……すでにお察しの方もいらっしゃるでしょうが、この世界の人間は死ぬと天使か悪魔になります。

昔はいい人は天使に、悪い人は悪魔になったみたいだけど今は神様と魔王様が適当に話し合って決めているらしいです。

そしてたくさん仕事をするとまた人間として生まれ変わることができます。

私もムギちゃんも昔は人間でした。

と言っても生前の記憶は全然ありません。

お仕事の妨げになるから無くしてしまうそうです。

だから何も思い出せません。

生きてる時にどんなお友達がいたのかも。

どうして私達が死んじゃったのかも。



紬「ねえ唯ちゃん、帰る前にお茶にしましょうか」

唯「おぉ~! 忘れてたよー」

唯「もぐもぐ、いやーやっぱりムギちゃんのお菓子は最高ですなあ」

紬「ふふ、喜んでもらえて嬉しいわ」

唯「ねえムギちゃん」

紬「どうしたの?」

唯「あずにゃんの部屋に私達の写真が飾ってあったよね」

紬「……ええ、澪ちゃんとりっちゃんも写っていたわね」

唯「憂の家には」

紬「唯ちゃんの、あれは、遺影だったね……」

唯「友達だったのかな」

紬「たぶんね」

唯「憂は妹かな」

紬「そうね……」

唯「ほんとに思い出せないんだね」

紬「……」

唯「……あ」

紬「唯ちゃん、泣かないで、仕方が無いのよ……」

唯「あはは、泣いてないよ。天国アレルギーで目がちょっとかゆいだけ……」

紬「……唯ちゃん、明日お休みよね? ちょっとお出かけしない?」



つぎのひ!

澪「あ、律。来てたのか」

律「うぃーす澪、部室で会うのは久しぶりだな」

澪「はは、そうだな。あのさ、詩、書いたんだ。見てくれないか」

律「お、よーし読んでやるぜ……って原稿用紙200枚!? 読めるか! これもう小説じゃん」

澪「うん、なんか気が付いたらそうなってた」

律「そもそも何で原稿用紙に作詞するんだよ……でもまあ家で読んでみるから今日貸してくれよ。面白かったら雑誌とかに投稿しちゃおうぜ!」

澪「ちょ、やめろよ! 恥ずかしいだろ!」

梓「あ、先輩……」

澪「お、梓、それに憂ちゃん。久しぶりだな」

梓「はい……すみません、部活来なくなっちゃってて」

律「いいよいいよ、私達も最近全然だったし」

憂「あの、お茶っ葉とお菓子持ってきたんです。ティーセットはまだあるみたいだし、お茶にしませんか?」

律「お、いいね~。んじゃ憂ちゃんよろしく!」

憂「はい! じゃあ早速お茶淹れますね」

澪「おい、憂ちゃんは一応お客さんだぞ。お茶くらい私が……」

憂「はい、澪さんどうぞ」

澪「早いな」

律「ぱくぱく」

澪「そういえばなんで二人は今日部室に来たんだ?」

梓「……昨日急に先輩達のこと思い出したんです、でも夢みたいな感じっていうか……何か混乱しちゃって……」

澪「梓もか……もしかして律と憂ちゃんも?」

律「ああ、なんかムギが天使っぽかった気がする」

憂「お姉ちゃんは黒っぽい羽が生えてましたね」

澪「私もほとんど同じ夢だな……いや、夢……?っていうよりなんかこういきなり、頭の後ろに浮かぶみたいな……」

律「まあなんでもいいんじゃねーの、そのおかげで久しぶりにこうして集まれたんだからさ」

梓「……そうですね、二人ともなんだか生き生きしてて楽しそうだった気がしますし」

澪「そうだな。憂ちゃんはもう大丈夫なのか?」

憂「はい……お姉ちゃんに泣かないでって言われちゃいましたから」

澪「そうか……」

憂「あと何もかも破壊してしまえとも」

澪「それはやめろ」

律「よっし。お茶も飲んだし練習しようぜ! 二人とも楽器は持ってきてるよな?」

澪「ん、まあ持ってきてるけど3人で?」

梓「誰が歌うんですか?」

律「全員だ! 演奏なんてめちゃくちゃでもいいんだよ、どうせキーボも無いしな。ほら憂ちゃんも歌えるだろ?」

憂「あ……はい!」

律「おーし、行くぞー! 1、2、3、4、1、2、3――――」


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紬「……私達、きっと楽しい人生だったのね」

唯「ぐすっ、うん……そうだね……」

和「なに泣いてるのよ唯」

唯「え? あ、和ちゃん! 和ちゃんも今日お休みなの?」

和「ええ、そうよ。でもなんでここに来たのかしら。自分でもよくわからないわ」

唯「えへへ……きっと和ちゃんも私達の友達だったんだよ」

和「……そうね、案外唯の大親友だったりしてね」

紬「紅茶が入ったわ、私達もティータイムにしましょう」


やっぱり私達は何も思い出せずにいます。

だけど私もムギちゃんも、そして和ちゃんもどうしてかこの音楽室に来ていました。

きっと私達の無意識の中に大切な場所として残っていたんでしょう。

人間が私達のことを心のどこかで覚えているように。


だってほら、みんなが歌っていた何かが足りないメロディも

ここで飲むムギちゃんの紅茶も

りっちゃんと澪ちゃんの小競り合いも

仲良くお喋りするあずにゃんと憂の笑顔も

どこか、確かに、とっても懐かしいんですもの。


和「あ、ところで唯」

唯「なあに? 和ちゃん」

和「昨日の巡回、5人まわって収穫0ってのは流石にまずくないかしら」

和「山中主任がまさしく悪魔の形相で怒ってたわ。今月の査定に響くわよ」

唯「……えぇ~~!? お願い、何とかして和ちゃん主任補佐! ……えへへ、大親友だったんだよね?」

和「覚えてないし、たぶん親友を甘やかしたりしてはいなかったと思うわ」

唯「そんなぁ……」

紬「あらあら」


おしまい!



最終更新:2010年07月03日 17:06