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澪「唯」

律「唯」

紬「唯ちゃん」

梓「唯先輩」

憂「お姉ちゃん」

和「唯」

さわ子「唯ちゃん」



唯「ただいま憂」

憂「お姉ちゃんお帰り」

唯「憂、疲れてるみたいだよ。大丈夫?」

憂「ううん。疲れてない」

唯「隠しても分かるよ憂。悩んでるんだよね?」

憂「心配してくれてありがとう。でも私」

唯「憂、深呼吸してみて」

憂「え?」

唯「いいから」

憂「すぅーーっ……はーーっ」

憂「すぅーーっ……はーーっ」

唯「少し、気分が楽になったでしょ?」

憂「う、うん」

唯「私のことで悩んでたんだよね」

憂「……」

唯「憂はいつも私のために頑張ってくれてるもんね」

唯「でも、もう疲れちゃってるんだよ」

憂「違よお姉ちゃん!私はお姉ちゃんに喜んでもらえるのがとっても嬉しいの!」

憂「悩んでもないし疲れても……」

唯「分かってるよ。憂が私のこと大好きでいてくれてるってこと」

憂「お姉ちゃん……」

唯「私も憂のこと大好きだもん」

唯「でもね憂。このままじゃ憂が可愛そうなの」

唯「憂には憂だけの人生があるでしょ?」

憂「私だけの?」

唯「私、今憂の重りになっちゃってるよね」

憂「私はずっとお姉ちゃんと一緒に居たいんだよ!」

憂「お姉ちゃんのために頑張ることなんて、全然苦じゃないの!」

唯「憂だって本当は他にやりたいことがあるんでしょ?」

憂「……」

憂「お姉ちゃんから放れなきゃいけないの?」

唯「そうじゃないよ憂。憂には憂だけの場所を探してほしいんだよ」

憂「分からないよ」

唯「憂。高いところに飛ぼう」

唯「自分のために笑って、自分のために泣くの」

憂「それが私だけの人生?」



憂「…………」

唯「ちょっと外を走ってこようか」

憂「うん」


憂「お姉ちゃん!走り過ぎて…もう心臓痛いよ……」

唯「……私も……凄く疲れた……熱い……」

憂「でも……気持ちいいね。走るのって」



和「唯、進路は決まった?」

唯「まだだよ」

和「早く決めなよ。目標があった方が勉強もしやすいでしょ?」

唯「まだ大丈夫だよ!もうちょっとしたら決める!」

澪「あんまり悠長なこと言ってられないぞ」

澪「もう今年も半分過ぎてるんだから」

唯「ん~…先の事考えると頭痛くなるんだもん……」



唯「高校生の私……何やってたんだろう」

唯「ううん。大学に入ってから頑張ることも出来たはずなんだ」

唯「それなのに……」

唯「みんなどんどん先に進んでるのに……」

唯「私だけ何年もずーっと同じ所に座ってるみたい」


唯「嘘!?さっき時計を見たときから2時間も経ってるよ!?」

唯「今日も……何もしなかったなぁ」

唯「人生まだまだ長いのに…私何やってるんだろう」

唯「誰か助けて……って無理だよね…あはは」



唯「うーいー、アイス~」

憂「ご飯食べてから!」

唯「は~い」




憂「お姉ちゃん、今日外出なかったね……」

唯「だって雨降ってるんだもん」

唯「窓から雨をずーっと眺めてると楽しいよ~」

憂「うん!そうだね」



唯「そっか……あの頃の私」

唯「先の事なんか考えたりしなかったな」

唯「人生なんて飽きるほど長くて、いつでも走りだせると思ってたんだ」

唯「澪ちゃんもりっちゃんもムギちゃんもあずにゃんも和ちゃんも、いつの間にか走っててみんな自分の未来に進んだんだ」

唯「それに憂も……」



梓「あぁっもう唯先輩!急に抱きつかないでください!」

紬「はい唯ちゃん。ケーキよ」

澪「休憩お終い!練習するぞ!」

律「いいじゃんか。もうちょっとだけ休もうぜ」



唯「あれから…もう10年も経ってるんだよね」

唯「あっという間すぎるよ」

唯「いつスタートすれば良かったのかな……」

唯「誰も教えてくれなかった」



唯「みんな起きて!初日の出見に行こうよ!」

律「ふぁ~?まだ眠いよ…」

唯「こんなときに寝てどうするの!?」

澪「お前が言うか……」



唯「あのとき皆と見た初日の出……」

唯「太陽は今でもあの時と変わらないのに、私だけが年を取ってる」

唯「今、こうしてる間も…どんどん年を取って……」



憂「お姉ちゃん」

唯「う、憂!」

憂「へへ。久しぶりに戻ってきちゃった」

唯「憂!会いたかったよういー!」

憂「お姉ちゃんが元気そうで良かった!」

唯「もう行かないで!ずっとここに居てよ憂。いいでしょ?」

憂「……。それは駄目だよ」

憂「分かって。ね?」



──女の子か!かわいいな

──名前はもう決めてあるの

──『唯』

──『平沢唯』か。いい名前だね



──唯、今日からお姉ちゃんだよ

「おねえちゃん?」

──ほら、妹の憂に挨拶して

「こんにちは。ゆいだよ」



──入学おめでとう唯

──おめでとうお姉ちゃん

「ありがとう!私、高校でもがんばるよ!」

──唯、これからもよろしくね

「うん。和ちゃんが同じ学校で嬉しいなぁ」



──軽音部?

「うん。多分カスタネットとか叩くんだよ」



──おはよう唯ちゃん!

「りっちゃん!ムギちゃん!今年私達同じクラスだよ!」

「あ…澪ちゃん……」



──そうですよ!私達の演奏はプロにも負けません!

「これからもずーっとみんなでバンドできたらいいね」

──もう卒業か…早いもんだな

「大学でもよろしくね、みんな」



──お姉ちゃん、私就職決まったよ!

「おめでとう憂!」

──本当に私がいなくても大丈夫?1人でもやっていける?

「心配しないで。私お姉ちゃんなんだよ?」




澪「律。久しぶり」

律「おっす!変わってないな澪」

澪「そんなことないぞ」

澪「ほら」

律「うわ。随分と高そうなアクセ身に付けてるんだな」

律「景気の良いこって」

澪「仕事が上手く行ってるんだよ」

律「ふぅん。まだ音楽やってるの?」

澪「いや」

律「そっか」

澪「もっと豪華な暮らしがしたいから、今は仕事頑張らないと」

律「やっぱ変わったな、澪」

澪「まあ……ね」

澪「律はどう?最近」

律「うん……あんまり、かな」

澪「そっか……」

律「はは。でも身近な友達がリッチになってるとは思わなかったよ」

澪「律……」

律「うん?」

澪「貸さないぞ」

律「え?」

澪「お金。私は貸さないからな」

律「そんなこと言ってないだろ?」

澪「えっ……ああ、そうだよな。ゴメン」

律「(澪……)」

律「(本当に変わっちゃったのかな……。でも澪が悪いわけじゃないんだ)」

澪「久しぶりに律と話ができて楽しかったよ。今日はありがとう」

律「澪こそ忙しいのに会いに来てくれてありがとな。また暇があったらいつでも言ってくれよ」

澪「うん。それじゃ」

澪「もう何年も忘れてたな……友達と語らう楽しさなんて」

澪「こういうのもたまにはいいけど、やっぱり私はお金が一番必要なんだ」

澪「お金を稼いで高い車を買って、美味しいものを食べて、華美な服を着る」

澪「それが一番の幸せなんだ……」



唯「死んじゃうのが怖い」

唯「今の私には、夢中になれるものが無いから……」

唯「今生きてるこの時間から、死ぬときの時間まで一直線なんだ……そう思うと怖いよ」

唯「誰かと一緒に居たい」

唯「憂…澪ちゃん…りっちゃん…ムギちゃん…あずにゃん…和ちゃん……」




私は今それ程大きいとは言えない企業に勤めています。

父の会社を継ぐことは出来たし、周りの人間もそれを望んでいました。

でも私は自分が本当にやりたいことをやりたかったのです。

軽音部のみんなとの出会いが無ければきっと、こんな風に自分のやりたいことを見つけることなんて出来なかった。

私の人生に色を付けてくれたみんな、ありがとう。

私に望みの色を与えてくれたみんな、ありがとう。




憂「お姉ちゃん……やぱり私、ずっとお姉ちゃんと一緒にいるべきだったよ」

憂「どこに行っちゃったの?」

憂「私は毎晩お姉ちゃんの夢を見るよ」

憂「お姉ちゃんも私のこと、思い出してる?」

憂「お姉ちゃんと一緒にご飯食べて、学校に行って、帰ったら笑いながらテレビを観て……」

憂「またお姉ちゃんに会いたい。お姉ちゃんと遊びたい」


憂「昔私たちが住んでた家。ちょっと前までお姉ちゃんが1人で住んでた家」

憂「ははは…新聞がこんなに溜まっちゃってる……」

憂「もう会えないのなら、せめてこれからもお姉ちゃんの夢を見たい」


唯『駄目だよ憂』

憂「なんで?どうして駄目なの?」

憂「お姉ちゃん!どうして!」

唯『駄目なものは駄目なの。しっかりして!』

憂「やだよ!そんなこと言うなら帰ってきてよお姉ちゃん!!」


憂「…………」

憂「私の中では…一緒なんだ。いつまでも」

憂「私とお姉ちゃん、ずっと一緒なんだ……」



梓「遅くなりました」


紬「まだ練習始めてないから大丈夫よ」

澪「梓も来たことだし、そろそろ始めよう」

梓「はい!」

澪「唯、いつまでだらけてるんだ!」

唯「先におやつ食べようよ~」

律「うん、私も唯の意見に賛成!」

梓「律先輩まで!」

紬「あらあら。じゃあ紅茶を淹れるから待ってて」

憂「失礼します」

律「憂ちゃんだ」

唯「ういー、やっほ~」

憂「お姉ちゃん、今日傘忘れてったでしょ?」

唯「あ、そう言えばそうだった!届けてに来てくれたの?」

憂「ううん。私も一本しか無いから……」

憂「部活終わるまで待ってるから終わったら一緒に帰ろ?」

唯「あ、ありがと憂」

澪「本当にどっちが姉なんだか……」

紬「憂ちゃんもケーキ食べてく?」

律「ついでに演奏も聴いてってよ」

梓「ケーキのついでに演奏って……」

紬「すっかり暗くなっちゃったわね」

梓「月が出てます」

律「澪が練習練習うるさかったせいだー!」

澪「律たちがずっとだらだらしてたのが悪い」

唯「でもきれいだね、月」

憂「うん。満月かな」

律「天気悪くてそれ程よく見えないけど」

紬「それより、もう帰ろう?」

澪「そうだな。みんなお疲れ様」

唯「本当は月の暗い側なんて存在しないんだよ」

唯「だって全部が暗いから」


おわり



最終更新:2010年07月05日 00:20