTT Twinです』

律「梓ー!」ピーピー

『…// 演奏始めるです』

ヂュヂュヂュヂュヂュヂュ…

唯「あれー?暗転したまんまだよー?あずにゃーん?」

ヂュヂュヂュヂュヂュ…

アーアーテロテロテロテロ…アーラーダーデードドドド

紬「素敵なメロディね」

ドドドドドドドド

ダラララララララバアアアアアアアアンゴゴゴゴゴゴゴ!!!

澪「わあああっ」


梓のライブは終始暗転したままで進められた
そこにはフロアもステージもなく、ただ圧縮され、解体され、細かく繋ぎ合わされたリズムと
そしておまけ程度の繊細なメロディが付け加えられていた
轟音以上の振動、そして前後左右、上も下も分からなくなるようなうねりだった

時間いっぱいまで音楽は鳴り続け、そして終わった

『…演奏終わりです』

梓のその声を以てあかりが灯り、虚無感とも充実感とも言い難い、不思議な雰囲気だけが残された

そして割れんばかりの拍手、誰もいないステージに向かって、観客全員が拍手をしていたのだった



―ファミレス

律「それにしても梓すんげーな!」

純「ほんとだよ!わたし音楽きいてあんな気持ちになったの初めてだったもん!」

梓「そんな…ありがとうです///」

和「私もよ…なんか梓ちゃんの音楽が今まで聴いた音楽の中で一番好みかもしれない」

澪「私はまだよく分からないけれど…この気持ちは言葉にできないよ」


唯「イイナー私もバンドしたいよお」

紬「じゃあ来週末でも、放課後ティータイムでスタジオ入っちゃう?」

律「入っちゃう入っちゃう!」

唯「ついでにアイスも食べちゃう!」

梓「もう…先輩ったら…ちゃんと練習しましょうよー!」

キャッキャウフフ



―帰り道

憂「梓ちゃん…今日は…ごめんね」

憂「私がライブ誘っておいて、出なくて、用事があってリハも見れなかったし…」

憂「お手伝いしたかったのに…迷惑しかかけれなかったよね」

憂「本当に…ごめん」ポロポロ

梓「憂…」

梓「そんなこといわないでよ」

梓「今日のライブは、憂と私と、協力してくれたみんなの結晶なんだよ」

憂「結晶…?」

梓「そうだよ」

梓「自分で聞く用に、今まで作った曲全部mp3にしておいたんだけど」

梓「曲は憂がいなかったらできなかったし」

梓「先輩たちがプレゼントしてくれたエレクトライブがなきゃあんなに完成度の高い曲にできなかったし」

梓「誰かが間違って送ってくれたMacとLiveがなかったら曲の構成なんてなかっただろうし、録音もできないし」

梓「みんなの協力の最高の結晶が今日のライブなんだよ」

憂「梓ちゃん」

梓「あのmp3が私と憂、HTT Twinの全てで、あれ以上のものはないって思ってる」

梓「むったんの弦なんて、ちっちゃい要素のひとつでしかないんだよ」

憂「梓ちゃん…」

むったん「」


ライブに必要だったのは、梓のmp3プレーヤーだけだったが、二人は沢山の機材が乗ったカートを引き釣りながら桜高校に帰った
そして機材を置いたあと、ふたりはHTT Twinを活動休止にすることにした
もうすぐ受験が始まることももちろんあったが、梓のいう結晶をそのままに閉じ込めるためだ

放課後ティータイムの活動は梓の勉強にあわせて進められ、憂は再び家事に専念することになった

当初軽音部が文化祭に出演する予定はなかったが、和が生徒会に無理を言い、再びあのmp3に圧縮された轟音が講堂を埋め尽くした

軽音部には年度の途中ながら沢山の新入部員が入ったが、そこには梓はいない
使い込まれた沢山の機材とティーセット、そしてmp3を焼いたCDと未発表のHTT Twinの音源が残されていた


<完>



※4人下回ると廃部になるルールはどこへ
(梓と憂とトンちゃんとMac Proで四人です 四人です)


最終更新:2010年07月03日 14:29